2 / 6
2.
しおりを挟む
あれから2週間が過ぎていた。
学年が違うのもあって、校内で智花と顔を合わせる機会は少なく、恋人らしいやり取りといえば、アプリを使ってのメッセージの送受信と通話くらいだった。
その内容も、日々の出来事や学校の課題、好きなミュージシャンや最近ハマっているアニメの話とか、そんなところだ。
別にこれだけなら、友人関係となんら変わりはない。
智花は──彼女はいったい何がしたいのだろう。
そんなある日、本校舎の階段踊り場で智花とふたりきりで鉢合わせた。
周囲を気にする様子をみせたかと思えば、突然のハグ。
解放されたのは、結構な秒数が経ってからだった。
「学校の中だと、〝禁断の恋〟って感じがして、ドキドキが止まらないですよね」
両手を握られたまま笑いかけられる。
頬だけでなく耳まで紅いので、本当にそう思っているのだろう。
あまり自覚はしていなかったが、わたしたちは同性のカップルだ。
時代が時代なら、石を投げられたり縛り首にもなる危うい存在。いや、現代でもそんなには違わないか。いまだ世界には同性愛者に寛容じゃない人間も多いと聞く。だから『みんなには秘密にしてください』と、智花に口止めをされていた。
「わたしは……別に平気だけど」
「えっ、そうなんですか? だって、バレたらヤバいですよ? クラスどころか、全校生徒にいじめられちゃう可能性だってあるんですよ?」
「言いたい奴には言わせておけばいいじゃん。なんかされたら、その時はその時で、そいつを引っぱたけばいいし」
「アハハ、強いんですね。……もしそうなったら、わたしを守ってくれますか?」
「うん」
「小日向先輩……」
消え入りそうな声で呼ばれた直後、唇を奪われる。
告白といいハグといい、智花は何かと積極的な子のようだ。
「先輩のこと、好きになって良かったです」
誰かの話し声と靴音が聞こえてくると、智花は甘い香りを残して階段を降りて行った。
去り際の微笑みが、年下とは思えないくらいに大人びた魅力を感じさせた。
学年が違うのもあって、校内で智花と顔を合わせる機会は少なく、恋人らしいやり取りといえば、アプリを使ってのメッセージの送受信と通話くらいだった。
その内容も、日々の出来事や学校の課題、好きなミュージシャンや最近ハマっているアニメの話とか、そんなところだ。
別にこれだけなら、友人関係となんら変わりはない。
智花は──彼女はいったい何がしたいのだろう。
そんなある日、本校舎の階段踊り場で智花とふたりきりで鉢合わせた。
周囲を気にする様子をみせたかと思えば、突然のハグ。
解放されたのは、結構な秒数が経ってからだった。
「学校の中だと、〝禁断の恋〟って感じがして、ドキドキが止まらないですよね」
両手を握られたまま笑いかけられる。
頬だけでなく耳まで紅いので、本当にそう思っているのだろう。
あまり自覚はしていなかったが、わたしたちは同性のカップルだ。
時代が時代なら、石を投げられたり縛り首にもなる危うい存在。いや、現代でもそんなには違わないか。いまだ世界には同性愛者に寛容じゃない人間も多いと聞く。だから『みんなには秘密にしてください』と、智花に口止めをされていた。
「わたしは……別に平気だけど」
「えっ、そうなんですか? だって、バレたらヤバいですよ? クラスどころか、全校生徒にいじめられちゃう可能性だってあるんですよ?」
「言いたい奴には言わせておけばいいじゃん。なんかされたら、その時はその時で、そいつを引っぱたけばいいし」
「アハハ、強いんですね。……もしそうなったら、わたしを守ってくれますか?」
「うん」
「小日向先輩……」
消え入りそうな声で呼ばれた直後、唇を奪われる。
告白といいハグといい、智花は何かと積極的な子のようだ。
「先輩のこと、好きになって良かったです」
誰かの話し声と靴音が聞こえてくると、智花は甘い香りを残して階段を降りて行った。
去り際の微笑みが、年下とは思えないくらいに大人びた魅力を感じさせた。
10
あなたにおすすめの小説
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる