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chapter.02
交わる小さな光
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斜陽の明かりが寝室を妖しく照らす。
キングサイズのベッドで心地よい微睡みの波に意識を漂わせながら、航は肛門からあふれる精液の不快感に瞼を渋々ひらいた。
あれから場を移し、余興はこの寝室で行われた。
どうやら御主人様は勃起不全のようで、自らの代わりに堤を何度も仕向けては恥辱に耐える航を観賞して酒にも酔いしれていた。
ベッドから降りた航は、裸のままカーテンが開け放たれた窓辺に立つ。陽光にきらめく湖が寂しげに見えたのは、きっと気のせいではないだろう。
と、そのときに部屋の扉がノックされる。
谷村だ。
「お疲れ様。洲崎クンのお洋服、持ってきたわよ。飲み物はそこの小型冷蔵庫にあるから、どうぞご自由に。ねえ、今夜はどうする? 帰るなら堤に車を出させるけど……彼の運転が嫌なら、今日はお泊まりね」
艶やかで饒舌な唇と甘く濃醇なヘザーの香り。谷村の運転は期待できそうにない。
「いえ、可能であれば泊まらせてください。それと、近くにコンビニってあります?」
「フフッ、キミは新しいビジネスパートナーなんだから、なにも遠慮しないで。もっともその分、求められることを覚悟してもらうけれど。夕食はこちらで準備するから大丈夫よ。そのほかに必要な物があれば、遠慮なく私に言ってちょうだい」
「はい、ありがとうございます。ところで谷村さん、あの人のこと、なんてお呼びすればいいんでしょう?」
「ああ……そうね……会長でいいんじゃないかしら?」
谷村は味気なくそう答えて部屋を去った。
ひとりきりとなった寝室で、航は冷めきった衣服に袖をとおす。そして、なにかを考えていた。
*
夜の七時頃、ヨーロッパスタイルの木製電話機が鳴る。
『お食事の用意ができましたので、どうぞ降りてきてください』
若い女の声だった。どうやらあのふたり以外にも、この屋敷には誰か居るらしい。
間取りは知らないが、洩れ聞こえてくる話し声に導かれて食堂まで来れた。
あの三人のほかに、ジーンズ生地のパンツを穿いたカジュアルな服装の女の姿がある。彼女は黙々と、白磁器に盛られた料理を長机に運んでいた。
上座に陣取る会長の斜向かいでは、谷村が書類を見ながらなにかの説明をしている。堤は女の配膳を手伝っているようで、これらの様子から察するに、ふたりが使用人扱いの身分であることは明白だろう。
「あら、洲崎クン……帆波、部屋からお連れしなかったの?」
不愉快そうな目つきで帆波を睨みつける谷村。
「えっ? あ……申し訳ありません、てっきり食堂の場所を存じ上げてらっしゃるものかと……」
「全然大丈夫ですよ。美味そうなにおいで、俺すぐわかりましたから」
「優しいわね洲崎クン。どうぞそこにかけて」
促されたのは、谷村と真向かいの席。つまり、会長と斜向かいでもある。
「あー……いいえ、そのまえに俺、手伝いますよ」
人数分にはまだ足りない料理を、航も一緒になって食堂隣の調理室から運ぶ。
「ありがとうございます」
調理室で帆波に小声で話しかけられる。航も微笑みながら、同じく小声で答えた。
「昔さ、ギャルソンやってたんだ」
「ええっ!? そうなんですか?」
「うん。まあ……クビになったけどね。俺、洲崎航」
なぜだかこのとき、ごく自然と本名を名乗り、握手を求めて手も動いた。差し出された手をしばらく見つめていた帆波は、ハッとしてから握手を交わす。
「わ、私は菱田帆波です! よろしくお願いします!」
キングサイズのベッドで心地よい微睡みの波に意識を漂わせながら、航は肛門からあふれる精液の不快感に瞼を渋々ひらいた。
あれから場を移し、余興はこの寝室で行われた。
どうやら御主人様は勃起不全のようで、自らの代わりに堤を何度も仕向けては恥辱に耐える航を観賞して酒にも酔いしれていた。
ベッドから降りた航は、裸のままカーテンが開け放たれた窓辺に立つ。陽光にきらめく湖が寂しげに見えたのは、きっと気のせいではないだろう。
と、そのときに部屋の扉がノックされる。
谷村だ。
「お疲れ様。洲崎クンのお洋服、持ってきたわよ。飲み物はそこの小型冷蔵庫にあるから、どうぞご自由に。ねえ、今夜はどうする? 帰るなら堤に車を出させるけど……彼の運転が嫌なら、今日はお泊まりね」
艶やかで饒舌な唇と甘く濃醇なヘザーの香り。谷村の運転は期待できそうにない。
「いえ、可能であれば泊まらせてください。それと、近くにコンビニってあります?」
「フフッ、キミは新しいビジネスパートナーなんだから、なにも遠慮しないで。もっともその分、求められることを覚悟してもらうけれど。夕食はこちらで準備するから大丈夫よ。そのほかに必要な物があれば、遠慮なく私に言ってちょうだい」
「はい、ありがとうございます。ところで谷村さん、あの人のこと、なんてお呼びすればいいんでしょう?」
「ああ……そうね……会長でいいんじゃないかしら?」
谷村は味気なくそう答えて部屋を去った。
ひとりきりとなった寝室で、航は冷めきった衣服に袖をとおす。そして、なにかを考えていた。
*
夜の七時頃、ヨーロッパスタイルの木製電話機が鳴る。
『お食事の用意ができましたので、どうぞ降りてきてください』
若い女の声だった。どうやらあのふたり以外にも、この屋敷には誰か居るらしい。
間取りは知らないが、洩れ聞こえてくる話し声に導かれて食堂まで来れた。
あの三人のほかに、ジーンズ生地のパンツを穿いたカジュアルな服装の女の姿がある。彼女は黙々と、白磁器に盛られた料理を長机に運んでいた。
上座に陣取る会長の斜向かいでは、谷村が書類を見ながらなにかの説明をしている。堤は女の配膳を手伝っているようで、これらの様子から察するに、ふたりが使用人扱いの身分であることは明白だろう。
「あら、洲崎クン……帆波、部屋からお連れしなかったの?」
不愉快そうな目つきで帆波を睨みつける谷村。
「えっ? あ……申し訳ありません、てっきり食堂の場所を存じ上げてらっしゃるものかと……」
「全然大丈夫ですよ。美味そうなにおいで、俺すぐわかりましたから」
「優しいわね洲崎クン。どうぞそこにかけて」
促されたのは、谷村と真向かいの席。つまり、会長と斜向かいでもある。
「あー……いいえ、そのまえに俺、手伝いますよ」
人数分にはまだ足りない料理を、航も一緒になって食堂隣の調理室から運ぶ。
「ありがとうございます」
調理室で帆波に小声で話しかけられる。航も微笑みながら、同じく小声で答えた。
「昔さ、ギャルソンやってたんだ」
「ええっ!? そうなんですか?」
「うん。まあ……クビになったけどね。俺、洲崎航」
なぜだかこのとき、ごく自然と本名を名乗り、握手を求めて手も動いた。差し出された手をしばらく見つめていた帆波は、ハッとしてから握手を交わす。
「わ、私は菱田帆波です! よろしくお願いします!」
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