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第9話 ウマい棒
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休日の朝は、目覚めのモーニング・シャバカレーとともに始まる。
練乳と牛乳、そして豆乳。おなじ〝乳〟繋がりだとしても、お湯カレーにぶち込んではいけない。それに、どうして仲間外れのオレンジジュースちゃんまで入れちゃうかな? おかげで、白いフワフワがいっぱいプカプカ浮いてるし!
「ジュルルル……ねえ、きょうだけどさ、一緒にお買い物へ行かない? あなたメイドなんだから、断れないわよね?」
「ズズズ……なにをお求めになるんです?」
「うーん、とくに決めてない」
「却下です」
「えっ!? なんで!? どうして!?」
「我が部族の掟で、不要不急の外出をしてはならないと決まっておりますもので」
「ぐぬぬ……それじゃあ、どうしても買いたい物があるから、ついて来てよ!」
「ズズズ…………かしこまり。ですが、私奴はこのメイド服が一帳羅でございます。御主人サマは連れて歩く勇気がありやがりますか?」
「……へ? それしか持ってないの? じゃあ、いつもお買い物はどうしてるの?」
「必要な食材は組織から配達されますので、どうかご心配なく」
「(組織ってなによ?)ふーん……それなら、あたしの服を貸して──」
そういい終えるまえに気づく。
あたしたちは体型も別次元の住人だから、お互いの衣服や下着の交換なんてナンセンス極まりない。無理に着せようものなら、そくざに破れてしまい素っ裸だ。
「はううっ……ん? えっ、じょあさ、あなたってここに配属されてから、一度も外へ出てないの?」
「いいえ。ゴミ捨てや洗濯物を干しにベランダに出ていますが」
「その格好で……だよね。ははは……警察に通報されなかったのが奇跡的なくらいだよ。それなら、きょうはあなたのお洋服を買ってこようかな」
「いえ、結構です。必要であれば組織が調達してくれますので」
「(だから、組織ってなによ?)ふーん……そっか……」
会話がここで途切れる。
彼女と親密になりたいのに、なんかうまくいかなくて空回りしちゃう。
唇を尖らせて長考するあたしに、彼女はシャバカレーのおかわりを訊ねた。無意識に空のお皿を差し出してから、しまったと思ったけど、時すでに遅し。気持ちをすばやく切り替え、一杯目よりも多く盛られたシャバカレーを啜りながら、きょうの予定を再構築してみることにした。
*
あたしが家に居ると彼女が休めないから、結局ひとりで外出をした。
といっても、駅周辺の商店街や大型量販店をブラついて過ごしてただけなんだけど。
「ただいまー」
「お帰りなさいませ御主人サマ」
玄関扉を開けてすぐ、秒で彼女が出迎えてくれる。
毎度のことでも、正直怖いよ。
「これ、おみやげ。新しいお店が商店街の公園近くにできててさ、チーズケーキバーの専門店なんだって」
「チーズケーキ……バー……」
片手に持っていた小さな紙袋を笑顔で手渡す。
不思議そうに受け取った彼女の耳先が、ほんの気持ちピクンて跳ねた。
「うん。知らないかな? 細長い形をしたケーキ。スナック感覚で、手を汚さずに食べれるケーキなんだよ」
「ほほう。では早速、お紅茶の用意を」
三角ずわりでテレビを観ていると、お揃いの桜色のマグカップがふたつ、トレイに乗せて運ばれてくる。もちろん、おやつのチーズケーキバーも小皿に乗せて。
「こうして見るとゴージャスだよね。やっぱ、器は大事だなぁ」
「左様で」
カエルのミニテーブルにマグカップと小皿を置きながら、彼女が答える。そのときに長い銀髪からプルメリアの優雅で甘い香りがした。
「いただきまーす」
あたしが先に食べなきゃ、彼女が食べられない。ちょっとお行儀が良くないけれど、我先にと手を伸ばしてチーズケーキバーを頬張る。
「めちゃウマ……もぐもぐ……早く食べて、あなたの感想もきかせてよ」
「…………」
けれども彼女は、小皿の上のケーキを見つめるばかりで手に取る気配がない。あれっ? 甘い物は嫌いなのかな?
「ごめんなさい、チーズケーキ嫌いだった?」
「いいえ、そうでは……ただ……」
「ただ?」
「……いえ、いただきます」
そういい終えてもまだ食べる様子がなくって、さらに数秒経ってから、やっと摘まみ上げた。
けれども彼女は、まだ食べない。
なせが頬を紅らめて、ケーキバーの先端をまじまじと見つめているのだ。
「どうかしたの? なにか付いてた?」
「いえ、そうでは……いただきます」
唇が開く。
ケーキバーの先端をひと舐めする。
そして、ふた舐め。
さん舐め、よん舐め──ペロペロ、ペロペロ、なんでやねん。
「ねえ……ひょっとしてさ、違ってたらごめんね? もしかすると、溜まってる?」
「なっ!? 溜まってなど……いない! ペロッ♡」
「うん……あたしで良ければ揉みタイムしようか? それとも、一時間くらいひとりで散歩してくるけど?」
「貴様はさっきからなにをペロッ、いってレロッ、いるのだ!? チロッ、ペロッ♡」
「うん……さっきから不自然にペロってるし。あのさ、ケーキバーってペロ食べする物じゃないんだよね」
「はむっ。ちゅぽぽぽ……ジュルル♡♡」
注意してるそばから、今度はケーキバーを卑猥に頬張る彼女。あまりにもひどくて、見てられないよ……。
「ペロペロ♡ はぁはぁ……はむっ!」
「もういいってば! そ~れ、揉みタイムぅぅぅ♡♡♡」
すばやく背後に回り込んでからの、両手パイオツ鷲掴み攻撃。
揉み揉みモミモミもみもみ、お風呂以外での初揉みタイム。
チーズケーキバーを頬張ったままのスケベな膝立ち姿で、彼女は眉を八の字にして身悶える。
「んー♡ んー♡ んんんんんッッッツ♡♡♡」
はい! これがこの話のオチです!
練乳と牛乳、そして豆乳。おなじ〝乳〟繋がりだとしても、お湯カレーにぶち込んではいけない。それに、どうして仲間外れのオレンジジュースちゃんまで入れちゃうかな? おかげで、白いフワフワがいっぱいプカプカ浮いてるし!
「ジュルルル……ねえ、きょうだけどさ、一緒にお買い物へ行かない? あなたメイドなんだから、断れないわよね?」
「ズズズ……なにをお求めになるんです?」
「うーん、とくに決めてない」
「却下です」
「えっ!? なんで!? どうして!?」
「我が部族の掟で、不要不急の外出をしてはならないと決まっておりますもので」
「ぐぬぬ……それじゃあ、どうしても買いたい物があるから、ついて来てよ!」
「ズズズ…………かしこまり。ですが、私奴はこのメイド服が一帳羅でございます。御主人サマは連れて歩く勇気がありやがりますか?」
「……へ? それしか持ってないの? じゃあ、いつもお買い物はどうしてるの?」
「必要な食材は組織から配達されますので、どうかご心配なく」
「(組織ってなによ?)ふーん……それなら、あたしの服を貸して──」
そういい終えるまえに気づく。
あたしたちは体型も別次元の住人だから、お互いの衣服や下着の交換なんてナンセンス極まりない。無理に着せようものなら、そくざに破れてしまい素っ裸だ。
「はううっ……ん? えっ、じょあさ、あなたってここに配属されてから、一度も外へ出てないの?」
「いいえ。ゴミ捨てや洗濯物を干しにベランダに出ていますが」
「その格好で……だよね。ははは……警察に通報されなかったのが奇跡的なくらいだよ。それなら、きょうはあなたのお洋服を買ってこようかな」
「いえ、結構です。必要であれば組織が調達してくれますので」
「(だから、組織ってなによ?)ふーん……そっか……」
会話がここで途切れる。
彼女と親密になりたいのに、なんかうまくいかなくて空回りしちゃう。
唇を尖らせて長考するあたしに、彼女はシャバカレーのおかわりを訊ねた。無意識に空のお皿を差し出してから、しまったと思ったけど、時すでに遅し。気持ちをすばやく切り替え、一杯目よりも多く盛られたシャバカレーを啜りながら、きょうの予定を再構築してみることにした。
*
あたしが家に居ると彼女が休めないから、結局ひとりで外出をした。
といっても、駅周辺の商店街や大型量販店をブラついて過ごしてただけなんだけど。
「ただいまー」
「お帰りなさいませ御主人サマ」
玄関扉を開けてすぐ、秒で彼女が出迎えてくれる。
毎度のことでも、正直怖いよ。
「これ、おみやげ。新しいお店が商店街の公園近くにできててさ、チーズケーキバーの専門店なんだって」
「チーズケーキ……バー……」
片手に持っていた小さな紙袋を笑顔で手渡す。
不思議そうに受け取った彼女の耳先が、ほんの気持ちピクンて跳ねた。
「うん。知らないかな? 細長い形をしたケーキ。スナック感覚で、手を汚さずに食べれるケーキなんだよ」
「ほほう。では早速、お紅茶の用意を」
三角ずわりでテレビを観ていると、お揃いの桜色のマグカップがふたつ、トレイに乗せて運ばれてくる。もちろん、おやつのチーズケーキバーも小皿に乗せて。
「こうして見るとゴージャスだよね。やっぱ、器は大事だなぁ」
「左様で」
カエルのミニテーブルにマグカップと小皿を置きながら、彼女が答える。そのときに長い銀髪からプルメリアの優雅で甘い香りがした。
「いただきまーす」
あたしが先に食べなきゃ、彼女が食べられない。ちょっとお行儀が良くないけれど、我先にと手を伸ばしてチーズケーキバーを頬張る。
「めちゃウマ……もぐもぐ……早く食べて、あなたの感想もきかせてよ」
「…………」
けれども彼女は、小皿の上のケーキを見つめるばかりで手に取る気配がない。あれっ? 甘い物は嫌いなのかな?
「ごめんなさい、チーズケーキ嫌いだった?」
「いいえ、そうでは……ただ……」
「ただ?」
「……いえ、いただきます」
そういい終えてもまだ食べる様子がなくって、さらに数秒経ってから、やっと摘まみ上げた。
けれども彼女は、まだ食べない。
なせが頬を紅らめて、ケーキバーの先端をまじまじと見つめているのだ。
「どうかしたの? なにか付いてた?」
「いえ、そうでは……いただきます」
唇が開く。
ケーキバーの先端をひと舐めする。
そして、ふた舐め。
さん舐め、よん舐め──ペロペロ、ペロペロ、なんでやねん。
「ねえ……ひょっとしてさ、違ってたらごめんね? もしかすると、溜まってる?」
「なっ!? 溜まってなど……いない! ペロッ♡」
「うん……あたしで良ければ揉みタイムしようか? それとも、一時間くらいひとりで散歩してくるけど?」
「貴様はさっきからなにをペロッ、いってレロッ、いるのだ!? チロッ、ペロッ♡」
「うん……さっきから不自然にペロってるし。あのさ、ケーキバーってペロ食べする物じゃないんだよね」
「はむっ。ちゅぽぽぽ……ジュルル♡♡」
注意してるそばから、今度はケーキバーを卑猥に頬張る彼女。あまりにもひどくて、見てられないよ……。
「ペロペロ♡ はぁはぁ……はむっ!」
「もういいってば! そ~れ、揉みタイムぅぅぅ♡♡♡」
すばやく背後に回り込んでからの、両手パイオツ鷲掴み攻撃。
揉み揉みモミモミもみもみ、お風呂以外での初揉みタイム。
チーズケーキバーを頬張ったままのスケベな膝立ち姿で、彼女は眉を八の字にして身悶える。
「んー♡ んー♡ んんんんんッッッツ♡♡♡」
はい! これがこの話のオチです!
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