セフレに恋をした

東雲ゆめ

文字の大きさ
4 / 36

4:誕生日プレゼント

しおりを挟む
 
 早川くんは、スターだ。

 といっても、芸能人とかではない。
 
 早川くんは、バスケットボール界の次期ホープと称される、スーパー高校生だった。

 とはいえ、ぼくがそれを知ったのは、早川くんと知り合ってからで――それまで、ぼくは、バスケの試合を見たことも、体育の授業以外でプレイしたこともなかった。
 早川くんの高校はバスケの強豪校で、彼はそこのスポーツ特待生だった。沖縄から東京に進学して、寮で暮らしている。寮の門限はとても早く、夜の7時までには、寮に戻らなければならない。

 ぼくらが会うのは、月に数回、早川くんの部活が休みになったとき。
 LINEで連絡が来て、渋谷の駅前で待ち合わせ、道玄坂のラブホテルに行く。
 ぼくは、LINEの連絡先以外、早川くんのことをほとんど知らない。
 学校名とバスケをしていること、インスタグラムのフォロワー数がものすごく多いこと――あと、セックスのとき、ぼくを辱めるのがとても好きなことくらいだ。

 ……たぶん早川くんは、スポーツでたまった疲れを、ぼくとのセックスで発散したいんだと思う。
 彼女を作ってしまうと、記念日とかデートとか、ちゃんとしなきゃいけないのが面倒なのかもしれないし、スポーツ強豪校は恋愛禁止のルールも多いと聞く。
 だからあの日、たまたま見つけたぼくが、手頃な獲物だったのだろう。

 
 ――早川くんと知り合って2か月。
 学校帰り、電車の中で、早川くんのインスタグラムをチェックするのがぼくの日課となっていた。
 その日は、新しい投稿が上がっていた。
 ワクワクしながら記事を読む。

『お知らせ 今月の『……』の高校生プレーヤー特集に出させてもらいました』

 バスケの月刊誌と、ピースする早川くんの手が映った写真。
 ぼくは、その写真をじっと見つめた。ほっそりした長いきれいな指。この指が、ぼくのあそこを触ったり、あんなところを弄ったりする――。
 想像したとたん、体の芯がじんわりと疼いて熱くなった。
 慌てて首を振り、雑念を蹴散らす。
 
 帰り道、その雑誌を本屋で買った。
 巻末の特集に、早川くんは載っていた。
 赤いユニフォーム姿の早川くんが、長い腕でシュートする姿、くるくると指先でボールを回す笑顔。
 ひとつひとつの写真を入念にチェックしてから、プロフィール欄に目を通す。

『196センチ 75キロ 2008年7月9日生まれ』

(7月9日……)
 自分の部屋の壁のカレンダーをチェックする。
 ――来週の木曜日だ。
 
 ……それまでに会えるかわからない。早川くんからの連絡はいつも突然だし、夏の大会に向けて、練習がハードになっているのは、バスケにうといぼくにもわかる。

(でも……)

 バスケットをしている金髪の男の子が喜ぶ誕生日プレゼントって――いったいなんだろう?

 ベッドに仰向けになったぼくは、母親に、「ごはんよー」と階下から声をかけられるまで、ずっと考えていた。



 ☆☆☆☆




 早川くんと次に会ったのは、翌週の水曜日だった。

 誕生日の前日。
 ぼくは、スクールバッグに、プレゼントの箱の入った紙袋を入れていった。

 早川くんはその日、なぜかいつもより少し不機嫌だった。
 ホテルの部屋に入るなりすぐ、ぼくをベッドに押し倒して、制服を脱がしてくる。
 性急な指が、パンツのなかをまさぐり、すでにかたくなっているぼくのペニスを扱きあげる。

「……あぁっ……うッ――……!」

 早川くんの――長い、きれいな指が、ぼくのなかからケモノのような欲情を引き出す。
 あっという間に2回して、精液を飲まされて終わった。

 早川くんがシャワーを浴びているとき、バッグから取り出したプレゼントの箱を手にぼくは悩んだ。
 どうやって、渡せばいいんだろう?
 お誕生日おめでとう? 
 ――でもぼくがいきなりそんなことを言い出したら、きっとびっくりするにちがいない。

 考えたあげく、早川くんのリュックに、プレゼントをこっそり入れておくことにした。
 一応、紙袋の中に、「お誕生日おめでとう」と書いた付箋は入れてある。
 床に転がっていた早川くんの黒いリュックを拾い上げ、そっとジッパーを開け、紙袋を中に入れようとした。
 そのときだった。

「……何してんの?」
 後ろから声がして、ぼくはリュックをボトッと床に落とした。

 制服のズボンを履いた早川くんが、裸の肩にバスタオルをかけ近づいてくる。
 怪訝な顔をした早川くんは、紙袋を拾い、中を見た。
 白い包装紙を破り、黒いアクセサリーボックスを取り出し、マグネット式の蓋を開く。

 ――黒いシンプルな革のブレスレット。

 紙袋に入れていた黄色い付箋に書かれたぼくのメッセージを読んだ早川くんは、

「……おれにプレゼント?」
 意外そうに聞く。
 頬が赤くなるのを感じながら、
「……う、うん――」
 と答える。
「あ、あの、インスタ見て――ブレスレット付けてたから……」

 ――早川くんの自撮り写真には、おしゃれなブレスレットが映っていた。

「………」

 無言でぼくを見つめる早川くんの瞳の美しさに堪えられなくなったぼくはうつむく。
 
 そんなぼくに、早川くんは、
「おまえさ――」
 思いがけないことばをかけてきた。

「――今度の日曜、空いてる?」
「……え?」
「体育館が使えなくなって、急に練習が休みになったんだ。だから――」
 なぜか少しかすれた声で、
「よかったら――どっか、行かないか」
 とぼくを誘った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。 勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

処理中です...