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4:誕生日プレゼント
しおりを挟む早川くんは、スターだ。
といっても、芸能人とかではない。
早川くんは、バスケットボール界の次期ホープと称される、スーパー高校生だった。
とはいえ、ぼくがそれを知ったのは、早川くんと知り合ってからで――それまで、ぼくは、バスケの試合を見たことも、体育の授業以外でプレイしたこともなかった。
早川くんの高校はバスケの強豪校で、彼はそこのスポーツ特待生だった。沖縄から東京に進学して、寮で暮らしている。寮の門限はとても早く、夜の7時までには、寮に戻らなければならない。
ぼくらが会うのは、月に数回、早川くんの部活が休みになったとき。
LINEで連絡が来て、渋谷の駅前で待ち合わせ、道玄坂のラブホテルに行く。
ぼくは、LINEの連絡先以外、早川くんのことをほとんど知らない。
学校名とバスケをしていること、インスタグラムのフォロワー数がものすごく多いこと――あと、セックスのとき、ぼくを辱めるのがとても好きなことくらいだ。
……たぶん早川くんは、スポーツでたまった疲れを、ぼくとのセックスで発散したいんだと思う。
彼女を作ってしまうと、記念日とかデートとか、ちゃんとしなきゃいけないのが面倒なのかもしれないし、スポーツ強豪校は恋愛禁止のルールも多いと聞く。
だからあの日、たまたま見つけたぼくが、手頃な獲物だったのだろう。
――早川くんと知り合って2か月。
学校帰り、電車の中で、早川くんのインスタグラムをチェックするのがぼくの日課となっていた。
その日は、新しい投稿が上がっていた。
ワクワクしながら記事を読む。
『お知らせ 今月の『……』の高校生プレーヤー特集に出させてもらいました』
バスケの月刊誌と、ピースする早川くんの手が映った写真。
ぼくは、その写真をじっと見つめた。ほっそりした長いきれいな指。この指が、ぼくのあそこを触ったり、あんなところを弄ったりする――。
想像したとたん、体の芯がじんわりと疼いて熱くなった。
慌てて首を振り、雑念を蹴散らす。
帰り道、その雑誌を本屋で買った。
巻末の特集に、早川くんは載っていた。
赤いユニフォーム姿の早川くんが、長い腕でシュートする姿、くるくると指先でボールを回す笑顔。
ひとつひとつの写真を入念にチェックしてから、プロフィール欄に目を通す。
『196センチ 75キロ 2008年7月9日生まれ』
(7月9日……)
自分の部屋の壁のカレンダーをチェックする。
――来週の木曜日だ。
……それまでに会えるかわからない。早川くんからの連絡はいつも突然だし、夏の大会に向けて、練習がハードになっているのは、バスケに疎いぼくにもわかる。
(でも……)
バスケットをしている金髪の男の子が喜ぶ誕生日プレゼントって――いったいなんだろう?
ベッドに仰向けになったぼくは、母親に、「ごはんよー」と階下から声をかけられるまで、ずっと考えていた。
☆☆☆☆
早川くんと次に会ったのは、翌週の水曜日だった。
誕生日の前日。
ぼくは、スクールバッグに、プレゼントの箱の入った紙袋を入れていった。
早川くんはその日、なぜかいつもより少し不機嫌だった。
ホテルの部屋に入るなりすぐ、ぼくをベッドに押し倒して、制服を脱がしてくる。
性急な指が、パンツのなかをまさぐり、すでにかたくなっているぼくのペニスを扱きあげる。
「……あぁっ……うッ――……!」
早川くんの――長い、きれいな指が、ぼくのなかからケモノのような欲情を引き出す。
あっという間に2回して、精液を飲まされて終わった。
早川くんがシャワーを浴びているとき、バッグから取り出したプレゼントの箱を手にぼくは悩んだ。
どうやって、渡せばいいんだろう?
お誕生日おめでとう?
――でもぼくがいきなりそんなことを言い出したら、きっとびっくりするにちがいない。
考えたあげく、早川くんのリュックに、プレゼントをこっそり入れておくことにした。
一応、紙袋の中に、「お誕生日おめでとう」と書いた付箋は入れてある。
床に転がっていた早川くんの黒いリュックを拾い上げ、そっとジッパーを開け、紙袋を中に入れようとした。
そのときだった。
「……何してんの?」
後ろから声がして、ぼくはリュックをボトッと床に落とした。
制服のズボンを履いた早川くんが、裸の肩にバスタオルをかけ近づいてくる。
怪訝な顔をした早川くんは、紙袋を拾い、中を見た。
白い包装紙を破り、黒いアクセサリーボックスを取り出し、マグネット式の蓋を開く。
――黒いシンプルな革のブレスレット。
紙袋に入れていた黄色い付箋に書かれたぼくのメッセージを読んだ早川くんは、
「……おれにプレゼント?」
意外そうに聞く。
頬が赤くなるのを感じながら、
「……う、うん――」
と答える。
「あ、あの、インスタ見て――ブレスレット付けてたから……」
――早川くんの自撮り写真には、おしゃれなブレスレットが映っていた。
「………」
無言でぼくを見つめる早川くんの瞳の美しさに堪えられなくなったぼくはうつむく。
そんなぼくに、早川くんは、
「おまえさ――」
思いがけないことばをかけてきた。
「――今度の日曜、空いてる?」
「……え?」
「体育館が使えなくなって、急に練習が休みになったんだ。だから――」
なぜか少しかすれた声で、
「よかったら――どっか、行かないか」
とぼくを誘った。
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