セフレに恋をした

東雲ゆめ

文字の大きさ
9 / 36

9:変わりゆく季節

しおりを挟む
 
 夏が過ぎ、新学期になった。

 早川くんは、大会に向けて、ハードな練習を重ねていた。
 平日も休日もほとんど休みはなく、会えるのは二週間に一度くらい。

 午後から練習が休みになり、久しぶりに会うことになった。
 9月下旬――まだ夏の暑さの残る日曜日。
 
 神保町の駅前にあるファストフードの店で待ち合わせた。
 約束の時間から20分ほど過ぎ、早川くんは店に現れた。
 二階の窓際のカウンター席に座っていたぼくのもとに来て、
「遅くなってごめん」
 と頭を下げる。
「来る前にシューズを見てこようと思って――」
 スポーツショップの名前の入った大きな紙袋。
 このあたりは、スポーツ用品の専門店が多い。

 別にいいよ、と、ぼくは読んでいた本をリュックにしまった。
 早川くんは、制服姿だった。
 袖に校章の刺繍が入った白の半袖シャツに、緑のタータンチェックのネクタイ。
 ネクタイを緩め、「暑いな……」とつぶやく。
 走ってきたのか、首筋に玉のような汗が光っている。

「――まだ昼、食ってないの?」
 Sサイズのドリンクの紙コップが載ったトレイを見て、聞いてくる。

「あ――うん。早川くんが来てから注文しようと思って――」
「だったらカレー食べに行こうぜ。すごく美味い店があるから」

 早川くんが連れていってくれたのは、駅の近くにある、地下のインドカレー店だった。
 独特のリズムのインド音楽の流れるなか、辛口のキーマカレーとマトンカレーを、ふたりで汗をかきながら食べた。
 早川くんはナンを3枚もお替わりした。
 食べ終わって地上に出ると、さっきよりも太陽が眩しく感じた。
 強烈な日差しの照り付けるコンクリートの地面に、ユラユラと陽炎が立ちのぼっている。
 腕時計は、午後の2時を指していた。

「あのさ――」
 顔を上げたぼくに、
「暑いから――どっかで休憩しないか?」
 早川くんは言う。
「今日は少しゆっくりできるから」
 それは、ホテルに行こう、という誘い文句だった。

「……うん――」
 ぼくは、うなずいた。
 なんとなく――流れでそうなるのはわかっていた。
 食欲を満たしたら、次は性欲――そういうことなんだろう。
 ここらへんなら湯島かな、と、はずむ声でつぶやいた早川くんは、
「歩くと暑いから、電車で行こうぜ」
 地下鉄の駅の入り口に向かって歩き出した。

 ついて行こうとしたとき、
「……さとり――?」
 後ろから呼びかけられ、ぼくは振り返った。
「――やっぱり――」
 聞き覚えのある懐かしい声。
「――里李だろ?」

 その声の主を見た瞬間、ぼくのなかで、記憶の扉が開いた。




 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。 勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

処理中です...