22 / 36
22:最高の日
しおりを挟む
「おまえのことが――――大好きだ」
――その瞬間、ぼくの世界は大きく変わった。
まるでモノクロの映画に色がついたように、すべてが輝き――医務室の天井の蛍光灯までもが、雲の切れ間から差し込む天使の梯子のように見えた。
「……おまえは?」
早川くんはぼくの顔を覗き込む少し不安そうな声で聞く。
「おれのこと――どう思ってる……?」
そのとき、コンコン、とノックの音がし――大会のロゴ入りのポロシャツを着たスタッフの男性が、部屋に入ってきた。
急いで体を離したぼくと早川くんを交互に見て、
「あの――そろそろ表彰式が始まるので――」
と言う。
「あ――はい」
立ち上がった早川くんは、
「終わったら一緒に帰ろう。ロビーで待ってて」
と声をかけてくる。
「え――でも、これからいろいろ予定があるんじゃ――」
「いいから。また倒れたら大変だろ? 心配だから、家まで送ってくよ」
「……う……うん――」
わかった、とうなずいたぼくに、軽く微笑んでみせ、スタッフが持っていた赤いスポーツタオルを肩にかけ、医務室を出て行った。
「あの――大丈夫ですか? もしよかったら、しばらくここで休んでいってもらっていいですよ」
スタッフは、ぼくを気遣う。
「いえ――もう、大丈夫です」
ベッドから下り、靴を履いたぼくに、
「……でもびっくりしましたよ、あのときは――」
スタッフが言う。
「……え?」
「お姫様抱っこ――っていうのかな? 早川選手が血相を変えてスタンドに走っていって、倒れてるあなたを抱き上げた瞬間、キャーッ、っていう、悲鳴みたいな歓声が飛び交ったんですけど……なんなんですかね? あれ――」
「………」
赤くなったぼくは、スタッフの顔をまともに見られないまま、医務室を出た。
なんか――いろんなことがいっぺんに起きて、気持ちの整理がつかない。
ガヤガヤするロビーのソファーで、表彰式が終わるのを待っていたぼくは、自販機で飲み物を買って飲んだ。半分くらい飲んだところで、青いジャージ上下に白いウィンドブレーカーをはおった早川くんが姿を現した。
ぼくが抱えているペットボトルに目をやり、額にさっと触れ、
「……熱は――ないな?」
と確認する。
その大胆さにドキドキしたぼくは、「う、うん……大丈夫」とうなずく。
「あ――あのっ……早川選手っ――……」
4、5人固まっていた、女子高生の集団が早川くんのところに来て、
「MVP――おめでとうございますっ……」
プレゼントの紙袋を渡す。
「――ありがとう」
早川くんは、慣れた様子で受け取ってから、
「さ――帰るぞ」
スッと手を差し伸べてくる。
駅までの道でも、早川くんはファンに声をかけられたり、プレゼントをもらったり、写真を撮られたりした。なかには、男の子もいて――同性にとっても憧れの存在なのかな、とぼくは誇らしくなった。
「……どうした?」
「え?」
「なんか――すげぇ、ニコニコしてるから」
「あ――うん。……なんだか、とても嬉しくて――」
今日はいままで生きてきたなかでいちばん幸せな日かもしれない。
ぼくは思っていた。
そのあと、ぼくらを待ち受けていた驚愕の出来事など、まるで知る由もなく――――。
――その瞬間、ぼくの世界は大きく変わった。
まるでモノクロの映画に色がついたように、すべてが輝き――医務室の天井の蛍光灯までもが、雲の切れ間から差し込む天使の梯子のように見えた。
「……おまえは?」
早川くんはぼくの顔を覗き込む少し不安そうな声で聞く。
「おれのこと――どう思ってる……?」
そのとき、コンコン、とノックの音がし――大会のロゴ入りのポロシャツを着たスタッフの男性が、部屋に入ってきた。
急いで体を離したぼくと早川くんを交互に見て、
「あの――そろそろ表彰式が始まるので――」
と言う。
「あ――はい」
立ち上がった早川くんは、
「終わったら一緒に帰ろう。ロビーで待ってて」
と声をかけてくる。
「え――でも、これからいろいろ予定があるんじゃ――」
「いいから。また倒れたら大変だろ? 心配だから、家まで送ってくよ」
「……う……うん――」
わかった、とうなずいたぼくに、軽く微笑んでみせ、スタッフが持っていた赤いスポーツタオルを肩にかけ、医務室を出て行った。
「あの――大丈夫ですか? もしよかったら、しばらくここで休んでいってもらっていいですよ」
スタッフは、ぼくを気遣う。
「いえ――もう、大丈夫です」
ベッドから下り、靴を履いたぼくに、
「……でもびっくりしましたよ、あのときは――」
スタッフが言う。
「……え?」
「お姫様抱っこ――っていうのかな? 早川選手が血相を変えてスタンドに走っていって、倒れてるあなたを抱き上げた瞬間、キャーッ、っていう、悲鳴みたいな歓声が飛び交ったんですけど……なんなんですかね? あれ――」
「………」
赤くなったぼくは、スタッフの顔をまともに見られないまま、医務室を出た。
なんか――いろんなことがいっぺんに起きて、気持ちの整理がつかない。
ガヤガヤするロビーのソファーで、表彰式が終わるのを待っていたぼくは、自販機で飲み物を買って飲んだ。半分くらい飲んだところで、青いジャージ上下に白いウィンドブレーカーをはおった早川くんが姿を現した。
ぼくが抱えているペットボトルに目をやり、額にさっと触れ、
「……熱は――ないな?」
と確認する。
その大胆さにドキドキしたぼくは、「う、うん……大丈夫」とうなずく。
「あ――あのっ……早川選手っ――……」
4、5人固まっていた、女子高生の集団が早川くんのところに来て、
「MVP――おめでとうございますっ……」
プレゼントの紙袋を渡す。
「――ありがとう」
早川くんは、慣れた様子で受け取ってから、
「さ――帰るぞ」
スッと手を差し伸べてくる。
駅までの道でも、早川くんはファンに声をかけられたり、プレゼントをもらったり、写真を撮られたりした。なかには、男の子もいて――同性にとっても憧れの存在なのかな、とぼくは誇らしくなった。
「……どうした?」
「え?」
「なんか――すげぇ、ニコニコしてるから」
「あ――うん。……なんだか、とても嬉しくて――」
今日はいままで生きてきたなかでいちばん幸せな日かもしれない。
ぼくは思っていた。
そのあと、ぼくらを待ち受けていた驚愕の出来事など、まるで知る由もなく――――。
0
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる