セフレに恋をした

東雲ゆめ

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22:最高の日

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「おまえのことが――――大好きだ」

 

 ――その瞬間、ぼくの世界は大きく変わった。

 まるでモノクロの映画に色がついたように、すべてが輝き――医務室の天井の蛍光灯までもが、雲の切れ間から差し込む天使の梯子のように見えた。

「……おまえは?」
 早川くんはぼくの顔を覗き込む少し不安そうな声で聞く。

「おれのこと――どう思ってる……?」

 そのとき、コンコン、とノックの音がし――大会のロゴ入りのポロシャツを着たスタッフの男性が、部屋に入ってきた。
 急いで体を離したぼくと早川くんを交互に見て、
「あの――そろそろ表彰式が始まるので――」
 と言う。

「あ――はい」
 立ち上がった早川くんは、
「終わったら一緒に帰ろう。ロビーで待ってて」
 と声をかけてくる。
「え――でも、これからいろいろ予定があるんじゃ――」
「いいから。また倒れたら大変だろ? 心配だから、家まで送ってくよ」
「……う……うん――」
 わかった、とうなずいたぼくに、軽く微笑んでみせ、スタッフが持っていた赤いスポーツタオルを肩にかけ、医務室を出て行った。

「あの――大丈夫ですか? もしよかったら、しばらくここで休んでいってもらっていいですよ」
 スタッフは、ぼくを気遣う。
「いえ――もう、大丈夫です」
 ベッドから下り、靴を履いたぼくに、
「……でもびっくりしましたよ、あのときは――」
 スタッフが言う。
「……え?」 
「お姫様抱っこ――っていうのかな? 早川選手が血相を変えてスタンドに走っていって、倒れてるあなたを抱き上げた瞬間、キャーッ、っていう、悲鳴みたいな歓声が飛び交ったんですけど……なんなんですかね? あれ――」

「………」
 赤くなったぼくは、スタッフの顔をまともに見られないまま、医務室を出た。
 
 なんか――いろんなことがいっぺんに起きて、気持ちの整理がつかない。

 ガヤガヤするロビーのソファーで、表彰式が終わるのを待っていたぼくは、自販機で飲み物を買って飲んだ。半分くらい飲んだところで、青いジャージ上下に白いウィンドブレーカーをはおった早川くんが姿を現した。

 ぼくが抱えているペットボトルに目をやり、額にさっと触れ、
「……熱は――ないな?」
 と確認する。
 その大胆さにドキドキしたぼくは、「う、うん……大丈夫」とうなずく。

「あ――あのっ……早川選手っ――……」
 4、5人固まっていた、女子高生の集団が早川くんのところに来て、
「MVP――おめでとうございますっ……」
 プレゼントの紙袋を渡す。
「――ありがとう」
 早川くんは、慣れた様子で受け取ってから、
「さ――帰るぞ」
 スッと手を差し伸べてくる。


 駅までの道でも、早川くんはファンに声をかけられたり、プレゼントをもらったり、写真を撮られたりした。なかには、男の子もいて――同性にとっても憧れの存在なのかな、とぼくは誇らしくなった。

「……どうした?」
「え?」
「なんか――すげぇ、ニコニコしてるから」
「あ――うん。……なんだか、とても嬉しくて――」

 今日はいままで生きてきたなかでいちばん幸せな日かもしれない。
 ぼくは思っていた。

 そのあと、ぼくらを待ち受けていた驚愕の出来事など、まるで知るよしもなく――――。







 
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