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24:変化のとき
しおりを挟む――お正月。
お父さんとお母さんは予定通り、箱根に旅行に行った。
ぼくは、家で留守番をした。
部屋にこもってひたすら、鏑木先生にもらった数学のテキストを解いた。
それが全部終わったら、2学期のテストで間違えたところを全部解き直して、弱点補強ノートを作った。
中学受験をするとき、鏑木先生に教えてもらったやり方だ。
間違えたところをまとめて解き直せば、絶対に忘れない。
苦手なことも、根気よく何度もやり直すことが大切だよ――。
そうしながら、ぼくはずっと考えていた。
ぼくと早川くんにとって、今いちばん大切なことは何なのか。
――1月4日の朝。
プラネタリウムに行ったとき、デートした公園で待ち合わせた。
あのときとちがって、冷たい北風に枯葉が舞う園内には、人影もまばらだった。
ワイヤレスイヤホンで音楽を聴きながら走るランナーが行き交う冬の散歩道。
古い木のベンチに座り、会えなかった時間を埋めるように手をつなぎながら、話をする。
ぼくらの考えは、ほとんど一致していた。
結論を出したぼくは、お母さんに電話をかけた。
お母さんは明るい声で「待ってるわ」と言ってくれた。
「――いらっしゃい」
ソファーの前のガラステーブルに用意されていた、ぼくの大好物の水羊羹。
マリメッコの赤い花柄のエプロン姿のお母さんが、キッチンで温かい緑茶を入れてくれる。
お父さんは縁側に立ち、庭を見ている。
「――あなた」
お盆に載せたお茶を運んできたお母さんが、お父さんに声をかける。
「そろそろ座って」
振り返ったお父さんは、リビングの入り口に立ちつくしていた早川くんを見た。
グレーのカウチンセーターに紺のチノパンツの――いつもより少し真面目な格好の早川くんは、お父さんと目が合った瞬間、その場にひざまずき、
「――すみませんでした」
床に両手を突き、深々と頭を下げた。
「……おれが里李さんにこれまでしてきたこと――全部……すみませんでした」
土下座する早川くんをじっと見ていたお父さんは、
「――顔を上げなさい」
と言った。
早川くんに近づき、
「早川くん――といったか?」
「――はい」
「君は――――ゲイなのか?」
「え……?」
目を見開く早川くんに、
「答えなさい。君は、男が好きなのか?」
単刀直入に聞く。
「……いいえ――」
早川くんは首を振る。
「ちがいます」
「じゃあなんで、里李に手を出した? 里李は男だ」
「……それは――」
逡巡した早川くんは、
「……里李――だったから――」
と答えた。
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