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第五幕
【書籍発売御礼】小話(side:レオン)
しおりを挟む(※学園に通うようになったシルヴィアがレオンを恐れて逃げ出したら?)
「シルヴィアが居なくなった?」
思いも寄らなかった報告に、書き込んでいた書類の手を止め、ゆっくりと顔を上げる。
年若い部下は私の詰問を恐れているのか、顔を青褪めさせていた。
「はい。その、シルヴィア様は昨夜の内に屋敷から抜け出したようで……」
「誘拐の可能性は?」
「部屋は荒らされておらず、犯行声明が届いていない点から見て、今のところシルヴィア様の意志で屋敷から抜け出した可能性が高いかと」
「そうか」
少々早口ながらも報告を終えた部下に「『次期王妃』であるシルヴィアが居なくなったのだから国境と要所を検問してしらみつぶしに捜索していけ」と命令して、退出を言い渡す。
執務室で一人になった私はシルヴィアのことを考えていた。
(今頃シルヴィアはどうしているのだろう?)
腹は空かせていないだろうか、怪我はしていないだろうか、人に騙されて酷い目にあっていないだろうか、とさまざまなことを想像する。
見目麗しいシルヴィアはその容姿からして、ただ街を歩いているだけでも目立つだろう。だというのに屋敷を出てすぐに見つかっていないのは、それ程までに入念に逃げ出す準備をしたか、あるいはもう悪い奴らに捕まっているか。
どちらの可能性も含めて捜索する必要がある。
(それにしてもシルヴィアが居なくなるとは……)
やはり原因は婚約者であるアルベルト殿下との関係が良くない方向に進んでいったことだろうか。
アルベルト殿下はシルヴィアを好いている。それは公然の事実だ。しかし、彼女はその想いを歓迎していないように見えた。
婚約者であるはずなのに一向に縮まらない二人の距離。殿下はそのことに焦燥の念を抱いたのか、最近では頻繁にシルヴィアを呼び出しては、自分の側に置くようになり、彼女の行動を縛り付けていた。
(……シルヴィアは殿下のことを重荷に感じていたのではないか?)
それともウィリアムやミハエルか。あの二人もシルヴィアを情欲に孕んだ目でシルヴィアを見ていたことを私は知っている。
彼女もその想いに気付いていたのだろう。
屋敷に戻るとシルヴィアは部屋に鍵を掛けて一人で籠るようになっていった。
更に学園に居る間はヴァイオレット公爵家の若造と最近貴族に成り上がった小娘に追いかけ回される始末。
彼女の周りにはいつも花の蜜を吸い舐めようとする小虫のような存在が纏わりついていた。
そのことが今回の出奔の原因になってしまったのではないか。
(ああ、可哀想に。そのようにシルヴィアが思い詰めているだなんて)
こんなことになるくらいならば私がシルヴィアの傍を離れずに守ってあげるべきだった。
『アルベルト殿下の婚約者』になったシルヴィアは年々私を遠ざけるようになった。私も彼女の心を汲んで、離れて見守っていたが、そんなことでは駄目だったのだ。
「可哀想なシルヴィア。必ず私が助けてあげるからね」
きっと今頃、シルヴィアによこしまな想いを抱いている連中も動き始めた頃だろう。
ならば、それよりも早く私が見つけて彼女を『保護』してあげなければならないという使命感が身の内に湧き上がる。
(大丈夫。今度は決して手を離さない)
自分の持つ権力を手法全て用いて、なんとしてでも一番先に私がシルヴィアを見つけ出してやろう。
だからシルヴィアは安心して私を待つと良い。
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