【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶

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第四章

58. 酷い言われよう

 ヴァレット中央にある教会の一室。
 そこで俺、バーンガルド、アーラヤ、騎士団員五人という面々が巨大なテーブルを介して座していた。

「それで一体なんの用でこの街に?」

 まず騎士の一人がバーンガルドに対して口を開く。
 それに対してバーンガルドは、

「アーラヤに会いに来たんだ」
 
 と返す。
 本来の目的はネハの淘汰だが、敵がどこに潜んでいるかわからない以上そのことについてこの場で口に出すのは愚策だ。
 何故アーラヤというヴァレットの権力者をもってしてもネハの淘汰に至ってないのか?
 その問いの答えの一つに、アーラヤの近くにネハに関わっている者がいる可能性があげられるだろう。

「聖女様に会いに?理由は?」

 激しく問い詰める様子の騎士の一人。
 そこには何か『焦り』のようなものが見て取れ、この騎士がネハの何かしらに関わっているのではないかと疑ってしまう。
 いや、その焦りは俺に向けられているような気もする。

「友に会うのにいちいち理由なんて必要か?」

 バーンガルドは少し訝しげに目を細めながら答える。
 騎士はそれに萎縮したように姿勢を整え、口を塞いだ。
 これ以上何か喋れば、バーンガルドに心の内を見透かされてしまうとでも思ったのだろうか。

「そうよ。ガルドはわざわざ遠くから会いに来てくれたの。貴方たちは出ていって」

 アーラヤは俺たちの意図がわかったのか、騎士団にそう指示した。
 だがそう簡単に引き下がる騎士団ではない。

「いえ、私たちは聖女様の護衛を任されているのです。もし聖女様に何かあったら…」

「あら?貴方たちはこのガルドだけでは護衛に心もとないと?だったらここでガルドと戦って証明して見せて頂戴?」

「う…それは……だったらこの者はどうなんですか?Aランク冒険者ではないようですし、正直言って信用に値しません」

 アーラヤの鋭い指摘に対して、なぜか俺に飛んできた火花。
 ああ、さては出会ったばかりなのにアーラヤと親しくしてた俺に嫉妬か何かしてるんだな?

「どうすれば信用するの?」

「そうですね…私と戦ってこの者が勝利したら、信用しましょう」

「わかったわ。ワタルさん、頑張って!」

 ・・・なぜそうなる。
 謎の話の流れに頭を痛くしつつ、バーンガルドの方を見る。
 するとバーンガルドは、右手でグッドポーズを作ってウインクしてきた。
 なんかムカついたのでとりあえず睨み返しておく。
 
「おい、待てよ。なんで俺がお前との戦いで勝ったら信用に値するになるんだ?」

「そうですね。先程聞きましたが貴方は聖女様の歌を聞ける唯一の方。紋章魔法アイデントスペルは耳に関するものだとのことでしたが…本当にそうなのでしょうか?」

「…というと?」

「私は貴方がアーラヤ様に呪いをかけた張本人だと疑っているということですよ」

「…っ!」

 俺は騎士の一人の指摘に息を呑む。
 そうか、その可能性があったか。

 呪いをかけた本人だから呪いの効果を受けない。

 確かに俺の紋章魔法アイデントスペルが正確にわからない以上、その可能性は払拭できないか。
 だから…

「だから俺と戦って俺の紋章魔法アイデントスペルの質を見抜こうってわけか」

「その通りです」

 俺と戦うための良い口実が思いついたと言わんばかりに鼻を鳴らす騎士。確かにこの理由だったら戦いを拒むと不自然だ。
 だが俺の紋章は死人の紋章コープスアイデント
 レベルという制限が取っ払われて蒼円がなく、そんな状態の紋章をこの場で展開したくはない。
 バーンガルドは俺が死人の紋章コープスアイデントであることを知ってるし、なんなら神々封殺杖剣エクスケイオンを使うことも知ってる。
 ここで信用を得るには、神々封殺杖剣エクスケイオンの魔法を公にするしかないか。
 勝負して勝っても紋章魔法アイデントスペルを使わないんじゃあ、意味がないからな…
 
「確かに気になるな。何故、死人の紋章コープスアイデントであるワタルが、いかにしてアーラヤの歌を聞くことができたのか」

「…おい」

 どうやらバーンガルドは俺を庇う気はないらしい。
 バーンガルドは俺の実力を知りたいようだし、戦闘の流れに持っていくのは当然か…
 自分で蒔いた種だ。
 ここは神々封殺杖剣エクスケイオンの魔法のことを打ち明けよう…

「確かに俺はアーラヤに耳に関する紋章魔法アイデントスペルを持ってるから呪いの効果が効かないと言った。だがその紋章魔法アイデントスペルを持っているのは俺ではなく、俺の保持してる魔道具だ。俺自身は死人の紋章コープスアイデントだから魔法を使えない」

 簡潔に、わかりやすく伝える。
 だが、その魔道具の正体がアルテナ五大古代秘宝の一つであるとは語らない。
 バーンガルドは正体を知っているため、納得している様子だったが、そこまでは打ち明けたくない。

「魔道具?だったらそれを見せてくれないか?」

 騎士団の一人が身を乗り出して尋ねてくる。
 その疑問に満ちた瞳には、『その魔道具を使えば自分もアーラヤ様の歌を聴けるのでは』という希望のようなものが宿っている気がした。
 確かに魔道具であれば、紋章魔法アイデントスペルと違って誰でも使える。
 死人の紋章コープスアイデントの話題を差し置いてまで興味を持つのも仕方ないことだろう。
 まあ、神々封殺杖剣エクスケイオンは認証しないと使えないから貸しても無駄だが。

「やめて。魔道具は持っていると知られただけで敵を作るもの。それを教えてくれただけでも信用に値すると言えるでしょう?そういえば…確かにワタルさんは私の歌を聞いていた時、紋章を展開していなかった」

「しかし…」

 アーラヤの言葉に、少しだけだが騎士たちは俺を認めてくれたようだ。
 しかし、最初に戦闘を提案した騎士だけは全く納得していない様子だった。

「まあワタルはどこか胡散臭いが信用に値するぞ。死人の紋章コープスアイデントだから魔法を使えないのも本当だ。私が実際に見て確認している」

 ここでバーンガルドが少し残念そうだが太鼓判を押してくれた。
 それに対し、「バーンガルド様がそう言うなら…」と一人を除いて完全に引き下がる騎士団。
 最初からバーンガルドがそう言ってくれればよかったのにと思ったが、どうやらバーンガルドは騎士と俺が戦う姿が見たかったようである。
 まあ、いずれにせよあの一人とは戦うことになりそうだが。

「納得できません。私はアーラヤ様も、バーンガルド様も信用しています。しかしこんなどこの馬の骨ともわからない冒険者の小僧をアーラヤ様とは関わらせたくありません」
 
 俺を指差し、軽蔑した目で見下ろす騎士。
 おいおい、俺そんな悪いことしたか?
 ここでバーンガルドが、

「それは、私に見る目がないと言っているのか?」

 と、どうしても俺を悪者にしたい騎士の一人に詰め寄る。
 それに対し騎士は少し怖気付いたように口ごもった。

「戦えばワタルのことを信用できるの?」

「はい」

 アーラヤの余計な一言に即答する騎士。
 本当に意味がわからないが、どうしても俺と戦いたいらしい。

「最初に行っておくが、俺はマジで死人の紋章コープスアイデントだから魔法を使わないぞ?それで俺が勝ったら本当に信用してくれるのか?魔法を使わなかったら呪いをかけれるかどうかなんてわからないだろうし…」

 この騎士は、俺がアーラヤに呪いをかけた張本人だと疑っている。
 だから戦闘を通して俺に魔法を使わせ、紋章魔法アイデントスペルの性質を知ろうとしている。
 しかし俺が死人の紋章コープスアイデントであることはバーンガルドが明言済み。
 なぜ、ここまでしてこの騎士は俺と戦いたいのか、全くもって謎だった。
 確かに俺が呪いをかけれる魔道具を保持しているとしたら話は別だが…それは戦闘ではわからないだろう。

「構いません。それでは外の広場に移動しましょう」

 こうして結局ヴァレット騎士団員の一人と戦うことになってしまった。
 全く、信用を勝ち取るというのはこんなにも面倒なことなのか。
 それとも俺が胡散臭すぎる見た目をしているとでもいうのか。
 いずれにせよ、俺の口からため息が漏れるのは仕方ないことだった。


 ヴァレット大教会に隣接された騎士駐屯所。そこに設置されている決闘場のような広場に俺たちは案内された。
 ここまで来るにあたり、アーラヤとバーンガルドは嫌でも目についたようで、教会の一室で話し合った八人以外の野次馬騎士たちも集まってしまっていた。
 そいつらの話に聞き耳を立ててみると、バーンガルドの戦闘が見られるんじゃないかなんて勘違いしてしまっている。
 戦うのは残念ながら無名の冒険者、俺。
 こんなに集まって見た所で無駄だぞ、と言いたい所だが言ったところで無駄だろう。

「貴方は魔法を使えないとのことでしたが、私は魔法を使わせて頂きます。悪しからず」

「構わない。始めようか」

 決闘場の中央。
 いちゃもん騎士と相対し、相手が剣を抜いたのを見て俺も剣を抜く。
 現れるは、相変わらず鏡のように美しい刀身を持つ古代秘宝。
 騎士という剣と共に生きる職業の人たちにとってその剣は美しすぎたのか、どよめきが巻き起こる。
 こういうのを防ぐために幻影変化輪シェイプシフターが欲しいものだが、あれはもう壊れてしまったのでこの世には存在しない。

「随分と美しい剣だな。どこで購入した?」

「俺に勝ったら教えてやってもいいぞ?」

 無駄に挑発してる理由は、この騎士に少しムカついてるから。
 どうせ俺に勝てると思ってるだろうし、その鼻を叩き折って考えを改めさせてやるぜ。

「言いましたね?……いざ、尋常に勝負!」

 ──瞬間、騎士は紋章を展開させた。
 輝く蒼円の数は七。意外とレベルは高いらしい。
 飛び交う野次馬は騎士を応援しているものばかりで、その声は騎士の勝利を信じてやまないものばかりである。
 すなわち、この騎士はこの騎士団の中でもかなり上位に位置する実力者だということだ。
 俺にとっては好都合。ここでコイツを完封すればこの騎士団で俺に楯突くものは少なくなる。

 騎士はまるでおもちゃの剣を振るうように、軽々と大剣を持ち上げる。
 騎士で大剣を持っている人物はとても珍しい。というのも片手剣よりも流派が少ないからだ。
 騎士とは美しい剣技も身につけるものであり、ただ振り回すだけのように見える大剣に美を見出さないと言う人も多い。
 だがこの騎士は流麗な形で軽々と大剣を持ち上げ、構えている。
 そこまで大剣を軽々しく扱えるのは、おそらく紋章魔法アイデントスペルによるものだろう。
 その性質は手に触れたものの重量を変化させるだとかその辺りか?

 そこまで考えていた所で、騎士は一瞬の内に縮地し俺との距離を詰めてきた。
 迫り来る大剣を難なく受け止めようとしたが──、

「うおっ!」

 思わず声が出る。
 騎士の大剣と俺の剣が接触した瞬間、優にトンは超えてるであろう衝撃が俺の腕全体に伝わったからだ。
 考えるまでもない、騎士は俺の剣と接触する直前に、大剣の重さを変化させたのだ。
 とはいえ、重すぎると騎士自体も持ち上げるのが困難になる。
 衝撃が来たのは一瞬のことで、騎士はすぐさま剣を軽量にし後方へ対比する。
 その重量変化のタイミング、剣の精度は何度も練習したことが窺えるほど見事なものであった。
 しかし、全くもって俺にとって致命傷となり得る要素はない。
 
「これをくらって平気とは…床を壊してしまうので加減しましたが、次は全力で行きます」

 俺が耐えたことに驚きつつも、ご丁寧に次も同じ手段で攻撃してくると予告してくれる騎士。
 俺がフォーミュラから習った剣は相手の動向を窺い、それに対処する剣。
 王都魔剣術学校で多少は攻撃的な剣技も学んだが、俺はフォーミュラ式の方が好きだ。
 とは言ってもその剣技を使うのはこういった公の場だけで、魔物と戦う時は美しさもクソもない相手を切り刻むだけの剣なのだが。
 今回の決闘は別に制約も何もないので、ただ瞬時に相手の首に剣を突き付けて勝負を決めるのでもいい。
 だが、せっかく学校に通って剣技を学んだのだからこういった場所で試してみないとな。

 相手を待ちその場から動かない俺を見て、隙を見つけたように再び縮地する騎士。
 神光支配ハロドミニオを目へと集中させるでもなくその動きは見えたが、慢心は良くないので一応神光支配ハロドミニオを目へ纏わせて動体視力を底上げする。

 騎士が大剣を振り下げ、重量を変化させる瞬間を見計らい、俺は剣で受け止めると見せかけて、地面へと受け流した。
 騎士の目では追いつけないほどの速さで身体をずらしたことで、騎士は一瞬の内に俺という重量を預ける対象がいなくなったと感じたはずだ。
 つまり、少なからず体勢を崩してしまうことは明確で、その体勢を立て直すために大剣を軽量化させるはず。

 ──案の定。
 俺はその瞬間を見逃さず、軽くなった瞬間の大剣を薙いだ。
 吹き飛ぶ大剣。
 騎士の手から離れた瞬間に大剣は本来の重さを取り戻したようで、地面に重々しく転がる。

「勝負あり!」

 武器を無くした騎士の首元に剣を突き出し、動きを封じ込めたところで審判から声があがった。
 いい感じに実力を見せつけられたと自画自賛する。
 勝負が始まった瞬間に決めるのでも良かったが、それでは味気ないし本来の目的とは違う戦いになってしまう。
 確かに俺の実力は見せつけられるが、逆に得体の知れない人物として不安要素として捉えられてしまうかもしれない、というわけだ。
 はたして、今回のこの決闘は意味のあるものになっただろうか?

「くっ…認めましょう。貴方がバーンガルドさんの弟子として認められていたということを…」

 心底悔しそうに、だが本当に俺を認めた様子で手を差し出してきた騎士。
 俺はそれを握り返すと同時に、この騎士が今まで俺に見せてきた敵対心のようなものの正体を理解する。
 …一体どれだけ、バーンガルドは慕われてるというのだ。

「というわけで、俺とバーンガルドは別に師弟関係であるわけじゃない」

 再び教会の一室に会し、騎士に俺とバーンガルドの関係を説いてなんとか誤解を解く。
 どうやらここまで俺に突っかかってきた騎士は、どうしても俺とバーンガルドがつるんでることが気に食わなかったらしい。
 なんだか俺とサティスの関係に妬んだテトラのことを思い出してしまう。
 この世界では、師弟という関係は何か特別な意味を持つのだろうか。

「そうですか…しかし、本当にこの街を訪れた理由は観光なのですか?」

「ああそうだ。次はヴァレット楽団の演奏を聴きに行こうと思っている」

 騎士の質問に、バーンガルドはまるで用意していたと言わんばかりの答えを返す。
 もしその答えがネハ探りを悟られないためのものだとしても、芸術都市で奏でられる演奏に少し興味はあるので是非とも行ってみたいものだ。

「それはいいですね。でしたら私が案内しましょう。なにせ、あの楽団長と私は知り合いで──」

「もういいでしょう、リースト。コンサートホールにも私が案内する。友人水いらずで話をさせて頂戴?」

 鼻高々に語ろうとする騎士…そういえば名前を聞いてなかったがリーストというらしい、の鼻をへし折り俺たちがここを訪れた真意を汲み取り話を運んでくれるアーラヤ。
 ネハに関して最も信用できるのはアーラヤだ。
 正直ここにいる騎士五人は全く信用できない。
 リーストはある意味信用できるかもしれないが、それでも不安要素は取り除きたい。
 
「しかし──」

「しかしではないでしょう。ワタルさんが勝てばワタルさんを信用すると明言したのは貴方。あなたはその約束すら守れない人間なの?騎士として、守るという行為の大切さを知らないわけではないでしょう?」

 案の定反論しようとするリーストの言葉を一刀両断するアーラヤ。
 その鬼気迫る勢いで、こちらまで少し気圧されてしまう。

「…わかりました。では、失礼します」

 リーストがこの騎士五人組の中では一番偉かったのか、リーストがしょぼくれたことにより、他の四人も何の意義も唱えることなく退室していった。
 暫く時間が経つのを待ち、部屋には静寂が訪れる。

「アーラヤ。単刀直入に言う。この街でネハという薬物が蔓延しているというのは本当か?」

 俺が周囲の索敵を完了させるよりも早く、バーンガルドが口を開く。
 それはすなわち、もうこの近くに俺たちの会話を聞ける者が確実にいなくなったことを意味している。
 バーンガルドの索敵能力が、神光支配ハロドミニオを使った俺よりも高いことはゴブリンの巣で判明している。

「…やっぱりそのことで…本当よ」

 どうやらアーラヤはバーンガルドがわざわざこの街を訪れた理由に勘づいていたらしい。
 本当、と呟くアーラヤの言葉は重くるしさを纏っていたが、バーンガルドを見つめる目は希望に輝いていた。

「いつからだ?私が以前訪れた五年前にはそんな話聞かなかったが」

「ネハの話は六…いや、七年以上も前からあったの。その時は全く脅威でも何でもなかった。むしろ宝石のように、手に入れるのが困難な良薬だと思われていたの。しかし今では…」

「今では?」

「市井の人…地位の弱い人々が依存し、この国を腐らせる毒へとなってしまった。きっと大規模な生産場か何かができて供給が安定してしまったのね…」

「なるほど。ではネハが出回り始めたのは本当に最近の出来事なんだな?」

「うん。私だってできる限りのことはした。売人の情報を集め、売人がどこでネハを入手しているか突き止めようとしたけど…本当に警戒心が強い奴らで、騎士団が近づこうものなら一向に姿を見せないから本当に途方に暮れていて…冒険者ギルドに依頼を出そうとしたけどそれも上手くいかなくて…でも、ガルドが手伝ってくれるなら…!」

 アーラヤは喋るうちに段々と涙ぐんできている。
 本当に、泣きたくなるほどに悩まされてきたのだろう。
 それにしても冒険者ギルドはこういったことには関与しないのか。
 それとも何か関与できない理由があるのか?
 その疑問はとりあえず置いといて、俺は二人の会話に耳を傾け続ける。
 
「なるほど、売人を突き止めれば何とかなりそうだな。その情報をもう少し詳しく聞いてもいいか?」

「もちろんよ。ネハの売人は…主にヴァレット南西部の半スラム街に出現するらしいの。ネハ中毒者が入り浸っているから間違いないはず。だけど、どれだけ騎士団の人たちが張り込みをしても一向に現れなかった。おそらく騎士団に所属している人間のことは全員把握されている」

「なるほど、では冒険者ギルドに依頼を出しても上手くいかなかったというのは?」

 どうやらバーンガルドも同じ疑問を抱いていたらしい。

「それは…何故かヴァレットの冒険者ギルドはネハについては消極的なの。だから私はギルドマスターあたりがネハの流通に関与してると睨んでるんだけど…」

「ほう、じゃあ直接ギルドマスターに尋問してくるか」

 バーンガルドは顎に手を当て考える素振りを見せたかと思えば、そんな極端な結論を導き出した。
 しかしその考えは不確実すぎるので却下だろう。

「流石にそんなことはできないわ。ネハ以外のことだったら何度も冒険者ギルドに助けてもらってるし…それで全く無関係だったら軋轢が生じてしまうわ」

 アーラヤは至極真っ当な意見でバーンガルドの案を棄却する。
 しかしバーンガルドは先ほどの案は冗談のつもりで言っていたらしく、今度は改まって『本命』の案を提案してきた。

「だったら騎士団に所属していない、まるでネハ中毒者であるかのように死んだ顔をしている無名の人間をスラム街に送り込めば……売人に会えるかもしれないということだな?」

「そうだけど、売人を捕らえられるくらいの実力がないと…」

「いるじゃないか。ここに、無名の死んだ顔をしてる実力者の人間が」

 一斉にこちらを見てくる二人。
 アーラヤは確かに、というように目を見開き、バーンガルドは完璧な案だとでもいうように鼻を鳴らしている。
 全く、酷い言われようだぜ。
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