装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
205 / 650
本編

506 誰かの仕業

しおりを挟む

 研究用の魔物たちが飼育されている部屋に入ると、

「グルルルル!」

「ガルッ!」

「ゴォアッ!」

「シャーッ!」

 獅子、虎、熊、蛇など。
 獰猛で大きな魔物が、小さな魔物を取り囲んでいた。

「脱出会議?」

「いや、もう脱出してるじゃん」

 全ての檻から魔物たちは抜け出して自由のみである。
 そして、明らかに会議ではなく、捕食の場面だった。

「ぶひぶひ……っ」

 取り囲まれている小さな魔物には見覚えがある。
 調理実習室で飼われていた子オークのピーちゃんだった。

「あれは、ピーちゃん……」

「ピーちゃん? なんだし? 知り合い?」

「いや、食材」

 調理実習のために、料理研究クラブのマッドな料理を食べさせられ育てられていた存在。
 なんだか、そう考えると少し可哀想に思えてくる。

「食材なら、誰かがここの魔物たちに餌をあげてるってことだし?」

「……わからん」

 ドアの隙間から覗いて確認するが、中に人の存在は見られなかった。
 そもそも、餌をやるために一々檻から魔物を出すのかって話。

「七不思議って、勝手に檻の鍵が開いてしまうとかそんな感じだっけ?」

「ううん」

 俺の問いかけにジュノーは首を横に振る。

「聞いた話にはそんなのなかったし」

「だよな」

 夜な夜な魔物たちが抜け出すための集会を開く。
 それがジュノーから聞いた最後の七不思議だった。

 だが、今目の前にあるのはもろに脱出後。
 さすれば脱出会議ではなく。
 誰が子オークを食べるかの話し合いの様にも思えた。
 食わずに取り囲んでガルガルグルグル唸ってるしね。

「ひょっとして、魔物たちの脱出会議の成果がたった今実った結果かもしれないし?」

「どうだろ」

 だとしたら、とんでもないタイミングで宿直業務を受けてしまったな。
 ある程度の魔物なんて俺は平気だけど。
 もし、普通の宿直のおっさんがこの場に来ていたら危険な状況だっただろう。

 しかし、違和感がすごい。

 檻に入れられた魔物たちが外に出る手段は、檻や鍵を壊すしかない。
 だが、錠前はすべて正規の手段で開けられているようだった。
 そこから結びつく答えは──、

「ねえ、ピーちゃんそろそろ食われそうだし?」

「え?」

「今、お尻と両足をコバルトライオン、あとは他で分けろって話がまとまったし」

「あ、会話聞こえてたんだ?」

 俺が何も言わなくても勝手に説明してくれるとは、さすがサモンモンス達の通訳係である。
 魔物言語のプロフェッショナルだ。

「トウジ、餌だったとしてもなんか可哀想だし」

「わかってるよ、助ける」

 ピーちゃんはそもそもここじゃなくて調理実習室の檻にいた。
 どっちにしろ食べられてしまう運命なのだけど、今ではない。

 ピーちゃんが魔物に食われてしまえば、宿直担当の俺の管理責任問題を問われる。
 だから、ここにいる魔物は全部檻の中に戻し、ピーちゃんも元の場所に返すのだ。

「しかし、気になるなあ……ピーちゃんがなんでここに……」

 開いている鍵よりも、さらに謎が深い部分である。
 ピーちゃんが調理実習室の檻の中にいたのは、夕方頃に確認済みだった。

「七不思議、一つ追加? 八不思議になるし?」

「いや、多分面白半分でここに連れてきた奴がいるだろ」

 敵意を向けたら襲ってくる精霊。
 トラップ型や、走って踊るだけの悪魔。
 俺が実際に目にした七不思議はどれも噂通りの代物だった。
 そんな状況で急に七不思議の連中がアドリブを効かせる訳がない。

 故に、開けられた鍵とピーちゃんから結びつくのは、誰かのいたずら。
 過去にライデンをいじめていたクソガキもこの学院の生徒である。
 面白半分のストレス解消でおいたが過ぎるアホは必ずいるだろうよ。
 俺の世界にも、そうやって小動物を殺す糞ガキがごまんといたんだから。

「とにかく、この状況をなんとかしよう」

 胸糞悪いガキも探さなきゃいけなくなったが、それは魔物を全部檻に戻してからである。
 まったく、とっ捕まえたらロイ様かキングさんを呼んで折檻だな、折檻。

「ったく……なんで俺がいる時に──」

 悪態をついている最中だった。
 ──ドン!
 と、背中に強い衝撃を感じる。

「うおっ!?」

「わわっ!?」

 思いっきり蹴られた様な感覚とともに、俺とジュノーは部屋の中へと強制的に押し込まれた。
 体が浮いた状態ですぐに後ろを振り向く。
 黒い影が、廊下の奥に立っていて杖を俺に向けているのが見えた。
 ライトで照らすと、フードを深く被りそのまま窓の外へ飛び出していく。

「あいつか! この犯人! くそっ!」

 暗がりで顔を確認することはできなかったのが悔やまれる。
 つーか、さっきの攻撃は魔法だよな?
 だとしたら、いたずらどころの騒ぎではない。
 ガチで俺を殺しにかかってきている節がある。
 これはすぐに追いかけないと!

「トウジ! 魔物達がこっちに気づいた! 襲ってくるし!」

「マジか!」

 正面を見ると、ピーちゃんを食べようとした魔物達が俺たちの方を向いていた。
 どうやら、人である俺に対してかなりの殺意を持っている様である。
 あいつを追いかけるのは、先にこの場をなんとかしてからか……ああもう。

「ジュノー! ここは俺がなんとかするからあいつ追いかけれるか!?」

「うん! 任せるし!」

「外に水島がいるはずだから、もし近くにいたら手伝ってもらえ!」

 エコーロケーションは、索敵にかなり有効だからな。

「わかった!」

「頼んだ!」

 飛んでいくジュノーを見送った後、俺は魔物達に向き直る。

「グルルルル!」

「ガルッ!」

「ゴォアッ!」

「シャーッ!」

 たくさんいる魔物達の中で、特に強そうな四体の魔物が俺を威嚇する。
 獅子、虎、熊、蛇。
 確か、コバルトライオン、ウィンドタイガー、ブラッドベアー、ツインコブラだっけな。
 研究用とされる、それなりに貴重な上位種の魔物である。

 上位種ということで、それなりに強い魔物なのだが……。
 ロイ様には敵わないだろう。

「ロイ様」

 水島と自宅にいるポチを残し、残りの一枠を入れ替える。

「何用か……とは聞かずともわかるな、さっさとこの場を制して真なる敵を追うぞ、盟主よ」

「うん、まとめて叩きのめして2度と檻から出たくない様にしてやれ」

「承知。集え王室諸君、格の違いを見せつけてやろう──」
しおりを挟む
感想 9,839

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。