装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

505 宿直と学院七不思議・その8 鍵が開いている

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【サモンカード:インプ】名前:ギロチンミラー
等級:レア
特殊能力:INT+3



 七不思議の三つを冠していた醜い悪魔の種類はインプ。
 小さな悪魔で、憑依先がなければ何もできないらしい。
 その憑依先も、生身ではなく物体しか無理でしょうもない。
 逃げ出そうとしていたが、回り込んであっさり処理する。
 ちなみに模型像にいた悪魔は付近には見つからなかった。

「よし、とりあえずジュノー名前つけれてよかったな」

「……そうだけど」

 なんだか腑に落ちない表情をしているジュノーである。

「なんかこいつ、召喚されない気がするし」

「うん、一生されないぞ」

 等級も低いし、特殊能力も良くない。
 悪魔なんか召喚してると、変な目で見られる。
 うん、一生召喚されない組だな。

「もー! 一生召喚されないんなら意味ないし!」

「でも約束守ったからな、これで」

「そういう約束の守り方はダメだし! 反則!」

 誠意を見せるとかそんな話じゃないじゃん。
 名前がつけたいならば争奪戦を勝ち上がれ。
 おっと、俺は稀に独断と偏見で付けるけどな?
 ジュノーに名前つけさせてなかったら、おそらくこのインプは「いいいい」とかそんな名前になってたはず。

「それは置いといて、水島がローディを遠くに連れてってる間に巡回終わらせるぞ」

「うん!」

 強く頭を打っていたみたいだが、ヌルヌルが緩衝材にはなったはずだ。
 気を失っているこの状況を良いことに、そのまま学院の外に出しといてもらう。

 なんだか扱いが酷いって?
 いやいや、深夜の学院に忍び込む不審者。
 正義は俺にある。

 そもそも、学院の門の周りは警備もいるから安全だ。
 暴漢に襲われない場所に連れてくだけでも俺は優しい。

「で、次はどこ? もう最後は研究様に捕まえた魔物の管理施設だけだけど……」

「そこだし」

 そこだったか……。
 色々と危なげな雰囲気があるから、一等候補地だろうよ。

「どんなのだよ」

 なんとなく、勝手に鍵が開けられて魔物が解放されるとか。
 そんな危険な香りがするのだけど……。

「えっとね、最後の一つは魔物たちの集会っていうやつだし」

「魔物たちの集会?」

「うん、危なくないから大丈夫だし。危ないのは処刑台と合わせ鏡くらいだから」

「なるほどね」

 どうやら、檻に入れられた魔物たちが、施設を抜け出すために夜な夜な集会を開いているらしい。
 危険な香りがすると言ったけど、なんとも可愛いものだろうか。
 処刑台や合わせ鏡、そして変態に比べたら何倍も心温まる七不思議に思える。
 もはや俺の感覚が麻痺してるだけなのかもしれないけどね。

 ……麻痺してないですよね?
 俺は常人だよね?

「ってことは、そこだけ見たら巡回は終わりだな」

 その施設の施錠確認、魔物が抜け出していないか確認したら完了だ。
 なんとなく、面倒な予感がしたから最後に回していたのだが、他が面倒すぎたな。
 しかし、これを無事に終わらせれば金輪際面倒なものは出ない。
 平和が戻ってきて、あとは宿直の番が来たら水島一人にやらせて俺は日課をこなす。

 完璧なる布陣。
 頑張ろうか。

「トウジ、あたしが本当に脱出計画立ててるのか聞いてあげるし!」

「聞いてどうすんだよ。結局、脱出なんかできないだろ」

 街中に魔物が解き放たれるともなれば、事件だ。
 そうなれば駆除されずに捕獲されたとしても処分されるだろう。
 飼われている魔物は、施設で寿命を終えることしかできんのだ。

「ジュノー、逃すとか言われても絶対に無理だぞ?」

 結局、魔物を使った研究とかが行われているなら。
 他から新しい魔物が連れてこられるだけ。
 俺らがしゃしゃり出て良いところではないのだ。

 人も迂闊に森に入れば殺される。
 魔物も同じ様に人の街で殺される。

 うん、当たり前。
 それが普通。

「余計なことは考えんなよ?」

「わかってるし。でも、閉じ込められるのって寂しいよ……話だけでも聞いてあげたいし」

「……そうだな」

 閉じ込められるのは寂しい、か。
 ダンジョンコアらしい言葉である。

 ずっと一人でいて。
 下手をうってコアを閉じ込められていたジュノー。
 彼女は、その寂しさを一番わかっている。
 だからこそ、の優しさなのだろう。

「餌やりくらいなら良いぞ」

「やった! 餌付けして七不思議のミッションコンプリートだし!」

 これから宿直の日は、その場所はジュノーあたりに任せておくか。
 魔物たちのおしゃべり相手にでもなって、外での話を聞かせてあげたら良い。

「よし、ここだな」

 そんなことをジュノーと話しているうちに、件の場所へとたどり着いていた。
 てんやわんやした巡回もこれで終わりだと思うと達成感がこみ上げてくる。

 俺は鍵穴にマスターキーを差し込んで右に回した。
 ガチャリ……という解錠の音は聞こえてこなかった。
 それはつまり、鍵が開いてることを指し示す。

「なんだ、鍵が開いてんな……?」

「ってことは誰かいるし……?」

「いや、多分閉め忘れただけだと思う。戸締り確認ってプレートかけてるのにな……」

 傍迷惑なやつだと思いながら、ドアを開けた。
 すると。

「グルルルル……」

「ガルッ……」

「ゴォアッ!」

「ぶひっ!? ぶひぶひっ!!」

 檻から出た魔物たちが、小さなオークを取り囲んで襲いかかろうとしているところだった。
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