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本編
521 大空からの眺め
グウン──!
押しつぶされるかのような圧力が体に伝わり、床に縫い付けられる。
「にゃああああ?! な、なんやああああ!」
「床に吸いつけられるし! んむむむぅー!」
おそらく、一気に上昇かましたからだろう。
みんな耐えきれず床に這いつくばっていた。
「く、ぅ……」
俺はすっ転んだのだが、イグニールはなんとか堪えていた。
なんだかんだ、イグニールって運動神経あるっぽいもんな。
「……きゃっ!」
だが、結局は押し負けて俺の顔面にすっ転んで来た。
ゴッとイグニールの肘座俺の腹部にクリーンヒット。
「ぐはっ」
「ご、ごごご、ごめんトウジ! 大丈夫!?」
「だ、大丈夫……じゃないかもしれん」
HPが3割減って焦った。
今のイグニールって、俺並みの攻撃力持ってるからね……。
ネトゲみたいに、魔法職には攻撃力は乗らないとかそういう仕様はまったく存在せず。
実はイグニールって魔法スキルもえげつない威力に追加して、攻撃力もべらぼうなんだ。
「くっ、ま、まだまだ上昇してる! これは不味いわよ、トウジ!」
「ふがふがふが」
「ちゃんと喋りなさい!」
「ふがー」
何が不味いのって聞きたいんだけど。
イグニールがそのまま俺の上に抱き合うようにして覆いかぶさっていて喋れない。
今の俺は全神経をイグニール側に集中させている。
だから後ろから刺されても死なない気がした。
「ライデンくん! 失神してるみたいだから! なんとかしないと!」
「えっ!」
なんとかもぞもぞ顔を横に動かしてライデンの方を向くと。
イグニールの言う通り、白目を剥いて失神していた。
「……ぶくぶくぶく……」
「ライデン!?」
そうか、彼は一番レベルも下だし装備も整っていない。
この急な圧力に耐えきれなかったらしい。
「バカ、オスロー止めろ! 早くガルーダ止めろって!」
「……わ、私もこの早さは想定外だった……ちーん……」
オスローの方を見ると、彼女も失神したようだ。
ゴレオに支えられてはいるものの、白目を剥いて泡を吹いている。
せっかく美少女に生まれ変わったと言うのに……不憫だ。
まあ、俺の周りの女性ってだいたいが品がない奴らばっかりだからなあ。
泡吹いて気絶するくらいじゃ、気にもならんか。
「ゴレオ! レバーを下に下げてくれ!」
「……!」
コクリと頷いたゴレオがレバーを太い指でクイーっと下げていく。
すると、俺たちを押し付けていた力は少しずつ弱まっていった。
「お、おさまった……」
よし、ゴレオナイス!
すぐに体を起こして、ライデンの状態を確認する。
「しっかりしろライデン!」
「う、ぅぅ……」
よかった、息はある。
しかし、グループに入れてレベルを確認すればまだ24。
初めてあった時より1レベルだけ上がっていた。
自己鍛錬だけだと聞くから、上がらないのもさもありなんってところだろう。
こいつの装備製作とかレベル上げも今後の課題にして行こうと思った。
「オスローもしっかり」
「うぅ、すまない……想定していたよりも浮遊スピードが早かったようだ……」
ゴレオとイグニールに抱えられたオスローは、額を抑えてフラつきながらそう呟く。
「小型機じゃ、微弱な供給からしかできないから最高高度がどのくらいか確かめたかったのだ」
「なるほどね」
クッションを敷いても無意味になる可能性が高い。
ワシタカくんを持つ俺なら有事の際も問題ないと立会いに呼んだとのこと。
「さすがに危険過ぎるから、やる時は俺一人だけでやるよ……」
ゴレオ、ワシタカくんがいたらダメージカットが大分効く。
万が一のことがあっても耐えれるだけのVITもあるのだから。
「いや、初めての高高度。私は自分の目で、見てみたかったのだよ」
そう言いながら、操縦室の窓からオスローは地上を見下ろした。
「……これが、空からの景色か」
合わせて、俺たちも地上を見る。
「おお……ごっつええ景色やあ……」
「おおおお! すごいです! これが空ですか!」
俺やイグニールたちは、ワシタカくんに乗っての移動で空に見慣れている。
しかし、オスローやマイヤー、ライデンは初めての景色に感動しているようだった。
眼下に広がるのは、小さくなってしまったギリス首都。
南西には、港町と大海原。
北には色んなことがあったギリス中央山脈の山々。
「本当に、いい景色だな……」
俺も今までゆっくりと景色を見ている余裕はなかったから、ちょっと感動。
「なに言うてんトウジ。散々見慣れとるやろ?」
「あのねマイヤー、トウジって今まで空飛ぶ時、気絶してたから実は見たことないんだし!」
「ほんま? 高い所苦手なんやな?」
「まあな」
今までは寝てると自分を納得させていたが、もう自分を偽らない。
そう、俺は気絶していたんだ。
「でも、高い所が苦手じゃなくてだな……高い所からもし落ちたらって考えるのが怖いだけだぞ?」
「一緒やん。それを高所恐怖症って言うんやで」
「ぐ……」
確かに。
「それにしても、あの一瞬でこんなに高いところまで浮かぶって……すごいわね」
「そうだな」
イグニールの言葉に頷いておく。
目算だが、長距離飛行をするワシタカくんと同じ高度くらいにまで上昇していた。
なお、それでもまだまだ余力を残している。
ヒヒイロカネを使った浮遊結晶おそるべしだ……。
「これはミニサイズの試作機だからここまで飛んだが、本来予定している大きさのガルーダは、トウジの要望通り、快適な生活空間と客席に追加して、予備の部品に外側を武装や装甲で固める予定だから大きさは10倍、総重量でいうと30倍くらいになる」
「へえ、装甲はなんとなくわかるけど、武装ってどんな?」
「急な突風対策の武装、ワイバーン等の対空域魔物用の武装……色々だ」
色々かー。
なんとなくでっかいレーザーみたいなのは欲しいと思った。
大火力を出せるようになれば、俺の武器としてかなり有用……。
──ん? 武器?
ちょっと閃いてしまったんだけど。
飛空船の設計図が武器として認識された場合、どうなる?
職人技能の装備製作で武器として作れたりするのだろうか?
俺が作れる装備に、射出する武器として弓やクロスボウが存在する。
そんな感じのものを船に取り付けるというか。
設計に組み込むことによって壊れてもすぐに作れる可能性が浮上した。
設計図の武装部門をライデンが書き込むことによって。
強力な武器として認識されれば、これワンチャンいけるかもしれんぞ!
胸熱。
「武器積もう、ぜひ積もう、どでかい一撃必殺の主砲みたいなのがいい」
「む? よくわからん食いつき方だな……あまり武装に凝り過ぎると、積載量などの観点から限られてくるのだが?」
「ヒヒイロカネなら、今後も俺が量産するから気にせず作ってくれ。なんなら竜樹もまだまだいっぱいあるし」
「ふむ……素材と金に糸目をつけない、か。了解した。それを加味して製作に当たるとしよう」
いや、金に糸目をつけないとは一言も言ってないんだが……。
まあいい、金をかけることで素晴らしいものができるなら、今後を考えても正解だろう。
今後ずっと使っていくものだと思うし、一点ものなら最高最強のものを作るのがいいのだ。
「しかし、こうして飛んで見ると色々な課題が見えて来た」
空に飛ぶ夢の第一歩を叶えたオスローは、熱のこもった視線を眼下に向けながら言う。
「浮遊結晶の性能は申し分ない。次は二歩目だ。操縦桿の出力を見るに、まだまだ余力を残した上でのこの高度はなかなか良いデータが取れたと言える。さっそく、今日からこのデータを元に設計を見直そう」
「あ、なら設計にライデンも加えてくれない?」
「え? ぼ、僕ですか?」
唐突に話を振られたライデンは、おろおろとした様子を見せた。
「ぼ、僕はまだ簡単な魔導機器しか作れないですし、こ、こんな大掛かりなものなんてそんな……」
「いや、オスローが何をやってるのかとか見て、自分で真似して設計図を書いてみるだけでもいい」
「そ、そうですか……? でも落ちこぼれって言われたやつですよ?」
「まあ自信がないのはわかるけど、負けずに頑張れる努力の才能はあると思うよ」
その気持ちを、俺は汲み取ってあげたい。
もっとも、そうやって真似して武器を乗っけて見た設計図が欲しい。
さすがにそれは黙っておくけど。
「トウジさん……」
ライデンの視線が、最近熱こもりっぱなしだけど。
さすがに大丈夫だよな……?
俺、いくら美しい美少年だとしても男はNGだ。
「ってことでオスロー頼むわ」
「いいだろう」
さっさと話を切り替えると、オスローは頷いてくれた。
「トウジがそれだけ肩入れするのならば、私が面倒みて扱き使ってやろう」
「よ、よろしくお願いします!」
「まあ、お手柔らかにな?」
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