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本編
534 船旅・3
「そのくらいにしとけよクソガキ。女の子に手をあげるな、格好悪い」
顔で受けた理由は、俺からは手を出さないことの証明だ。
不良たちは俺を睨みつけながら叫ぶ。
「臨時の先公がしゃしゃり出て来るんじゃねーよ!」
「うーん、とりあえず先生に手をあげました、君たちおしまい」
「!?」
特に返答する訳でもなく、それだけ告げた。
不良たちはすぐに手を離して俺たちから距離を取る。
「くだらないことはやめて勉強しろって俺は何度も言ったはずだよな?」
「……」
「手酷い目にあってもまだこんなことをやってるって事は、反省がない証拠だ」
「な、なんだよ……」
さて、この不良たちは学院からお去いただこうか。
臨時とは言えど、俺は学院の先生である。
囲って暴力を振るう、俺はその状況を子供の喧嘩だとは思わない。
しっかりと学院側に陳情を送り、しっかりを処罰してもらおう。
「今回は退学になるんじゃないか?」
退学、という言葉で不良たちの目の色がやや変わるのがわかった。
すでにアーティファクト科を除籍処分を受け、別の科にいる。
その避難先となった学科も面倒だろうし、学院から去ってもらうのだ。
「くそっ! テメェにどんな権利があって!」
「権利はないけど、前に無期停学にしたのは俺からの頼みだぞ?」
「なっ!? テメェが!!」
「うん、舐めたガキにはとびきり重たい処分を下してくれってな」
ライデンたちにヘイトが向かないように俺が買っておく。
結果的に退学処分にならなかったら後が怠いからだ。
「それで退学の次に一番重たい無期停学にしてやったんだわ?」
「ちくしょう……!」
「次は退学にするからな? まったく、反省しときゃよかったのに」
「くそ! テメェのおかげで親から怒られたんだよ!」
「関係ない奴が俺たちのやってることに口出しすんじゃねー!」
「どうしてくれんだよ! 就職できなくなったら!」
「当たり散らすなよ。お前たちがいじめてきた奴ってライデンだけじゃないんだろ?」
「うるせー!」
「お前たちがうるさいっての……まったく、話を聞け。地味に、お前たちがいじめてきて学院を去ってった生徒もいると聞いてるんだが、そういう生徒のことはお前らはどうしてくれんだ?」
「そんなの俺たちには関係ねえよ!」
「ふーん、だったらお前らが退学になるのも、就職できなくなるのも……俺しーらない、とりあえず退学ね?」
ここで積極的に気持ちを「萎え」させに行く。
子供に対して一番有効なえげつない策。
それは、夢を目標を摘み取ること、諦めさせることだ。
正直言って、これが一番効く。
誰しも自立的に自分の目標を定めて生きているものは少ない。
親からの期待や愛情を受け育ち。
なんとなく親の決めた将来に流れて行く子供が多いのだ。
世間体的に問題ない子供になれば親は満足するんだから。
「……ど、どうやったら退学にならないで済む」
「そ、そうだよ、謝りゃいいのか?」
「チッ……」
少し冷静になり、不良たちは少し軟化した態度を見せ始める。
舌打ちしたりと不満そうな顔色はまだ残っているものの。
ようやく、謝るという姿勢を取り出したのだった。
「今までいじめて退学とかさせた奴ら全員に謝って、許してもらえたら俺も許そうかな」
「む、無理だろ! ふざけんな!」
「り、臨時教師の分際で、お、お前こそどうなるかわかってんのか!」
「うん、無理だよ。もう言い逃れできん。色々しでかして、その後先生を殴った」
もう、どうにもならんな。
俺が何も言わないでおくことは可能だけど。
言うに決まってんだろ。
反省して関わってこないのなら放置。
しかし、ライデンは身内。
うちに就職が決まっている生徒なんだ。
余計なストレスをかけさせてたまるもんですか。
「学生のうちはやらかすこともあるし、責任は親や学院が取って子供は反省するもんだが……」
取りきれる範囲には限界がある。
子供だからって何をやってもいい訳ではないし、許されることもない。
責任は自分でお取りいただきましょう、はい退学。
「少しでも後悔しているなら、オデッセイに行っている間は大人しくしとけ」
「……」
「もしかしたら俺の気が変わるかもしれないからな。報告するのは終わってからだし」
それを告げると、不良たちは舌打ちすることもなく、無言で踵を返して戻って行った。
全員が真っ青な表情になっている。
本気で大人を怒らせたらどうなるか、これで気付いただろう。
あと、俺は口ではまだ許しを与えるようなそぶりをしているが、これは嘘だ。
島にいる間の逆恨みが面倒臭いから、大人しくしてたら許すかもしれないという体裁を取る。
戻ったら退学に追い込むし、もし親が不服だと出てきたら、その時はさらに全力だ。
悪ガキを追い込む方法として萎えさせるのもそうだが、親が苦しむのが一番堪える。
ここまでするのは非常かもしれん。
だが、敵の芽は早い段階で摘んでおくの重要だから仕方ないね!
学院側に迷惑かけちゃいそうだけど。
クレームが来る時、俺は教師じゃない。
責任とって学院をやめました的な体制をとっておさらばしよう。
感想 9,840
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