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本編
533 船旅・2
しおりを挟む旅客船は、貿易船と違って船内に絨毯が敷いてあり、なんとも豪華な印象である。
そんな絨毯の上を歩き、ライデンのいる部屋まで進んでいると声が聞こえてきた。
「立ち去れ、いちいち絡んで来て面倒な奴らだな」
「ああ? 何だその言い草?」
なんとも物々しい表情の生徒連中がライデンたちを取り囲んでいる。
ライデンの後ろには、少し怖がる委員長と何食わぬ顔のエイミィ。
この3人、実は一緒にオデッセイを観光する一つのグループなのである。
相変わらずぼっちなライデンのために、俺も善処した結果だった。
だがしかし!
なぜこの3人なのか、という疑問に対して回答するならば……。
すでに固まったグループに入れるのもキツイだろうってことだ。
俺ならキツイ。
だから、とりあえずなんかあぶれてた連中を無理やり組ませてみたのだ。
よかったなライデン、ハーレムだぞ。
余った人でグループ組んで、ってかなり酷かもしれないけど。
一人で行動するのは学院の方針的にNGだった。
故に仕方がないと言うことにして、無理くり組ませたのである。
え、強要はだめだって?
知らん。ルールなんだからな。
大人になったら好きにしたらいい。
「言い草も何も、いきなり絡んできたのはお前らだろ」
影からこっそり見ていると、ライデンが気丈に言い返していた。
確かに、いきなり絡んだのはあいつらだろうな……。
ビビると思っていた不良たちは、落ち着いた正論を言われ逆に狼狽える。
「ラ、ライデンのくせに生意気言ってんじゃねーよ!」
「そうだそうだ!」
「テメェのせいで、俺たちがどんな目にあったと思ってんだ!」
「そうだそうだ!」
うーん、なんとも負け犬の遠吠え染みた奴らだろうか。
何事もにしっかり言葉を返す、これが重要なことだね。
「俺のせいで、お前たちがどんな目にって……」
ライデンは「はあ……」とため息を吐きながら言葉を続ける。
「そういうのを自業自得って言うんだ」
「テメェ!」
さすが、なかなかの煽り力である。
やっぱり因縁つけてくるやつらには正論っぽい疑問を打つけるのが良い。
なんでそんなことするの?
なんでわるいことするの?
ねえ、なんで? なんで?
これが一番効く。
そしてすごくイライラして相手から手を出し、御用だ。
「テメこの!」
「殴りたいなら殴ればいい。でも停学解けたばかりだろ?」
「ぐっ」
この一言によって、今にも殴りかかろうとしていた手を止める。
そう、こいつらは……。
あの時、オーガ事件を引き起こした不良どもは無期停学を終えたばかり。
退学や留年こそ免れてはいるが、アーティファクト科を除籍。
問題を起こすような生徒は最初からいなかった扱いになっていた。
研究者としての望みはもう薄く、有名どころには行けないだろう。
その鬱憤を晴らすために、ここにいるのだろうか。
「まあ、憂さ晴らしにだけ付き合えよライデン」
「断る」
「いいじゃねえか、俺とお前の仲だろ?」
「断る」
なんとしても連れ出したいような不良たち。
それに対して、断固拒否の姿勢を貫くライデン。
すげーな、俺だったらビビっちまうのに……。
実際、ライデンは鍛錬もそれなりに積んでいるので不良たちが束でかかってもかなわない。
不良たちも、そんなライデンによくもまあ……。
「チッ、だったらテメェはここに残っとけ、俺たちはそこの女二人を連れてくからよ!」
「ヘヘヘ、船の中で楽しもうぜ? とりま俺らの部屋来いよ」
「なっ!? ハ、ハハハ、ハレンチです!!」
この言葉に後ろでオドオドしていた委員長が顔を真っ青にした。
ふむ、委員長はそういう耐性がないってことだな。
ギャル子エイミィの方は……。
「え、ふつーにヤなんだけど? なんであんたらみたいなクズの相手しなきゃなんないの?」
……おおうっ!
思ったよりもど真ん中直球ストレートで言葉を返していた。
さらに、エイミィは髪をいじりながら続ける。
「つーか、今時不良系とかダッさ、そんなんに魅かれるわけないっつーの」
「おいこらテメェ、バカにしてんのか!」
「バカにしてるってゆーか、バカじゃん実際? ダサ過ぎてヤバい」
「……ぐぐぐ」
「実際あんたたちにどんな権限があってそんなこと言えるワケ?」
「くっ」
「言ってみなよ、ほら。聞いといてあげるから。なんでしょーもないことしてるんの?」
質問の嵐だ。
不良になんで不良やってるんですか?
なんて聞いたとて、答えが出てくるわけがない。
そもそも憧れとか。
そう言った部分で漫画のかっこいい不良は生まれてくる。
貫く漢の美学みたいなね?
それと引き換えこいつらは……。
ただストレスのはけ口にしてやがるんだ。
やることなすこと中途半端。
自業自得なのに、人のせいにして、今後も変わらないんだろうな。
「除籍されたアホなんかより、やっぱ将来性はライデンくんっしょ?」
「このアマァ!」
そろそろ本気で手を出しかねない気がしたので、止めに入る。
クイック俊足移動にて、手をあげた男の子の拳を顔で受けた。
「お、お前は──!?」
いきなり現れた俺に驚く不良諸君。
ちなみにダメージは……ゼロ。
ほんと、しょーもない。
「そのくらいにしとけよクソガキ。女の子に手をあげるな、格好悪い」
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