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本編
545 ダンジョンリゾート・9 黒の20
「よし、今回も赤で」
勝ち額800万、負け100万くらいまで来たところでそろそろルーレットを切り上げにかかる。
この後、一回だけストレートアップを狙って負けて、俺は他の台へ移ろうと思っていた。
「コレクト! 次どこだし!」
「クエ」
「13、14スプリットね! ベットは?」
「クエッ!」
「次は半分行ってもいいって? よーし!」
別卓へと移動した、コレクトとジュノーが猛威を振るっていることだし。
ここは任せておきましょうか。
コレクトの台は、コレクションピークがバカ勝ちしてるってことで賑わっていた。
「コレクションピークすげー!」
「誰だよ連れ込んだやつ! つーか、カジノ仕込んだやつ!」
「そう言うのわかるのか? どうなんだ?」
「いや、時たま負けてるから感覚でやってるんじゃね?」
「ふん、俺にはわかる。やつはわざと負けてカジノに還元してんのさ」
「くっそー、同じ場所にかけれねぇじゃんか!」
験担ぎとしてコレクトと一緒の場所にかけるギャンブラーもいた。
しかし、コレクトはそれをさせないために、あえて負けている。
さらにはベットを複数行って、どっちがどっちかわからない様にもしている。
その結果、カジノディーラーは何も言わない。
コレクト逆張りをし出して負けるやつも多い。
台にはいろんな人が詰め寄り、賭け、負ける。
すげぇな……。
状況を色々と見分けてルーレット台を支配していた。
「ねえ、トウジって赤好きなの?」
「うん」
赤にばっかりかけていると、イグニールが俺の顔を覗き込みながらそう言う。
至近距離のでのその問いかけに頷き返しておいた。
俺自身は目立つ色は好まないけど、人には求めるタイプかも。
まあ、赤はこの世界に来て初めて心から信頼できた証だな。
あとは金もそうだろう、金にまつわることで絶大な信頼だ。
誰、とは言わん。
けど、もうわかってるはず。
「そっか、なら私は今回黒にしよっかな」
「同じものにかけてたのに、珍しいね」
「黒、好きだし」
「へー」
「黒の方が強い証拠を見せてあげる」
「お手並み拝見だね」
俺は赤、そしてイグニールは黒の……なんと20へ。
それは俺の誕生日でもあった。
具体的な日にちは教えていないはずだけど、奇跡かな。
しかし、俺の誕生日とは縁起が悪いかも知れない。
だって、ここ10年。
30歳の誕生日まではひっそりとしていたもんだ。
ただただ歳を重ねていくだけの日である。
特別な意味なんてそこにはこもっちゃいないのだ。
「よし、ルーレットが回るわね、私は全掛けしようかしら」
「えっ、さすがにそれは……」
「いいの、ここに来るって私には見えてるから」
「そう?」
「来てくれるって、見えてるから」
なんとも強気なイグニールの発言。
なんだかんだ、彼女も巻き込まれ体質からの今まで生き残って来た強者。
いけるはずだ。
俺とポチは、自分たちで賭けた赤なんかそっちのけで。
回るルーレットと、転がる玉を見守った。
カラ、カラン。
その瞬間、どよめきが上がる。
「うおおおお! ストレートアップ当たっちまった!」
「あの美女誰だ! すっげー!」
「えっと36倍だっけ……? ってことは、ベットの量が……」
「お、おい……に、2億超えてんじゃね……?」
転がり入ったのが、なんと黒の20。
黒の20なのである。
数字賭けなので黒とか意味ないけど。
20の数字は黒なので、黒の20。
「すげぇ、マジで入ったんだけど」
「ほらね?」
俺は負けてしまったが、ベット額は少ないので痛手はない。
それに、イグニールが見事に36倍を引き当てた。
全掛けってことは、えっと……イグニールは俺と同じ額の勝ち分。
ってことは……うん、誰かが呟いていたが2億超えだ。
「やっべぇな、イグニール……2億以上だぞこれ……」
驚きを隠せない俺に、イグニールは微笑みながら言う。
「ふふ、黒って良いのよ。少なくとも、私の中では縁起物」
「縁起物ねえ……」
黒ってなんだかんだ言いイメージはない。
しかし、彼女の中ではそうなんだろうな。
俺の誕生日も、捨てたもんじゃないって思えた。
「ほら、ここは切り上げて次いきましょ?」
「あ、うん」
彼女に手を引かれ、ポチを連れてルーレット台を移る。
これだけ勝てば十分か。
そろそろ切り上げ時でもあるし、次は何を楽しもうか。
カジノ荒らしをする予定が、思ったよりも楽しんでる俺がいる。
一緒に楽しむ人がいるから、楽しいんだね。
「ぬー! コレクト! 先にストレートアップ決められた! やられたし!」
「クエッ」
「え、落ち着けって? でも悔しいし! なんか他にも悔しいし!」
「クエーッ」
「え? 一撃は本当に運だから、こっちは数をこなして総額で上回る?」
「クエ」
「よーし! イグニールの勝ち分以上に稼ぐし! やるし!」
コツコツこなして2億はさすがに無理だと思うけど。
荒らし方面は彼らに任せよう。
何かあれば、すぐに俺を呼んでくれたらいいのだ。
「そうだトウジ、マイヤーの様子を見ておかないと」
「そうだね」
一応ゴレオを彼女につけているが、羽目を外しすぎている可能性もある。
闘鶏の時からそうだが、彼女は賭け事に熱くなりがちなタイプだった。
勝ち、酒を飲みテンションを上げているか。
もしくは負けて、酒を飲む金すらなくなって泣きにくれているか。
果たしてどっちだ……!
「あ、あかんわ……最後の決めに全額ぶち込んで酒代もすってもーたあ……」
「……」
「うわーんゴレオー! 酒奢ってくれー! わーん!」
どうやら後者だった様だ。
酒を出すカウンターテーブルで涙を流しながらゴレオに酒を懇願しているマイヤーがいた。
「……なんか思った通りね」
「う、うん」
どんまいマイヤー。
でも、それでこそマイヤーかもしれんね。
商会関係に関してはそつなくやってくれている。
しかし、プライベートに関してはこう。
それが、マイヤーって女の子なのだ。
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酒に手を出し始めてから、なんとなく彼女の運気が落ちている気がした。
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