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本編
567 沖合でのゆったり
一先ず、戦いが終わったことを確認したカリプソたちはこの場を去った。
「イグニールたちも、オデッセイ島に戻ってよかったのに……」
依然としてワルプの上に座りながら、小さな小さなイグニールたちに言う。
イグニール、マイヤー、ジュノーたちは、律儀にここに残ってくれていた。
こんな大海原、そこまで楽しいものじゃない。
俺は誰もいなかったら、このままワルプと全裸日向ぼっこする予定だった。
海の凶悪な魔物?
ここ辺に、もうそんな魚とかいません。
他に避難するか、移り住んだだろうね。
ぼやーっとそう言うことを考える俺に、イグニールが言う。
「良いわよ、私たちは昨日散々リゾートを楽しんだんだから」
「別に時間いっぱいまで遊んでて良いぞ」
エルカリノ倒して、極彩マンボウゲット。
うん、やることほぼ終わっていた。
あとは帰宅して、デプリに向かうという一大イベントが待っている。
その前に、少しでも楽しんでおかなくてはいけないのだ。
一応万全を期して向かうのだが、何があるかわからないからである。
シーモンクの話だと、過去の勇者はポセイドンをボコった。
今の勇者たちがどのくらい強いか知らんけど。
そのくらいのポテンシャルは秘めていると考えるべきだろう。
「一人にしたらとんでもない目に合いそうだから一緒にいる」
「なるほど……ありがとうイグニール」
信用されてないんスかね、それって。
まあいいです。
確かにイグニールの言う通りだしな。
「つーか、でかくなったトウジってなんか見てておもろいわ」
「マイヤー……この体は色々不便なんだぞ……」
「そうなん?」
インベントリからものを出すと、俺のサイズ感に合わせられる。
だから、中にある調理器具とか、ポチが使えません。
カナトコで装備の見た目を写しているものだったら別に良い。
だが、魔導機器に関してはどうにもならん訳よ。
「でもまあ、生活する話になったら確かに不便やけど」
俺の話を聞いたマイヤーは気楽そうに言葉を続ける。
「1日限定やったら楽しまな損やで?」
「そうだね、確かにその通りだ」
フォローしてくれている様で、ありがたかった。
「しかも、ジュノーになった気持ちになるやんこれ」
「えっ、あたしがどうしたしー?」
あれ、ジュノー見ないなと思っていたら、すぐ近くから声が聞こえる。
「ジュノー、なんてところにいるのよ……」
「ん? 右耳! トウジの右耳ダンジョンみたいだし!」
「うわっ! やめろ怖い! くすぐったい!」
どうやら小さな体を活かして俺の右耳の中にいる様だった。
い、いつの間に……。
しかもダンジョンみたい、とはどういうことだ。
耳垢ですか?
そういうこと言うのやめてもらえませんか?
「トウジのでかさもあいまって、ジュノーが豆粒みたいに見えるやん」
「なんかいつものフードが心地悪いから、今日新天地を見つけるし!」
「俺の体に住むなよ」
人の体にも引きこもるって、やっぱりダンジョンコアは筋金入り。
とんでもない奴らだぜまったく。
しかし、何かしらの欠点があるからこそ……。
彼らと仲良くなれるのではないかと俺は思う。
俺も欠点ばかりだからね。
なんでもできるマンは、敬遠してしまうよな。
「……ねえ、トウジ」
「なにイグニール」
「私もフードに入ってみてもいい?」
「ええ……」
まさかイグニールの口からそんな単語が出てくるとは。
まあ、普段から見ててジュノーの気持ちを確かめて見たいのだろう。
彼女も、時折ジュノーにその美しい胸元を定位置とされている引きこもり先なのだ。
「あっ! うちもそれやってみたいわー! みんなでジュノーの気持ちになろや!」
「まあ、どんとこい」
たまには良いかもな、ジュノー以外をフードに入れるのも。
サイズ的には少し窮屈かもしれないが、全然入れない事はない。
そんな訳で、手にイグニールとマイヤーを乗せてフードに運んだ。
俺の指にしがみつくイグニールとマイヤーの感触。
いろんな感覚がして、触覚過敏になりそうだった。
「わあ……ジュノー、いつもこんな感じなのね?」
「意外と良いやんこれ! 住みやすそうや!」
「でしょでしょ? えへへ、今日はあたしの別荘に2名ご招待!」
別荘て。
俺がジュノーを便利な便利な移動式ダンジョンハウスだと思っている様に。
ジュノーも俺のことを便利な移動式人間別荘だと思っている様だった。
持ちつ持たれつってことで、良しとしておく。
「地味に、右に行きたい時は右の髪の毛を絶妙な力で引っ張るんだし」
「へえ、そしたら右に行くの?」
「いや、気づかれない様に上手くやれば右を向いてそっちを気にし出すし」
「あー、トウジって目についたものに向かう習性持ってるから、そっちに行くんやんな」
……好き放題言ってくれるな。
フードの中で地味に俺を操っていたと言うのかジュノー。
ダンジョンコアは、人間や魔物の好奇心を刺激することに長ける。
そんな彼女の地味な手腕が、謎に俺のフードの中で語られていた。
「トウジ、いつまでもワルプの上にいるのもアレだし、ボートでも出して座れば?」
「そうだな」
インベントリから出したボートも、今の俺の大きさに合わせて出てくる。
イグニールの意見に乗って、俺は小舟を出してそっちに乗り換えた。
椅子の代わりを担うワルプも、じっとしたままで24時間乗せ続けるのも辛いだろう。
「ねートウジ、なんならマクラス2号も出してみんなで寝るし!」
「ひなたぼっこってこと?」
「いや、どうせならあたしのベッドマクラスもこれを期に体感して欲しいだけだし」
「お前のベッドではなく、俺のマクラスな」
「共有だし! 二人の財産、マクラス!」
「はいはい……ふぁあああ……」
そういえば、昨日からずーっと起きっぱなしだった。
最近寝ることも忘れて色々こなしていることが多い。
だから、ここで一つ寝ておくとするか……。
「確かに眠たいからゆっくりさせてもらおうかな……」
マクラスをインベントリから取り出すと。
「ふぁ……」
「んむ……」
「ぐーぐー、あっ一瞬寝てたし」
イグニール、マイヤー、ジュノーも眠たそうにしていた。
ジュノーに至っては、すでに一瞬寝息を立てる始末。
地味に器用だな……。
「あれ、寝てないの?」
そう尋ねると、イグニールが焦った様に言う。
「え? う、うん。まあ私はマイヤーの護衛で1日中起きてたから」
「う、うちも眠れなかったんよ! 心配やったからね! うん!」
「へー」
なぜ眠れなかったか、俺は知っている。
俺の身に起こった、ブニーの強制快感地獄。
あれを彼女たちも体感しているのならば、そりゃ眠れないだろう。
まあ、知らない振りしときますけど。
「昨日ねー、なんかみんなお漏らし止まらなくな──べっ!?」
ふと、何かを告げようとしたジュノー。
だが、イグニールとマイヤーが高速で口元を塞いでいた。
「なんでもないから、もう寝ましょ? みんな寝不足なんだから、体に毒よ」
「せ、せせせせやな! ついでにいい天気やからうちも肌焼くわ~!」
「ほーん?」
何故か、水着になって巨大マクラスに転がる女性陣。
俺は別にいいけど恥ずかしくないのかな。
つーか、オイルとか塗っちゃう系なの?
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