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本編
579 極彩マンボウとスターレイ
極彩マンボウは、その名の通り虹色の模様を持つマンボウだった。
薄っぺらくて、なんかアホっぽい魚である。
銀色の体にうっすらと虹色のグラデーション。
ヒレは濃い虹色のグラデーション。
はたから見てこんなもん美味しいのかよ、と思う。
しかし、パインのおっさんが言うには……このマンボウの身は極上だそうだ。
脂の乗った腹身、さっぱりとした赤身。
その中間、良いバランスの身。
なんとも、その身はマグロにも近いらしい。
確か。
赤マンボウってマグロの代わりにもなるんだっけな。
なんとなく、そんな感じの物を想像した。
え、なんでそんなことを知ってるかって?
ディスカバリーチャンネルで見た。
そんな風に、極彩マンボウはなかなか貴重な魚なのだが……。
それ以上におっさんが驚いていたのは、もう一つの魚。
その名もスターレイ。
大きな星の模様がついた巨大なエイである。
実は、あの時長男が魚を集めて来れた時のことだ。
極彩マンボウと一緒にたまたま取れていた魚である。
おっさんが言うには、極彩マンボウよりも希少価値の高い。
滅多に取れないレベルの代物なんだそうだ。
その肉は、淡白かつ良質で、とてつもなく美味。
だが、注目すべきはそのヒレの部分。
そう──えいひれだ!
おっさんは語る。
「醤油ダレに漬け込んだスターレイのえいひれは、幻にも近い代物だぜ?」
「ほうほう、ほほほう」
えいひれと言えば、酒のつまみ。
俺も大好きな部位である。
「なんや、その話詳しく混ぜろやうちらも」
「そうです、お嬢様の言う通りです」
そんな話をしていると、リクールとマイヤーが俺を挟み込むようにして話に入ってきた。
酒のつまみの話をしていて、コイツらが寄って来ないわけがないか……。
かなり近い距離に二人がいる。
左はむさ苦しいが、右はいい匂い。
「ごっつ美味いえいひれ作るんか? おお? なんや言うてみ? ああん?」
「興味深い話ですねえ、私の感が言ってますよ、どえらいもんだと」
「ま、まあ……うん……」
そうなんだけど、いちいち凄むなよ。
酒が関わってくると、コイツらおっかないな……。
失敗談ばっかりだと言うのに、まったくもう……。
「パインさん、クサイヤチーズよりも価値高いん? そのスターレイのえいひれって」
「うーん、クサイヤチーズはクサイヤの習性に反した存在だから、価値で言えば勝てないが……」
それでも、とパインのおっさんは続ける。
「その味は負けて劣らずの代物だぜ?」
魚の希少価値も合わさって、生きてる間に食べれることはそれなりに奇跡なんだそうだ。
普通のえいひれだと、それなりに癖のある味を持つが、スターレイは純粋な旨味が強い。
価値もよし、味もよし。
珍味の希少価値と味の癖って、お互い比例するような傾向にあるが……。
純粋に美味しいものは珍しい。
「この俺でも前に食べたのはだいぶ昔のことだから、この巡り合わせは奇跡さ」
「いわば奇跡のえいひれって感じですかね」
おっさんとそんな話をしていると、
「うおおおおお! 奇跡のえいひれ! 食べたい! はよ作ってーな!」
「そうです、お嬢様がお求めになっているんですから、作るべきです!」
マイヤーとリクールがすごく騒がしくしている。
うーん、この状態ってなんとなく失敗に向かっている気がするんだが……。
まあ、えいひれは俺も食べたいので作ってもらうことにするか。
「よし、それじゃ極彩マンボウと一緒にそれも仕込むか」
「ォン!」
食材の話もそこそこに、ポチとおっさんは早速調理に取り掛かる。
まずは大量にある極彩マンボウからだ。
えいひれに関しては、干物にするので2~3日ほど時間がかかってしまうらしい。
楽しみだなあ。
感想 9,840
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