装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

578 もちもちピーちゃん

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「お、帰ってきたのか? お疲れさん」

「ただいま戻りました」

 部屋へと向かうと、何やら厨房の方でパインのおっさんが料理をしていた。
 すぐさまポチが前掛けをつけて手伝いに向かう。

「アォン!」

「おう、ポチもおかえり。楽しかったか?」

「ォン!」

「ハハハ、色々と勉強してきただって? そりゃご苦労さん」

 あまり語られなかったが、ダンジョンリゾートのホテルの食事はかなり華やかなものだった。
 まだギルドができたばかりその他の流入はない。
 だから、食事は位が高い人向けのものばかりだったのだ。

 ギリスの学生がお邪魔したのは、一般向けに開放するデモンストレーションのようなもの。
 学生諸君の舌は肥やされまくり。

 俺の舌はすでに肥えているから「あーうまい」くらいだった。
 やっぱり飯は気心知れた仲間とともに、家で食うのが一番だ。
 なんたって、ポチの料理には愛情を感じるのだからね!

「変わりないですか?」

「ん? 問題ないぜ! むしろ胃袋掴んでやった」

「ほうほう」

 どうやら俺らがオデッセイにいる間、しっかり仕事をしてくれていたようだ。
 ダンジョンの収容所にナイナイされてしまった密偵たち。
 何もない場所でひたすら美味い食事のみを与えられることにより、陥落。

 ダンジョンの堅牢さゆえに、暴動の心配は万に一つもない。
 しかし、何人かは犯行してくるだろうとは予測してガーディアンを配置していたのだが……。

「みんなお利口さんで、やっぱ飯は正義だよなあ、ガハハ」

 おっさんの料理を食べたいがために、しっかり健康的に過ごしてくれているらしい。
 それで良いのか暗殺者、とも思うのだけど……まっ、血みどろよりはマシだな!

「……むしろ本国送還の時に一悶着ありそうな気配ね」

「うーん、確かに」

 イグニールの意見に同意しておく。
 餌付け作戦が功を奏したとして、バイバイする時がヤバそうな気がした。

 えー、もう美味い飯たべれないんですかー!
 やだー!

 みたいな感じで、駄々を捏ねられたらどうしようかと思う。
 良い年こいた暗殺者にそれをやられても、ここには響かんがな。

 もっとも、仮にかわいそうだなと思ったとして。
 暗殺者による俺の説得が成功したとして。

 大量の密偵を抱え込むという選択肢はない。
 これ以上大量に人を抱え込むと、なんとも俺の人生が立ち行かなくなる。
 研究所の件でもいっぱいいっぱいなんだから……。

 うむ、こういうのは日付を限定してやるからこそできるのだ。
 毎日3食飯をやるとか、俺の生産力じゃまだ無理だぞ。
 それに密偵や暗殺者なんか、生産性も何もないから養えません。

 そんな訳で、荒れ狂った暗殺者たちは、みんなまとめて強制送還。
 縛り上げて、箱詰めして、ワシタカ超特急でバイバイするのだ。
 一応、デプリの裏っかわを色々と暴露して、雇い主に牙を剥く。
 それをこなして来れたら、もう一度飯くらいは食わしてやらんこともない。

 と……甘い言葉をかけておくのさ。
 成功してもしなくても、裏で争いが起これば数は減るだろう。
 非人道的な手法かも知れないが、やはりそこまで責任は取れない。
 うん、全部デプリが悪いってことで、ここは一つ。

「ぷぴ」

「おっ、ピーちゃんもお疲れ様! 元気にしてた?」

「ぴっ」

 とてちてと歩いてきたピーちゃんが俺に草をプレゼントしてくれた。

「ん? どうした?」

「ぴぷっ」

「育てました。って言ってるし。トウジ、見てやるし」

「お、おお……」

 なんとも健気か。
 心なしか、ピーちゃんの血色は良くなり、ふっくらしているようだった。
 おっさんの食事によって良い健康状態を取り戻して来れたようである。

「ありがとな、ピーちゃん」

 渡されたものはただの薬草だったが、しっかり仕事をして来れたので抱きかかえて撫でてあげた。

「ぷぴぃぷぴぃ」

 うーん、このモチモチ感。
 癖になる。

 ポチはもふもふがすごく良いが、ピーちゃんはもっちり。
 例えるならば、赤ちゃんのような触り心地だった。

「ふんす」

 ポチが鼻を鳴らしたので一緒に抱きかかえる。
 良いっすね、もちもちもふもふ。
 この世の天国でありますぞ、これは。
 今日はこいつらと一緒に寝よっと。

「……トウジ、私にもピーちゃん抱かせてもらえないかしら?」

「どうぞ」

 俺のそんな様子を見てイグニールがウズウズしていた。
 ピーちゃんに関してはなんかもう子供に近い。
 俺とイグニールの子供……が、ハイオークとはこれいかに。

 なんだか変な想像をしてしまった。
 でも、俺ももともとプー太郎に近いやつだから、あながち間違いではない。

「次はうちにも抱っこさせて! ピーちゃんええやん!」

 たらい回しに抱っこされるピーちゃん。
 親元離れてしまったが、俺らを親みたいに思って自由に過ごして欲しい。

「コケェ……」

 そして、マイヤーの定位置を目指してトコトコ歩いてきたストロング南蛮は、なんだか悲しそうな目をしていた。

「アォン」

「コケェ」

 それを見て「これが従魔ってもんだ「と言わんばかりに、ポチが何かを語っている。
 ちっこいもふもふたちも、なんだかんだ仲良くなったよな、と思った。

「さて、トウジ」

「なんですかパインさん」

「例のものは見つけてきて来れたか?」

「……抜かりないです」

 ご依頼の品、極彩マンボウである。
 邪竜長男のおかげで、これまた大量に確保できたから、しばらく魚祭りだ。
 マンボウ食べたことないけど、おっさんは一体どんな料理にしてくれるのだろう。
 期待に胸が踊るぞ!

「あ、あとついでに他の珍しそうな魚もとってきました」

「ほうほう? どんな魚だ?」

「スターレイです」

「──スターレイだと! トウジ、それは本当に言ってるのか!」
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