装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

590 バジリスクソーセージ

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 それから俺はベルダを連れてクロイツ城下町へと足を伸ばした。
 ギリスは色感を統一した美しい街だったが、ここもすごい。
 なんというか、同じような建物がズラリズラリと並んでいる。

「すげー」

 驚く俺に、ベルダが言う。

「クロイツは陛下指導のもと、すべての規格統一を推し進めております」

「規格統一?」

「はい、食器、道具、武器、ほとんどすべてのサイズの統一化です」

 ギルドでもランクによる線引きと統一化を行なっているでしょう。
 それと同じようなことです、と彼女は説明していた。

「そうなんですね、でも大きさが様々な魔族もいるのに……」

 よくやるな、と思う。
 街の中には人とは違う肌とかツノを持った種族もいるようだ。
 この国が背信国だと言われる所以が、この風景だろうな。
 デブリの上層部や教団上層部が見たら、顔を真っ赤にしそう。

「逆に、オーダーメイドに注力するためにこそ、統一化は必要なのです」

「逆に、ですか」

「ええ、その分余力ができますから」

 独創性の高いものや、技術革新と呼べるものを製作するギリスとは違い。
 簡単な道具類を低コストで作る製造用魔導機器の開発に長けている。
 それと同時に規格の統一化もちゃっちゃと進められているそうなのだ。

「クロイツでの魔導機器は国がすべて管理し、民に還元して下ります」

「なるほど」

 商会任せではなく公共事業的な部分で注力し、それを国民に分配。
 管理したがりのあの王様だから、さもありなんと言ったところだ。

「見てください、あれはソーセージの加工場です」

「おおおー」

 ベルダの声の方へ目を向けると、肉屋がミンチを作っていた。
 ガリガリガリガリと回転する刃と受け皿の中に肉を入れる。
 そして魔術師会謹製の氷とやらを突っ込んでガッションガッション。

「作られ、燻製にされたソーセージは国外にも運ばれます」

「へー」

「世界の重鎮が集まる美食会でも、とりわけ名高い二人のお方から文句なしと言われる一品です」

 ……デリカシとテイスティだな。
 彼らもクロイツのソーセージを味わっているっぽい。
 文句なし、とは美味いだろうが……俺は今だに味がわからん。

「今日のおろしたてを食べていかれます?」

「いや、食欲ないからいいです」

 でも、少しこの機械が気になったので売ってる場所を聞く。
 こう言うのはいいね、ポチに買ってったら喜びそうだ。

「ソーセージよりも魔導機器本体が欲しいなあ」

「ま、魔導機器本体ですか……」

「調理用の魔導機器は趣味で色々集めてるんですよ」

 それにしても、作られるものは色々と国によって変わるらしい。
 ギリスだけが魔導機器文明の走りかと思っていたが……。
 クロイツは自国の産業のために特化しているようだ。

「趣味にするにはいささか大掛かりかと思いますが……?」

「こう言うの見てるとワクワクするんだよね」

 ディスカバリーチャンネルを好んで見ていたのも、その好奇心故に。
 工場見学とかさ、ワクワクするよね。

「ちなみにいくらですか」

「えーと、業者向けだと一番安いので500万ケテルくらいだったかと」

「一番いいのは?」

「5000万くらいしますね。特殊な肉質のものにも対応するものです」

「特殊な肉質……?」

「ソーセージやハムの原料は、豚牛鳥だけではありませんから」

 店頭に販売されているものを見ると、バジリスクと書かれていた。
 ……マジか。

「バジリスク……ソーセージ……」

 名前の語感だけでも、なんかやべえって感じがする。
 美味しいのかな、と思っていると主婦が買っていった。

「あらやだ今日はバジリスクもあるじゃないの~」

「おう! すげぇでかいのが討伐されたらしいからな!」

「おいくらですの~?」

「100グラムで1000ケテルだ。上質な魔力を含んだ肉だから、疲れも取れるぜ~!」

 バジリスクソーセージをルンルン気分で買っていく主婦。
 俺はその様子をやや口角を引きつらせながら見ていた。

「安いのか高いのかわからん……」

 でも一般的なものに比べたら高いのかもしれない。
 しかし、バジリスクといえばAランク上位の獲物。
 それを加味すると、安過ぎる気がしないでもなかった。

「内臓と鱗以外はほぼ肉ですから、割と歩留まりが良いのです」

「へ、へえー……」

「高性能のものだと、骨の髄までまとめてミンチにできるので」

 危険な魔物バジリスク。
 脳や目玉に手を出さなければ、思ったよりも可食部位は多いそうだ。

「食ったら呪いで死にそうですけど……」

「凶悪な目を潰せば、ただのでかい蛇ですよ。味は鳥にも近いそうです」

「あっはい」

「どうですか? 食欲わいてきました? 美味しそうですよね?」

「うーん」

 約一週間、水しか口にしていないとしても……。
 さすがにバジリスクにお腹を空かせることはない。
 それにしても、全然お腹すかないなー。

「なぜ、食べないのです。陛下よりあなたの栄養管理をしっかりしろと」

「そんなこと言われましても」

 食欲ないからなあ……。
 アドラーとの会食の時、一口食べるたびに味気がなくなってった。
 終盤はほとんど食べる気さえ起こらず、水で胃に入れるだけ。

 こりゃ、ストレスだなストレス。
 インベントリにある飯を食べれば良いのかもしれん。
 だが、俺はみんなで食べたいのだ。
 早く帰って、みんなであの時の食事の続きをしたい。
 そんな思いを他所に、ベルダは言う。

「もう良い年なんですから、食事には気を使わないといけません」

「その言葉、一応心遣いとして受け取っておきます」

 みなまで言わなくても良いじゃないか。
 もう三十路だって、俺が一番わかってるよ。
 つーかまだ働き盛りなんだが?
 この世界の平均寿命はレベルの関係上そこまで短くないぞ。

「はあ……」

「──ため息は幸せが逃げていくでございますですぞ~」

 ため息をつくと、なんともひょうきんな声が聞こえてきた。

「そんなこと言われても……って、誰?」

 声の方向を見ると、フードを被った俺と同じくらいの身長の人がいた。
 その顔面は、白。
 目はない。
 つーか、皮膚とか肉とか、もろもろの全てがない、骨だった。

「──ひえっ!?」

「あなた、カルマすごいですね~、思わず声をかけてしまいました」






=一方その頃=

 三十路のおっさんが一人、いなくなってしまったダンジョン部屋。

「……くぅん」

 彼の部屋のベッドで、一匹のコボルトが寂しそうに鳴いていた。










=====
ぱっぱか進めます。
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