装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
289 / 650
本編

590 バジリスクソーセージ

 それから俺はベルダを連れてクロイツ城下町へと足を伸ばした。
 ギリスは色感を統一した美しい街だったが、ここもすごい。
 なんというか、同じような建物がズラリズラリと並んでいる。

「すげー」

 驚く俺に、ベルダが言う。

「クロイツは陛下指導のもと、すべての規格統一を推し進めております」

「規格統一?」

「はい、食器、道具、武器、ほとんどすべてのサイズの統一化です」

 ギルドでもランクによる線引きと統一化を行なっているでしょう。
 それと同じようなことです、と彼女は説明していた。

「そうなんですね、でも大きさが様々な魔族もいるのに……」

 よくやるな、と思う。
 街の中には人とは違う肌とかツノを持った種族もいるようだ。
 この国が背信国だと言われる所以が、この風景だろうな。
 デブリの上層部や教団上層部が見たら、顔を真っ赤にしそう。

「逆に、オーダーメイドに注力するためにこそ、統一化は必要なのです」

「逆に、ですか」

「ええ、その分余力ができますから」

 独創性の高いものや、技術革新と呼べるものを製作するギリスとは違い。
 簡単な道具類を低コストで作る製造用魔導機器の開発に長けている。
 それと同時に規格の統一化もちゃっちゃと進められているそうなのだ。

「クロイツでの魔導機器は国がすべて管理し、民に還元して下ります」

「なるほど」

 商会任せではなく公共事業的な部分で注力し、それを国民に分配。
 管理したがりのあの王様だから、さもありなんと言ったところだ。

「見てください、あれはソーセージの加工場です」

「おおおー」

 ベルダの声の方へ目を向けると、肉屋がミンチを作っていた。
 ガリガリガリガリと回転する刃と受け皿の中に肉を入れる。
 そして魔術師会謹製の氷とやらを突っ込んでガッションガッション。

「作られ、燻製にされたソーセージは国外にも運ばれます」

「へー」

「世界の重鎮が集まる美食会でも、とりわけ名高い二人のお方から文句なしと言われる一品です」

 ……デリカシとテイスティだな。
 彼らもクロイツのソーセージを味わっているっぽい。
 文句なし、とは美味いだろうが……俺は今だに味がわからん。

「今日のおろしたてを食べていかれます?」

「いや、食欲ないからいいです」

 でも、少しこの機械が気になったので売ってる場所を聞く。
 こう言うのはいいね、ポチに買ってったら喜びそうだ。

「ソーセージよりも魔導機器本体が欲しいなあ」

「ま、魔導機器本体ですか……」

「調理用の魔導機器は趣味で色々集めてるんですよ」

 それにしても、作られるものは色々と国によって変わるらしい。
 ギリスだけが魔導機器文明の走りかと思っていたが……。
 クロイツは自国の産業のために特化しているようだ。

「趣味にするにはいささか大掛かりかと思いますが……?」

「こう言うの見てるとワクワクするんだよね」

 ディスカバリーチャンネルを好んで見ていたのも、その好奇心故に。
 工場見学とかさ、ワクワクするよね。

「ちなみにいくらですか」

「えーと、業者向けだと一番安いので500万ケテルくらいだったかと」

「一番いいのは?」

「5000万くらいしますね。特殊な肉質のものにも対応するものです」

「特殊な肉質……?」

「ソーセージやハムの原料は、豚牛鳥だけではありませんから」

 店頭に販売されているものを見ると、バジリスクと書かれていた。
 ……マジか。

「バジリスク……ソーセージ……」

 名前の語感だけでも、なんかやべえって感じがする。
 美味しいのかな、と思っていると主婦が買っていった。

「あらやだ今日はバジリスクもあるじゃないの~」

「おう! すげぇでかいのが討伐されたらしいからな!」

「おいくらですの~?」

「100グラムで1000ケテルだ。上質な魔力を含んだ肉だから、疲れも取れるぜ~!」

 バジリスクソーセージをルンルン気分で買っていく主婦。
 俺はその様子をやや口角を引きつらせながら見ていた。

「安いのか高いのかわからん……」

 でも一般的なものに比べたら高いのかもしれない。
 しかし、バジリスクといえばAランク上位の獲物。
 それを加味すると、安過ぎる気がしないでもなかった。

「内臓と鱗以外はほぼ肉ですから、割と歩留まりが良いのです」

「へ、へえー……」

「高性能のものだと、骨の髄までまとめてミンチにできるので」

 危険な魔物バジリスク。
 脳や目玉に手を出さなければ、思ったよりも可食部位は多いそうだ。

「食ったら呪いで死にそうですけど……」

「凶悪な目を潰せば、ただのでかい蛇ですよ。味は鳥にも近いそうです」

「あっはい」

「どうですか? 食欲わいてきました? 美味しそうですよね?」

「うーん」

 約一週間、水しか口にしていないとしても……。
 さすがにバジリスクにお腹を空かせることはない。
 それにしても、全然お腹すかないなー。

「なぜ、食べないのです。陛下よりあなたの栄養管理をしっかりしろと」

「そんなこと言われましても」

 食欲ないからなあ……。
 アドラーとの会食の時、一口食べるたびに味気がなくなってった。
 終盤はほとんど食べる気さえ起こらず、水で胃に入れるだけ。

 こりゃ、ストレスだなストレス。
 インベントリにある飯を食べれば良いのかもしれん。
 だが、俺はみんなで食べたいのだ。
 早く帰って、みんなであの時の食事の続きをしたい。
 そんな思いを他所に、ベルダは言う。

「もう良い年なんですから、食事には気を使わないといけません」

「その言葉、一応心遣いとして受け取っておきます」

 みなまで言わなくても良いじゃないか。
 もう三十路だって、俺が一番わかってるよ。
 つーかまだ働き盛りなんだが?
 この世界の平均寿命はレベルの関係上そこまで短くないぞ。

「はあ……」

「──ため息は幸せが逃げていくでございますですぞ~」

 ため息をつくと、なんともひょうきんな声が聞こえてきた。

「そんなこと言われても……って、誰?」

 声の方向を見ると、フードを被った俺と同じくらいの身長の人がいた。
 その顔面は、白。
 目はない。
 つーか、皮膚とか肉とか、もろもろの全てがない、骨だった。

「──ひえっ!?」

「あなた、カルマすごいですね~、思わず声をかけてしまいました」






=一方その頃=

 三十路のおっさんが一人、いなくなってしまったダンジョン部屋。

「……くぅん」

 彼の部屋のベッドで、一匹のコボルトが寂しそうに鳴いていた。










=====
ぱっぱか進めます。
感想 9,840

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました