装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

600 麟として、逸れ・2

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「──グルルルル」

 巨大な麒麟が目の前に姿を現した。
 バチバチバチと稲妻が迸る。

「属性は、見るからに雷だね……ヨシノ、耐性付与を」

「了解」

 賢者が杖を振るうと、全員がぼんやり光に包まれた。
 属性耐性・雷である。
 かなり強力な耐性能力スキルで、無詠唱もすごいな。

「……グルルル」

 しかしナワバリに侵入した俺たちを睨む麒麟は格の違いを見せつける。
 耐性? それがどうした?
 と言わんばかりに、シュンと高速で動き背後をとっていた。
 逃げ道を塞ぐように。

「──!? は、速い!」

「私が反応に遅れるとは、やるじゃないか……」

 狼狽える勇者と剣聖。

「あ、あわわわ、もしかして光の速度で動けるとか!?」

「カナ、そんな訳ないじゃないの。雷属性スキルでしょ」

 慌てる聖女を賢者が宥める。
 確かにそうだよなあ……・。
 光の速さで動けたら誰もついていけないし勝てない。
 眩い光を見た瞬間に、死んでいるとかありそうだ。

「グルルル!」

 すぐに麒麟が動く。
 サンダーソールと同じように、周囲に雷撃を連続して叩き込んだ。
 ドドドドドド!

「おわああああ!」

「アキノさんはビスマルコと逃げて!」

「は、はいー」

「逃げますぞ~」

 賢者に言われた通りに俺はさっさと戦いを逃れて避難した。
 何故か聖女も俺を盾にするような位置で走って来る。
 俺のことは嫌いだが、自分の命と天秤にしたら仕方ない様だ。

「サヨ、ヨシノ、行くぞ!」

「わかった」

「了解! 雷って弱点あったっけ? まあ、火力ゴリ押しが一番よね!」

 剣を持って麒麟にぶつかっていく勇者と剣聖。
 その後ろから賢者が火属性の魔法を発動させる。

 ゴウッ!
 豪炎が散り散りになって、散乱し、麒麟を襲う。
 勇者と賢者の剣戟の合間を縫うようにして、器用に。

 ふむ、火力でいけばイグニールの方が強いな。
 爆発するし。

「俺は右から行く、サヨは左だ!」

「良いだろう、私たちの挟撃を見せてやろう!」

「グルルォォォン!」

 麒麟は再びシュンと移動して距離を取る。

「チッ、やっぱりそれでも速い! ユウト、ついて行けるか?」

「まだいけるよ。盾役になるから、火力は二人で頼むね!」

 勇者は背中につけていた小盾を左手に装備して何かをスキルを唱えた。
 小盾に光が宿って大きな盾になる。
 そして麒麟から発せられた雷撃を受け止めていた。
 ずるいぞ、小さな盾を大きくするスキルとか!

「うーん、あんまり火をバラすと効かない見たいね」

「なら大魔法だヨシノ! 新しく使えるようになってたよね?」

「わかった、詠唱する時間を稼いでもらえる?」

「了解!」

 そんな彼らの戦いを見ていて思った。
 個体の大きさや膂力には、サンダーソールに分がある。
 ネームドである龍にも似た巨大デンキウナギの魔物。
 俺の主力級。

 だが、雷属性という部分に関しては、目の前にいる麒麟の方が強い。
 力任せにブッパするのではなく。
 雷属性というものを、幅広く応用して使って来るのが手強い感じだ。

 勇者たちは耐えて一気に叩くことを選択したようだが……。
 果たしてとんでもなく素早い麒麟を捉えることができるのか。

「グルルォオオオン!」

 シュンシュンシュンシュン!
 ……できなそうだ。
 麒麟がとんでもない速さで撹乱し、勇者と剣聖に襲いかかる。

「チッ! 速いぞユウト!」

「まさか、こんなに速いとは思わなかったね!」

「だが、撹乱攻撃の際は接近するようだ。抜刀に切り替えて迎え撃つ!」

「ダメだ、詠唱中のヨシノは無防備だから、そっちを狙われたら困る!」

「チッ」

 麒麟は撹乱しつつも、守られた賢者に対しての攻撃を行う。
 後手後手に回りつつも、なんとか勇者たちはそれをしのいでいた。

「ド派手ですぞ~」

 骨が呑気にそう言う。

「……確かに派手だけど、明らかに麒麟強くね?」

「強いですな~……本来は砂漠を超えた東のいるそうですけど、なんでここにいるんでしょうかね~?」

「流れの個体とか、そんな感じなんじゃないの?」

「まっ、それが一番正しい答えですぞ~」

 流れの個体って基本的には弱そうなイメージなのだけど。
 もしかして住処にいらっしゃる麒麟はもっと強いのか?
 うーん、この世界には俺の知らない強さを持つ魔物がたくさんいそうだ。

「何言ってるんですか! ユウトくんは勇者だから勝つに決まってるの!」

 俺と骨の会話を後ろで聞いていた聖女が言う。

「だから応援しないと!」

「……応援て……聖女さんもスキルで何か援護したら良いんじゃないですか?」

「もうやってる! 声援は私のスキルだから!」

「へー」

 応援することでその人のステータスを上昇そしてHPやMPを回復させるスキルらしい。
 教会で、神父が何かを語る時のような、あれなのかな?
 陰に隠れていても、聖女は聖女で援護をしているらしい。
 回復と援護は割と重要なポジションだから、基本的にはこうして隠れているのだろう。

「そろそろ、光の盾が終わる!」

「クッ、ヨシノ!」

「──ごめん、待たせた」

 良い頃合いで賢者の足元に大きな魔法陣が出現した。
 大魔法とやらの準備が完了したらしい。

「ユウト、サヨ。巻き込まれない程度にあいつの動きを止めてもらえる?」

「……サヨは攻撃力全振りだから、その役目は俺がやるよ」

 賢者の護衛は全て剣聖に任せて、勇者は麒麟に切り込んだ。
 すぐに麒麟の体から雷撃が迸る。

「むぐぐぐぐぐ!」

 勇者は堪えながら雷撃の中で麒麟の顔面に剣を振るった。
 それも見にまとった雷撃でガードされるのだが……。
 その瞬間、麒麟の頭上に巨大な魔法陣が出現した。

「はいメテオ」

 メ、メテオ!
 すげー!
 火に包まれた岩石が、麒麟と勇者に落ちた。

 ドッ──!
 熱風と衝撃が突き抜ける。

「火と地の複合属性大魔法ね。あんたは終わ──」

 いかにもフラグめいたこと言葉を放つ賢者。
 しかし言葉は途中で止まる。

「グルォォォォオオオオン!!!!!」

 麒麟はまだ健在だったからだ。

「う、うそ! あれを食らって立てるなんて!」

 おい、フラグ!

「う、ぐ……雷の中で燃える岩石食らうのは、ちょっと堪えるね……」

「ユウト! そんな、ユウトにだけダメージ!?」

 文字通り、自爆だな。
 メテオを受けた麒麟は、何故か全身雷で作られてますみたいな感じになっている。
 我に本気を出させるとは、さすがだ……って言わんばかりの表情で勇者を蹴飛ばした。

「ぐっ!」

「ユウト!」

 大魔法とやらを防がれて、狼狽える賢者。
 ざまぁざまぁだとは思っていたが……。
 あんまり見ていて楽しいものじゃない。
 俺も貰った金額分の仕事はやっておこうか。
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