装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
324 / 650
本編

625 過去の痕跡とおサボり司書職・1

しおりを挟む
 俺は図書館に本狩りに、イグニールはギルドへダンジョンの洗い出しに。
 そんな感じの役目を持って、俺たちは今日も別行動。

「なんだか二人でこうして歩くのも、良いもんだなポチ」

「アォン」

 トガルに来た時のことを思い出すかのようだ。
 この世界に来て、もうすぐ一年経とうとしている。

 うーん、色んなことがあった。
 本当に色んなことがあった。

 語り尽くそうにも、語りつくせないほどのことだ。
 いつの日か、これが良き思い出だったと言えれば良い。
 そのために、今を頑張ろうじゃないか。

「さてと、公園だな」

「おうおはよう!」

 公園にたどり着くと、赤と黄色のカラフルな屋台があった。
 なんじゃありゃ……。

 昨日までの茶褐色の屋台からは想像もできない様変わりっぷり。
 世の中の料理で悩むおっさん連中はどうしてこうも変わるんだ。
 いきなり過ぎてこっちがびっくりするレベルである。

 店の名前はこう。
 《元祖、勇者の愛したファーストフード~アメリカンドッグ~》

 ……長い。
 でもまあ、その辺にこだわるのはやめておこう。
 こういうのは本人の好きにさせておくのが一番だ。

「どうせ最初は色物扱いだから、色物にしてみた」

「ふむふむ」

「作り方簡単っぽいから先に元祖の名前をいただいてみた」

「なるほど」

「とりあえず大小数種類食べやすい大きさで作ることにした」

「良い調子です」

「最終的になんかチーズとかぶち込んだら最強に美味かった」

 チーズドッグってやつか。
 良いっすね。
 ソーセージとチーズはすごく相性が良い気がする。
 っていうか、チーズが何でもかんでも美味くする。

「あと、禁断のバタードッグってやつも考え出してみた」

「バタードッグ……?」

「家にある食材をとりあえず全種類揚げてみたんだ」

「はい」

「そしたらさ、バターに衣つけてあげた奴が甘いんだか美味いんだかしょっぱいんだかわからない新感覚だった」

 ……そ、そいつはヤベェ。
 なんだよバターをあげるって、強すぎる。
 中身ぐちゃぐちゃで飲めるレベルじゃね?

「ってことで、アイデア全部試食してほしいんだ、お前たちに」

「よし、ポチの舌が大活躍だな!」

「アォン……」

 バター食うのは俺は年齢的にもう無理なので、ポチに任す。
 ってことで、さっそくポチが各種ドッグを食べされられていた。
 ちなみに、意外なことにバタードッグは有りとの判断らしい。
 流行ったら国の連中太ると思うが、そう言うのが好きな魔族が食いそうだ。

「ォンフッ」

 胃もたれしているポチの背中をさすってあげる。

「どうだった? みんな悪くない?」

「ォン」

「ほうほう、バターのやつは蜂蜜とシナモンで衣をもっと甘くしろって?」

「アォン」

「あげた後、糖衣ね? そこまで甘くして大丈夫なのか?」

「ォン!」

「なるほどな! チャレンジメニューみたいな感じにするのか!」

 だったら辛いやつも考えてみるか、とメモるおっさん。
 順調に色物路線を辿っている気がした。
 本当にこの店が流行るのかはわからないが、職業がら勇者の好物に対しての信頼度はある。
 美味く行ってくれることを、心の底から俺は願っているよ。

「さて、じゃあ行くか!」

 屋台をガラガラと引いて、おっさんは公園から出る。
 約束通り図書館へと連れて行ってくれるそうだ。

 そして馬鹿でかい図書館の前にたどり着き、屋台を止める。
 差し入れ用のアメリカンドッグをバスケットに入れて入館。

「あれ、シルビアさん……どうしたんですか!」

「おう、ちょっと差し入れを持って来たんだ」

 入り口の奥の受付のような場所に座っていた女性が驚く。
 つーか、おっさんの名前シルビアだったのか。

「戻って来てくれる気になったんですか! みんな大変ですよ!」

「いや、俺は戻らねえ! 料理人の世界で食って行く!」

「ええ……今年で40過ぎの人が、なんでいきなり……みんな戻って来てほしいそうですよ」

 なんだかこの職場で好かれていたような雰囲気だが、本当に人間関係に疲れたのか?
 周りの連中も、シルビアさんだ、元上司だ、と集まって来ている。
 シルビアと呼ばれたアメリカンドッグのおっさんは受付の女性に言った。

「戻らんぞ。だってお前ら毎日俺に愚痴言いに来るだろ、揉め事の仲裁頼むだろ、関係ないことで」

「それを聞いてくれるからまだこの職場は保ってたんですよ~!」

「今は俺の方が家族にも逃げられて、借金して、明日の飯も心配な状況だから、話は聞いてやれん」

「だったら復帰してくださいよ~、みんなシルビアさん待ってますから、お願いしますよ~」

「解読した分は全部渡しただろ、あと簡単な読み方とかもさ」

「3種類の言葉や、複数の意味、パズルみたいな暗号を解けるのはシルビアさんくらいですよ!」

「俺でも読めたのちょっとだけどな、まあ後は若い奴らに任せるから、俺の飯食ってやる気出せ!」

 なんだか少しだけこの職場の現状みたいなものが見えた気がした。
 有能が消えて、みんな二進も三進も行かずに困ってるのだろう。
 十年くらいやってきて、読めるのシルビアだけってのが、なんとも……。
 まあ、俺は本を読ませてもらえば良いので、関係ないか。
しおりを挟む
感想 9,839

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。