装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

632 激おこプンプンおじさんの逆襲

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「ち、ちげえよ! 俺じゃねえ!」

 襟首を掴み上げられ、持ち上げられた男は手足をバタつかせる。
 必死に振りほどこうとしているが、俺はビクともしない。
 STR、VIT共に万超えしてるからだ。
 睨みつけていると、男は顔を青くさせながら必死に弁明する。

「そ、そんなことしてもバレるだけだろ!」

「じゃあ誰がやったんだよ!!」

「し、知らねえよ! う、ぐっ──」

「トウジ、一旦落ち着きなさい。ストップ、ストップ!」

 慌てたイグニールが俺を後ろから羽交い締めにした。
 この場にいる人じゃ誰も俺を止めらないからである。
 柔らかい感触を背中に感じて、ふと我に返った。

「……すまん、取り乱した」

「怒る気持ちはわかるけど」

 イグニールは振り返った俺の頬に両手を添える。

「今は怪我人優先よ」

「わ、わかりましあ……」

 地味に圧をかけられてて苦しい。
 ポチの気持ちがわかった気がした。

「も~、みんなで外に出るなら私も連れてってくださいですぞ~……って、え、何ですかこの状況?」

「ちょうどよかった、おい骨」

 後から公園に歩いて来た骨に告げる。

「怪我人だ。ゴレオと一緒に彼を城まで連れてってくれ」

「え? いきなりなんですか? まあ、良いですけども」

 城には勇者用の治療院の人が複数待機している。
 それに再び何者かに狙われるって心配もない。
 今は、城のやつらは味方なのだから。
 次に、インベントリからキッチンを出しながらポチに言う。

「ポチ、俺たちは営業を進めよう」

「ォン!」

 力強く頷くポチ。
 シルビアがいなくても俺たちだけでなんとかなる。
 そうさ、こんなところで止まってる場合じゃない。
 誰が何をしてこようと、この屋台は永久不滅だ。
 ここで躓いてしまったら、後に響く気がするから。

「私たち、来てよかったわね。手伝うわよ」

「ありがとう」

 本当にナイスタイミングだよ、イグニール。
 おかげで心も落ち着いたし、俺の聖母だな。

「皆さん! 営業を開始します! シルビアさんがいなくても営業は続けます!」

 公園に来ていたみんなにそう告げると、歓声が聞こえて来た。

「よっしゃー! ありがてぇ!」

「ひどいことする奴もいるぜ! 買って応援しようぜ!」

「おう! バタードッグ20個くれ!」

「なら俺は全種類10個つづ買うぞ、冷めても美味えからな!」

 やはり、心待ちにしていたようだ。
 善き人たちが買い支えてくれる。
 それだけ、シルビアのポジションは重要なものになっていた。

「ではゴレオさん、私たちもさっさと運びますぞ~」

「……」

 骨とゴレオがシルビアを連れて公園から離れていく姿を見送る。
 未だ意識を失うシルビアの姿。
 いったい誰がやったんだろう。
 襟首掴み上げた人気店の男は本当に何も知らなそうだし……。

 残る可能性といえば。
 ヘイトを買っていたと言えば。

 くそ、図書館クラブのメンツじゃないだろうな?
 あいつらシルビアに戻って来て欲しいじゃなかったのか?
 なのに、なんで……こんな真似をしたんだ。

「……イグニール、ポチ、この場は頼めるかな?」

「アォン?」

「どこに行くのよ?」

「ちょっとこの状況に、もう一つ心当たりを思い出した」

 俺はコレクトを一旦戻し、キングさんを召喚する。

「プルァ」

 久しぶりのキングさん。
 話は聞かせてもらったとばかり、顔には青筋が浮かび上がっていた。

 この場はポチたちに任せて、俺は元凶と思しき奴を叩きに行く。
 俺の、いやこの世の怒りの代弁者とともにな。
 キングさん説教をぶちかましてやる。



=====
※視点変わります



「はあ、はあ、はあ……」

 急いで自分の職場に戻って来た女は、待機してもらっていた男たちに言い放つ。

「ちょっと、何もあそこまでやれって言ってないじゃないですか!」

「はあ?」

 それを言われた男たちは、顔を歪ませながら言い返した。

「屋台できなくして欲しいって言われたから、望み通りやってやったんだよ」

「そうだそうだ。金も貰ってるしな、俺たち働き者だぜ」

「私は屋台を止める様に少しだけ脅してくださいって依頼したはずですよ!」

「あ? だから、言われた通りやってやったんだろーが?」

「だよなあ? 口で脅すより、体に脅した方が手っ取り早い」

「それに、屋台も潰したし、あいつの両腕もへし折ったから、追加報酬欲しいくらいだぜ?」

 男たちは「めちゃくちゃ良い仕事したよな、ハハハ」と笑い声をあげる。
 彼らが朝からシルビアと屋台を襲った本人。
 そして、周りに集まって来た屋台連中にも、シルビアに暴行する姿を見せて引き払えと脅していた。
 これが、公園に屋台の連中が一人もいなかった理由である。

「でも、私は暴力を振るって良いとは一言も言ってないじゃないですか」

 自分の中の想像では、屋台を潰せば、働き口を求めて彼は戻ってくる。
 彼さえ戻ってくれば、解読ノルマもそれなりにこなせるからだった。

 後任として、新たに彼と同じ様な立場になってしまった責任は重たい。
 適当に読んでるフリをするだけでそれなりのお金をもらえる楽な職場だったのに。
 このまま行くと、降格だった。

 さらに、自分が何もできないことが露見してしまう。
 それだけは避けたかったのだ。

「明らかに過剰です。どうしてくれるんですか!」

 それを当たり散らすかの様に女はヒステリックに喚く。
 だが、裏稼業を生業とする男たちには通じなかった。

「どうするもこうするも、お前は俺らに依頼した内容は屋台をできなくしろだったろ」

「でも」

「でももだってもねえぞ? 俺らは依頼通りに動いただけだからな」

 顔をぐっと近づけ、威圧しながら裏稼業の男が言う。

「それに一つ言っておくが、俺らに頼った時点でお前も同類だ」

「ッ……」

 その言葉を受けて、女は気づく。
 良くない領分に足を突っ込んでしまったのではないか、と。

「煩い女だ、納得言ってねえなら話は変わる。追加報酬もらうぜ?」

「えっ」

「え、じゃねえよ。仕事にケチつけられたからな、やっぱ追加で報酬もらう」

「へへへ、俺らは決して良い奴じゃねえから、しっかりご機嫌取っとけよな?」

「泣けなしの貯金を全部叩いたので、追加で出せるものなんてないです!」

「ああ? そんなの知らねえよ」

「それに、普通の依頼料でもだいぶ法外な値段を──きゃっ!?」

「だから知らねえって」

 女の腕を掴んだ男は続ける。

「ちょっと歳食ってるけど、まあそう言うのが好きな奴もいるから売れるだろ」

「な、何を!! 離してください! 離して!」

「少し黙れよ!」

「あうっ!!」

 頬を殴られて静かになる女。
 そこで漸く、関わってはいけない人たちに関わってしまったんだな、と確信した。
 実感すると、身体が震えて来た。
 これからどうなってしまうのか、それを考え様にも頭が働かない。

「よし、行くぞ。楽で割りの良い依頼だったな」

「おう、人ボコって屋台脅して、あとでそこの女味見して良いか?」

「ひっ」

「やめとけ。この女は口だけで何もしねえ性根が腐ったタイプだから、相手しても面白くねえよ」

「そうか、だったらやめとくか。保身に焦ったやつってやっぱとんでもねぇなあ!」

「ハッ! だから俺らの商売成り立ってんだぜ! 下衆に感謝だわ」

「おう、またあの公園で屋台始めそうだったら次から脅して場所代もらうか?」

「おっ、お前珍しく頭良いな、バレねえ様にこっそり──」

 ──ドガァン!
 男たちが女を連れて誰もいない図書館を後にしようとした時、突然壁が崩壊した。

「な、なんだあ!?」

 崩壊した壁に目を向ける。
 黒髪の優男と、一体のスライムキングの姿があった。









=====
残念ながら迂闊に踏み入ってはいけない相手は裏稼業の男たちではない。
激おこプンプンおじさんと、激おこプンプンスライムである。
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