装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

631 過去の痕跡とおサボり司書職・7

 アメリカンドッグ販売に着手してから、早一週間。
 寂れた公園は見違える様に活気に満ちていた。

 この流行は一過性のものに過ぎないと思うのだが、今は良い。
 みんなが笑顔で頬張る姿を見て、シルビアも満足そうだった。

 昨日もしきりに「こう言うのだよ、笑顔だよ」と頷いていた。
 こう言う流行ものの弊害として、ゴミが周りに散らばったりもする。
 それは営業の合間にゴミ拾いをしたり、ゴミ箱を設置した。

 クロイツの住民は、ゴミ箱があればみんなまとめて捨ててくれる。
 町中のゴミを拾う俺たちの印象はかなり良く、今後にもつながるのだ。

 さらに、必ず袋に入れて捨ててもらうことをルールとしている。
 そうすることによって、ゴミ箱に偽装したカバンが生きてくるのだ。

 これらはあとでギリスに持ち帰ってダンジョンの分解機でまとめて処分。
 ゴミからも装備製作に必要なアイテムの類を得られるからな、お得だ。
 町中の不用品をしまっちゃうゴミおじさんにジョブチェンジ。

「さて、行くか」

 今日もポチを連れて公園に向かう。
 すると、後ろからイグニールが声をかけてきた。

「一応今日はお休みの日だけど、トウジは公園に行くの?」

「うん、良い感じだからね」

「なら私も行く」

「ダンジョン捜索で色々動いてたと思うから、休んでて良いけど」

 イグニールのおかげで、ダンジョンの情報を無事に得ることができたのだ。
 今日はその労いも込めてみんなでリフレッシュすれば良いと思う。
 それを告げると、彼女はこう言い返した。

「城にいても窮屈だし、合間にクロイツの首都は見て回ったから暇なのよ」

「そうだし! っていうか、トウジ!」

 イグニールの胸元から顔を出したジュノーが、俺のフードに飛び移り言う。

「外壁土木のデカイ人から聞いた! とんでもなく甘い物があるって!」

「ああ、バタードッグか」

「そうそれ! なんで甘いもの同盟盟主のあたしに話を持ってこないし!」

「いや、甘いっつっても、また毛色が違うと言うか……」

 あれはスイーツではなく、ジャンクだ。
 甘いし、カロリーの塊である。
 しかしながら、俺は多分食ったあと腹を壊す、そんな代物。

「甘かったらなんでも良いの! 良いから連れて行くし!」

「はいはい。でも、結構繁盛してるから忙しいと思うぞ」

 故に、あまりジュノーの相手をできるかはわからない。
 一応今の立場的には、俺はいち従業員なのである。
 営業しつつも、何が何本売れたとか帳簿をつけなきゃいけないのだ。

「暇だし手伝うわよ。ね、ジュノー?」

「うっ、食べるだけじゃないの? 食べるだけが良いし」

「ダメよ、わざわざついて行くんだから、それくらいしなきゃ」

「むー、わかった! 働かざるもの食うべからずだし!」

「マジか、良いのか」

 割と人手不足というか、客を捌き切れない状況だったので助かる。
 一応揚げるだけのお手軽調理なんだけど。
 その中でも神経使うバタードッグの買い手がえげつないからね。
 あいつら、平気で10本単位で購入して行くから……。

 おかげで屋台以外にも俺がキッチンを出してそこで調理もする。
 爆裂的な売り上げから、業務用のフライヤーを購入するつもりだ。
 開始一週間にして、もうそこまで行くって、正直ヤバい。

 それでもなんとか出来ているのは、テーブルの後片付けとか。
 寄ってきた他の屋台の連中が兼任してくれてるからだったりする。
 もうアドラーに言って、そのままフードコート化しちまっても良い。
 どうせ子供も遊ばない廃れた公園だったしな。

「ならみんなで行こっか」

 そんな訳で、俺はイグニールたちを連れて公園に向かうことにした。
 ちなみに骨は朝が弱いらしく、まだおねんね中である。
 寝る生物なのか知らんけど、夜から朝にかけてじーっとしているそうだ。
 色々と話を聞くのは、アメリカンドッグ屋が落ち着いてからだな。



 いつもの時刻、みんなを連れて公園にたどり着いた。
 まだかまだかと屋台の開店を待つ市民がいる。
 だが、今日はなんだか様子が少し違っていた。
 ワイワイガヤガヤではなく、異様な雰囲気でザワザワとしている。

「なんだ? 何かあったの……ッ!」

 そう言いかけて、言葉を失う。
 民衆の中で、血だらけになったシルビアがいたからだ。
 ぐったりとして、両腕がおかしな方向に曲がっている。
 彼の屋台も、ボロボロに潰されてしまっていた。

「バタードッグの生みの親! 俺らの神! どうしたんだよ!」

「しっかりしろ! だ、誰か、誰か治療スキル持ってるやつ!」

 巨体のバター犬たちが、悲しい面持ちでシルビアを取り囲んで声をかける。
 暑苦しい絵面だが、そんなどうでも良いことを考えてる場合じゃない。

「いったい、何かあったんですか!」

 ポチと一緒に慌てて近づくと一人の半巨人族の男性が言う。

「わ、わかんねえ、朝から来たらもうこうなっちまってた……!」

 聞けば、来たらすでにこの状態で横たわっていたらしい。
 すぐにシルビアをグループに入れてHPの確認。
 そしてインベントリからポーションを取り出して、振りかける。

「とりあえずこれで大丈夫です!」

 今もなお減っていたHPは、これでなんとかなる。
 これで死ぬことはない。
 大事を免れたことで、ほっと一息ついていると。

「まわりに他の屋台もねえし、いったい何があったんだ……」

 悲痛な目でシルビアを見ていた一人の男がそう呟いた。
 確かに。
 そう思って周りを確認すると、昨日も大繁盛していたはずの公園から屋台が忽然と姿を消していた。

 ……どういうことだ?
 まさか、示しを合わせてシルビアをボコボコにしたのは屋台の連中か?
 いやそれはない。
 昨日まであんなに仲良く、持ちつ持たれつ営業していたのだから。
 この店の人気によって抱き合わせが可能だから、そんな不利益なことしないだろう。

 だとしたら……思い浮かぶのはそれを面白くないと思うライバル。
 この街に店舗構えて営業していた人気店とか。
 確かに客を奪っているから恨む気持ちもわからんでもない。
 ……わからんでもない。

 だが……。
 これは、やり過ぎだろ。
 ふつふつと怒りが心の内側から湧いて来た。

「トウジ、どうしたし……?」

 野次馬の中に、その元人気店のソーセージ屋に立っていた男の顔が見えた。
 俺はクイックを使用し、人ごみをかき分けてそいつを捕まえ、襟口をひねり上げた。

「ひっ!? な、なんだよう!?」

「お前か! お前がやったのか!!」





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トウジ、怒る
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