装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

630 過去の痕跡とおサボり司書職・6 バター犬神教とフードコート

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 アメリカンドッグ屋が実際にスタートしてから早三日の時が経過した。
 俺は朝と昼と夕方にアメド屋を手伝い、合間にダンジョン探しをする。

 しかし、新しいダンジョンなんて、そう簡単に見つかるものじゃない。
 最初は人に見つからない様な場所にこっそり作るもんだからだ。
 そして、徐々に拡張していき人の手が届くところに入り口が作られる。

 人も来れる様な場所にあるということは、それだけ力を蓄えた。
 そういう風に見て取れるのだけど……。
 ダンジョンがどこにどうやって作られるのかを知れば知るほど。
 ジュノーがいかにポンコツだったか、と言うことに気づく。

 どうせオリハルコンがある場所に何も考えずに作ったんだろうな。
 まあ、何にせよ出会って今があるってことでいいじゃないか。

「よし……ポチ、今日も気合い入れていこう」

「ォン」

 そんなことを考えながら朝からあの公園に顔を出すと……。

「ほら、一緒に飲み物どうだ? 朝からエール飲んでけ!」

「こっちはヘルシーな朝採れ果実ジュースだ! 良いぞ!」

「脂っこいものにはこっちもおすすめだ~!」

 出店が20倍くらいに増えていた。

「えっ……?」

「アォン……?」

 ポチと二人、目を点にして困惑する。
 昨日まで、アメリカンドッグ屋しかなかった寂れた公園だったのに。
 俺はまたどこか違う世界に召喚されてしまったのかと、軽くビビる。

「おはようさん!」

 立ち尽くしていると、シルビアがやってきた。

「どういう状況なんですか、これ」

「ん? わかんねえ」

 シルビアも首を傾げながら言う。

「なんか営業準備してたら、いつの間にか集まってきてた」

「なるほど……」

 流行りを演出した結果。
 それに合わせて一気に別所でやっていた連中も来た訳だ。
 貿易船で勝手に商売を始めた連中と同じ。
 この手の奴らが、こういった機会を逃すはずがないからな。

 最初はもろにサクラだったけど。
 人を呼ぶ土壌が自然とできてしまっている。
 うーん、偶然だろうとは思うけど。
 これは良い環境になったのかも知れない。

「なんかせっかく得られた客を取られそうで怖いぜ」

「大丈夫でしょ、彼らもここのメインが何かわかってますし」

 だから、飲み物とか付け合わせを販売しているのだ。
 アメリカンドッグの抱き合わせを狙ってね。

「おいまだか! バタードッグ食わせろ!」

「食わせろどすこい!」

「おうおう! 待ってろ今開店するからよ!」

 急かす様な声に反応するシルビア。
 彼の屋台には開店前から行列ができている。
 みんなアメリカンドッグが待ち遠しいのだ。

 甘さがあるから、冷めても普通に食えるしな。
 おやつ感覚で。

 この三日間、売り上げの状況を紙に書き出して見たのだが……。
 なんと面白いことに、二日目からバタードッグが好調だった。

 アメリカンドッグは安定の売り上げを誇る。
 ベビーアメリカンドッグは持ち帰りが多数。

 そんな中、一部の熱狂的な魔族が、バタードッグを買う。
 朝から大量に購入して、昼も大量に購入して、夜も、だ。

 脂肪分の塊を蜂蜜アレンジした若干甘めの衣で揚げて、さらに糖衣。
 爆発的なカロリーを持つと思うのだけど。
 なんかしらんが、それが一部魔族の方々に強烈にヒットしていた。

「バタードッグ! バタードッグ! バタードッグ!」

「バターを揚げてそのまま食う、神を冒涜する料理!」

「バタードッグ! バタードッグ! バタードッグ!」

「アメドが勇者の愛した料理なら、バタドは俺たち半巨人族の愛した料理!」

「バタードッグ! バタードッグ! バタードッグ!」

 うおおおおおお、宗教だ。
 もはや宗教みたいな立ち位置になっている、バタードッグ。

「よしきた! 今から揚げて揚げて、揚げまくるぞ!」

「うおおおおお! バタードッグ! バタードッグ!」

 そしてバター犬たちを盛り立てるシルビア。
 これは固定客として根付いてくれそうだな。

 ある意味、シルビアが神格化して行きそうな勢いだった。
 バタードッグに関して、この世界では彼が生みの親。
 新たな伝説誕生の瞬間に、俺は立ち会っているのかも知れない。

「主役のアメド屋も開店したから、俺たちも本気出すぞ!」

「よし! お前らサラダもちゃんと食えよ! こっちだ!」

「こっちはうんと甘くした発泡りんごジュースだ!」

「ポテトはどうだ? 皮付きポテトもめっちゃ良いぜ!」

 まるでジャンクフード公園だな。
 寂れた公園が、ものの三日でとんでもない有様だ。
 これだけ賑わっていると、人が人を呼ぶ。
 いつの間にか、公園には様々な人がごった返していた。

 いや、フードコートってやつか、これ?
 飛空船事業がスタートしたら、人もこぞってくる様になる。
 とにかく乗ってクロイツにくる人も多いだろう。
 その時に、こんな出店街があったら売り上げにも繋がりそうだ。
 あとでアドラーに許可取っとこうっと……。
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