装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

634 そんなわけで後始末の話

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 さて、それから回復の秘薬を用いて、シルビアの体力はみるみる回復した。
 アドラーが呼び寄せた治療師のおかげでもある。

「……なんか、色々と迷惑かけちまったなあ」

 城内客室の一つでベッドに横たわるシルビアは、ぼーっとした表情でそう言った。

「いえいえ」

「ォン」

 ポチを抱っこして隣の椅子に腰掛けながら、俺たちは首を横に振る。
 迷惑だなんてとんでもない。
 傍迷惑な奴は、シルビアではなく邪魔してきたあいつらなのだ。

「ここが王城ってことは……えっと、お前ら王族なの?」

 サーっとシルビアの顔から血の気が引いていく。
 勘違いしている様だが、俺は王族でもなんでもない。

「ただの一般人ですよ」

 巻き込まれて召喚されたっていう、ただの。

「ちょっとした事情でこの城に客人として招かれてるだけです」

「はあ……俺、一応敬語使ったほうがいい?」

「とんでもない、そのままが一番です」

「わ、わかった」

 それから俺は起きてきたシルビアに、事の顛末を色々と説明した。
 公園でボコられたのは、前職の受付に座っていた女性が発端だということ。
 彼女は自分がサボるために、シルビアの屋台をどうしても邪魔したかった。

 そのあと、ボコった奴ら全員を逆にボコり返して。
 一応ボコボコの刑から逃れた女性に関しては、図書館の職ごと解体した。

 過去の勇者らが残した書物は、すべて俺が解読したってことにしてある。
 図書館は、解読をする場所ではなく、普通の図書館に変貌を遂げたのだ。
 そこそこ居た人員も、半分くらいになる。
 受付にいた女性は、職を失うことになって部屋も引き払ってどこぞへ消えたそうだ。

 もう解読の必要もないので、シルビアのしがらみもこれで消えたこととなる。
 存分に、これからやろうとしていた料理を続けてくれってことだな!

「あー、やっぱ色々と迷惑かけてるじゃねえか……」

 シルビアはベッドの上でバッと俺たちに頭を下げる。

「申し訳ねえ、そして色々と便宜を図ってくれてありがとう!」

「いえいえ、そんな……」

「ポチも、料理を教えてくれたり営業手伝ってくれてありがとう!」

「ォンォン、アォン……」

 俺と同じ様に、ポチも頬を掻いていた。
 なんだかくすぐったいのだろう。
 わかる、わかるぞ、その気持ち。

 まっすぐに向けられる感謝の気持ち、悪くない。
 悪くないんだけど、どう受けていいかわかららないのだ。
 でも、それが当然だと思うのは間違いだと感じる。
 俺とポチのこの反応は、たぶん正解なのだろうな……。

「あ、そうだ。アメリカンドッグ屋の今後なんですけど」

「ん? おお、どうした?」

「これからクロイツ首都に空飛ぶ船の発着所が作られます」

「空飛ぶ船? ええ?」

「陸の港ですね。色々土産物屋とか店が並ぶ様になるんですが、あの公園の屋台群専用のスペースを設けますんで」

「ちょ、ちょっと待て! 話が、話が色々と見えてきてないんだが!」

「いやまあ、要するにそこの指揮をシルビアさんにお任せしますってことですよ」

「はあ……? はああああああ!?」

 ずーっと首を傾げていたシルビアは、声を大にして驚いていた。
 彼の仕事ぶりは、解読を直接要請していたアドラーも知っている。
 だから、図書館の解読班お取り潰しの時アドラーに言っておいたのだ。

 解読によって発覚した勇者たちの好物レシピ。
 これに関しては、勇者を新たに保有するクロイツの名物となるでしょうって。

 国からの補助が出て、旅費を格段に安くすることが可能だ。
 片道金貨10枚でも、数日で国をいくつも渡ることができる飛空船。
 安いだろ、めっちゃ。
 陸路だと、馬車代、そしてそこまでの宿代、食費。
 諸々を合わせたら10枚じゃ絶対に足りないんだ。
 そうすることによって人が一気に押し寄せることになる。

 絶対に陸の港は賑わう。
 そして港の土地の利権は俺たちが国から借りていて、なんでもやって良い。
 やっちゃおうよ、でかいショッピングモール。
 トガルの自由市場みたいなの、空港にもドカンと打ち上げちゃおうよ。

「えっと……俺がアメド屋始めたのって、つい一週間くらい前だぞ……?」

「時期なんて関係ないですよ」

 それはこれからだって、シルビアが一番理解していることだと思う。
 単純に、規模がいきなりでかくなってしまったってだけだ。
 うん、アメド屋を続けるのは全然良い。
 それ以外で屋台群を取り仕切る係がいるってだけなのだから。

 もちろん給料はその分大きいぞ。
 解読係をやっていた時よりも、もっともっと大きな額だ。
 これで安定を取り戻したら家族も戻ってくると思う。

 ま、どうするかはシルビア自身の問題。
 土足で踏み入って良いところではない。
 ただ、きっかけになってくれれば良いのだ。

「まあ、それでも説得力がなければ……雰囲気が似ていたって感じですかね」

「雰囲気……?」

 イグニールの言う、フィーリングの話である。
 ひたむきに頑張る姿に、俺はとある伝説の料理人の姿を重ねていた。
 嫌になって逃げ出すほど、メンタルは確かに弱いかもしれない。
 しかしながらその中でも再び立ち上がって前を向ける人って少ない。

 その理論で行くとシルビアもアメド屋から逃げ出してたかもしれない。
 まあ、その可能性は否定できないが、それもこれもフィーリングだ。
 なんだか、こいつは中々うまいことやるのではないだろうか。
 そんな感覚がかなりあった、重なったからここまで気合い入れたのだ。

 もともと人間関係とか、そう言うのを取り持つのが上手いタイプだ。
 前職のあの女が裏で色々と男漁りしたり、パワハラしたり。
 それで色々とぐっちゃぐっちゃになってしまっていたっていうのがあったから、彼は知らないうちに限界になっていた。
 真面目にコツコツやってくるっていう実績はあるから、たぶん大丈夫だろう。

「シルビアさんだったらいけるよな? ポチ?」

「アォン!」

 ポチもいけると言っている。
 ポチが言うなら、間違い無いさ。

「まあ、とりあえず今は公園で屋台を続けて、屋台群のメンバーを募ってください」

「任しとけ!」

「俺たちはとある用事で別所に移動するので、色々と忙しくなるとは思いますけど……」

「大丈夫だよ、一人でもできるさ。ちっと寂しくなるけど……また来てくれるだろ?」

 次は客として、いやどう言う繋がりだろうか?
 だがしかし、この縁は二度と切れることはないと、そう思った。
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