装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
333 / 650
本編

634 そんなわけで後始末の話


 さて、それから回復の秘薬を用いて、シルビアの体力はみるみる回復した。
 アドラーが呼び寄せた治療師のおかげでもある。

「……なんか、色々と迷惑かけちまったなあ」

 城内客室の一つでベッドに横たわるシルビアは、ぼーっとした表情でそう言った。

「いえいえ」

「ォン」

 ポチを抱っこして隣の椅子に腰掛けながら、俺たちは首を横に振る。
 迷惑だなんてとんでもない。
 傍迷惑な奴は、シルビアではなく邪魔してきたあいつらなのだ。

「ここが王城ってことは……えっと、お前ら王族なの?」

 サーっとシルビアの顔から血の気が引いていく。
 勘違いしている様だが、俺は王族でもなんでもない。

「ただの一般人ですよ」

 巻き込まれて召喚されたっていう、ただの。

「ちょっとした事情でこの城に客人として招かれてるだけです」

「はあ……俺、一応敬語使ったほうがいい?」

「とんでもない、そのままが一番です」

「わ、わかった」

 それから俺は起きてきたシルビアに、事の顛末を色々と説明した。
 公園でボコられたのは、前職の受付に座っていた女性が発端だということ。
 彼女は自分がサボるために、シルビアの屋台をどうしても邪魔したかった。

 そのあと、ボコった奴ら全員を逆にボコり返して。
 一応ボコボコの刑から逃れた女性に関しては、図書館の職ごと解体した。

 過去の勇者らが残した書物は、すべて俺が解読したってことにしてある。
 図書館は、解読をする場所ではなく、普通の図書館に変貌を遂げたのだ。
 そこそこ居た人員も、半分くらいになる。
 受付にいた女性は、職を失うことになって部屋も引き払ってどこぞへ消えたそうだ。

 もう解読の必要もないので、シルビアのしがらみもこれで消えたこととなる。
 存分に、これからやろうとしていた料理を続けてくれってことだな!

「あー、やっぱ色々と迷惑かけてるじゃねえか……」

 シルビアはベッドの上でバッと俺たちに頭を下げる。

「申し訳ねえ、そして色々と便宜を図ってくれてありがとう!」

「いえいえ、そんな……」

「ポチも、料理を教えてくれたり営業手伝ってくれてありがとう!」

「ォンォン、アォン……」

 俺と同じ様に、ポチも頬を掻いていた。
 なんだかくすぐったいのだろう。
 わかる、わかるぞ、その気持ち。

 まっすぐに向けられる感謝の気持ち、悪くない。
 悪くないんだけど、どう受けていいかわかららないのだ。
 でも、それが当然だと思うのは間違いだと感じる。
 俺とポチのこの反応は、たぶん正解なのだろうな……。

「あ、そうだ。アメリカンドッグ屋の今後なんですけど」

「ん? おお、どうした?」

「これからクロイツ首都に空飛ぶ船の発着所が作られます」

「空飛ぶ船? ええ?」

「陸の港ですね。色々土産物屋とか店が並ぶ様になるんですが、あの公園の屋台群専用のスペースを設けますんで」

「ちょ、ちょっと待て! 話が、話が色々と見えてきてないんだが!」

「いやまあ、要するにそこの指揮をシルビアさんにお任せしますってことですよ」

「はあ……? はああああああ!?」

 ずーっと首を傾げていたシルビアは、声を大にして驚いていた。
 彼の仕事ぶりは、解読を直接要請していたアドラーも知っている。
 だから、図書館の解読班お取り潰しの時アドラーに言っておいたのだ。

 解読によって発覚した勇者たちの好物レシピ。
 これに関しては、勇者を新たに保有するクロイツの名物となるでしょうって。

 国からの補助が出て、旅費を格段に安くすることが可能だ。
 片道金貨10枚でも、数日で国をいくつも渡ることができる飛空船。
 安いだろ、めっちゃ。
 陸路だと、馬車代、そしてそこまでの宿代、食費。
 諸々を合わせたら10枚じゃ絶対に足りないんだ。
 そうすることによって人が一気に押し寄せることになる。

 絶対に陸の港は賑わう。
 そして港の土地の利権は俺たちが国から借りていて、なんでもやって良い。
 やっちゃおうよ、でかいショッピングモール。
 トガルの自由市場みたいなの、空港にもドカンと打ち上げちゃおうよ。

「えっと……俺がアメド屋始めたのって、つい一週間くらい前だぞ……?」

「時期なんて関係ないですよ」

 それはこれからだって、シルビアが一番理解していることだと思う。
 単純に、規模がいきなりでかくなってしまったってだけだ。
 うん、アメド屋を続けるのは全然良い。
 それ以外で屋台群を取り仕切る係がいるってだけなのだから。

 もちろん給料はその分大きいぞ。
 解読係をやっていた時よりも、もっともっと大きな額だ。
 これで安定を取り戻したら家族も戻ってくると思う。

 ま、どうするかはシルビア自身の問題。
 土足で踏み入って良いところではない。
 ただ、きっかけになってくれれば良いのだ。

「まあ、それでも説得力がなければ……雰囲気が似ていたって感じですかね」

「雰囲気……?」

 イグニールの言う、フィーリングの話である。
 ひたむきに頑張る姿に、俺はとある伝説の料理人の姿を重ねていた。
 嫌になって逃げ出すほど、メンタルは確かに弱いかもしれない。
 しかしながらその中でも再び立ち上がって前を向ける人って少ない。

 その理論で行くとシルビアもアメド屋から逃げ出してたかもしれない。
 まあ、その可能性は否定できないが、それもこれもフィーリングだ。
 なんだか、こいつは中々うまいことやるのではないだろうか。
 そんな感覚がかなりあった、重なったからここまで気合い入れたのだ。

 もともと人間関係とか、そう言うのを取り持つのが上手いタイプだ。
 前職のあの女が裏で色々と男漁りしたり、パワハラしたり。
 それで色々とぐっちゃぐっちゃになってしまっていたっていうのがあったから、彼は知らないうちに限界になっていた。
 真面目にコツコツやってくるっていう実績はあるから、たぶん大丈夫だろう。

「シルビアさんだったらいけるよな? ポチ?」

「アォン!」

 ポチもいけると言っている。
 ポチが言うなら、間違い無いさ。

「まあ、とりあえず今は公園で屋台を続けて、屋台群のメンバーを募ってください」

「任しとけ!」

「俺たちはとある用事で別所に移動するので、色々と忙しくなるとは思いますけど……」

「大丈夫だよ、一人でもできるさ。ちっと寂しくなるけど……また来てくれるだろ?」

 次は客として、いやどう言う繋がりだろうか?
 だがしかし、この縁は二度と切れることはないと、そう思った。
感想 9,840

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました