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本編
635 ダンジョンを捕まえに行こう
しおりを挟むさて、アメリカンドッグ屋の件も無事に終了し、いよいよダンジョン捜索に乗り出すこととなった。
とりあえず今からダンジョン捜索に着手します、とアドラーに伝えに行く。
「ようやくですか」
「はい」
アドラーはアメリカンドッグを美味しそうに頬張りながら言った。
「まあ、良いでしょう。この間に大きな収穫もありましたからね」
「でしょう? ですから大目に見てくださいよ」
勇者の好物見つけたり、書物解読したり。
さらにはフードコートのアイデアとか、諸々を提示した。
これで俺も有能の仲間入りかな?
いや、周りが有能で俺は繋げただけなんだよなあ……。
社会の底辺を生きていた俺には、有能は程遠い存在である。
うわぁ、頑張ろう……。
ビッグになろう。
高級車のりてぇ。
高級住宅街に土地買うってやばいっすか?
「なんだか厚かましくなってきましたね」
「そんなことよりアドラー様」
「なんですか?」
「子供がジャンクフードを食べるのはあんまり良くないらしいですよ」
皮肉だ。
アドラーは俺の言葉に笑いながら返した。
「大人ですから大丈夫です」
「失礼ながら、ずっと気になってたんですけどいくつなんですか?」
「秘密です」
そっスか。
まあ、良いでしょう。
異世界なんだから見た目は子供、頭脳は大人な存在がいてもおかしくない。
白骨化して生きている聖女だっているんだから。
ふと、骨は全てをさらけ出して、実は全裸状態なんだよな。
なんて一瞬思ってしまった。
エロさのカケラは微塵もないけど。
さて、話を戻す。
「今から目撃情報のあるダンジョンへと向かうんですが、一応言っておきますけど、籠絡は自分でやってくださいね?」
「ええ、分かっておりますよ。王の威信にかけてでもありとあらゆるものを用意しておきます」
それは贅沢なこったな……。
しかし、果たして上手く行くだろうか。
まあ即物的な性格の奴かどうか、実際に見て判断すれば良い。
「クロイツの地下に思いっきりダンジョン作って良いよって話をしても良いですか?」
「おお、早速ダンジョンとの交渉条件ですか。前人未到でワクワクします」
「……付いてきます? っていうか自分でやって欲しいんですけど」
「政務の方を取り仕切らないといけませんので、ちょっとそれは無理です」
誰かさんのおかげで色々と忙しい状況ですし、とアドラーは言っていた。
まあ急ピッチで空港事業を進めているからね。
同じ規模のものを他の3カ国の領地にも作る必要があるのだから……。
事前に国に通達はしておくもんなのだ。
もっとも各領地で自治が認められている場所。
通達をするだけで止められはしない。
だがアドラーはそれを用いて色々と他にも企てているらしい。
まだ教えてくれないが絶対に悪いようにはしないとのこと。
「飛空船とダンジョンコアを用いた世界征服とか、そう言うのはNGですよ?」
「そんなことしませんよ。ええ、全く考えてもいないです」
「本当ですかね……」
「本当です。しかし、世界は一つ革命を迎えようとしています。そこで先手を打って出るのです」
「先手?」
「もし、未曾有の危機が再び訪れるとして、勇者も使えない状況だとしたら……自分らでやるしかないでしょう?」
「まあ……」
その通りだが……結局勇者がその火種のようなものだったりはする。
しかし、考えても見れば後出しとなる結果も考えうるのだ。
過去の歴史と同じように、何かが起こって勇者を召喚するという正当な場合もである。
その時のために、全体的に近代化して強くならなければならない。
「と、言うことで勇者連合の他に、協商連合として経済圏を作っておきます」
「ふむむ?」
「飛空船事業が成功すれば、人の行動域は大きく伸びて移動時間も短縮化。商売も大きく国を跨いだものになってきます。そうしたグローバルになった世界では、法律も新たなものを整備しなくてはならないでしょう?」
「な、なるほど」
その辺はわからんが、別の強固な結びつきを作っておくということだろう。
まあいいや。
ダンジョンコアを捕まえたら、こいつをよく見ておけと言っておくか。
何かあればダンジョンに捕まえといてって感じで。
「とりあえず行ってきますね?」
「はいよろしくお願いします」
話が長くなりそうだったので、さっさと踵を返して城を出ることにする。
そんな中、アドラーが俺の背中にこんな言葉を投げかけた。
「そうだトウジさん」
「なんですか?」
「ケチャップとマスタードは一気につけて食べる派ですか? ちまちまつけて食べる派ですか?」
「ええ……」
いきなり何その質問。
彼なりに対等な感じに接しようとしているのだろうかね?
ちなみに一気につけて食べる派である。
=====
今月、24日に3巻発売となります。
ツイッターにて、書影の公開を行なっております。
発売後、こちらにも掲載いたします。
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