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本編
653 あきの家のだんらん
「どこぞに消えて心配したと思うたら、まーた知らんところで勝手に話を進めとるやん」
「すまん」
「別に商売もんからすれば願ったり叶ったりやけどさ、うちもついて行くんしんどいで」
「ごめん」
「とりあえずギリスは何も心配あらへんってことだけ教えておくから、おかえりなさい」
「はい、ただいま」
夕食どきにマイヤーが帰って来て、俺の姿を見て持っていたカバンを落とした。
それからお酌をさせられつつ、こんこんと説教を受けている。
再召喚されてしまったものは、致し方ないと思うのだけど……。
一緒にオデッセイ島を楽しんで、戻って来てからいきなりこれだったのだ。
寂しい気持ちもわかる。
「とりあえずクロイツビールです」
「おお! エールとちゃうやつやん! はよそれ出しや!」
プリプリ怒るマイヤーには酒である。
クロイツに売っていた発酵させた麦の汁を献上して、ことなきを得た。
「ごくごくごくごく! うんまぁー!」
「おお、美味しいですな、このビールとやら」
さっそくリクールと酒盛りを開始するマイヤー。
「冷たくする魔導機器の樽に入ってるのもグッドや!」
「結構値段するんだからなそれ」
クロイツの店では結構主流になっているビール樽の魔導機器。
蛇口をひねるとキンキンに冷えたビールが出る。
そんな夢のような魔導機器だ。
やっぱ魔導機器開発って生活の質を上げるものが良いよな!
「おらっ、お待たせだぜお前ら! 今日は寿司三昧と行こうぜ!」
「おお!」
ごくごくぷはーを仲良く行うマイヤーとリクールを尻目に。
俺の帰宅に駆けつけてくれたパインが料理を運んで来た。
デンデンデンッといろんな魚を使った寿司がテーブルに並ぶ。
「極彩マンボウの身は俺もしっかり保存してあるから、あの日の続きだぜ」
「ありがとうございます、パインさん」
「良いってことよ。ほら、ピー助が育ててポチ公が作ったサラダも食べろ」
「はい」
俺の両腕からてちてちと地下に向かっていったのは、育てた野菜を振る舞いたかったからだそうだ。
再召喚されてから、ピーちゃんは毎日しっかり浄水の池の周りにある植物の手入れを行なっていた。
薬草もしっかりとって、所定の場所にしっかり置いてくれるという働きっぷり。
「偉いな、ピーちゃん」
「ぷーぴっ」
「このサラダ、ポチに教わりながら一緒に作ったのよね?」
野菜をもしゃもしゃしながらイグニールが聞く。
「ぷっ」
頷くピーちゃん。
なにこの可愛さ。
もう、この子ずーっとうちに置いておきたいんだけど。
「今日はピーちゃんとポチを両脇に添えて寝るぞ、俺!」
これだよ、これ。
やっぱり我が家が一番だなあ、としみじみ感じる。
どんなに広い部屋よりも。
どんなに高い家具よりも。
どんなに豪華な食事よりも。
こうしてこいつらとみんなで食べる飯の方が美味い。
グルーリングの言っていたように心が満足するんだ。
この平和を勝ち取るために、賢者にあって帰還の方法を聞こう。
高校生たちを無事に日本に送り返して、俺はここで余生を送る。
「……なんだか嬉しそうね、トウジ」
「そりゃ嬉しいよ。みんな揃ってるのが一番だから」
「そうね、みんな揃ってるのが一番よね」
イグニールはニコリを微笑む。
その笑顔にどきっとした。
「とりあえず一緒に帰って来たけど、私からも言っておく……おかえりなさい」
「……うん、ただいま」
「お暑いですな~、暑くて服を脱ぎたくなりましたぞ~、あっ、服どころか皮も肉も中身もありませんけどね?」
そんな俺たちの様子を見ながらカラカラと音を立てて笑う骨。
「茶化すなよ、学生のノリか?」
「もう老婆心ですぞ~、何年生きてると思ってるんですか~」
軽く100歳を超えてるんだよな、この骨。
だが骨が言うには体の年齢はまだ20代だそうだ。
若くして骨になって、そのまんまだからとのこと。
知らんがな。
「そう言えば、新しくスケルトンが仲間になってるけど、向こうで従魔にしたのか?」
次々と料理を運んでくるパインの言葉に答える。
「ですね。行きずりでそのまま」
「中々ウィットの富んだ骨やんな!」
マイヤーもビールを飲みながら会話に加わる。
「気になるんやけど、スケルトンって元々人間とかやってん?」
「そうですぞ~」
「へええ~! 前世の記憶とか覚えとるもんなん?」
「ばーっちり覚えてますぞ~!」
そうか、まだこいつが聖女だって言ってないから、ただのスケルトンだとみんな思ってるんだ。
それをわかっているのか、骨はケラケラと笑いながら適当に会話を進めている。
「前世なにやってん? 昔の記憶とか聞いて見たいわ~!」
「あっ、昔は勇者一行とともに聖女をやってましたぞ」
「……は? なんて?」
固まるマイヤーとパイン。
「だから、召喚されて聖女として大活躍してたんですぞ」
「……トウジ、うち酔っとるん? 聖女って聞こえたんやけど?」
「ああ、この骨、昔の勇者の一員である聖女の成れの果てだよ」
骨の思惑に乗って、俺もさらっと暴露してやると……。
「ぶーーーー!!」
マイヤーはビールを吹き出していた。
色々と衝撃的だったんだろうな。
隣に座っていたリクールの顔面がビールだらけになっていた。
「マイヤーお嬢様……」
「いやいやいやいや、いきなりスケルトン連れて来て聖女って冗談きついわ! でもトウジってこう言う時冗談言わないタイプだから信じるとしても、それもそれで驚かん方が可笑しいやろがー!」
「イエーイ、ドッキリ大成功ですぞ~」
「イ、イエーイ」
骨とハイタッチする。
しかし、これはドッキリと言えるのだろうか?
ドッキリってほんとは違いますよみたいなオチがつくはずだ。
普通にガチで元々聖女だったんだから、本当ドッキリである。
嘘ではないのでドッキリではない??
「ってことは、俺の探し求めているあのレシピについて知っているのか!」
唐突にパインが身を乗り出す。
「あのレシピとはなんですぞ?」
「過去に、勇者一行の好物を記した書物を昔探したんだけど、中々見つからなくてなー!」
「ああ、それでしたらクロイツの図書館にあったんですよね? トウジ様?」
「あ、うん。あったあった」
「うおおお! それ、俺へのお土産にしてくれよー! ……って、直接聞けば良いのか」
両膝ついて頭を抱え、そしてすっと立ち上がって納得するパイン。
忙しいおっさんだな……。
「聖女がいるなら伝説の勇者好物コンプリートだぜ! 世界初か!?」
「あっ、残念ながら解読されて他の人がすでに作ってます……」
なんとなく申し訳なくそう言うと、パインはガクッと崩れ落ちた。
「な、なんだとおおおおおぉぉぉぉ~……」
「クロイツの人気屋台になったんで、飛空船整ったら言ってみると良いです」
「ふぐう、先を越されていたか……これは辛いぜ……」
メンタル弱っ。
久々にクソ雑魚メンタル姿を見たな。
「アォン」
そんな様子を見ながら、ポチが誇ったような顔をする。
「な、なんだと……ポチ公はすでに作っただと……」
「ォン!」
「で、弟子に先越されるとは、一生の不覚……ぐふっ……」
「アォン!?」
と、吐血しながら白目を剥いて失神した。
どこまでクソ雑魚メンタル過ぎぃ。
誇っていたポチも焦ったようにオロオロとしている。
「もう、騒がしいし! ご飯は静かに食べるもんだし!」
「お前が言うな、ジュノー」
殺伐とした空気は俺には合わん。
このくらい賑やかな方が大助かりだ。
「やっぱり飯はみんなで賑やかに食うのが一番だな。な、イグニール」
「え? あ、うん……そうね」
「イグニール? どうした、ぼーっとして。熱でもある?」
「いや、無いわよ。大丈夫。なんだかこう言うの良いなってしみじみしてただけ」
「だよな。俺もずーっとさっきからしみじみしっぱなし」
「これに慣れちゃうと、もう一人では食べれなくなっちゃうわね」
「うん」
俺はストレスでご飯に味がしなくなった。
そんなレベルで、みんながいないとダメな体なんだ。
一人で生きよう、生きていこう。
そう思っていた時期には、もう戻れなくなっていた。
「すまん」
「別に商売もんからすれば願ったり叶ったりやけどさ、うちもついて行くんしんどいで」
「ごめん」
「とりあえずギリスは何も心配あらへんってことだけ教えておくから、おかえりなさい」
「はい、ただいま」
夕食どきにマイヤーが帰って来て、俺の姿を見て持っていたカバンを落とした。
それからお酌をさせられつつ、こんこんと説教を受けている。
再召喚されてしまったものは、致し方ないと思うのだけど……。
一緒にオデッセイ島を楽しんで、戻って来てからいきなりこれだったのだ。
寂しい気持ちもわかる。
「とりあえずクロイツビールです」
「おお! エールとちゃうやつやん! はよそれ出しや!」
プリプリ怒るマイヤーには酒である。
クロイツに売っていた発酵させた麦の汁を献上して、ことなきを得た。
「ごくごくごくごく! うんまぁー!」
「おお、美味しいですな、このビールとやら」
さっそくリクールと酒盛りを開始するマイヤー。
「冷たくする魔導機器の樽に入ってるのもグッドや!」
「結構値段するんだからなそれ」
クロイツの店では結構主流になっているビール樽の魔導機器。
蛇口をひねるとキンキンに冷えたビールが出る。
そんな夢のような魔導機器だ。
やっぱ魔導機器開発って生活の質を上げるものが良いよな!
「おらっ、お待たせだぜお前ら! 今日は寿司三昧と行こうぜ!」
「おお!」
ごくごくぷはーを仲良く行うマイヤーとリクールを尻目に。
俺の帰宅に駆けつけてくれたパインが料理を運んで来た。
デンデンデンッといろんな魚を使った寿司がテーブルに並ぶ。
「極彩マンボウの身は俺もしっかり保存してあるから、あの日の続きだぜ」
「ありがとうございます、パインさん」
「良いってことよ。ほら、ピー助が育ててポチ公が作ったサラダも食べろ」
「はい」
俺の両腕からてちてちと地下に向かっていったのは、育てた野菜を振る舞いたかったからだそうだ。
再召喚されてから、ピーちゃんは毎日しっかり浄水の池の周りにある植物の手入れを行なっていた。
薬草もしっかりとって、所定の場所にしっかり置いてくれるという働きっぷり。
「偉いな、ピーちゃん」
「ぷーぴっ」
「このサラダ、ポチに教わりながら一緒に作ったのよね?」
野菜をもしゃもしゃしながらイグニールが聞く。
「ぷっ」
頷くピーちゃん。
なにこの可愛さ。
もう、この子ずーっとうちに置いておきたいんだけど。
「今日はピーちゃんとポチを両脇に添えて寝るぞ、俺!」
これだよ、これ。
やっぱり我が家が一番だなあ、としみじみ感じる。
どんなに広い部屋よりも。
どんなに高い家具よりも。
どんなに豪華な食事よりも。
こうしてこいつらとみんなで食べる飯の方が美味い。
グルーリングの言っていたように心が満足するんだ。
この平和を勝ち取るために、賢者にあって帰還の方法を聞こう。
高校生たちを無事に日本に送り返して、俺はここで余生を送る。
「……なんだか嬉しそうね、トウジ」
「そりゃ嬉しいよ。みんな揃ってるのが一番だから」
「そうね、みんな揃ってるのが一番よね」
イグニールはニコリを微笑む。
その笑顔にどきっとした。
「とりあえず一緒に帰って来たけど、私からも言っておく……おかえりなさい」
「……うん、ただいま」
「お暑いですな~、暑くて服を脱ぎたくなりましたぞ~、あっ、服どころか皮も肉も中身もありませんけどね?」
そんな俺たちの様子を見ながらカラカラと音を立てて笑う骨。
「茶化すなよ、学生のノリか?」
「もう老婆心ですぞ~、何年生きてると思ってるんですか~」
軽く100歳を超えてるんだよな、この骨。
だが骨が言うには体の年齢はまだ20代だそうだ。
若くして骨になって、そのまんまだからとのこと。
知らんがな。
「そう言えば、新しくスケルトンが仲間になってるけど、向こうで従魔にしたのか?」
次々と料理を運んでくるパインの言葉に答える。
「ですね。行きずりでそのまま」
「中々ウィットの富んだ骨やんな!」
マイヤーもビールを飲みながら会話に加わる。
「気になるんやけど、スケルトンって元々人間とかやってん?」
「そうですぞ~」
「へええ~! 前世の記憶とか覚えとるもんなん?」
「ばーっちり覚えてますぞ~!」
そうか、まだこいつが聖女だって言ってないから、ただのスケルトンだとみんな思ってるんだ。
それをわかっているのか、骨はケラケラと笑いながら適当に会話を進めている。
「前世なにやってん? 昔の記憶とか聞いて見たいわ~!」
「あっ、昔は勇者一行とともに聖女をやってましたぞ」
「……は? なんて?」
固まるマイヤーとパイン。
「だから、召喚されて聖女として大活躍してたんですぞ」
「……トウジ、うち酔っとるん? 聖女って聞こえたんやけど?」
「ああ、この骨、昔の勇者の一員である聖女の成れの果てだよ」
骨の思惑に乗って、俺もさらっと暴露してやると……。
「ぶーーーー!!」
マイヤーはビールを吹き出していた。
色々と衝撃的だったんだろうな。
隣に座っていたリクールの顔面がビールだらけになっていた。
「マイヤーお嬢様……」
「いやいやいやいや、いきなりスケルトン連れて来て聖女って冗談きついわ! でもトウジってこう言う時冗談言わないタイプだから信じるとしても、それもそれで驚かん方が可笑しいやろがー!」
「イエーイ、ドッキリ大成功ですぞ~」
「イ、イエーイ」
骨とハイタッチする。
しかし、これはドッキリと言えるのだろうか?
ドッキリってほんとは違いますよみたいなオチがつくはずだ。
普通にガチで元々聖女だったんだから、本当ドッキリである。
嘘ではないのでドッキリではない??
「ってことは、俺の探し求めているあのレシピについて知っているのか!」
唐突にパインが身を乗り出す。
「あのレシピとはなんですぞ?」
「過去に、勇者一行の好物を記した書物を昔探したんだけど、中々見つからなくてなー!」
「ああ、それでしたらクロイツの図書館にあったんですよね? トウジ様?」
「あ、うん。あったあった」
「うおおお! それ、俺へのお土産にしてくれよー! ……って、直接聞けば良いのか」
両膝ついて頭を抱え、そしてすっと立ち上がって納得するパイン。
忙しいおっさんだな……。
「聖女がいるなら伝説の勇者好物コンプリートだぜ! 世界初か!?」
「あっ、残念ながら解読されて他の人がすでに作ってます……」
なんとなく申し訳なくそう言うと、パインはガクッと崩れ落ちた。
「な、なんだとおおおおおぉぉぉぉ~……」
「クロイツの人気屋台になったんで、飛空船整ったら言ってみると良いです」
「ふぐう、先を越されていたか……これは辛いぜ……」
メンタル弱っ。
久々にクソ雑魚メンタル姿を見たな。
「アォン」
そんな様子を見ながら、ポチが誇ったような顔をする。
「な、なんだと……ポチ公はすでに作っただと……」
「ォン!」
「で、弟子に先越されるとは、一生の不覚……ぐふっ……」
「アォン!?」
と、吐血しながら白目を剥いて失神した。
どこまでクソ雑魚メンタル過ぎぃ。
誇っていたポチも焦ったようにオロオロとしている。
「もう、騒がしいし! ご飯は静かに食べるもんだし!」
「お前が言うな、ジュノー」
殺伐とした空気は俺には合わん。
このくらい賑やかな方が大助かりだ。
「やっぱり飯はみんなで賑やかに食うのが一番だな。な、イグニール」
「え? あ、うん……そうね」
「イグニール? どうした、ぼーっとして。熱でもある?」
「いや、無いわよ。大丈夫。なんだかこう言うの良いなってしみじみしてただけ」
「だよな。俺もずーっとさっきからしみじみしっぱなし」
「これに慣れちゃうと、もう一人では食べれなくなっちゃうわね」
「うん」
俺はストレスでご飯に味がしなくなった。
そんなレベルで、みんながいないとダメな体なんだ。
一人で生きよう、生きていこう。
そう思っていた時期には、もう戻れなくなっていた。
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