文字の大きさ
大
中
小
436 / 650
本編
736 恋愛師匠
なんとも猛烈なオチがあったわけだが、ギフのことはもう忘れよう。
俺にぶつけて木っ端微塵になったドアの修理代とは、すごい因果だ。
「じゃ、俺はそろそろ行くよ、みんなが待ってるし」
「一応聞くけど、みんなって?」
「クラスメイト」
「……あっそう」
無邪気な笑顔で意気揚々と答えるセブンス。
クラスメイトの“女の子たち”なんだろうな。
女子はこいつにアピール合戦しまくってるみたいだけど。
当の本人は、ただ一緒に遊ぶ友達としか思ってない。
「セブンス、好きな子とか作らないの?」
「そう言うのは今はわかんないや、もう少し歳を重ねてからでいいよ」
ませてんなあ……。
「わかんない振りっしょ、それ」
「……まあね」
彼は笑いながら言う。
「今はみんなアピールするのが楽しいみたいだよ? 恋に恋するってやつかな」
「でもさ、最終的に選ばなきゃいけなくなった時ってどうするの?」
なんとなくだが、ふとそんなことを尋ねてみた。
20歳以上も離れた子供に何を聞いているのか。
自分でも馬鹿らしくなってくる。
だけど、このモテ男は天賦の才を持った神に選ばれし子だ。
なんとなく、俺が今だに心の隅に残したままの部分。
その解決の糸口を見つけ出してくれるかもしれないと、そう思ったのである。
「そんなの、その時になってみなきゃわからないよ。これは振りじゃない」
「そっか」
「でも悲しむ姿は見たくないから、できるところまで手は差し伸べるよね」
「それって勘違いさせちゃったりしない?」
「アハッ……かもね?」
でも、と彼は言葉を続けた。
「自分の気持ちと向き合うのは、自分しかいないよ。こっちが折り合いをつけさせるなんて無理」
そうだよな、進む道を決めるのはいつだって自分。
同じ様に、自分の気持ちと向き合えるのは自分しかいない。
そんな不可侵領域に土足で入り込むのは、失礼だ。
散々思い悩んで一歩一歩進んで、最近俺はそれをわかる様になった。
流れに乗ったままではなく、自分で考えて進む。
それをその歳でわかってるなんて、やっぱり彼は天才だ。
「みんな、心の中ではしっかり考えてるんだ」
「そうだな」
「ギフだって、クソみたいなことで全財産失っちゃったけど……毎日コツコツ働いて、コツコツお金貯めてたでしょ」
「少し驚いたよ」
ちょっとお金返してあげようかとも思った。
今日の飯代すらもジェラスにもってかれた可能性がある。
情けをかけるとは言えないが、今日の飯くらいは良いさ。
牛丼屋にお金払っといてやろう、きっちり3食分。
「だから、俺はそれまでいつも通り」
「もし、悩む様子を見ちゃいられなかったら? 離れて行ったら?」
「なんだろ? 繋がりがそれだけだったら仕方ないかもね?」
でもさ、とセブンスはイケメンスマイルを作り出した。
「長い間一緒にいる関係性って、それだけで切れるくらいやわじゃないよ」
「おお……」
後光が見えた。
少しだけ、心の中にあるモヤモヤが、晴れた気がした。
「余計なものが取っ払われて、ようやく残ったものが本当の友達なんじゃないかな?」
「なるほどねえ」
世の中のハーレム系主人公が、何故選ばずに。
周りの気持ちに応えず過ごしているのか。
それが少し理解できた気がした。
「おっさんはイグ姉大事にしなよ?」
「え?」
「あんなに良い女が嫁さんだなんて、最高の幸運だと思うから」
「お前に言われなくても、大事にしまくってるさ」
大切だ。ああ、大切だ。
色々と思い悩むことがあったけど。
こいつの顔を見てたら不思議と元気が出た。
「セブンスちょっとこい」
「んー?」
俺は近寄ってきたセブンスの頭に手を乗せた。
「初めてあった時から思ってたけど、お前すごいな」
「なんだよいきなり! でも、おっさんもすごいよ?」
「俺?」
「嫁さんできたからかわからないけど、今すっごい充実してる顔してるもん」
「そうかな?」
「そうだよ。本気で好きな人ができるって、そう言うことなのかなって、俺も勉強になった」
俺をそんな目で見てくれていたのか。
なんとも誇らしく思えてきた。
俺にとってセブンスは恋愛師匠なのにね!
「じゃ、ほんとにみんな待ってるから行くね! おっさんもイグ姉待ってるでしょ!」
「うん、じゃまたどこかで──」
笑顔でのお別れ。
その瞬間。
「──充実? なんだそれ? 全てを持ってますみたいな顔だな二人とも」
振り返って駆け出したセブンスの前に、フードを深くかぶった男が現れた。
「特にガキ、知った様な、わかった様な口聞いて、ムカつくなあ……」
男は、フードを脱ぎ捨てると焼けただれた様な顔と牙をむき出しにする。
過去の怨嗟に囚われたウィンストの様な、醜い顔。
「なっ」
いきなり現れた男の凶悪な顔に、セブンスは体を強張らせた。
「奪わせろ、全部」
「セブンス!」
「アォン!」
鋭い牙が、セブンスに喰らいつく。
感想 9,840
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています(旧:いらないと言ったのはあなたの方なのに)
水谷繭※7/30書籍発売予定です!6/29まで公開します。
完結まで一括投稿済。
なろうの方では削除する予定はありませんので、読み途中たけれど読みきれないという場合はそちらでお願いします☺️
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました
◆小説家になろうにも投稿しています
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
握夢(グーム)「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
処刑されるはずだった没落令嬢ですが、姫様の初夜を身代わりしたら子を授かりました
新 星緒没落伯爵令嬢のエルゼは大恩がある姫様を救うために、初夜の身代わりを引き受ける。
そして姫様や国を守るために誰にも行く先を告げずに国を去った。
三年後。初夜の晩に息子ヴァルターを授かっていたエルゼは、ひっそりと暮らしていた。ところが元婚約者に拉致られて、あわやというところに初夜の相手であるハインツ王子が現れる。
「ようやく見つけた。エルゼ、愛している」
「初夜の相手が君だと最初からわかっていたが?」
――身代わり初夜から始まる、純愛溺愛執着愛のお話!