装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
467 / 650
本編

767 ひ、左足がっ


「……はっ!」

 溶けた氷の水滴が頬を叩いて目が覚めた。
 どうやら、気を失っていたらしい。
 流れてきたマグマに照らされて、ジリジリと肌が焼けている。

「ここは……」

 どこだろか、という疑問はすぐに解決した。
 憤怒だ。
 怒りのままの攻撃に、飲み込まれたのである。

 全員。
 灼熱のマグマに飲まれたはずなのだけど……。

「生きてるのが不思議だわ、マジで」

 恐らく、フォルの効果がグループメンバーにのっていたからだ。
 死ぬかと思った、と言いそうになったけど。
 一回死んじゃってる説あるぞ、これ。

「パインのおっさんもグループに突っ込んどいてよかったぜ」

 グループリストを見ると、全員が健在。
 HPも満タンで生存していることがわかる。
 図鑑の連中は、1スロットだけ空いていた。

 フォルを召喚していた枠である。
 つまりは、キングさんはグレイトキングになれたのだろうか?
 わからん、マグマの濁流の時にお陀仏した可能性も……。

「いやいや、そんなことは考えるな」

 可能な限り、前向きな状況を考えて行動しよう。
 そうしないと、判断が鈍る。
 刻一刻を争う事態だからな、現状。

「にしても……」

 ジュニアのダンジョン貫通して崩壊させるとか。

「マジでやべーわ憤怒。超怖え」

「まあわしのパパじゃしのう」

「うわっ!?」

 寝転んだままため息をつく俺の隣に、ラブの顔面があった。
 驚いて立ち上がるのだが、そのまま転んでしまう。

「あ、あれ?」

「……左足、千切れとるのう」

「えっ」

 そっと自分の足に目を向けると、千切れてる。
 お、俺の足が膝上から下が寸断されてるぅ!

「わわわっ!」

「呆れた生命力じゃのう? 傷口は凍らせておいたから問題ないぞ」

「いや、いや待て、凍らせたとかそんな次元じゃなくない?」

 平然としてるけど、由々しき事態だぞこれは!
 足無くなってんねんで、ってやつだ。

「すっげぇ鋭利な切り口だけど……何がどうしてこうなった……」

「それはのう」

 ラブが教えてくれる。
 倒れて転がっている俺の足元に、丁度鋭利な氷が落ちてきたそうだ。
 それで一気にスパァンと、俺の足は切れてしまったらしい。

「丁度落ちてきた音で気がついたんじゃ、間に合わんくてすまんのう」

「いや、良いよ……」

 運が悪かったと言うことで、ここはひとつ収めておく。
 俺の装備はそんなに柔にできてないはずなんだがなあ……。
 VITガン盛り、耐性抜群。
 それでも切れてしまってるってことは、相当な質量があったのだろう。

 ダンジョン自体が氷で作られているからなあ。
 考えてみれば鋭利物だらけの超危険地帯でもあるのだ。

「傷口は凍ってるし、切れたばっかりならまだ大丈夫か」

 不幸中の幸いとすぐさま自分の左足をインベントリに収める。
 その様子を見て、ラブが呆れたように言った。

「意外と冷静じゃのう」

「左腕食われたことあるしね、暴食に」

「ふおー、意外と波乱万丈な怪我をしとるの」

「まあね」

 その時の左腕は傷も残らずちゃっちゃとくっついた。
 いや、くっつけたと言って良い。
 だから今回も、多分大丈夫である……た、多分。

「とりあえず左足の代わりにわしのツインテールつけるかのう?」

「いや、やめとくわ」

 帰って邪魔だろうしな。
 なんか意識するとひしひし痛みが襲ってきたのだけど。
 こいつのバカみたいな提案を聞いて、頭痛がした。
 足が痛いより、まだ慣れてる分マシなのかもしれない。

「どっこいしょ」

 ババアみたいな口調で俺の隣に腰掛けたラブが聞く。

「して、これからどうするんじゃー?」

「どうするもこうするも、みんなを探すしかないよ」

 マップには写っているから、いずれ見つかる。
 瓦礫を退けて道を作る用として、ロイ様を起用だ。
 グループリストのみんなのHPは満タン。
 なので、奇跡的に怪我はしていないはずである。

「違うぞ。集めて、その後じゃ」

「そんなの憤怒の怒りを鎮めるに決まってるだろ」

 そう告げると、ラブは小難しい表情をしていた。

「……みんな集まったら、さっさと引き返すんじゃ」

「はあ?」

「あの一撃以降、追撃は来とらんじゃろ? じゃから、こっそり逃げるくらいならば心配いらんのじゃ。パパの怒りも前に比べて多少は落ち着いとる節があるからのう」

「あ、あれで落ち着いてるのか……」

「ふふん、全盛期ともなれば邪竜の横っ面をぶん殴ってぶっ飛ばすことも可能じゃ! 勝負はつかんがのう!」

「そうなんだ……でもさ、止めなきゃ周りに被害が出るなんてことは大丈夫なのか?」

「被害が出るレベルだったら、とっくに近隣諸国に被害がでとる。その辺は心配いらんのう」

 聞くに、迷宮の最奥にまで引きこもってしまったらしい。
 ダンジョンの本能か。
 それともまだ自我というものが残されているのか。

 どっちにしろ。
 最悪の事態にならなかったことに感謝である。

「ラブはどうするんだ?」

「パパが再び暴走を始めるか心配じゃから、わしは戻るぞ。守護者じゃし」

「いや、逃げろよ」

 何言ってんだ。
 我が子だって理由も無視して攻撃を仕掛けてくるレベルだぞ。

「そんなところに行ったら、権限を持ってない今、確実に死ぬ」

 守護者は、ダンジョンコアには絶対勝てないのだから。

「じゃろうな」

 俺の言葉に、ラブは首を横に振る。

「でも、それはできんのじゃ」

「なんで」

「約束したんじゃ。怒りが静まるまで面倒を見るとのう」

「ええ……」

「身内の面倒はきっちりしっかり身内でなんとかするもんじゃ。主らが生きとる世界、意外とわしも好きでの? 何かの拍子にぶち壊れてしまうことは是が非にでも回避しておきたいのじゃ」

「……」

「パパも怒りで我を忘れとらんかったら、この世界が好きなのじゃ。じゃから、昔に邪竜を封印するべく勇者たちに力を貸したんじゃから、パパが守ったその世界、わしも守らんと」

「なるほど……」

 理由は理解できた。

「だったら俺もついて行くぞ」

「はー!? 巻き添えくらいかねんだけじゃから来るな!」

「いや、もう十分食らってるんですけど……」

 片足ないし。
 そもそも、ラブが心配だからこそビシャス勢力と戦ってたんだ。
 そこまでやって、命を捨てるような言動を見過ごすわけにはいかない。

「ジュノーがさ、楽しみにしてたんだよ。お前と会えるの」

「うむ? いきなりなんじゃ?」

「一緒に甘いもの食べるっつって、俺にバニラを取りに行けとせがむんだよ」

 せっかく教えてもらって取りに行ったカカオ。
 それから作ったチョコバニラの味、まだラブは知らないだろう。
 ジュノーは教えるのを楽しみにしていたからな。

「俺、あいつの約束後回しにしてばっかりだから、そのくらいはしてやらないと」

「……素直に友達じゃから協力すると言えば良いではないか」

「ぐっ」

 ま、まあそういう意味でもついて行くと言っているのである。
 行動する結果が同じなら、理由はなんだって良いだろうに。

「とにかく手伝うぞ。一人でやるより絶対に良い」

「むぅ……トウジ、ありがとうなのじゃ」

「良いよ。つーか、ビシャスの目論見通りに事が運ぶ、それだけは許せねえ」

 これはリアルガチのマジで本心だ。
 ゲームマスターを気取ってるようだが、くそったれめ。
 千切れた足で殴りつけてこれがキックパンチだって言ってやりたい。

「では、行くかの」

「おう」






=====
「おう……っておっとと!」

「片足だけじゃ歩きずらかろう、おんぶしてやるのじゃ!」

「いや、なんかそれはちょっと……」

「何を恥ずかしがっとるか! 美少女の背中で興奮するタイプかの!?」

「いやそれはない。性欲奪われてるから」

「つまらんのう。ほれ、つべこべ言わずに背負われい。ツインテールに捕まれ!」

「な、手綱みたいだな……」

「便利なのじゃー」

 少女に背負われる30歳。
感想 9,840

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました