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本編
800 魅惑のチョコミントバニラ・中編
「うーむ、にわかには信じがたい光景だ」
オスローが呟く。
「そりゃな」
八大迷宮の一つ、断崖凍土、最奥。
一部の限られたものにのみ侵入を許されるその場所。
いや、一部というより誰も到達したことのない領域。
「おら! どんどん並べていくぜ!」
「ぴっ」
「ピー助もわざわざ手伝いありがとうな!」
「ぷぴぃ!」
そんなドえらい場所にて、テーブルの上に様々な料理が並べられていく。
俺の知る中で最高のシェフ二人が、最高の素材を使った、最高の料理だ。
「うっほ~! ピクニック気分かとおもっとったけど、やばいやんこれ!」
断崖凍土のダンジョンコアとその代理が囲む状況でダンジョンピクニック?
さすがにマイヤー、それは……とおもったけど。
俺がダンジョンに来た時って大体こんな感覚だから何も言わないことにした。
この感覚を味わってもらおう。
「ダンジョン料理とかいうテーマで一般公開したら儲けれるかもなあ」
「マイヤー、見世物にする気か」
「せっかく透明で強固な氷を作れるなら、魔物がおるところ見物させたらええやん」
動物園か。
いや、水族館的な。
「世の中物好きがめっちゃおるから、割と高値払って来るやつ多いと思うで」
「一理ないこともないわね」
俺の隣にいるイグニールが頷いていた。
「前の一件以来、階層の一部をアトラクション化したでしょトウジ?」
「うん」
「それが地味に冒険者以外をここに呼び込んでんのよ」
「ま、まじか」
全くその辺触ってなかったんだが、意外なことに人の訪れは増えているらしい。
「ここへの護衛依頼、かなり増えてるわよ」
「最近ギルドで依頼物色とかしなかったから、気がつかなかった」
「ええやんええやん、したらええやん」
「俺に言うなよ」
「せやかて構造的に人がいっぱい来た方がええんやろ?」
「まーね」
人が訪れる、ということはそれだけダンジョン内の魔力も増える。
中にいる生物から魔力を吸収するんだからな、ダンジョンって。
そこに生きてる、生きてないとかは関係ない。
殺した方が手っ取り早く全てを奪えるだけで、生かしててもいいのだ。
……ん?
ダンジョンコア。
魔力を吸収する。
ユノに会ってから、ダンジョンというものについてしばしば考えていた。
なぜ生まれたのか、誰が生んだのか。
厄災が訪れたさい、この力を渡したのはユノではない。
だが、同等の存在が渡した、ということはなんとなく予想していた。
与奪の権利は、ある意味神とか、この世を管理する存在のみが出せる。
生き物から魔力を吸収する……すなわちそれって魔力与奪権利の奪だ。
「なんのために……」
と呟いたところで、一つの仮説が成り立つ。
明らかにユノの敵対者ではないだろうか。
そういうことだ。
「どうしたの、トウジ?」
イグニールが俺の顔を覗き込む。
「あ、いやなんでもない」
「ぼーっとしないで聞いてみ、トウジ。交渉や、交渉」
「ん? え、まじで?」
ぐいっと迫り、促すマイヤー。
アイデアを憤怒に伝えろと言うのか……。
「……何百年ぶりの食事だろうか」
ちらっと憤怒を見てみると、スープを一口飲んで感動していた。
あれだけ起こっていた形相が、今はもう冷静そのもの。
敵対者とは全く思えない。
グルーリングもそうだったしな。
まあいいや。
ここは一つ。
マイヤーに促されるままに聞いて見てもいいかもね。
「ヒューリーさ──」
「──胃が荒れてるなんてことは万に一つもないだろうが、とりあえずそれ食べて調子を見てくれや」
話しかける前に、パインのおっさんがスープを感想を求めて憤怒に話しかけた。
「む? う、うむ」
屈折ないパインのおっさんの笑顔に、どぎまぎとするダンジョンコア。
一般人からこうした扱いを受けるのも久々なのだろう。
もっとも、おっさんが一般人の中に含めて良いのか謎だけどな。
「行けるようだったらじゃんじゃん食え! 腹いっぱいになれば、みんなハッピーなんだぜ」
「ォン!」
「ハハッ! ポチ公、なかなか良いこと言うじゃねえか! 旨い飯があれば世界は平和だ!」
俺もそう思う。
食事って、人間にとって必要不可欠な娯楽要素だよなあ。
美味いって感覚は脳にダイレクトアタックする。
「食って食ってハッピーハッピー!」
「アォンアォーン!」
シェフ二人がなんとも言えない怪しい宗教感を醸し出している最中。
「パパ! あーんするのじゃ!」
「いや、皆が見ている目の前でそれは……」
ラブが早速親子の絆っぽい感じのものを演出していた。
「お願いなのじゃ! 久しぶりなのじゃよ! したいしたいんじゃー!」
「わ、わかったわかった」
駄々をこねて甘えられて、憤怒はラブのいうことを聞いてやる。
……このダンジョンのさらなるアトラクション化の話を持っていくのは後にするか。
今はゆっくりさせてあげたい。
だが、過去にダンジョンになった時の、災厄の時のことは食事が終わり次第聞こう。
感想 9,840
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