装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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4巻

4-1

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 第一章 群島型ダンジョン【極彩諸島】


 ──極彩諸島ごくさいしょとう。トガル首都より南西の海域に存在する島々のことだ。
 島ごとに別々の四季や特殊な気候が存在し、独立した生態系を持つ迷宮ダンジョン
 数ある迷宮の中でも、そこは大迷宮という名前で呼ばれており、規模は超大そのもの。
 巨大ではなく超大。この意味は、群島全域が丸ごとダンジョン、ということだそうだ。
 さて、俺――秋野冬至あきのとうじがギリス行きの貨物船に同乗するまで、五日ほどの間がある。
 この時間を使い、依頼を受けて極彩諸島を巡ろうではないか。
 最初の島は割と近い場所にあり、行く手をはばむ危険な魔物はあまり出ないらしい。
 四季折々の島々と、それに合わせた生態系があるおかげで、トガルでは季節関係なしにほぼ全種類の魚が水揚げされるんだとか。
 もちろん島には貴重な薬草類もあるのだけれど、ぜひとも魚の魔物のドロップアイテムや、サモンカードを大量に獲得しておきたいところである。

「おらー、そろそろ最初の島に着くぞー!」

 船頭せんどうの声が響く。ふはは、実はもう極彩諸島行きの船に乗り込んでるんだな、これが。
 ダンジョンへ向かう冒険者達は、ギルドと国が取り仕切る船でまとめて輸送される。
 サルトのゴーレム通りみたく、魔物産業のような形になっているそうだ。
 おかげで、わざわざ船をチャーターしたりする手間がはぶけ、実に助かる。

「そういや、最初の島付近で極彩蝶を見たって話があるぜ?」
「それ本当か? あれ、結構奥深くに行かないといないんじゃなかった?」

 一緒に船に乗っていたとある冒険者パーティーから、興味深い会話が聞こえてきた。
 極彩蝶。その名の通り、虹色に輝く蝶々のことである。
 きらびやかな羽は美しく、コレクターの間では高値で取引されるらしい。

「時期ごとに色んな島を巡ってるらしくって、今はちょうどこの島っぽいんだよ」
「マジかよ、運が良いな……できれば生きたまま捕まえたいところだぜ」

 特殊な加工を施した極彩蝶の羽は、アクセサリーとして女性に人気だとか。
 ゲットしたら、サルトで別れたイグニールやトガル首都にいるマイヤーあたりに、装備を作ってプレゼントしよう。

「よっしゃ、なら今日は予定を変えて極彩蝶狙いでやってみるか」
「だけど、少し気がかりな話もあるんだわ」

 まだ話しているようなので、船を降りるまで聞いておくか。

「ん? なんだよ、もったいぶってないで早く聞かせろよ」
「聞いた話なんだが、その極彩蝶を目当てに寄ってくんだよ……とんでもない魔物が」
「とんでもない魔物?」
「ロック鳥だよ」
「ロック鳥……マジかよ」

 その言葉を聞いて、ゾッとした表情をする聞き手の男。

「とんでもねぇ魔物じゃねぇか……危険地域だろ、もはや」
「まあ、あくまで聞いた話ってだけで、本当なのかは知らねぇけどよ。ハハッ」
「……おい、ビビらせんなよ! まあさすがにロック鳥なんてヤベェの出るわけねぇか!」
「そうだぜ、いたら即効討伐隊が組まれてるだろうよ!」

 ほうほう、ロック鳥が出るってうわさがあるのか。良いことを聞いたぞ。
 これはロック鳥のサモンカード狙いで、極彩蝶を狩りに行かねばなるまいて。

「ほら、さっさと降りろー」

 船頭のかすような声が響く。
 乗っていた冒険者達は、世間話もそこそこに列をなして船から降りだした。

「あー、ようやく着いたぜ! にしても意外と早かったな!」
「まだここは極彩諸島の初めの方だぜ?」
「そうだよ、奥に行くにはまた船さ。発展してんのは最初の島だけで、先に進めば船着場どころか、ただの海岸か岸壁しかなくなって、自分達で全部用意しなきゃダメなんだぜ」
「意外と大変なんだな……」
「国の兵士さん達も観測で各地に駐在してっけど、ここはダンジョンだからな」

 俺はそんな与太話よたばなしに耳を傾けつつ、乗客の流れに合わせながら船を降りる。
 ついに極彩諸島へと上陸。時間も限られているのだし、早く行動しようか。

「寄ってらっしゃい見てらっしゃい、極彩諸島名物の極彩クッキーさ!」

 最初の島の港町を歩くと、わいわいガヤガヤとした声が聞こえてくる。

「なんのなんの、こっちは七色アクセサリーさ! お土産にどうだい!」
「さあ、今日は良い魚が入ったからね! みんなうちの食堂においで!」
「素泊まり1万ケテルから~、飯付きで1万2千ケテル~、安いよ~!」

 ……うーむ、ここは本当にダンジョンなのだろうか?
 疑ってしまうほどに、活気にあふれた光景が目の前に広がっている。
 トガル首都の自由市場となんら変わらん雰囲気なのだけど、国民性みたいなものか。

「おらおら! ちんけな商売してんじゃねえ! こちとら七色パンケーキだー!」
「パンケーキ!?」

 パンケーキというワードを耳にして、フードの中で寝ていた、ダンジョンコアのジュノーが飛び起きた。

「特殊な調味料で色鮮やか! さらに味も七変化しちへんげする七色の極彩パンケーキ!」
「トウジ、トウジッ! 七色パンケーキ! パンケーーーーーーキ!」

 俺の目の前をハエのように飛び回り、七色パンケーキを指差して必死に訴えかけてくる。
 目は血走っていて、鼻息も荒く、大丈夫かと思うほどだ。

鬱陶うっとうしいな、もう……つーか七色って大丈夫かよ……」

 なんだかすごく体に悪そうな気がするんだが、俺だけか?
 カラフルなものって、駄菓子だがしくらいで良いよねって常々思うわけである。

「おじさん、味も七変化だって言ってるし! これは食べなきゃ損だし!」
「でもさ、ざっと見た感じ、ここにあるもの全部割高っぽいぞ」

 観光名所にありがちな値段設定だ。

「味の七変化なんだから、他の物より七倍お得だし! だったら全然安いし!」
「とんでも理論だな、おい」
「お願いお願いお願い! 食べたい食べたい! 一生のお願いなんだしっ!」
「わかったから目の前を飛び回るなって……はあ、ポチも大丈夫か?」
「アォン」

 尋ねると、別に構わないよとうなずくコボルトのポチ。

「仕方ないなあ」

 呑気のんきに観光している時間はないのだが、旅の醍醐味だいごみだし食べに行ってみるか。
 しかし、ポチの特製スペシャルパンケーキの方が絶対美味おいしいだろうに。


       ◇ ◇ ◇


「はー、お腹いっぱい! 満足!」

 怒涛どとうの勢いで七色パンケーキを食べ終わったジュノーが、満足した顔で横になる。

「おい、テーブルの上で寝っ転がるな、行儀悪いぞ」
「アォン……」

 その様子を見ながら、俺の膝にちょこんと座るポチとともにため息をついていた。
 実食した七色パンケーキは、七段重ねの普通のパンケーキに、七種類のジャムが塗りたくられたもの。味の違うパンケーキが七段重ねになっているものを、俺は想像していたんだけど……。

「これ……七色パンケーキって言う必要あるのか……?」

 そう、疑問に思うほどのレベルだった。
 ジュノーはペロリと食べきったが、俺とポチは七枚も食べきれない。一枚で良い。

「トウジ、食べないし?」
「え?」

 お腹いっぱいと満足げな表情をしていたくせに、俺のパンケーキをジッとにらむジュノー。

「お、俺はもういらないから……食べる?」
「食べる! 残すのはもったいないから、あたしが責任持って食べるし!」
「あっはい、どうぞどうぞ」

 ほんと仕方ない奴だな、こいつ。
 やっぱり、俺は焼きたてにハチミツバターを載せたパンケーキが一番だ。
 色んな味を試しても、結局はオーソドックスなものに回帰してくるよね。

「そうだ、ジュノー」
「もぐもぐもぐもぐ……なんだし? 今忙しいから待って」

 パンケーキ分けてやったと言うのに、煙たがるような反応を見せるジュノー。

「こいつ……まあ良い。この島からトガル首都の部屋にドアは繋げられるの?」
「うん、できるよ! あたしをあんまり舐めるなし!」
「ほーん、なるほどね」

 ってことは、いちいち船を使わなくとも極彩諸島と首都を行ったり来たりできるわけだ。

「さすが、ジュノえもん」
「じゅのえもんってなんだし? 甘い奴?」
「食べ物じゃねーよ」

 いや、確かにいつでも素敵な道具で助けてくれる、ある意味甘い奴ではあるが……。

「とにかく、この島までドアが繋がるなら今後の旅も楽になるな」
「えへへ、あたし役に立ってる? えへ、めて褒めて」
「うん、えらい偉い」

 パンケーキを口いっぱいに頬張るジュノーの小さな頭を、人差し指でちょんちょんしながら褒めてあげると、彼女はニコニコとくすぐったそうにしていた。


       ◇ ◇ ◇


「よし、行くか」

 パンケーキの店を出てから、少しだけ波止場街を見て回った。
 それからゴレオとコレクトを召喚し、街を抜け山へ入って行く。いよいよ冒険の始まりだ。
 出てくる魔物は、木の上から付け狙う大きな蛇だったり、大量にまとまった羽虫の軍勢ぐんぜいだったり。
 蛇は飛びかかる前にポチの嗅覚きゅうかくに引っかかって、あっさりクロスボウで撃ち落とされた。
 羽虫の方は、ゴレオが波止場街の売店で購入した巨大な虫網を振り回して、捕まえたところを踏み潰して一網打尽いちもうだじんだ。

「うむ、相変わらず戦闘で俺の出る幕は一切ないな」

 悠々自適ゆうゆうじてきの散歩道である。
 蛇の魔物も羽虫の魔物も、クソみたいなドロップアイテムしか残さなかった。
 ただ羽虫に関しては、ドロップケテルはしっかり数の分だけ落としてくれた。
 ポチの特殊効果によって、ドロップケテルの収入は50%アップ。さらに金運の秘薬を用いて20%アップブーストがかかっているので、かなり美味しい。
 羽虫め……意外とあなどれない。一応サモンカードもドロップする。
 しかし、羽虫のかたまり単位でドロップするならまだしも、一匹単位で特殊能力も何もない故に、インベントリの肥やしにしかならなかった。
 一匹単位だと、使い所としては鬱陶しい嫌がらせ程度しかないのである。

「コレクト、頼むぞー」
「クエーッ!」

 それから、ポチの鼻を索敵さくてきに、コレクトの感覚はお宝発見に注力させた。
 放ったらかしにしていても、なんか金目の物を拾ってくるコレクションピークのお宝発見能力には、確かな信頼と実績がある。

「クエッ、クエクエーッ!」
「さっそく騒がしくなりだしたが、何か見つけたのか?」
「んー、極彩蝶を見つけたって言ってるし!」

 コレクトの言葉を、ジュノーがちゃちゃっと通訳してくれた。
 こういうフィールドワークでは、基本的に意思疎通のやりとりはジュノーの仕事である。

「マジか……もう見つけたのか……」

 山に入ってものの数時間で俺の求めていた魔物を発見するとは、さすがコレクト。
 本来、島に存在するタイドグラスという薬草採取と、シママネキと呼ばれる繁殖力はんしょくりょくの高いカニの魔物の討伐が俺の受けた依頼内容であって、極彩蝶は依頼には含まれていないのだが、噂話を聞く限りだとかなり旨味うまみのある魔物なので見ておきたかった。

「とりあえず行ってみるか、案内頼むぞ」
「クエー!」

 コレクトに案内されてたどり着いた場所は、色とりどりの綺麗な花がたくさん咲いており、極彩色の羽を持ったきらびやかな蝶々が舞う、まさに花園。

「わぁ~!」
「……!」

 その花園に、ジュノーとゴレオがテンションを上げて飛び込んで行く。

「お~、すげぇな……宝の山みたいだ」

 当然、俺も目を奪われていた。

「ちょっと! 幻想的な光景に水を差すようなこと、言わないでもらえるし!?」
「いや、そういう意味じゃないんだけど……」

 確かに大量の極彩蝶と薬草類は、俺からすれば金になる宝の山だが、きらびやかな光景を宝石箱に例えただけなのである。

「ねえトウジ、捕まえて、この間作った浄水の池の周りに放してみるのはどうだし?」
「うーむ、確かに綺麗だけど魔物だからなあ……」

 ダンジョンで魔物を繁殖させて、それを倒し続ける無限経験値牧場。
 一応、案として考えてはいたのだけど、近場に魔物がいるって状況は少し勘弁願いたく思って、却下になったアイデアだった。

「でもでも、綺麗だし! 小さいから大丈夫だし!」
「確かに見た目は綺麗だけど……」

 何かの拍子に強い特殊個体が生まれたら、安心して眠れなくなってしまう。

「ほわわわっ!? ちょ、ちょっとこっちに寄ってこないで!」
「そうなるよなあ……」

 花園に飛び込んだジュノーが、さっそく極彩蝶にたかられて大変なことになっていた。敵だと認識されたのだろう。
 一匹くらいだったら問題ないかもしれないが、繁殖力の強い虫系の魔物は、こうして数の暴力となって襲いかかってくるのだ。

「むぅわー! あたしのダンジョン内だったらコテンパンにしてやるんだし!」

 ゴレオに追い払ってもらい、なんとか俺の元に戻って来たジュノーはそう吠えた。負け犬の遠吠えみたいだ。

「はいはい、ダンジョンじゃないんだから大人しくしてろよ」
「むーっ! あの蝶の鱗粉りんぷん、結構鬱陶しいし! もう嫌い!」

 ジュノーの言葉から、極彩蝶の攻撃方法は鱗粉だって判明した。

「一応聞いておくけど、大丈夫か?」
「一応ってなんだし!?」

 俺の言い方にそんなツッコミを入れながら、ジュノーは言葉を続けた。

「まあ、あたしの本体はダンジョンにあるから平気だけど、トウジ達は大量に集られたら喉とか鼻とかをやられちゃうかもだし」

 どうやら、吸い込ませて肺にダメージを与えつつ、混乱の異常状態を与えるらしい。 
 綺麗な姿に似合わず、意外とえげつない攻撃方法をお持ちの蝶だった。

「なるほど、それはちょっと危険だな」

 ステータスは強化した装備で底上げしてあるのだが、念のため布で口と鼻を覆っておく。

「ま、こういう時のゴレオだよ」
「……?」

 俺の言葉に首をかしげるゴレオ。

「なんでだし? 少しでも縄張りに入ると危ないって、あたし言ってるし!」
「いや、大丈夫だよ」

 だって、ゴレオには鼻も口も呼吸器官もついてないからな、鱗粉攻撃は効かない。
 さらに巨体を活かした豪腕ごうわんの一振りで圧殺できるのだ。

「虫タイプに岩タイプを当てるってのは、どの世界でも効果抜群なんだぜ」
「よくわかんないけど、ゴレオは平気なんだし?」
「そう。ってことで、よろしく頼むぞ、ゴレオ」
「…………」

 行ってこいと命令すると、どことなく倒したくなさそうなゴレオだった。
 そうだよな、可愛いものとか綺麗なもの好きだからな、乙女ゴーレムめ。

「あの綺麗な羽でアクセサリー装備作ってやるけど?」
「……!」

 物で釣るのはあまりよろしくないとは思うのだが、その言葉を聞いたゴレオは意気揚々と虫取り網を持って駆け出して行った。

「現金なやつだなあ、まったく」
「アォン……」

 お前に言われたくねーよ、と言わんばかりの顔でため息を吐くポチ。
 そっちこそ、珍しい食材には目がない料理狂のコボルトじゃないか。


 さて、そんな感じのことを話しつつ、極彩蝶との追いかけっこに興じるゴレオを微笑ましく見ていると、唐突にあたりが暗くなった。

「クエックエックエッ!」
「なんだ? どうしたコレクト?」

 コレクトが急に騒がしくなり始めたので、首を傾げつつ空を見上げると……。
 ──バッサバッサ!
 とんでもない大きさの鳥が、翼をはためかせながら俺達の目の前に降り立った。

「ゴ、ゴレオ──ひえっ!?」

 そのままゴレオをつぶすように着地する鳥の大きさに、思わず固まってしまう。
 体の大きさを目算すると、ゴレオよりふた回り以上も大きかった。

「ギュアアアアアアアアア! ギュアッギュアッ!」

 強烈な鳴き声とともに、翼を大きく広げて威嚇いかくする。
 その行動で、強烈な風が巻き起こった。

「うおおおおおお!?」

 吹き飛ばされた際、樹木に後頭部を激しく打ち付けて、頭がクラクラする。
 ジュノーとポチは、俺よりも体が軽いせいか、遠くへ吹き飛ばされていた。

「クエックエーッ!」

 上空へと避難して、なんとか突風から逃れたコレクトが、いつも以上に鳴きわめく。
 あせったような調子で、巨大な鳥に何かを伝えようとしているみたいだった。

「ジュノー! 通訳してくれ!」
「ちょっと待つし!」

 ポチと一緒に戻って来たジュノーが、コレクトの言葉を伝えてくれる。

「あれはヤバいから、早くキングさんにスライドしろって言ってるし! あと、餌場を荒らしたのは悪かったから、お願い見逃してって懇願もしてくれてるし!」

 見逃してって……襲ってきた魔物に何を言ってるんだ、コレクト。
 でも、俺も野盗に取り入ろうとした経験があるから、その気持ちはわかります。

「つーか、あれってまさかロック鳥か?」
「うん! あれでもまだ幼い部類だし!」
「嘘だろ……」

 翼を広げたら二十メートル近い大きさになるぞ。
 それでもまだ幼い部類とか、完全にロック鳥を舐めてました。

「ってゴレオ、大丈夫か!」

 ロック鳥にビビってる場合じゃない、下敷きになったゴレオが心配だ。

「……!」

 俺の声に反応するように、ロック鳥の下から腕を出してサムズアップするゴレオ。

「ギュアッ!」

 しかしあまりの巨体故に、ゴレオの力をもってしても起き上がれないでいた。
 これだとゴレオのHPが削られてしまうだけなので、キングさんと交代させる。

「ゴレオ交代、キングさん!」
「プルァッ!」
「クエッ! クエックエェェェエエエエエ!」
「うわっ!?」

 せっかくキングさんが来てくれたというのに、コレクトが激しく騒ぎ立てる。
 俺の頭頂部でバサバサと、いったいなんだってんだ。

「なんで交代するのが自分じゃなくてゴレオだって言ってるし」
「ええ……いや、あのままだとゴレオ動けないじゃん」
「クエックエッ!」
「スライドは自分の役目でしょ、早くゴレオ出して交代させろ、だってさ」
「この鳥……」

 マイヤーのペット、ストロング南蛮なんばんの爪のあかせんじて飲ませてやりたいくらいだった。
 まあ、ろくな装備をつけさせていないから、ビビる気持ちもわからんでもない。
 こういうピンチで交代するのは、いつもコレクトの役目だったからな。

「言っとくけど、交代は絶対にしないぞ?」
「クエッ!?」

 ロック鳥のサモンカードはぜひとも欲しいのだ。

「ってことで、コレクト続投で」
「クエーッ!?」

 バッサバッサバッサバッサ!
 ああもう、うるさいなあ……今はそれどころじゃないってのに……。

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