装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
527 / 650
本編

827 こどもおとな

しおりを挟む

 翌日、縁談について待ったをかけるために、アルバート商会へ赴いた。
 マイヤー母は3階の一番奥の部屋に座っていた。
 まるで、俺が来るのを待っていたかのようだった。

「あれまトウジはん、話ってどないしたん?」

「いやその」

 改めて親御さんを前にすると、言葉に詰まる。
 しかし、昨日発破をかけられたじゃないか。

 言え、俺。
 言うんだ、俺。

「あの、マイヤーはいらっしゃいますか……? ちょっと個人的な話があって」

「ああ、もうタリアスに向かわしたで」

 さらっとそんな発言をするマイヤー母。
 マ、マジか……。

「え……ちょっと、それはさすがに急過ぎないですか?」

「なんやのん急って、そっちが急やん」

「それは……」

 昨日の今日だと、確かに俺が急だった。
 押し黙る俺を眺めながら、マイヤー母はさらに言葉を続ける。

「こういうのはな、早い方がええんよ。顔合わせだけさっさとして、お互い慣らさな」

 そうかもしれないけど、もう少し時間をあげても良いはずだ。
 それに、

「マイヤーは嫌がってたと思うんですけど……」

「そもそもな? 早う顔合わせだけしとこうって言い出したんはあの子やで」

「え、それは本当ですか?」

「どうやら腹くくったみたいやな。あの子は利口や、一番良い方法をわかっとる」

「一番良い方法……」

 一番良い方法、か。
 そんな言葉を聞いて、胸のあたりが締め付けられたように苦しくなった。

 マイヤー母はアルバート商会のことを言っているのかもしれないが……。
 俺には全く別の意味で突き刺さっていた。

 きっと、誰も悲しまない方法として、早く発つことを決めたのだろう。
 散々ごねても、それは自分のわがままだ。
 誰が一番困るか、俺やそのまわりに負担がのしかかると考えたのだろう。

 俺は何も選べずに、“また”大切な人に選択させてしまった。
 そんな状況が、何よりも鋭く胸に突き刺さっていた。

「トウジはん? 真っ青な顔して、どないしたん?」

「……」

 マイヤー母の声も耳に届かないくらい、呆然としていた。
 これは、イグニールを前にしてドキドキしていた感覚とは違う。

 アキノトウジと言う人間を構成する一つの大切な何か。
 それがぽっかりと抜け落ちてしまった虚無感。

 なんとなくデジャブを感じて記憶を辿る。
 するど、異世界に来て、右も左もわからずデプリ国外に逃げる時のことを思い出した。

 確かあの時、マイヤーに嘘をついて町を勝手に飛び出した。
 周りの良い人たちに迷惑がかからないように、と。

 ……された側は、こんな気持ちなのか。
 思ったより、キツいな。

 もう少し、自分の中でけじめというものを重く受け止めておくべきだった。
 面倒を見るなら最後まで、ギリスに向かう船でマイヤーが言っていた言葉。

 今になって、思い浮かぶ。

「もうええか? うちらも色々と準備をしていかなあかんから」

「……」

「トウジはん?」

「……」

「はあー……」

 子供のように押し黙ったままでいると、マイヤー母はため息を吐きながら言った。

「そんなにマイヤーが気になんねや?」

「……はい」

 絞り出すように、そう答える。
 どこまで言っても、流される。
 ガキか、と自分でも思う。
 悔しいではなく、情けない。

「ま、別れの挨拶もせんのは商人として良い加減やと思うし、場所を教えとこか?」

「良いんですか?」

「良いんですかも何も、晴れ舞台にはあんたにも出席してもらう予定やし? その前に十分話し合ったらええねん」

 マイヤー母の中では、もう決まった流れになっているようだ。
 ここからどう覆すか、俺には想像もできない。

「でも、邪魔だけはせんといてな? あんたがしゃしゃり出て話がこじれれば、うちの顔は丸つぶれやで?」

「……はい」

 俺が何も言い返せないところをチクチクと……。
 でも、親の気持ちとしては、間違っちゃいないのだろう。

「ちょっと良いかしら?」

「なんや? イグナイト家の嬢ちゃん」

「お母さんが今一番欲しいものって、なんですか?」

「え? イグニール、いきなり何を……」

「トウジは黙ってて」

 はい。
 結構な圧で凄まれたので、俺はできるだけ小さくなるよう心がける。
 どこまでも情けないぞ……。

「富名声力……って言いたいところやけど、なんだかんだ娘の幸せが一番やね」

「そうですか、わかりました」

 その答えに、イグニールはニコリと微笑む。
 微笑んじゃいるが、雰囲気は全く笑えなかった。

「それだけ聞けて十分です」

「なんやえげつない覇気を持った嬢ちゃんやな、さすがは公爵家の血筋やん?」

「このくらいないと、彼の妻は務まりませんから」

「ほーん……? うちの目には、情けない子供のまま育ったでかい人に見えるけどなあ?」

「それはあなたが知らないだけですよ」

 なんか、啖呵を切る形になっているのだが……いいのか?
 話が余計こじれてしまうのでは?

「ほらトウジ、行くわよ」

「え、ちょ、ちょっと──」

 不安で不安で仕方がない俺の内心はさておいて。
 イグニールは俺の手を取って部屋を後にするのだった。








=====
棚ぼた、どうでも良い関係。
それ以外で面と向かって人と関わる際。
トウジは“基本”クソザコです。
しおりを挟む
感想 9,839

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。