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6巻
6-2
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◇ ◇ ◇
カラフルバルンをあらかた狩り尽くして、再びデリカシ辺境伯領の調査を行っている時のことだった。
再び谷間にカラフルバルンの群れが見えたのである。
「カラフルバルン……? あれ、なんかちょっと違うし……?」
「確かに」
俺の肩から谷間を見下ろすジュノーの言葉に頷いた。
風も入ってこない谷に浮かぶカラフルバルンは、風船のような見た目から一転して、なんだか虫のような六本足がついた本体を持っていた。
風船部分は普通のカラフルバルンと変わらないのだが、足がたくさん生えているからか、カサカサと岩場を移動して別の岩から別の岩に飛び移っていたりと、様々な行動を見せる。
「キ、キモい……」
思わずそんな声が漏れた。
カラフルバルンは雑多にぷかぷかと浮いているだけだったのだが、目の前にいる亜種のような個体は、それぞれの色が密集して群れている。
緑色のカラフルバルンなんか、壁に大量に群れて張り付いたカメムシのような印象だ。
再び豆知識だが、カラフルバルンってのは総称のことで、色ごとにグリーンバルンとかブルーバルンとかレッドバルンとか、そんな個体名称がある。
サモンカードもきっちり色分けされて個別出現したので、色ごとに別の種類だ。
普通のカラーだとドロップアイテムに差はないが、ゴールドとかシルバーは希少種らしく、ドロップケテルの量が普通タイプとは段違い。
銀や金の鉱石もドロップするし、本当に不思議な存在だと思う。
「クエーッ!」
「あっ、こら! よくわからん魔物に突っ込むなって!」
再び見せ場が来たと張り切るコレクトなのだが、初見の魔物にあまり良い印象はない。
ポチに頼んで遠距離から射落としてもらうのが一番なんだけど、俺が止める前にコレクトは空中に孤立していたレッドバルンの亜種に突っ込んでいってしまった。
「クエーッ!」
「バルッ!?」
――パンッ、ボボンッ!
「クエッ!?」
「コレクト!?」
破裂したレッドバルンが、爆発して炎を上げた。
「グリフィー!」
「グルッ!」
至近距離で爆発に巻き込まれ、気を失って落下するコレクトを急いで受け止める。
「コレクト! 大丈夫か!」
「ク、クェェ……」
良かった、意識はある。すぐにポーションを飲ませて回復させた。
「もー、心配したんだし!」
「クェェ……」
グリフィーの背中で休ませつつ、爆発とともにドロップしたサモンカードを確かめる。
【サモンカード:レッドギミックバルン】
まだ登録していないので特殊能力はわからないが、やはり普通とは違っていた。
カラフルバルンのサモンカードより一つ上の等級だから、おそらく上位種なのだろう。
「トウジ!」
「ん?」
サモンカードの考察をしていると、ジュノーが慌てたように叫ぶ。
何事かと振り返ると、大量のギミックバルンが俺たちの元へと集まってきていた。
「おわーっ!? グリフィー!」
「グルルッ!」
すぐに上空へと飛んでもらってなんとか難を逃れる。
普通のカラフルバルンと違って、かなり攻撃的な性格をしているようだ。
「ポチ! 遠距離から射って数を減らしてくれ!」
「ォン!」
俺の指示に従って、ポチがグリフィーの上でクロスボウを構える。
ビンッと弦が矢を射出する音が聞こえて、密集していたイエローギミックバルンを貫いた。
――パァン! ビリビリビリッ!
破裂とともに、バチバチバチと電撃が周りに放出された。
「よし! やったか……って、お、おい」
ガッツポーズを上げる前に、イエローバルンから放出された雷撃が、周りに集まってきていたギミックバルンたちに伝わっていく。
次の瞬間――
ボボンッ! ボボンッ! ボンボンボンボボンッ!
ブシャッ! ブシャッ! ブブブシャッブシャッ!
ザシュッ! ザシュッ! ザシュザシュザシュッ!
「のわあああああああああああああああああああああああっっっ!?」
密集していた全てのギミックバルンが連鎖的に炸裂し、とんでもない爆発となった。
相乗効果でもあるのか、レッドは炎を撒き散らす大爆発へ。
ブルーは周りに大量の水弾、グリーンは風の斬撃。
多種多様な属性攻撃はギミックというより、もはやトラップレベル。
「トラップバルンだし!」
「んなこと言ってる場合じゃねえ! グリフィー上! 上に逃げて!」
「グルァッ!」
逃れるように一気に高度を取るが、下では未だに連鎖爆発が続いている。
とんでもないな……ドロップアイテムもとんでもない……。
「ト、トトト、トウジ! 頭! 後頭部だし!」
「ん? おわーっ!?」
爆風に煽られてくっついたのだろうか、俺の頭にギミックバルンがいた。
色はパープル。
ぷくーっと膨らみ始めるところを見るに、自発的に爆発可能らしい。
「わわわ! は、早く取らないとだし!」
「待て触るな! 下手に触って爆発したらどうなるかわからんぞ!」
「で、でも!」
風船ドッキリのように、はち切れんばかりに膨らんでいくパープルギミックバルン。
「破裂しちゃう! これ絶対破裂するし!」
「や、やっぱり取って! ジュノー早くこれなんとかして――」
――パンッ!
慌てふためいているうちに、破裂して紫色の霧のようなものを吹き出した。
「グルッ……!」
パープルの属性は毒で、ジュノーを除く俺たちは毒状態になってしまった。
「堪えろグリフィー! 霧散の秘薬を出す!」
霧散の秘薬を取り出し、全員に振りかける。
毒で一瞬動けなくなったグリフィーも、なんとか体勢を立て直すことができた。
「トウジ! まだまだ来てるし! 下から来てる!」
「マジかよ……!」
下を見ると、ギミックバルンたちが風船部分を膨らませて高度を上げていた。
足を忙しなく動かして、微妙に空中で動けるようだ。
「バルバル」「バルッ」「バールバルバル」
バルバルバルバルうるせぇ奴らだな!
ここまでの大群で押し寄せられたら、さすがに捌くのは不可能だ。
接近されたら属性攻撃の嵐なので、すぐに布陣を入れ替える。
「ワシタカくんを出すぞ!」
ドロップアイテムが減っても構わない。
コレクトを一旦ワシタカくんと入れ替えて、羽ばたいてもらうことにした。
「カモーン!」
「ギュァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「バルバル!?」
「バルバルバーッ!?」
ロック鳥の羽ばたきによって、無風の谷に暴風が巻き起こる。
ギミックバルンたちは風に押し流され、あちこちにぶつかり破裂していった。
「ワシタカっちー! どんどんやっつけるしー!」
「やっぱワシタカくんだわ」
ジュノーとともにガッツポーズ。
制空権がこっちのものになってしまえば、ギミックバルンもただの風船だ。
「ギュア……?」
勝ちを確信していると、ワシタカくんが不意に首を傾げていた。
「トウジ、ワシタカっちが何かおかしいって言ってるし」
「え? どういうこと?」
「ギュア!」
「姿がありもしないのに、目の前の空間に強烈で巨大な魔力を感じるって!」
「え? どういうこと!」
言ってる意味がわからん。
「トウジのわからず屋! とにかく、目の前に何かいるから気を抜くなって言ってるし!」
「目の前に? とりあえずわかった」
ワシタカくんの言うことならば、間違いない。信頼できる。
とにかく気を抜かずにギミックバルンのドロップアイテムを拾いに行こうと、ジュノーから視線を前に戻した時のことだった。
「……は? え?」
「……なんか、空間が歪んでるし?」
目の前の空間が、陽炎みたいにゆらゆらと揺れ始めたのである。
「な、なんだこれ……」
眉を顰めていると、そのぼやけた空間はじわじわと距離を詰めてきているようだった。
「グリフィー、とりあえず退がれ!」
「グルッ!」
なんだかわからないものには触っちゃいけない。
俺の声に合わせてグリフィーが退がり、ワシタカくんが羽ばたいて接近を阻止した。
その折、手になんとなくフワッとした何かが触れる。
得体の知れないものが俺の手を撫でてきているようで虫唾が走る思いなのだが、逆に俺の手を通して魔物の正体が表示された。
【ファントムバルン】
バルン系の魔物が同時に大量に破裂した場合にのみ出現する集合気体。
この個体は気体を覆う被膜が存在せず、自由に存在する。
なんと、風船を持たないゴーストタイプのカラフルバルンだった。
出現条件的に、特殊個体もしくは希少個体に位置する存在だろう。
しかし、どうやって生きてるんだろうな?
もはや精霊の一種なのだろうか、この状態は……。
「ギュアッ!」
「倒し方がわからないから、そのまま吹き飛ばすってさ!」
「あ、ワシタカくんちょっと待って!」
倒し方がわからない、と言ったな?
だが、簡単な話だ。
「一度下に降りるぞ!」
こういう状況にめっぽう強い奴がいる。
「トウジ、いったいどうするし?」
「ウネウネくんを出す!」
俺の一言で、ジュノーも「ああ……」と全てを悟ったような顔をした。
ミスティーハーブを採りに行った時もそうだが、魔力を含んだ気体にはマナイーターであるウネウネくんが効果抜群だ。
「――ギョアアアアアア!」
ワシタカくんと交代で召喚されたマナイーターのウネウネくんは、金切り声を上げながらファントムバルンへと食らいつき、ズオオオオオオッと吸入音を立てながら吸い込み始めた。
マナイーターは、捕食した魔力の量で体が大きくなっていく特性を持つ。
故に、吸い込みながら徐々に巨大化していくウネウネくんを見ていると、俺の作戦は上手くいっていることを確信できた。
「あんなの吸って、平気だし……?」
「平気平気」
ファントムバルンが何をしようが、ウネウネくんには魔力的なダメージが通りづらく、頭を気体で覆って窒息させようとしても、たぶんミミズみたいに皮膚呼吸できるだろうし無意味だ。
ズオオオオオオオオオオオ――。
うん、普通に頭を覆い尽くしてきたファントムバルンを、意気揚々と吸っている。
大丈夫だな、あれ。
こういった魔力オンリーな相手には、これからウネウネくんを起用していこうか。
ズオオオオオオオォォォォォォォ――……。
「ギョアアアアア!」
ファントムバルンを吸い尽くしたウネウネくんは、満足したように咆哮を上げる。
地面には、ファントムバルンのドロップアイテムのみが残っていた。
「お疲れさま」
健闘を称えて拍手を送り、図鑑に戻してコレクトを召喚。
ドロップアイテムを確認する。
ケテルや普通のバルンからドロップするアイテムが大量に転がっているのだが、その中でも一際異彩を放つものがあった。
【魔力ガスボンベ・大型】
魔力の液化ガス。
魔力厳禁! 取扱注意!
魔力ガスと書かれた巨大なボンベである。数は五個。
この説明だけじゃ何がなんだかわからんが、おそらく大量の気体が入っているのだろう。
確か、天然ガスとかって液体にすると体積が六百分の一くらいになるんだっけ?
「す、すげぇな……」
これが五つって、飛行船に必要な量を十分に賄えそうなくらいである。
いや、どれだけ量が必要なのか、詳しくはわからんけど。
カラフルバルンを三千体くらい倒す必要があったと思うから、たぶん十分だ。
足りなかったら知らん。
「ねえねえ、何か良いの落ちてたし?」
「あ、うん」
ジュノーにはドロップアイテムが見えないので、一旦インベントリに収納して出してやる。
ドラム缶くらいの大きさのタンクを見たジュノーは、飛び上がるほどに驚いていた。
「うわっ、でかっ! なんだしこれ?」
「魔力ガスボンベ」
「まりょくがすぼんべ?」
「カラフルバルンからドロップする気体の超絶でかいバージョンだよ」
「へー! でも確かに大きいけど、超絶ってほどじゃないし?」
「いや、実はこれ液状になってるやつだから、気体になったら六百倍くらい」
「ろ――!? パ、パンケーキで換算したら!? どれくらいだし!?」
いや、パンケーキは知らねーし……。
頑張って指で数えようとしてるけど、絶対に無理だぞバカかこいつ。
「わかんなーい!」
「えっと、パンケーキって普通瓶に入らないだろ? でも、ぎゅーって握り潰したら瓶にたくさん入るようになるだろ? そんな感じだよ」
「でもそれ美味しくないし」
お前の小さな頭でもわかるように、わざわざパンケーキにたとえてやったんだよ、クソが。
「トウジ、その考え方はパンケーキに対する冒涜だから改めるし」
「……」
「ま、それで言うとこのボンベってのは、気体を冒涜した存在だってことだし?」
「知らねーし……」
話がややこしくなるから、とりあえずこの辺でスルーしておこう。
さて、カラフルバルン狩りはこれで切り上げて、調査の残りを終わらせるとするか。
◇ ◇ ◇
デリカシ辺境伯領の調査もあらかた終えて、帰路につく時のことだった。
グリフィーの飛行で最短距離で港町へ戻る最中、ジュノーがふと呟いた。
「ねえ、島の中央ってどうなってるし?」
「……確かに気になるな」
デリカシ辺境伯領のマップを確認すると、大きな島にはいくつかの高い山があり、それがぐるっと島の中央を囲うように連なっているのだ。
気にも留めていなかったのだが、島中央へ向かう者を阻むような地形は、まるでそこに何かがあるように思えなくもない。
そういえば、島をぐるっと一周見てきてくれと依頼してきたデリカシ辺境伯も、中央については何も言及していなかった。
つまり、やはり中央には何かが隠されていて、デリカシ辺境伯はあえて調査依頼の中に含まなかった……と、思えんこともない。
「島の中央って樹海だし?」
「そうだな」
そこにはオルトロスもそうだが、他にも危険な魔物が生息している。
しかし、マンティコアを倒した俺たちならば特に問題はないはずだ。
危険だから行ってはならんぞ、っていう展開ではない。
「島の中心に行ってみたいし!」
「よし、行くか!」
なんだかよくわからないけど、冒険者の血が騒いだ……気がする。
グリフィーに進路を変えてもらい、俺たちは山を越えて島の中央へと飛び出した。
「わぁー! なんかすごい地形だし!」
俺のフード付きローブの中から響くジュノーの高い声。
「そうだな!」
いつもだったら耳元で叫ぶなって小言を並べるが、今は同意しておこう。
それだけ、改めて上空から見渡したデリカシ辺境伯領の景色は素晴らしかった。
言うなれば青ヶ島だな、規模のかなり大きな青ヶ島。
ワシタカくんに乗ってれば、こんな光景しょっちゅう目にするだろうが、俺はその時たいてい余裕がない、もしくは寝ているのだ。
「風が気持ち良いな」
空を飛ぶ時、周りに目を向ける余裕が一切なかったんだけど、しっかり体を固定する鞍、グリフィーや一緒に乗るポチの温もりが合わさって、心の余裕が生まれている。
……うん、空良いな!
優雅に空の旅を楽しめる飛行船、是が非でも完成に向けて頑張らないと!
「アォン」
俺のそんな呟きに、服の中に入ってカンガルーの子供みたいに顔を出すポチが返す。
ワシタカくんに慣れたらもっと気持ち良いと言っているようだった。
「慣れろ? そ、それはちょっと……」
「ォン……」
「いや、ワシタカくんはまた別次元の存在というか、なんというか」
高度もスピードもグリフィーの比じゃない。
旅客機に縛り付けられて空を飛ぶようなもんだから、まだしばらくは無理だ。
ため息を吐くポチに、そんな感じの弁明をする。
確かに、以前の小賢ゴブリンみたいにワシタカくんの背中に立てれば格好良い。
だが、どうやるんだよって話だ。
足だけ固定できるとして、風圧に負けてリンボーダンス状態になりそうである。
「島の中央には何があるかな~♪ 楽しみだし~ししし~♪」
想像してげんなりとした気持ちになっていると、ジュノーが俺の髪を引っ張りながらウキウキ気分で変な歌を歌っていた。
「もうすぐ中央だからって、あんまり期待するもんじゃないぞ?」
「なんでだし?」
「物欲センサーに感知されるからだよ」
「物欲センサー?」
ジュノーはきっと何かがあると思っているようだが、そんな時こそ何もないことが多い。
逆に、何もないだろうってたかを括っていると、何かあるって場合がほとんどである。
ゲーマーはそれを物欲センサーと呼ぶのだよ。
「あると思ったらなくなって、ないと思ったらあるし!?」
「うん」
「ちょっとよくわかんないからパンケーキでたとえてみたらどうなるし!?」
「いやもうパンケーキはいいわ……どうやって説明すりゃいいんだよ……」
無理やりパンケーキで説明するとしたら、パンケーキが食べたいと思っていたら、たまたまパンケーキを出してるお店が休みで悲しかったり、パンケーキの気分じゃないなと思っていたら、期間限定パンケーキが個数限定販売されていたりって感じだろうか?
「なんか、パンケーキのことを考え過ぎて胃もたれしてきた……」
「じゃあ何もない! 島の中央には何もないし! あたしは何も探してないですよー!」
物欲センサーに引っかからないために、島に向かって叫び続けるジュノーである。
なんだこいつ。
「ポチ、これ今日パンケーキを出さなかったらどうなるかな……?」
「アォン……」
泣くからやめとけって?
確かにいつも楽しみにしてる分、食後にパンケーキが出なかったらガチ泣きしそうだ。
ポチの言う通りやめておきましょう。
「ねぇトウジ」
「はいはい」
「つまり、パンケーキがないって思ったらいっぱいあるってこと?」
「は?」
「あたしの気持ちが物欲センサーに引っかかって今まで一日1パンケーキだったとしたら、これから物欲センサーを回避すれば一日2パンケーキ食べられるってことだし?」
し、知らねえ!
「よーし! パンケーキいらないパンケーキいらないパンケーキいらない!」
「……」
「……」
ヤベェ目つきでパンケーキいらないと呟き続けるジュノーに、俺とポチは絶句していた。
明らかに中毒者の目つきである。
「ポチ、パンケーキになんか変なものとか入れてないだろうな……?」
「アォン!」
入れてるわけがない、との抗議の声。
「だよな」
ってことは、ジュノーの頭が素でいかれてるって話になるのだが……。
「パンケーキいらないパンケーキいらないパンケーキいらない――」
ああ、バカだったな、こいつ。
パンケーキに挟まれた気分になりたいとか言って、俺の枕を奪ってくるし、寝言でもパンケーキを連呼するもんだから、最近では俺の夢にも出てくる始末だ。
一度、パンケーキ断ちをさせた方が良いのではないだろうか。
ギリスに来た当初は、一時期チーズケーキにもハマっていたし、他のケーキ類をローテーションで出して、パンケーキの呪縛から解き放てないか試してみよう。
カラフルバルンをあらかた狩り尽くして、再びデリカシ辺境伯領の調査を行っている時のことだった。
再び谷間にカラフルバルンの群れが見えたのである。
「カラフルバルン……? あれ、なんかちょっと違うし……?」
「確かに」
俺の肩から谷間を見下ろすジュノーの言葉に頷いた。
風も入ってこない谷に浮かぶカラフルバルンは、風船のような見た目から一転して、なんだか虫のような六本足がついた本体を持っていた。
風船部分は普通のカラフルバルンと変わらないのだが、足がたくさん生えているからか、カサカサと岩場を移動して別の岩から別の岩に飛び移っていたりと、様々な行動を見せる。
「キ、キモい……」
思わずそんな声が漏れた。
カラフルバルンは雑多にぷかぷかと浮いているだけだったのだが、目の前にいる亜種のような個体は、それぞれの色が密集して群れている。
緑色のカラフルバルンなんか、壁に大量に群れて張り付いたカメムシのような印象だ。
再び豆知識だが、カラフルバルンってのは総称のことで、色ごとにグリーンバルンとかブルーバルンとかレッドバルンとか、そんな個体名称がある。
サモンカードもきっちり色分けされて個別出現したので、色ごとに別の種類だ。
普通のカラーだとドロップアイテムに差はないが、ゴールドとかシルバーは希少種らしく、ドロップケテルの量が普通タイプとは段違い。
銀や金の鉱石もドロップするし、本当に不思議な存在だと思う。
「クエーッ!」
「あっ、こら! よくわからん魔物に突っ込むなって!」
再び見せ場が来たと張り切るコレクトなのだが、初見の魔物にあまり良い印象はない。
ポチに頼んで遠距離から射落としてもらうのが一番なんだけど、俺が止める前にコレクトは空中に孤立していたレッドバルンの亜種に突っ込んでいってしまった。
「クエーッ!」
「バルッ!?」
――パンッ、ボボンッ!
「クエッ!?」
「コレクト!?」
破裂したレッドバルンが、爆発して炎を上げた。
「グリフィー!」
「グルッ!」
至近距離で爆発に巻き込まれ、気を失って落下するコレクトを急いで受け止める。
「コレクト! 大丈夫か!」
「ク、クェェ……」
良かった、意識はある。すぐにポーションを飲ませて回復させた。
「もー、心配したんだし!」
「クェェ……」
グリフィーの背中で休ませつつ、爆発とともにドロップしたサモンカードを確かめる。
【サモンカード:レッドギミックバルン】
まだ登録していないので特殊能力はわからないが、やはり普通とは違っていた。
カラフルバルンのサモンカードより一つ上の等級だから、おそらく上位種なのだろう。
「トウジ!」
「ん?」
サモンカードの考察をしていると、ジュノーが慌てたように叫ぶ。
何事かと振り返ると、大量のギミックバルンが俺たちの元へと集まってきていた。
「おわーっ!? グリフィー!」
「グルルッ!」
すぐに上空へと飛んでもらってなんとか難を逃れる。
普通のカラフルバルンと違って、かなり攻撃的な性格をしているようだ。
「ポチ! 遠距離から射って数を減らしてくれ!」
「ォン!」
俺の指示に従って、ポチがグリフィーの上でクロスボウを構える。
ビンッと弦が矢を射出する音が聞こえて、密集していたイエローギミックバルンを貫いた。
――パァン! ビリビリビリッ!
破裂とともに、バチバチバチと電撃が周りに放出された。
「よし! やったか……って、お、おい」
ガッツポーズを上げる前に、イエローバルンから放出された雷撃が、周りに集まってきていたギミックバルンたちに伝わっていく。
次の瞬間――
ボボンッ! ボボンッ! ボンボンボンボボンッ!
ブシャッ! ブシャッ! ブブブシャッブシャッ!
ザシュッ! ザシュッ! ザシュザシュザシュッ!
「のわあああああああああああああああああああああああっっっ!?」
密集していた全てのギミックバルンが連鎖的に炸裂し、とんでもない爆発となった。
相乗効果でもあるのか、レッドは炎を撒き散らす大爆発へ。
ブルーは周りに大量の水弾、グリーンは風の斬撃。
多種多様な属性攻撃はギミックというより、もはやトラップレベル。
「トラップバルンだし!」
「んなこと言ってる場合じゃねえ! グリフィー上! 上に逃げて!」
「グルァッ!」
逃れるように一気に高度を取るが、下では未だに連鎖爆発が続いている。
とんでもないな……ドロップアイテムもとんでもない……。
「ト、トトト、トウジ! 頭! 後頭部だし!」
「ん? おわーっ!?」
爆風に煽られてくっついたのだろうか、俺の頭にギミックバルンがいた。
色はパープル。
ぷくーっと膨らみ始めるところを見るに、自発的に爆発可能らしい。
「わわわ! は、早く取らないとだし!」
「待て触るな! 下手に触って爆発したらどうなるかわからんぞ!」
「で、でも!」
風船ドッキリのように、はち切れんばかりに膨らんでいくパープルギミックバルン。
「破裂しちゃう! これ絶対破裂するし!」
「や、やっぱり取って! ジュノー早くこれなんとかして――」
――パンッ!
慌てふためいているうちに、破裂して紫色の霧のようなものを吹き出した。
「グルッ……!」
パープルの属性は毒で、ジュノーを除く俺たちは毒状態になってしまった。
「堪えろグリフィー! 霧散の秘薬を出す!」
霧散の秘薬を取り出し、全員に振りかける。
毒で一瞬動けなくなったグリフィーも、なんとか体勢を立て直すことができた。
「トウジ! まだまだ来てるし! 下から来てる!」
「マジかよ……!」
下を見ると、ギミックバルンたちが風船部分を膨らませて高度を上げていた。
足を忙しなく動かして、微妙に空中で動けるようだ。
「バルバル」「バルッ」「バールバルバル」
バルバルバルバルうるせぇ奴らだな!
ここまでの大群で押し寄せられたら、さすがに捌くのは不可能だ。
接近されたら属性攻撃の嵐なので、すぐに布陣を入れ替える。
「ワシタカくんを出すぞ!」
ドロップアイテムが減っても構わない。
コレクトを一旦ワシタカくんと入れ替えて、羽ばたいてもらうことにした。
「カモーン!」
「ギュァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「バルバル!?」
「バルバルバーッ!?」
ロック鳥の羽ばたきによって、無風の谷に暴風が巻き起こる。
ギミックバルンたちは風に押し流され、あちこちにぶつかり破裂していった。
「ワシタカっちー! どんどんやっつけるしー!」
「やっぱワシタカくんだわ」
ジュノーとともにガッツポーズ。
制空権がこっちのものになってしまえば、ギミックバルンもただの風船だ。
「ギュア……?」
勝ちを確信していると、ワシタカくんが不意に首を傾げていた。
「トウジ、ワシタカっちが何かおかしいって言ってるし」
「え? どういうこと?」
「ギュア!」
「姿がありもしないのに、目の前の空間に強烈で巨大な魔力を感じるって!」
「え? どういうこと!」
言ってる意味がわからん。
「トウジのわからず屋! とにかく、目の前に何かいるから気を抜くなって言ってるし!」
「目の前に? とりあえずわかった」
ワシタカくんの言うことならば、間違いない。信頼できる。
とにかく気を抜かずにギミックバルンのドロップアイテムを拾いに行こうと、ジュノーから視線を前に戻した時のことだった。
「……は? え?」
「……なんか、空間が歪んでるし?」
目の前の空間が、陽炎みたいにゆらゆらと揺れ始めたのである。
「な、なんだこれ……」
眉を顰めていると、そのぼやけた空間はじわじわと距離を詰めてきているようだった。
「グリフィー、とりあえず退がれ!」
「グルッ!」
なんだかわからないものには触っちゃいけない。
俺の声に合わせてグリフィーが退がり、ワシタカくんが羽ばたいて接近を阻止した。
その折、手になんとなくフワッとした何かが触れる。
得体の知れないものが俺の手を撫でてきているようで虫唾が走る思いなのだが、逆に俺の手を通して魔物の正体が表示された。
【ファントムバルン】
バルン系の魔物が同時に大量に破裂した場合にのみ出現する集合気体。
この個体は気体を覆う被膜が存在せず、自由に存在する。
なんと、風船を持たないゴーストタイプのカラフルバルンだった。
出現条件的に、特殊個体もしくは希少個体に位置する存在だろう。
しかし、どうやって生きてるんだろうな?
もはや精霊の一種なのだろうか、この状態は……。
「ギュアッ!」
「倒し方がわからないから、そのまま吹き飛ばすってさ!」
「あ、ワシタカくんちょっと待って!」
倒し方がわからない、と言ったな?
だが、簡単な話だ。
「一度下に降りるぞ!」
こういう状況にめっぽう強い奴がいる。
「トウジ、いったいどうするし?」
「ウネウネくんを出す!」
俺の一言で、ジュノーも「ああ……」と全てを悟ったような顔をした。
ミスティーハーブを採りに行った時もそうだが、魔力を含んだ気体にはマナイーターであるウネウネくんが効果抜群だ。
「――ギョアアアアアア!」
ワシタカくんと交代で召喚されたマナイーターのウネウネくんは、金切り声を上げながらファントムバルンへと食らいつき、ズオオオオオオッと吸入音を立てながら吸い込み始めた。
マナイーターは、捕食した魔力の量で体が大きくなっていく特性を持つ。
故に、吸い込みながら徐々に巨大化していくウネウネくんを見ていると、俺の作戦は上手くいっていることを確信できた。
「あんなの吸って、平気だし……?」
「平気平気」
ファントムバルンが何をしようが、ウネウネくんには魔力的なダメージが通りづらく、頭を気体で覆って窒息させようとしても、たぶんミミズみたいに皮膚呼吸できるだろうし無意味だ。
ズオオオオオオオオオオオ――。
うん、普通に頭を覆い尽くしてきたファントムバルンを、意気揚々と吸っている。
大丈夫だな、あれ。
こういった魔力オンリーな相手には、これからウネウネくんを起用していこうか。
ズオオオオオオオォォォォォォォ――……。
「ギョアアアアア!」
ファントムバルンを吸い尽くしたウネウネくんは、満足したように咆哮を上げる。
地面には、ファントムバルンのドロップアイテムのみが残っていた。
「お疲れさま」
健闘を称えて拍手を送り、図鑑に戻してコレクトを召喚。
ドロップアイテムを確認する。
ケテルや普通のバルンからドロップするアイテムが大量に転がっているのだが、その中でも一際異彩を放つものがあった。
【魔力ガスボンベ・大型】
魔力の液化ガス。
魔力厳禁! 取扱注意!
魔力ガスと書かれた巨大なボンベである。数は五個。
この説明だけじゃ何がなんだかわからんが、おそらく大量の気体が入っているのだろう。
確か、天然ガスとかって液体にすると体積が六百分の一くらいになるんだっけ?
「す、すげぇな……」
これが五つって、飛行船に必要な量を十分に賄えそうなくらいである。
いや、どれだけ量が必要なのか、詳しくはわからんけど。
カラフルバルンを三千体くらい倒す必要があったと思うから、たぶん十分だ。
足りなかったら知らん。
「ねえねえ、何か良いの落ちてたし?」
「あ、うん」
ジュノーにはドロップアイテムが見えないので、一旦インベントリに収納して出してやる。
ドラム缶くらいの大きさのタンクを見たジュノーは、飛び上がるほどに驚いていた。
「うわっ、でかっ! なんだしこれ?」
「魔力ガスボンベ」
「まりょくがすぼんべ?」
「カラフルバルンからドロップする気体の超絶でかいバージョンだよ」
「へー! でも確かに大きいけど、超絶ってほどじゃないし?」
「いや、実はこれ液状になってるやつだから、気体になったら六百倍くらい」
「ろ――!? パ、パンケーキで換算したら!? どれくらいだし!?」
いや、パンケーキは知らねーし……。
頑張って指で数えようとしてるけど、絶対に無理だぞバカかこいつ。
「わかんなーい!」
「えっと、パンケーキって普通瓶に入らないだろ? でも、ぎゅーって握り潰したら瓶にたくさん入るようになるだろ? そんな感じだよ」
「でもそれ美味しくないし」
お前の小さな頭でもわかるように、わざわざパンケーキにたとえてやったんだよ、クソが。
「トウジ、その考え方はパンケーキに対する冒涜だから改めるし」
「……」
「ま、それで言うとこのボンベってのは、気体を冒涜した存在だってことだし?」
「知らねーし……」
話がややこしくなるから、とりあえずこの辺でスルーしておこう。
さて、カラフルバルン狩りはこれで切り上げて、調査の残りを終わらせるとするか。
◇ ◇ ◇
デリカシ辺境伯領の調査もあらかた終えて、帰路につく時のことだった。
グリフィーの飛行で最短距離で港町へ戻る最中、ジュノーがふと呟いた。
「ねえ、島の中央ってどうなってるし?」
「……確かに気になるな」
デリカシ辺境伯領のマップを確認すると、大きな島にはいくつかの高い山があり、それがぐるっと島の中央を囲うように連なっているのだ。
気にも留めていなかったのだが、島中央へ向かう者を阻むような地形は、まるでそこに何かがあるように思えなくもない。
そういえば、島をぐるっと一周見てきてくれと依頼してきたデリカシ辺境伯も、中央については何も言及していなかった。
つまり、やはり中央には何かが隠されていて、デリカシ辺境伯はあえて調査依頼の中に含まなかった……と、思えんこともない。
「島の中央って樹海だし?」
「そうだな」
そこにはオルトロスもそうだが、他にも危険な魔物が生息している。
しかし、マンティコアを倒した俺たちならば特に問題はないはずだ。
危険だから行ってはならんぞ、っていう展開ではない。
「島の中心に行ってみたいし!」
「よし、行くか!」
なんだかよくわからないけど、冒険者の血が騒いだ……気がする。
グリフィーに進路を変えてもらい、俺たちは山を越えて島の中央へと飛び出した。
「わぁー! なんかすごい地形だし!」
俺のフード付きローブの中から響くジュノーの高い声。
「そうだな!」
いつもだったら耳元で叫ぶなって小言を並べるが、今は同意しておこう。
それだけ、改めて上空から見渡したデリカシ辺境伯領の景色は素晴らしかった。
言うなれば青ヶ島だな、規模のかなり大きな青ヶ島。
ワシタカくんに乗ってれば、こんな光景しょっちゅう目にするだろうが、俺はその時たいてい余裕がない、もしくは寝ているのだ。
「風が気持ち良いな」
空を飛ぶ時、周りに目を向ける余裕が一切なかったんだけど、しっかり体を固定する鞍、グリフィーや一緒に乗るポチの温もりが合わさって、心の余裕が生まれている。
……うん、空良いな!
優雅に空の旅を楽しめる飛行船、是が非でも完成に向けて頑張らないと!
「アォン」
俺のそんな呟きに、服の中に入ってカンガルーの子供みたいに顔を出すポチが返す。
ワシタカくんに慣れたらもっと気持ち良いと言っているようだった。
「慣れろ? そ、それはちょっと……」
「ォン……」
「いや、ワシタカくんはまた別次元の存在というか、なんというか」
高度もスピードもグリフィーの比じゃない。
旅客機に縛り付けられて空を飛ぶようなもんだから、まだしばらくは無理だ。
ため息を吐くポチに、そんな感じの弁明をする。
確かに、以前の小賢ゴブリンみたいにワシタカくんの背中に立てれば格好良い。
だが、どうやるんだよって話だ。
足だけ固定できるとして、風圧に負けてリンボーダンス状態になりそうである。
「島の中央には何があるかな~♪ 楽しみだし~ししし~♪」
想像してげんなりとした気持ちになっていると、ジュノーが俺の髪を引っ張りながらウキウキ気分で変な歌を歌っていた。
「もうすぐ中央だからって、あんまり期待するもんじゃないぞ?」
「なんでだし?」
「物欲センサーに感知されるからだよ」
「物欲センサー?」
ジュノーはきっと何かがあると思っているようだが、そんな時こそ何もないことが多い。
逆に、何もないだろうってたかを括っていると、何かあるって場合がほとんどである。
ゲーマーはそれを物欲センサーと呼ぶのだよ。
「あると思ったらなくなって、ないと思ったらあるし!?」
「うん」
「ちょっとよくわかんないからパンケーキでたとえてみたらどうなるし!?」
「いやもうパンケーキはいいわ……どうやって説明すりゃいいんだよ……」
無理やりパンケーキで説明するとしたら、パンケーキが食べたいと思っていたら、たまたまパンケーキを出してるお店が休みで悲しかったり、パンケーキの気分じゃないなと思っていたら、期間限定パンケーキが個数限定販売されていたりって感じだろうか?
「なんか、パンケーキのことを考え過ぎて胃もたれしてきた……」
「じゃあ何もない! 島の中央には何もないし! あたしは何も探してないですよー!」
物欲センサーに引っかからないために、島に向かって叫び続けるジュノーである。
なんだこいつ。
「ポチ、これ今日パンケーキを出さなかったらどうなるかな……?」
「アォン……」
泣くからやめとけって?
確かにいつも楽しみにしてる分、食後にパンケーキが出なかったらガチ泣きしそうだ。
ポチの言う通りやめておきましょう。
「ねぇトウジ」
「はいはい」
「つまり、パンケーキがないって思ったらいっぱいあるってこと?」
「は?」
「あたしの気持ちが物欲センサーに引っかかって今まで一日1パンケーキだったとしたら、これから物欲センサーを回避すれば一日2パンケーキ食べられるってことだし?」
し、知らねえ!
「よーし! パンケーキいらないパンケーキいらないパンケーキいらない!」
「……」
「……」
ヤベェ目つきでパンケーキいらないと呟き続けるジュノーに、俺とポチは絶句していた。
明らかに中毒者の目つきである。
「ポチ、パンケーキになんか変なものとか入れてないだろうな……?」
「アォン!」
入れてるわけがない、との抗議の声。
「だよな」
ってことは、ジュノーの頭が素でいかれてるって話になるのだが……。
「パンケーキいらないパンケーキいらないパンケーキいらない――」
ああ、バカだったな、こいつ。
パンケーキに挟まれた気分になりたいとか言って、俺の枕を奪ってくるし、寝言でもパンケーキを連呼するもんだから、最近では俺の夢にも出てくる始末だ。
一度、パンケーキ断ちをさせた方が良いのではないだろうか。
ギリスに来た当初は、一時期チーズケーキにもハマっていたし、他のケーキ類をローテーションで出して、パンケーキの呪縛から解き放てないか試してみよう。
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