装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

895 コンプレックスの行き着く先みたいな

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「怪力乱神様! 万歳!」

『万歳!』

「怪力乱神様! 最高!」

『最高!』

「怪力乱神様! 最強!」

『最強!』

 忍者のような服装をした妖精だか小人だかわからない奴らの万歳祭り。
 なんだよこれ、急に何を言い出してるんだこいつら……。

「あの……なんですか……?」

「ふおおお! 乱神様が我らに何か申されるぞ!」

『万歳! 最高! 最強!』

「きっとありがたいお言葉じゃぞ!」

『万歳! 最高! 最強!』

 う、うぜえ。
 俺がデカすぎるのか、それともこいつらが小さ過ぎるのか。
 いや、どっちもか。

 とにかくサイズの違いがあり過ぎて、表情が見づらい。
 声もなんか色々と他の声が混ざって聞こえて聞き辛い。

 下手に動いたら潰しそうで、体操座りから体勢を変えることができないのが辛かった。
 この体勢で寝てたもんだから、ケツの感覚がすごいことになっている。

「……」

「……」

『……』

 俺の発言を待っているのか、しばらくの沈黙が続いていた。
 俺だって何を言って良いのかわからなくて、喋りづらい。

 だ、誰か!
 この空気を、早く何とかしてくれ!

 こんなことになるならジュノーあたりを連れてきておけばよかった。
 あいつがいてくれたら「なんだしこいつら!」と勝手にコミュニケーションをとってくれていたはず。

「……ふぁぁ、なんなんですか。朝っぱらから騒がしいですね」

 困っていると、危険な樹海のど真ん中にいることなんかとっくに忘れてしまったように、テントからエリナが顔を出した。

「おふぁようございましゅ、トウジさん……って、何ですかお尻の周りにいる小さい人たち!?」

「わかんない」

「え、まさか妖精ですか!? 私、こうして外で妖精見るの初めてです~!」

「そうなんだ」

「ジュノーちゃんと比べて、意外と大きいんですね!」

 意外と大きいという言葉を聞いて少しだけ疑問を感じたのだが、すぐに納得する。
 そう言えばジュノーは妖精だってことにして、周りには適当に伝えてるんだった。
 ダンジョンコアなんて、普通の人は信じないから妖精の従魔扱いなのである。

「い、今なんと申されました!!」

 テントから出てきたエリナの一言を聞いて、一人が全力で駆け寄り手を握っていた。
 この場を取り仕切っていた長老っぽい髭をこさえたタイプの妖精(仮)である。

「え? な、なんですか……?」

「今、大きいと申されましたかのう!? 我らが大きいと!?」

「え? まあ、はい」

「ふぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

『ふぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 エリナが肯定した瞬間、全員で涙を流しながら叫び声を上げる小さい諸君。

「ト、トウジさん! なんなんでしょうこの状況!?」

「わかんない」

 マ、マジで何なんだこいつら……!
 怖えよ、小さくてもなんか怖えよ!

 体のミニマムさにコンプレックスを抱え過ぎた結果。
 今の巨人状態の俺を神様だと称えて、エリナの言葉を泣いて喜んだのだろうか。
 もはや宗教かな?

「女神殿、一つ訂正しておきますのじゃが、我らは妖精ではなく人でありますじゃ」

「えっ!? ってことは小人さんなんですか!?」

「こ……っ!? ふぐううううううううううう!! い、今言ってはならんことをぉぉおおお!」

『ふぐぅぅぅぅうううううううううううう! 小人と言われた! 小人と言われた!!』

 今度は全員で咽び泣き始めた。
 ヤ、ヤバい。

 人間コンプレックスが行き着くところまで行った結果が、こうなるのだろうか。
 ……いや、俺もハゲてからハゲだといわれたらこうなりそう。

「なんか、気持ち少しだけわかるな……」

「えっ!? トウジさんまでどうしたんですか!? どうしてほろりとしてるんですか!?」

「いや、気にしてることをズバッと言われると、悲しいもんなんだよ……」

「私何か言っちゃいましたかね!? あっ、小人ですか!? 撤回します! 大きいです!」

 エリナが小人発言を撤回すると、長老はピタリと泣き止んだ。
 訝しげな視線をエリナに送りつつ言う。

「……本当ですじゃ? 本当の本当に本当ですじゃ?」

「ほ、本当です……」

「皆の者! 今し方の小人発言は女神様のジョークじゃぞ! 泣き止めい!」

『はっ!』

「我らの悲しみを受け取って、乱神様ももらい泣きしてくださっておるぞ! 感謝せい!」

『万歳!』

 立ち上がり、再び騒がしく万歳を始めるミニマム共。
 エリナが俺を見上げて言う。

「め、面倒臭いです……」

「そうだね……」

 なんていうか、濃いな。
 また濃い奴らと出会ってしまったようだ。

「俺だとサイズ感違いすぎて会話にならないから、エリナ頼むね」

「えっ!? 何でですか! 何で私が!」

「俺いま顔の位置高すぎて、誰と話してるかわかんなくなるし……」

 適当な理由をつけて、こいつらの相手をエリナに押し付ける。
 これも経験だよ、ギルド職員。
 こんな小さな冒険者が受付に来た時のことを考えてやってみるべし。

「ひぇぇー……」

「女神様! どうか、どうかこの井守衆の願いを聞き届けてはくれませんか!」

『お願いします!』

「えっと、ど、どんなお願いなんですか?」

「我らを大きくしてくださいませじゃ!」

『大きくしてください!』

「ええええーっ!? そ、そんな無茶ですよ~!」

 大きくしてください、か。
 できないこともないけど、時間制限があるからなあ……。
 それで詐欺師扱いされたら困るので、下手に口出しするのはやめとこう。

「今のままでも十分かわ、じゃない大きいですよ! 大きくて素敵ですよ!」

「しかし、我らはもともと筋骨隆々の一族。その体を捨ててこのまま生きるのは……恥なのじゃあっ!!」

『一族一生の恥!』

「ええ……筋骨隆々って、本当なんですか?」

 ミニマム共に向けるエリナの懐疑的な視線。
 わかる、わかるよ。

「失礼ですじゃ! 本当のことですじゃ! 我ら一族は特別な加護により成人を迎える頃には身長2メートルを超える偉丈夫なんですぞー!」

『軽々と木を打ち倒し! 岩をも持ち上げる井守衆!』

「うーん……そんな人たちが、なんでこんな姿になってしまってるんですか?」

「それは、話せば長くなりますじゃ……我らの敵勢力に百足衆という奴らがいるのですが、そいつらに毒を盛られたのですじゃ……その毒は、体を小さくさせ……我らの思考を幼体化させてしまうという恐ろしいものだったのですじゃ……」







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