装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

917 一件落着扱い

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『トウジしゃまああああああああ!』

 これで一件落着かと思い一息ついていると、遠くの方から声がした。
 小さくなった井守衆がエリナと共にこちらに駆け寄ってくる。

『どうなったんですじょ! どうなったんですじょ!』

「なんかすごい音がしていましたけど!? もう終わったんですか!?」

 わらわらと集ってくる井守衆。
 それを見て思い出した。

 ……やべぇ、こいつらのことを完璧に忘れていた。
 小さくなってしまった体を戻すには、どうしたらいいのか。
 本気で忘れていた。

「なんじゃわらわらわらわら……ぬ!? この童どもは、もしや——」

 俺にたかる井守衆を見て感づくトウテツ。
 その通り。

「あんたの子孫だよ、トウテツ」

「な、なんと……いったい何がどうしてこうなってしまったと……」

「色々訳が」

『ト、トウテツ!?』

 話そうとしたら、トウテツという言葉に井守衆が反応する。
 もはやまとめ役だった長も有象無象の中に混ざってしまっていた。

『ましゃかっ! もしやっ! そこにおらす巨大な鬼がっ!』

『トウテツしゃまでございますか!? あのっ、伝説のっ!?』

『どっひゃあああああああ!?!?』

『で、ででではトウジしゃまはやはり我らが神とのちゅながりが!?』

『おしゃー! おどろきしゅぎてもらしたものがー!』

『ぬおー全員で粗相の無いようにとりかかるのじゃじょー!』

 わらわらわらわらぴーちくぱーちく。
 すごいことになっている。

「エリナ、ちょっとこいつらまとめてもらっていい……?」

「そ、そんなあ……! でも流石に話が進まなそうですね……」

 そう、進まないのだ。
 円滑に進めるためには、まず静かにならなければならない。
 話すための場所作りと言うものが、大切なのである。

 先生だってよくいってただろ?
 静かになるまで3分かかりました、みたいな感じで。

 今思えば普通に意味がわからないよね。
 始めるから静かにしようね、って一言あればいいだけなのに。

 そんなこんなで、何故こんな状況になっているのかを俺はトウテツに説明した。
 目をパチクリさせながらも、トウテツは状況を飲み込む。

「しかしトウジ、おかしいとは思わないか?」

「確かに、元凶だったものはもうなくなったのに」

 ウィンストの問いかけに頷く。
 小さくなってしまう要因だったダンジョンコアはトウテツが破壊した。
 そのおかげで俺もこうして元の体に戻っているのだ。
 だが、なぜか目の前にいる井守衆は戻らないままなのである。

「仮定の話だが」

 と、ウィンストは自分の見解を話し始めた。

「この手の呪い、トウジの言い方でいくとデバフは範囲型と個別型が存在する」

「うんうん」

 範囲型は、影響を受ける範囲外に出れば問題ないのだが、個別型に距離は関係ない。
 デバフを抱える触媒が存在する限り、半永久的に持続するものらしい。

「井守衆の方々に一つ問いたい」

『なんですじょー!』

「精神を幼体化させる薬の他に、何か不可解な物に触れたりはしていないだろうか?」

 半永久的に持続するとは言え、範囲型とは違って個別型は相手に直接デバフをかける必要がある。
 その際は、呪文を聞かされたり、体の一部がデバフの要因となるものに触れたりしなければならないそうだ。

『ないですじょ! 我ら誓って! その様なことは!』

『ですじょー!』

『でも祭りと称して相撲大会が小さくなる前に開かれましたのじゃ!』

『体と体のぶつかり合いー!』

 ……え、それじゃね。

「ウィンスト、ひとつ聞きたい。デバフって伝染したりする?」

「疫病の類に似た呪いはそうなるな」

 はい、ダウト。
 絶対それだ。

 仕掛けた百足衆は、井守衆のそういった行事的な部分も知っているのだろう。
 俺だったら下調べした上で一番確実に手間がないところで仕掛ける。

「……ウィンストの話にもあった夫婦は小さくなってなかったっぽいし、多分それだろうな……」

 みんなまとめてやられてしまったのだろう。
 そして精神も幼体化させてしまう毒薬も合わさってこの状況になっているのだ。

「だが、元凶を破壊したことに対しての説明がついていない」

「あっ」

「もっとも、予測はつく。範囲内にいたトウジがまとめてリソースを受け取ったのだろう」

「あっ」

 本来ならば元の持ち主にリソースは帰っていくのだが、俺というイレギュラー。
 結局井守衆は元に戻れないままだった、という訳なのである。

「どうしよう、一応魔力は返せるんだけど、それで体が大きくなるのかな?」

「無理だろうな」

 俺の言葉をバッサリと切るウィンスト。

「影響を及ぼしているものがなくなって、元に戻るのは筋が通る。しかしそれでも戻らないとなれば、どこかで何かが変質してしまった可能性もあって、ただ魔力を返すだけで戻るという保証はない」

 つまり、井守衆は今の体で固定化されてしまった。
 と言うわけでなのである。

 俺の場合は、範囲からそれて元に戻り、再びトウテツが手にしたことによって小さくなった。
 しっかりと区切りがあるのだが、井守衆の場合はそのままトウテツが手にしてコア自体も色々と変貌を遂げた。

「むしろ無に還らなかっただけでも幸運だったのかもしれない」

「そ、そうか」

 すごいフォローしてくれているが、なんとも申し訳ない結果になってしまった。

「ど、どうしよう……?」

「現状をありのままに伝えるしかあるまい。精神的なものはトウジの秘薬を用いれば何とかなるだろうがな……それでも肉体に引っ張られて多少の違和感は残るかもしれないが」

「そっか」

「トウジ、量を確保できるのならば、幼体化の麻薬によって苦しんでいる人たちに配って行きたいのだが……」

「それならオッケー、なんとか準備するよ」

 エリナの周りでお昼寝を始めようとしていた井守衆を見ながら、そんな話をしていると。

「ちょうど良いではないか」

 俺とウィンストの後ろで黙って話を聞いていたトウテツが急に喋り出した。

「ちょうど良いって?」

「見積もって歳の差3歳前後、わしの器の親族として、親戚として良き友人になる」

 え、それで良いのか?
 突拍子もない言葉に、思わず唖然とした。

「寝るな、聞けわしの子孫ども!!!」

『ひゃひ!?』

 トウテツの大声に、今まさに寝ようとしていた井守衆が飛び起きた。
 泣く者もいれば、漏らす者もいる。

「ちょっとようやく寝かしつけたのに何で起こしちゃうんですかあ!!」

 そんな状況にてんやわんやしながら憤慨するエリナ。
 ハハ、なんだこの状況、カオス。

「この赤子は……わしの器、後継者となる……孫だ!」

 このカオスを無視して話し出すもんだから、さらにカオスになった。
 そしてもうちゃんと孫って呼んでるから、トウテツは自らおじいちゃんであることを受け入れている。

『つ、つまり伝説の存在!? 超影でしゅか!? 我らを導く伝説にょー!?』

「それは知らんが、トウテツの名を受け継ぐものだ」

『ぬおおおおおおおおお!』

「お前らには、このトウテツの兄弟代わりとなり愛し世話することを許す」

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

『ありがたき幸せ! まさか! こんなことが!』

『伝説の存在と同じ時を生きることができるんですぞー!? ひゃっほおー!!』

 あれ、なんか反応をみる限りだと嬉しそうだった。
 脳筋だからだろうか、あまり細かいことは気にしないタイプなのだろう。

 長なんか、特に喜んでいる。
 健康体で多少は長生きできたとしても、成長を実感できるころには……と瞬時に判断したのかな?

「……うーん、一件落着でいいのかこれ」

「本人たちが幸せならば、それで良いだろう」

「そうだね」






=====
次は、ようやく新ダンジョン!?
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