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本編
949 グロ砂塵
しおりを挟む「……アフォン!」
深淵樹海最深部へと向かう道中、ポチがくしゃみをした。
「うひゃっ!? 顔にかかったですぞぉ~!!」
「大丈夫か?」
ズビビと鼻をすするポチを心配する。
何かよくないものが鼻に入ったのかと思った。
「……無視ですぞ……?」
後ろで呟く手を縛った荷物は置いといて、布でポチの鼻を拭ってやる。
「ほら、チーンってしろ」
「アフォーン……ずびずび」
なんか、まだズビズビしてるな……。
ポチの鼻は頼りになるから、風邪なら秘薬を用意しておくか。
「……ぐしゅんっ!」
そんなことを思いながらも、俺も鼻が急にムズムズしてくしゃみが出てしまった。
「ちょっ、またですぞ~!!」
「あ、あれ……?」
なんだか埃を鼻で吸い込んでしまった感覚。
「ぐるふぉん! ぐるっふぉん! ぐりふぉん!」
「グリフィーまで? なんだこれ?」
俺たちを乗せて走るグリフィーも大きなくしゃみで思わず足を止めていた。
本当になんだ、これ。
今、俺たちは攻撃を受けているとでもいうのか?
「くしゃみがグリフォンだってことにツッコミはないんですぞ?」
「ロイ様、警戒を」
「落ち着け、空気中の水分に砂の粒が僅かに紛れ込んでいる。つまりそういうことだ」
「ああ、なるほど」
「……あ、また無視ですか」
どうやら空気中に混ざった砂に、俺たちは鼻をくすぐられてしまったらしい。
どこにでもある状況、それを攻撃だなんて俺はとんだ勘違いをしていたようだ。
「とは言え、見てみろ盟主よ」
「うん?」
ロイ様が視線を送る風上の方角を見てみる。
「……砂? が……積もってる……?」
深淵樹海に生える大きな樹木には運ばれて来た砂が積もっていた。
よくみると、かなりの量が蓄積されている。
周りに茂っている草の葉にも、雪のようにつもりつつある状況だった。
こうした光景を目の当たりにすると。
ゆっくりと俺たちを撫でる風に、砂を肌で感じてくる。
「なんだかもふもふしているポチの毛並みがざらざらして来た気がしなくもない……」
「アォーン!」
ポチの抗議の声を聞き流しつつ、ロイ様と会話を続ける。
「偶然とは言い難い状況だな、盟主よ」
「明らかに異常だね」
こんなに砂が積もるだなんて、まるで砂漠の国に来たみたいだ。
そこまで考えて、ハッと気が付く。
「確か、グリードとやらは砂漠の大迷宮の主なんだよな?」
「うむ、大方考えていることはそれであっているだろう」
つまりグリードがこの先にいる。
「ややっ! この魔力の砂には覚えがありますぞ! 私知ってますぞ!」
「うん、だろうね」
「おおっ、やっと会話に混ぜてもらったんですぞ~!」
そんなに寂しかったのだろうか。
でも自分の状況を考えて欲しい。
空気を読んで黙っていて欲しい。
とは言え、身に覚えがあるのならば聞いておいて損はないだろう。
「身に覚えがあるって……この砂、吸っちゃダメとかだったりするの?」
「それは知らないですぞ」
知らないのか。
「ただ、こうした砂の流れは……やがてくる砂嵐の前触れと——」
——ブオォッ!
過去が話している最中に突風が巻き起こった。
視界が一瞬で砂に染まり、目が開けてられなくなる。
「言うらしいですぞ~……って言ってる側からフラグ回収ですぞ」
「よく、喋れる、な……!」
口を開いた側から、口内に砂が絡みつく。
まともに息もできないんじゃないかってくらいだった。
窒息ダメージは無効にしてあるからこう言う状況でも無問題であるのだが、口の中の砂はどうしようもない。
「はて? んひゃっ! ちょ、ちょっとどうなってるんですぞ~!」
「はあ?」
普通の会話から急に悲鳴へと変わる。
なんとか薄目で状況を確認しようとするが、無理だ開けれない。
砂塵用のゴーグルでも作っておけばよかった。
今から作ったとしても、この砂塵の中だと意味がない。
「服が砂化して、うひゃあっ!?」
服が砂化!?
なんだ、どういう状況だ!?
「見事なまでにサラサラだな」
「ロイ様! 平気なのか!? どうなってる!?」
「服というか、手足まで砂になって飛んでいっているぞ」
えっ!?
手足まで!?
本当にどういう状況なんだろう。
服だけ消えて気まずい状況かと思ったが、それ以上にとんでもない状況らしかった。
「なんですぞ!? なんですぞ!?」
「知らんが、この砂の主が貴様を連れ去ろうとしているのやもしれん」
「なんとかしてくださいですぞ~! や、やだっ!」
「どうする、盟主よ」
「口が砂化するまで、って言いたいところだけど、なんとかできるならして欲しい」
俺だって、この砂の中に居続けたくない。
確実に何か攻撃を仕掛けて来ている真っ最中でもあるから、跳ね除けられるならやって欲しいところだ。
「それに華子を連れ去ろうとしているのならば、邪魔してやるのが一番だ」
「承知した。諸君、水の壁だ」
ロイ様から大量にスライムキングが生み出されている音が響く。
むにょんむにょんむにょんむにょん。
どしんどしんどしんどしん。
そして出現したスライムキングたちが一斉に水を生み出す。
『ぷるぁああああああああああ』
俺たちを包み込んでいた砂塵が、水に絡め取られ地面に落ちていく。
追加で吹き付ける砂塵も作り出された水の壁、いやドームによって防がれた。
「できるなら最初からやっといて欲しいところだけど……助かったよありがとう」
「私個人だと出力が足らんのでワンテンポ遅れるのだ。王の中の王とは違う」
「なるほどね」
「このまま壁を維持しつつ前進すればいずれは敵と巡り会うだろう。砂の流れが道を示してくれている」
「うん、行こうか」
「ちょ、ちょっとすんなり話を始めないでくださいですぞ! あの……手足がないままなんですが……」
慌てふためく華子に目を向けると、本当に手と足が存在していなかった。
手首と足首から先が綺麗になくなっており……。
「うわ、グロッ」
「ひ、ひどいですぞ!? ……って本当にグロいおえええ……」
=====
不思議なことに血はでてないけど、剥き出しである。
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