平凡な男娼は厳つい軍人に恋をする

朏猫(ミカヅキネコ)

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番外編

剣技大会4

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 大きなベッドの上で裸になった僕は、大きなフカフカの布の上に座っている。少将からおとなしく座っているようにと言われたからなんだけれど、さっきから少将は潤滑油のほかに小さな髭剃りを用意したりして、なんだかちょっと怖い。

「……あの、少将、その髭剃りは……?」
「お仕置きの道具だ」
「お……お仕置き……」

 お仕置きっていうのは、あのお仕置きで間違いないだろうか。……つまり、僕にお仕置きしたくなるくらい少将は怒っているということ……?

「あ、あの、お仕置きって……」
「妃殿下にキスを許しただろう? そのお仕置きだな」

 僕のおかしな言動へのお仕置きじゃなかった。いや、妃殿下のキスも僕がよくなかったのかもしれない。でも、僕にはどうにもできなかったことだ。

「あ、あれは急にだったからというか、僕もビックリして何もできなかったっていうか……」
「だろうな。あの方は昔から突拍子もないことをするから、逃げられなかったのも仕方がないとわかっている」

 少将の話では、妃殿下は小さい頃からとても活発な女の子だったらしい。
 五歳にもならないときに大きな木に登ったこともあるくらいで、大騒ぎになったことがあったそうだ。しかもその木から落っこちてしまい、それをたまたま受け止めたのが少将だった。それ以来、妃殿下は少将のことを「アララギ兄様」と呼んで、本当のお兄さんみたいに慕っていると教えてもらった。
 妃殿下には四人のお兄さんがいるけれど、どのお兄さんもスラリとした貴族らしい人たちなんだそうだ。だから、筋骨隆々な姿が珍しくて懐いたんじゃないかと少将は言っていたけれど、僕は少将が優しいから懐かれたんだと思った。

(それに、笑ったら可愛いしね)

 そんな出会い方をした妃殿下から話し相手になるように言われて、気がつけば妃殿下の護衛みたいな形になっていたとか。軍の仕事もして護衛の仕事もしていたなんて、少将はやっぱりすごい軍人さんだ。
 そんな少将だったけれど、自分のことはほとんど話さなかったそうだ。「特別話すような出来事もなかったからな」ということだけれど、高級娼館に通い始めたと聞いた妃殿下に何度も呼び出され、僕のことを根掘り葉掘り聞かれることになったらしい。
 それで僕のことを好きになったとか身請けしたいとか、……金色の輪っかの話とかになったということだった。

(事情はわかったけど……)

 それだけ親しい間柄で上官のお嬢様だったとしても、ちょっと正直に話しすぎだと思う。おかげで僕の乳首のことまで知られているなんて、思い出すだけで恥ずかしくなる。

「妃殿下のこともそうだが、殿下にまで抱擁を許してしまっただろう?」
「へ……?」
「殿下に抱きしめられて、うっとりしていたな」
「……へ?」

 うっとり……は、していないと思う。たしかにいい匂いはしたけれど、動けなかったのはビックリしたからだ。それに相手は王子様なのだし、突き飛ばすなんてことができるはずもない。
 僕は「不可抗力ですぅ……」と涙目になりながら説明した。それで少将に嫌われでもしたら悲しすぎる。

「あれはどう見てもうっとりしていた」
「そんなこと、全然ないです。それに、僕には王子様に何かするとか文句を言うとか、絶対に無理ですってば……」
「まぁまぁ長い抱擁時間だった」
「しょ、少将……」

 僕の情けない声に、少将が少しだけ眉尻を下げた。……あ、そういう表情もちょっと可愛い。

(……じゃなくて)

 僕は何度も「王子様のことは仕方なかったんです」と話し、「少将にしかうっとりしません」と力説もした。

「まぁ、結果的に殿下は俺たちに疑念を抱くことはなくなっただろうがな」
「少将?」
「それでも、目の前でほかの男に抱擁される妻を見るのは耐えがたい気持ちだった」
「しょ、少将ぅ……」
「せっかくの機会だから、お仕置きと称してやってしまおうかと思ってな」

 少将の顔がいつもどおりに戻ったような気がする。それでも右手に髭剃りを持ったままなんて、やっぱり怖すぎる。

「あ、あの、少将、その髭剃り、どうするんですか……?」
「ツバキを傷つけるわけじゃないから、安心してほしい」

 もちろん少将が僕を傷つけたりしないことはわかっている。それでも髭剃りを持つ少将はちょっと怖かった。何をされるのかわからないのが、さらに怖さを増す。それに、髭剃りを向けられている僕が全裸というのも怖かった。
 きっと引きつった表情をしているであろう僕の前に座った少将が、布の上に正座している僕のお腹に左手を伸ばした。

「ツバキのうぶなここを、もっとうぶな状態にしたいと、前々から思っていたんだ」

 そう言いながら、少将の指が僕の下生えを撫で始める。

「……あの……?」
「ツバキが恥ずかしがると思って我慢していたんだが、お仕置きとしては妥当だろう?」
「……ええと、どういうことですか?」
「ここの毛を全部剃ろうと思ってな」

 そう言って、また下生えをサワサワと撫でた。その指を見て、右手に持ったままの髭剃りを見る。もう一度下生えを撫でている少将の指を見て、ようやく言われたことが理解できた。

「……もしかしなくても、そこの毛を剃るってことですか?」
「大丈夫だ。絶対に傷つけたりはしない」
「それはもちろんわかっていますけど、でも、あの、毛を剃るっていうのは一部の男娼しかしないことで、それもアレとかコレとかする男娼がやることで……」

 高級娼館では整える程度に下生えを剃るのは普通だ。僕もヤナギさんに教えてもらって、みっともなくない程度には整えている。でも、全部を剃る男娼は少ない。だって、全部剃るのはしゃぶられたり道具をつけられたりするのが好きな男娼がすることだからだ。そういうとき、下生えがあると邪魔だからと男娼仲間も話していた。
 僕は自分が舐められるのが苦手だったから、もちろん全部剃ったことはない。それに、ソコがツルツルなんて……子どもみたいで恥ずかしくなる。

「足を開いて」
「あの、少将、全部っていうのはさすがに……ひっ」
「ほら、じっとして」

 少将に「足を開いて」と言われたら開かざるを得ない。そうしてパカッとご開帳した股間に、トプトプと潤滑油を垂らされて思わず声が出てしまった。
 そんな僕に構うことなく、少将の指が潤滑油と毛を馴染ませるようにクルクルと動く。すると、トロトロだった潤滑油がアワアワになってきた。

「さぁ始めようか。ツバキ、動かないようにな」

 そう告げた少将の声はとても楽しそうだ。少将が楽しいのは嬉しいけれど、やっぱり毛を全部剃ることには躊躇する。でも、楽しそうな少将の邪魔はしたくない。どうしようと迷っている間に、髭剃りを持つ少将の手が下腹に伸びてきて……ショリ、と音がした。

(……っ)

 冷たい髭剃りが肌に触れるたびに、お腹がヒクッと震える。お腹の動きに合わせるように、ショリ、ショリと毛を剃る音が聞こえてくる。泡を伸ばすために少将が優しく撫でるのが段々気持ちよくなってきて、そのせいで腰が揺れそうになる。

「……っ、ひ、……んっ」

 気がついたら、僕の性器は完全に勃起していた。

「ツバキ、こんなに感じてしまっては、……ほら、うまく剃れないだろう?」
「だ、って……、ひゃぅっ!」

 少将の指が、勃起した僕の性器の裏側を先端に向かってヌルッと撫でる。そうしてから、カリに指を引っかけるように横に倒した。そうされるだけで気持ちがよくて、腰が前後に動きそうになる。でも性器の脇では髭剃りがショリショリ毛を剃っている最中で、怖くて必死に動かないように我慢した。

(っていうか、なんでこんなことで感じちゃうかな……!)

 まさか、毛を剃られる行為に感じるとは思わなかった。これじゃあ、あまりにも変態すぎて呆れられてしまうに違いない。
 そんなことを思っていると、少将がフッと笑ったのがわかった。

「いやらしい雫がこぼれている」
「……っ」
「あぁ、睾丸もヒクついてきたか」
「言っちゃ、や、です……っ」

 言われなくてもわかっていた。そんな状態を少将に見られているのだと思うとますます感じてしまう。感じると、いろいろ我慢をし続けるのは無理だった。
 僕は膝を立てたまま股を開き、両手を後ろに置いて腰を突き出すような格好をした。それだけじゃ焦れったくて、爪先で敷布を擦りながら少しずつ腰を上げていく。そうすると当然少将の目に晒される部分も増えるわけで、きっとヒクヒクしている後ろも見えているはずだ。

「あとは付け根を剃って……」
「ふぅ……っ」
「ツバキの尻には毛が生えていないから……」
「ぁんっ」

 見せつける格好になっていた尻たぶをヌルヌルした指で撫でられて、腰がジィンと痺れた。

「これで終わりだな」
「ん……っ」

 確認するように股間のあちこちを撫でた少将の指が離れ、代わりに柔らかな布で泡を拭ってくれる。

(拭ってる、だけなのに……)

 わかっているのに、性器も玉も尻たぶまで触られているせいで、僕はすっかりグズグズになっていた。気持ちがよくで、でももっと気持ちよくなりたくてジンジンしてくる。

「さぁ、きれいになった。……あぁ、これはまた……なんとも可愛らしい」

 少将の声に、そうっと目を開けて突き出したままの股間を見た。そこには……下生えがきれいに剃られたツルツルの股間があった。まるで小さい子どものような状態なのに、完全に勃起している性器はしっかりと大人の状態だ。それに、たったいま拭ってもらったはずの先端は濡れていて、自分の視線にまで感じてしまうからかツプツプといやらしい雫がどんどん溢れてくる。

(ど、どうしよう……っ)

 下生えを剃られただけなのに、僕はみっともないくらい興奮していた。どんどん濡れていく自分の勃起した性器を見ているだけで玉がせり上がってくるのがわかる。それに後ろの孔もヒクヒクして、お腹の中までジクジクしてきた。

「あ、やだ、どうし……、ぁっ、やぁ、なんか、きちゃ、やだ、イッちゃ、ぁあ……ッ!」

 ピュル、ピュルルッ!

 性器を抜いたわけでも、後ろに逸物を咥えたわけでもないのに、僕は腰を揺らしながら勝手に射精してしまっていた。手で押さえていなかった性器はペチペチ跳ねてしまって、あちこちに精液が飛び散る。もちろん僕のお腹や胸にもかかってしまって、後ろ手に座ったままだった僕は、まるで射精している姿を少将に見せつけるみたいな形になっていた。

(毛……剃られた、だけなのに……)

 それだけでイッてしまったことが恥ずかしい。こんなことくらいでイクなんて、元男娼として情けなさすぎる。

「い、イクつもりなんて、なくて……毛、剃っただけなのに……なのに、気持ちよくて……」

 自分でも何を言っているのかわからない。ただ情けない姿を少将に見られたのが恥ずかしくて、呆れられたかもしれないと思うと涙が滲んできた。

「僕、なんでイッたのか……こんなの、恥ずかし、のに……」

 じわりと涙が出てきた。あちこちに精液をつけたまま泣いてしまうなんて、ますます情けなくて泣けてくる。思わずギュッと目を閉じたら、目尻を少将の指が撫でてくれたのがわかった。

「恥ずかしがる必要はない」
「……少将」
「いまのツバキも可愛くて、俺は好きだ」
「……っ」

 好きだと言われたのが嬉しくて、ゆっくりと目を開ける。いつもよりずっと優しい顔をした少将が僕をじっと見ていた。

「ツバキは可愛くて、それでいて淫らで、俺にとっては理想の妻だ」
「……でも、こんなことで、その、イッちゃう、なんて……」
「ツルツルになった途端にイクなんて、可愛いだろう? それに性器を震わせながらイク姿も可愛かった。思わず俺までイキそうになったくらいだ」
「……それは、さすがにどうかと……」

 僕の言葉に少将が少し笑った。……うぅ~、少将、可愛いよぅ……。

「前にも言ったが、俺も大概変態なんだ。そのぶん気持ちいいと感じることも多い。ツバキもそうなのだろう?」
「……はい」
「それなら、二人揃って気持ちよくなれることが多いということだ。夫婦にとって理想的だと思わないか?」

 よくわからないけれど、少将も気持ちがいいなら僕も嬉しい。

「ツバキがいやらしいのなら、それだけたくさん気持ちよくしてやれるということだ。それは俺にとっても喜ばしい。愛しい妻を悦ばせられるというのは、夫として最高に嬉しいことだからな」

 それなら、僕だって大好きな少将をたくさん喜ばせたい。もっともっと気持ちよくしたい。元男娼のすごい技……はないけれど、それでもいろんな方法で、たくさんたくさん気持ちよくしてあげたい。

「……僕だって、少将が気持ちよくなってくれるの、すごく嬉しいです。……旦那様が、気持ちいいのは、その、つ、妻の喜び、ですから!」

(い、言ってしまった……!)

 全部心の底から思っていることだけれど、最後の「妻の喜び」という言葉はさすがに恥ずかしかった。それでも、僕は間違いなく少将の奥さんで妻だ。外で言われるのはまだ恥ずかしいけれど、こうして少将に言われることにも僕自身が思うことにも慣れてきた。

(ううん、自覚できるようになった、ってことかな……)

 改めて「僕の旦那様だ」と思いながら見た少将は、とてもかっこよかった。体が大きくて力持ちで優しくて、傷跡がある顔は少し怖いときもあるけれど笑うと可愛い。それに、太くて硬くて立派な逸物も、とんでもない絶倫具合も、僕をトロトロにしてくれるところも、全部理想の旦那様だ。
 そう思ったら、心臓がドキドキしてきて体がジンジンしてきた。勢いよく射精した性器はまたピンと勃っているし、後ろなんてみっともないくらいヒクヒクしている。

「僕、少将のことが大好きで、好きすぎて、どうしていいかわからないです。……だから、もっと少将しか目に入らないように、お仕置きの続き、してください」

 そう言った瞬間、少将の目がギラッと光ったのがわかった。
 その後、僕はツルツルになった下腹を、これでもかというくらい舐め回された。まるで少将が大きなワンコになったみたいな感じがして、それだけで僕は軽く二、三回イッてしまった。
 そうしていろんなものでベトベトのグチャグチャになった股間のまま、とんでもない大きさに育っていた少将の逸物をずっぽり挿れられた。ずぶぶぶ、と挿入はいってきた瞬間、僕は盛大に射精しながら絶頂した。そこでほとんど意識が途切れてしまったけれど、その後も何度も奥を突かれて何度もナカに出されたのは何となく覚えている。
 そういえば、途中で「鏡の前でやってみたい」だとか「この股間に似合う下着を用意しよう」だとか聞こえた気がするんだけれど、現実だったのか夢だったのかわからないままだ。

 次の日、目が覚めたら少将に後ろから抱っこされていた。尻たぶにフサフサしたものが当たっている。「もしかして……」と思った途端にお腹がきゅうっと食い締めた存在に、一晩淹れられたままだったに違いないと思った。

(……少将のほうが、絶対に変態だと思う……)

 でも、そんな少将が好きだ。優しくて可愛くてかっこよくて、そして変態な少将が大好きだ。

「……んっ」

 大好きと思うだけで、また後ろの孔が勝手に締まった。尻たぶが濡れているように感じるのは、こうして締めるたびに漏れているからだと思う。

「……本当に、理想的な絶倫具合だなぁ……」

 高級娼館で、まだお客さんだった少将に思ったことをまた思ってしまって、なんだかおかしくなった。あのときは少将に身請けされるなんて思っていなかった。もちろん、奥さんになるなんて夢のまた夢の話だ。それがいまはこうして大きなお屋敷で一緒に暮らし、使用人の人たちにもよくしてもらっている。高級娼館の主人に買われたことも、ヤナギさんに手ほどきしてもらえたことも、少将に身請けされたことも、僕は本当に運がいい。

「僕、すごく幸せだなぁ」

 そう思ったら、体中がポカポカしてきて眠くなってきた。後ろに挿入はいったままの逸物は気になったけれど、穏やかな刺激も心地よくて段々意識が遠くなっていく。

「僕、少将が、大好き……」

 ぎゅうっと力が入った少将の腕にうっとりしながら、僕はもう少しだけ眠ることにした。
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