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後宮に繋がれし王子と新たな妃
7 命を狩る赤眼の軍帝1
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「カナ」
軍帝の声に耳が震える。名前を呼ばれた途端に頭の中に響いていた獣の唸り声が消えた。ぼやけた目に真っ黒な軍服姿が近づいて来るのが映る。すぐそばに膝をつくと、逞しい腕が背中を支えるように上半身を抱き起こしてくれた。
「指を突っ込まれたのは胸糞悪いが、自力でなんとかできたことは褒めてやる」
軍帝の声がいつもより低い。怒らせてしまったのだと思い、ブルッと震えた。そんな僕の肩を抱く大きな手にギュッと力が入ったのがわかった。
顔を見ると赤い眼がどこかを見ている。視線をたどった先には地面に座り込む三人の軍人がいた。三人のうちの一人は、なぜか右腕の肘から下がない。まるで爆風で吹き飛ばされたかのように軍服の右腕部分もズタズタに破れていた。
(どうして腕がないんだろう)
ぼんやりとそう思った。直後、「だって人の体は柔らかいでしょう?」と誰かの声が聞こえてくる。
――人の体はまるで果実のようでしょう? だから簡単に潰れてしまうし引き千切れるのだと知っているでしょう?
そうだ、人は簡単に壊れてしまう。そのことを僕はよく知っている。
「カナ」
名前を呼ばれて視線を向けた。少し離れたところに、珍しく髪を乱している兄上様が立っていた。
(兄上様も陛下と一緒に帰ってきたんだ)
美しい瑠璃色の瞳を歪めた兄上様が足早に近づいて来る。軍帝から僕を受け取ると、上着の袖で僕の顔や胸の辺りを拭い始めた。
「兄上様」
「遅くなった。でも、もう大丈夫だから。あとは軍帝に任せればいい」
「任せる……?」
「そうだよ。カナは何も心配しなくていい。これまでも、これからも」
どういう意味だろう。僕は何も心配していないのに、どうしてそんなことを言うんだろう。もしかして僕がまた襲われてしまったことを気に病んでいるのだろうか。
(兄上様こそ気にしないでほしい)
兄上様はこれまでずっと僕を守ってきてくれた。帝国に来てからも僕は兄上様に心配ばかりかけている。
(僕にも兄上様のような魔術士としての才能があったらよかったのに)
そうすれば自分の身は自分で守れたのに。
(そうすれば毎回こんなふうに壊さなくても済んだのに)
兄上様ならもっと効率よくどうにかできたはず……そう思うとますます申し訳なくなった。
「カナは何も心配しなくていい。だから少しだけ目を瞑ろうか」
瑠璃色の瞳はまだ少しだけつらそうだ。大丈夫だと言っているのは兄上様なのに、兄上様のほうが不安そうな顔をしている。
「兄上様、僕はもう大丈夫です」
そうつぶやきながらゆっくりと目を閉じた。僕を支えている兄上様の腕に力が入る。
「兄上様、どうか心配しないで」
「……そうだね。さぁ、ゆっくり深呼吸をして……そう、いい子だね」
まるで昔に戻ったみたいだ。兄上様の声を聞きながらゆっくり呼吸をする。
(……澱んでいたものが静かになっていく……)
まるで魔石を生み出した後のように体の底で渦巻いていたものが凪いでいくのを感じた。もう獣の唸り声が聞こえることはなく、何かが這い出てくる気配もない。
「ボクト、こいつらは地下の魔獣たちにでも食わせておけ。餌の足しくらいにはなるだろ」
「承知」
凍えるような軍帝の声にフッ意識が浮上した。さっきまでぼんやりしていた頭がすっきりしたからか、軍帝の声がやけにはっきり聞こえる。
そっと目を開けて軍帝を見た。近くに立っている軍帝の横顔に表情はなく、まるで魔具人形のように見える。赤い眼は本物の宝石のように冷たく光り、その視線の先には軍人たちがいた。
軍人たちは声も出さずにガタガタと震えていた。一人は顔中が涙や鼻水で濡れていて、その隣にいる軍人は軍服の足の間がひどく濡れている。右手の肘から下がなくなっている軍人は、青ざめたままなぜか僕のほうを見ていた。その目は魔獣か化け物でも見るような雰囲気だ。
僕が視線を向けたことに気づいたのか、腕のない軍人が「ひぃっ」と悲鳴を上げた。それを遮るように真っ黒な軍服を着た軍人たちが立ち塞がる。そうしてしゃがみ込んでいた三人を引きずるように建物の中へと連れて行った。
そんな軍人たちと入れ替わるように、今度は女性が一人と男性が二人、ボクト様に連れて来られた。そうして三人とも軍帝の前に跪かされる。ふと、一番近いところで跪いている女性に視線が留まった。
(どこかで見たような……)
しばらく見つめて、ようやく気がついた。跪いている女性はツアル姫だ。いつも綺麗に結い上げられ、色とりどりの髪飾りで飾られていた金髪はまるで盗賊にあったかのようにひどく乱れている。半分ほどは背中に垂れ下がり、埃のようなものまでついていた。美しい薄紫色のドレスも裾が汚れている。いつも胸元で光っていた首飾りもドレスの隙間に半分挟まっているような状態だった。
見たことがないツアル姫の様子に、僕は心配になった。これが後宮に入ったツアル姫と軍帝の初対面のはずなのに、そんな姿で大丈夫だろうか。
(あの格好では陛下の機嫌を損ねてしまうんじゃ……)
軍帝をちらりと見る。三人の軍人を見ていたときと同じようにとても冷たい表情をしていた。赤い眼がますます鋭くなっているということは、やっぱり機嫌を損ねてしまったに違いない。
「俺がいない間に勝手に入り込んだのはおまえか」
先ほどよりもずっと冷たい声が中庭に響き渡った。問われたのは僕ではないのに一瞬息が止まる。
「答えろ」
冷たい軍帝の声に、ツアル姫は顔を真っ青にして体を震わせるばかりだ。その様子に軍帝が「チッ」と大きく舌打ちした。
「満足に口もきけねぇウジ虫程度のくせに、俺がいない間によくもまぁ大胆なことをしでかしたもんだ。せっかく綺麗にした後宮を汚したツケがどうなるか、知らないわけじゃねぇよなぁ?」
「陛下、言葉遣いが昔に戻っていますが」
「あぁ? ウジ虫ごときに聞かせるお綺麗な言葉なんざ持ってねぇよ」
進言したボクト様が苦笑するような表情を浮かべている。
(たしかに皇帝とは思えない言葉遣いだけれど……それがとても似合っている)
乱暴な言葉遣いや高貴とは言いがたい表情すべてが軍帝を輝かせていた。誰よりも美しい軍帝の姿に、僕はうっとりを見入った。
「で、俺がいない間に勝手しやがったのはおまえらか」
美しい軍帝の冷たい赤眼がジロッとツアル姫たちを見た。
軍帝の声に耳が震える。名前を呼ばれた途端に頭の中に響いていた獣の唸り声が消えた。ぼやけた目に真っ黒な軍服姿が近づいて来るのが映る。すぐそばに膝をつくと、逞しい腕が背中を支えるように上半身を抱き起こしてくれた。
「指を突っ込まれたのは胸糞悪いが、自力でなんとかできたことは褒めてやる」
軍帝の声がいつもより低い。怒らせてしまったのだと思い、ブルッと震えた。そんな僕の肩を抱く大きな手にギュッと力が入ったのがわかった。
顔を見ると赤い眼がどこかを見ている。視線をたどった先には地面に座り込む三人の軍人がいた。三人のうちの一人は、なぜか右腕の肘から下がない。まるで爆風で吹き飛ばされたかのように軍服の右腕部分もズタズタに破れていた。
(どうして腕がないんだろう)
ぼんやりとそう思った。直後、「だって人の体は柔らかいでしょう?」と誰かの声が聞こえてくる。
――人の体はまるで果実のようでしょう? だから簡単に潰れてしまうし引き千切れるのだと知っているでしょう?
そうだ、人は簡単に壊れてしまう。そのことを僕はよく知っている。
「カナ」
名前を呼ばれて視線を向けた。少し離れたところに、珍しく髪を乱している兄上様が立っていた。
(兄上様も陛下と一緒に帰ってきたんだ)
美しい瑠璃色の瞳を歪めた兄上様が足早に近づいて来る。軍帝から僕を受け取ると、上着の袖で僕の顔や胸の辺りを拭い始めた。
「兄上様」
「遅くなった。でも、もう大丈夫だから。あとは軍帝に任せればいい」
「任せる……?」
「そうだよ。カナは何も心配しなくていい。これまでも、これからも」
どういう意味だろう。僕は何も心配していないのに、どうしてそんなことを言うんだろう。もしかして僕がまた襲われてしまったことを気に病んでいるのだろうか。
(兄上様こそ気にしないでほしい)
兄上様はこれまでずっと僕を守ってきてくれた。帝国に来てからも僕は兄上様に心配ばかりかけている。
(僕にも兄上様のような魔術士としての才能があったらよかったのに)
そうすれば自分の身は自分で守れたのに。
(そうすれば毎回こんなふうに壊さなくても済んだのに)
兄上様ならもっと効率よくどうにかできたはず……そう思うとますます申し訳なくなった。
「カナは何も心配しなくていい。だから少しだけ目を瞑ろうか」
瑠璃色の瞳はまだ少しだけつらそうだ。大丈夫だと言っているのは兄上様なのに、兄上様のほうが不安そうな顔をしている。
「兄上様、僕はもう大丈夫です」
そうつぶやきながらゆっくりと目を閉じた。僕を支えている兄上様の腕に力が入る。
「兄上様、どうか心配しないで」
「……そうだね。さぁ、ゆっくり深呼吸をして……そう、いい子だね」
まるで昔に戻ったみたいだ。兄上様の声を聞きながらゆっくり呼吸をする。
(……澱んでいたものが静かになっていく……)
まるで魔石を生み出した後のように体の底で渦巻いていたものが凪いでいくのを感じた。もう獣の唸り声が聞こえることはなく、何かが這い出てくる気配もない。
「ボクト、こいつらは地下の魔獣たちにでも食わせておけ。餌の足しくらいにはなるだろ」
「承知」
凍えるような軍帝の声にフッ意識が浮上した。さっきまでぼんやりしていた頭がすっきりしたからか、軍帝の声がやけにはっきり聞こえる。
そっと目を開けて軍帝を見た。近くに立っている軍帝の横顔に表情はなく、まるで魔具人形のように見える。赤い眼は本物の宝石のように冷たく光り、その視線の先には軍人たちがいた。
軍人たちは声も出さずにガタガタと震えていた。一人は顔中が涙や鼻水で濡れていて、その隣にいる軍人は軍服の足の間がひどく濡れている。右手の肘から下がなくなっている軍人は、青ざめたままなぜか僕のほうを見ていた。その目は魔獣か化け物でも見るような雰囲気だ。
僕が視線を向けたことに気づいたのか、腕のない軍人が「ひぃっ」と悲鳴を上げた。それを遮るように真っ黒な軍服を着た軍人たちが立ち塞がる。そうしてしゃがみ込んでいた三人を引きずるように建物の中へと連れて行った。
そんな軍人たちと入れ替わるように、今度は女性が一人と男性が二人、ボクト様に連れて来られた。そうして三人とも軍帝の前に跪かされる。ふと、一番近いところで跪いている女性に視線が留まった。
(どこかで見たような……)
しばらく見つめて、ようやく気がついた。跪いている女性はツアル姫だ。いつも綺麗に結い上げられ、色とりどりの髪飾りで飾られていた金髪はまるで盗賊にあったかのようにひどく乱れている。半分ほどは背中に垂れ下がり、埃のようなものまでついていた。美しい薄紫色のドレスも裾が汚れている。いつも胸元で光っていた首飾りもドレスの隙間に半分挟まっているような状態だった。
見たことがないツアル姫の様子に、僕は心配になった。これが後宮に入ったツアル姫と軍帝の初対面のはずなのに、そんな姿で大丈夫だろうか。
(あの格好では陛下の機嫌を損ねてしまうんじゃ……)
軍帝をちらりと見る。三人の軍人を見ていたときと同じようにとても冷たい表情をしていた。赤い眼がますます鋭くなっているということは、やっぱり機嫌を損ねてしまったに違いない。
「俺がいない間に勝手に入り込んだのはおまえか」
先ほどよりもずっと冷たい声が中庭に響き渡った。問われたのは僕ではないのに一瞬息が止まる。
「答えろ」
冷たい軍帝の声に、ツアル姫は顔を真っ青にして体を震わせるばかりだ。その様子に軍帝が「チッ」と大きく舌打ちした。
「満足に口もきけねぇウジ虫程度のくせに、俺がいない間によくもまぁ大胆なことをしでかしたもんだ。せっかく綺麗にした後宮を汚したツケがどうなるか、知らないわけじゃねぇよなぁ?」
「陛下、言葉遣いが昔に戻っていますが」
「あぁ? ウジ虫ごときに聞かせるお綺麗な言葉なんざ持ってねぇよ」
進言したボクト様が苦笑するような表情を浮かべている。
(たしかに皇帝とは思えない言葉遣いだけれど……それがとても似合っている)
乱暴な言葉遣いや高貴とは言いがたい表情すべてが軍帝を輝かせていた。誰よりも美しい軍帝の姿に、僕はうっとりを見入った。
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