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中編 愛の深まりと婚約
77.メッセージカード
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そのあとも出店でチュロスを食べたり雑貨屋さんに入ったり、魔法工作キット専門店に入ったりと楽しんだ。
文房具の店にも入り、縁がレースのような形になっているメッセージカードと封筒のセットだけ買ってきた。貴族っぽくはないデザインに少し安心もする。
ソフィとは少しだけ恋バナをした。
レイモンド付きの従者、ハンスにまだ恋人がいるか聞いていないと言うので、いっそカードに書いて見せて聞いたみたらとかキャッキャと盛り上がり……。その場のノリと勢いで、買ったばかりのカードにお互いメッセージを書いた。
私はレイモンド宛。
ソフィはハンス宛。
いや……渡せないよね、コレ……。
勇気がなかなか出ない私のために、のんびりと魔法を使わずに丘をのぼる。
「どうしよう……恥ずかしいし……」
「私も頑張りますから、アリス様も頑張りましょうよ~」
もう周囲に人はいないから、呼び方も戻っている。
「でも、文字として残るし……」
「私なんて振られるかもしれないんですよ~。これ絶対、そういう意味じゃないですか! アリス様なら喜ばれるだけです」
「うう……心臓が……」
「なかなか言いたいことを口にできないし、私も書くからって言ってたじゃないですか」
「ソフィのことを考えていて、そこまでしっかり先を見通していなかった……」
「先って……」
「だって絶対毎日読まれる。ああ~」
「アリス様が可愛らしすぎて頑張ろうって気になってきました」
苦悶しながら上っていると、門の近くにレイモンドの姿が見えた。
……だから過保護すぎだって。
「アリス!」
め……目の色を変えて走ってくる……。
「あ、私は先に行きますね~」
ソフィが外出用に持っていた折り畳み杖を伸ばし、地面のすぐ上を杖にまたがってシューンと立ち去って行った。途中でレイモンドに挨拶はしていた。
普通はああいった折り畳み杖を使うようだ。自在に大きさを変える杖は……もしかしたら魔女さんからしか、もらえないのかもしれない。
レイモンドはなんで走ってきたんだろう。魔法を使うのを忘れていた?
「なんなのその格好、なんなのその格好、なんなのその格好……!」
ちょっ……!
なんで下から見るの!
「へ……変態っぽいけど」
「よかった……キュロットか……」
そう言って、思いっきり抱きしめられる。
ああ……ミニスカかと思ったのか。
「変?」
「可愛い。けど襲われそう。悪いけど、その格好で行くなら次から護衛増やすから」
「あ……うん……いいけど……」
「触る奴がいたら、そっこー牢にブチ込む」
あれ、なんか……太腿にレイモンドの手が……。
「あんたが触ってんじゃん!」
「無理無理。耐えられない。触らせて。なし崩し的にいつか結婚するなら、今触らせて」
全然、格好つけようとしないな……。
そーゆー目で見てくれていたんだと少しほっとしてしまう私は……かなり頭がおかしくなっていると思う。
歳をとったら私に対してだけセクハラ親父になるんじゃない? うーん……結婚していたらセクハラじゃないのかな。
「はー……、もう行くよ。レイモンド」
「もう少し! もう少しだけ」
「ダメ。手つきがやらしい」
「お願い、もう少しだけ~」
……前だったらもっと突っ張ねられたのに。
自分が触りたいだけで、私が触られて変な気持ちになるかもしれないとか全く考えてないよね。悪い気はしないけど、この手……邪魔くさいな。
「レイモンドに、その場のノリと勢いだけでメッセージカードを書いてきた。読みたかったら離れて」
「離れる! 離れるよ!」
ワクワクした顔で手を差し出される。
なんか……懐いているワンちゃんに見えてきた。セクハラ親父予備軍なのに。
「……中に戻ったらにする」
「なんで! 仕方ないなぁ」
レイモンドが杖を大きくして、地面スレスレに浮かせた。
「え……なんでそこに……」
「ちゃんと掴まっててねー」
もう一度私を抱きしめて、少し浮かせて飛び乗った。
「はぁぁぁ!?」
「行くよー」
二人乗りのスケボーのように、すごいスピードで建物へと進んでいく。
「こんな乗り方、邪道でしょ!」
「邪道だね~、安定しないし。でも俺は結構上手いから大丈夫!」
抱き合って移動って……もう意味分かんないし。
「はい、到着っと」
早すぎる。
「お帰りなさいませ」
メイリアたちに出迎えられつつ、レイモンドがまた、にっこりと笑って手を差し出す。
「アリス?」
「……期待しないでよ。二行しか書いてない」
「二行もあるの? 嬉しいよ」
早く欲しくて適当に喋っているでしょ。
ポシェットからそれを取り出し、レイモンドの手に押し付けてから――。
「私はもう行くから!」
逃げるように自室へと小走りで向かった。
書いたメッセージは、二行だけ。
レイモンドのお陰で毎日楽しい。
大好き!
――たった、それだけだ。
文房具の店にも入り、縁がレースのような形になっているメッセージカードと封筒のセットだけ買ってきた。貴族っぽくはないデザインに少し安心もする。
ソフィとは少しだけ恋バナをした。
レイモンド付きの従者、ハンスにまだ恋人がいるか聞いていないと言うので、いっそカードに書いて見せて聞いたみたらとかキャッキャと盛り上がり……。その場のノリと勢いで、買ったばかりのカードにお互いメッセージを書いた。
私はレイモンド宛。
ソフィはハンス宛。
いや……渡せないよね、コレ……。
勇気がなかなか出ない私のために、のんびりと魔法を使わずに丘をのぼる。
「どうしよう……恥ずかしいし……」
「私も頑張りますから、アリス様も頑張りましょうよ~」
もう周囲に人はいないから、呼び方も戻っている。
「でも、文字として残るし……」
「私なんて振られるかもしれないんですよ~。これ絶対、そういう意味じゃないですか! アリス様なら喜ばれるだけです」
「うう……心臓が……」
「なかなか言いたいことを口にできないし、私も書くからって言ってたじゃないですか」
「ソフィのことを考えていて、そこまでしっかり先を見通していなかった……」
「先って……」
「だって絶対毎日読まれる。ああ~」
「アリス様が可愛らしすぎて頑張ろうって気になってきました」
苦悶しながら上っていると、門の近くにレイモンドの姿が見えた。
……だから過保護すぎだって。
「アリス!」
め……目の色を変えて走ってくる……。
「あ、私は先に行きますね~」
ソフィが外出用に持っていた折り畳み杖を伸ばし、地面のすぐ上を杖にまたがってシューンと立ち去って行った。途中でレイモンドに挨拶はしていた。
普通はああいった折り畳み杖を使うようだ。自在に大きさを変える杖は……もしかしたら魔女さんからしか、もらえないのかもしれない。
レイモンドはなんで走ってきたんだろう。魔法を使うのを忘れていた?
「なんなのその格好、なんなのその格好、なんなのその格好……!」
ちょっ……!
なんで下から見るの!
「へ……変態っぽいけど」
「よかった……キュロットか……」
そう言って、思いっきり抱きしめられる。
ああ……ミニスカかと思ったのか。
「変?」
「可愛い。けど襲われそう。悪いけど、その格好で行くなら次から護衛増やすから」
「あ……うん……いいけど……」
「触る奴がいたら、そっこー牢にブチ込む」
あれ、なんか……太腿にレイモンドの手が……。
「あんたが触ってんじゃん!」
「無理無理。耐えられない。触らせて。なし崩し的にいつか結婚するなら、今触らせて」
全然、格好つけようとしないな……。
そーゆー目で見てくれていたんだと少しほっとしてしまう私は……かなり頭がおかしくなっていると思う。
歳をとったら私に対してだけセクハラ親父になるんじゃない? うーん……結婚していたらセクハラじゃないのかな。
「はー……、もう行くよ。レイモンド」
「もう少し! もう少しだけ」
「ダメ。手つきがやらしい」
「お願い、もう少しだけ~」
……前だったらもっと突っ張ねられたのに。
自分が触りたいだけで、私が触られて変な気持ちになるかもしれないとか全く考えてないよね。悪い気はしないけど、この手……邪魔くさいな。
「レイモンドに、その場のノリと勢いだけでメッセージカードを書いてきた。読みたかったら離れて」
「離れる! 離れるよ!」
ワクワクした顔で手を差し出される。
なんか……懐いているワンちゃんに見えてきた。セクハラ親父予備軍なのに。
「……中に戻ったらにする」
「なんで! 仕方ないなぁ」
レイモンドが杖を大きくして、地面スレスレに浮かせた。
「え……なんでそこに……」
「ちゃんと掴まっててねー」
もう一度私を抱きしめて、少し浮かせて飛び乗った。
「はぁぁぁ!?」
「行くよー」
二人乗りのスケボーのように、すごいスピードで建物へと進んでいく。
「こんな乗り方、邪道でしょ!」
「邪道だね~、安定しないし。でも俺は結構上手いから大丈夫!」
抱き合って移動って……もう意味分かんないし。
「はい、到着っと」
早すぎる。
「お帰りなさいませ」
メイリアたちに出迎えられつつ、レイモンドがまた、にっこりと笑って手を差し出す。
「アリス?」
「……期待しないでよ。二行しか書いてない」
「二行もあるの? 嬉しいよ」
早く欲しくて適当に喋っているでしょ。
ポシェットからそれを取り出し、レイモンドの手に押し付けてから――。
「私はもう行くから!」
逃げるように自室へと小走りで向かった。
書いたメッセージは、二行だけ。
レイモンドのお陰で毎日楽しい。
大好き!
――たった、それだけだ。
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