178 / 179
木漏れ日の願い
木漏れ日の願い・・・その18
しおりを挟む
「それで・・・何が変わるのかな?」・・・そう、他人事のように言葉を声に乗せる紗耶香。
倉根はそんな紗耶香の言葉に少し驚きを隠せなかった。
仮にもひとりの刑事が、いや、ひとりの人間がそれを苦に自ら命を絶ってしまったのである。
それなのに、倉根の耳に届いた紗耶香の言葉は・・・だからどうしたの?と、言っているように、
そして、紗耶香のその声は、くだらない質問にでも返答を返すかのようなけだるさを含んでいるように聞こえてきたのである。
「あの・・・それって言うのは・・・」
「・・・別に意味なんてありませんよ」
「はあ・・・」
「ふふっ・・・。別にため息をつく必要なんてありませんよ。それに私みたいに言う人って刑事さんの周りにはいませんものね」
「まあ・・・確かに・・・なんとも・・・」
確かに倉根の周りにはそんな風に言葉を口にする者などは一人もいない。
というより、もしかしたら、そんな風に思ってはいても口には出さないのかもしれないし、
それに、事件は次から次へと起きて来るので気持ちを切り替える方を優先しているのかもしれない。
「でも、私の言った言葉って間違っていないでしょ?」
「何とも・・・返す言葉が見つかりません」
「警察の人たちって毎日が忙しいですものね。そんな終わった事件にいつまでもこだわっていても仕方がないですしね」
「いえ、そんな事はないと思います」
「そうなんですか?」
「ええ、確かに紗耶香さんの言うように何も変わらないのかもしれません、でも、あの事件の教訓として、冤罪は絶対にあってはならないのだと、刑事一人ひとりの心の中には刻み込まれていると思います」
「ふ~ん・・・そうなんですか」
「あっ!・・・いや・・・あのですね・・・あの・・・」
倉根はここぞと言わんばかりに自信たっぷりと勢いよく言葉を並べたまでは良かったのだが、
言い切った後に言った言葉がそのまま木霊のように帰って来てしまった。
「ふふっ。だから刑事さんはその誰かさんのところへ相談に行ったんでしょ?」
「いや・・・まあ、何と言いますか・・・でも、逆に言われてしまいましたけど・・・」
「逆に?・・・と、言いますのは?」
「ええ。・・・あんたは誰のために事件を解決したいの?って」
「誰のために?」
「ええ、そうなんです。その上、亡くなった被害者の願いはどうなるの?って」
「亡くなった被害者の願い・・・ですか」
「そうなんですけどね。でもね、彼女は幽霊と話が出来ちゃうからいいけど、普通は幽霊と話なんて出来ないじゃないですか?そうじゃなくても幽霊を信じない人もいますし、それにまだ化学でも解明出来ていないわけだし。そこにきて亡くなった被害者の想いや願いって言っても・・・」
「そんな言葉なんて誰も聞いてなんてくれない・・・ですか」
「まあ、そんなとこです。でも、だからといって間違えましたなどの言い訳や冤罪は絶対に駄目だと思うんです」
「でも、それって無意味な妄想ですね」
「いえ、決して無意味なんかでは・・・」
「無駄な努力なんてやめた方が良いですよ、疲れるだけですから」
無駄な努力・・・否定する言葉を探す前に確かにそうなのかもしれないと倉根は思った。
確かに、どんなに細心の注意を払ったとしても冤罪は決してなくならないのかもしれない。
だからといって、そのための努力が無駄になる事はない・・・軽い言葉である。
なにせ、今、捕まっている容疑者の男は冤罪で逮捕されてしまっているのだから・・・。
「それよりも、あの冤罪事件で容疑者にされた人のその後って知ってます?」
「容疑者にされた人のその後ですか?いえ、知りませんけど・・・何かあったんですか?」
「死にました。・・・自ら命を絶って死んじゃいました」
「えっ?」
「無罪という事で釈放されて一年後に死んじゃいました」
「あの・・・どうして、その事を紗耶香さんが知っているんですか?」
「私の父です・・・」
「えっ?」
倉根は驚き以外の言葉が出なかった・・・。
倉根はそんな紗耶香の言葉に少し驚きを隠せなかった。
仮にもひとりの刑事が、いや、ひとりの人間がそれを苦に自ら命を絶ってしまったのである。
それなのに、倉根の耳に届いた紗耶香の言葉は・・・だからどうしたの?と、言っているように、
そして、紗耶香のその声は、くだらない質問にでも返答を返すかのようなけだるさを含んでいるように聞こえてきたのである。
「あの・・・それって言うのは・・・」
「・・・別に意味なんてありませんよ」
「はあ・・・」
「ふふっ・・・。別にため息をつく必要なんてありませんよ。それに私みたいに言う人って刑事さんの周りにはいませんものね」
「まあ・・・確かに・・・なんとも・・・」
確かに倉根の周りにはそんな風に言葉を口にする者などは一人もいない。
というより、もしかしたら、そんな風に思ってはいても口には出さないのかもしれないし、
それに、事件は次から次へと起きて来るので気持ちを切り替える方を優先しているのかもしれない。
「でも、私の言った言葉って間違っていないでしょ?」
「何とも・・・返す言葉が見つかりません」
「警察の人たちって毎日が忙しいですものね。そんな終わった事件にいつまでもこだわっていても仕方がないですしね」
「いえ、そんな事はないと思います」
「そうなんですか?」
「ええ、確かに紗耶香さんの言うように何も変わらないのかもしれません、でも、あの事件の教訓として、冤罪は絶対にあってはならないのだと、刑事一人ひとりの心の中には刻み込まれていると思います」
「ふ~ん・・・そうなんですか」
「あっ!・・・いや・・・あのですね・・・あの・・・」
倉根はここぞと言わんばかりに自信たっぷりと勢いよく言葉を並べたまでは良かったのだが、
言い切った後に言った言葉がそのまま木霊のように帰って来てしまった。
「ふふっ。だから刑事さんはその誰かさんのところへ相談に行ったんでしょ?」
「いや・・・まあ、何と言いますか・・・でも、逆に言われてしまいましたけど・・・」
「逆に?・・・と、言いますのは?」
「ええ。・・・あんたは誰のために事件を解決したいの?って」
「誰のために?」
「ええ、そうなんです。その上、亡くなった被害者の願いはどうなるの?って」
「亡くなった被害者の願い・・・ですか」
「そうなんですけどね。でもね、彼女は幽霊と話が出来ちゃうからいいけど、普通は幽霊と話なんて出来ないじゃないですか?そうじゃなくても幽霊を信じない人もいますし、それにまだ化学でも解明出来ていないわけだし。そこにきて亡くなった被害者の想いや願いって言っても・・・」
「そんな言葉なんて誰も聞いてなんてくれない・・・ですか」
「まあ、そんなとこです。でも、だからといって間違えましたなどの言い訳や冤罪は絶対に駄目だと思うんです」
「でも、それって無意味な妄想ですね」
「いえ、決して無意味なんかでは・・・」
「無駄な努力なんてやめた方が良いですよ、疲れるだけですから」
無駄な努力・・・否定する言葉を探す前に確かにそうなのかもしれないと倉根は思った。
確かに、どんなに細心の注意を払ったとしても冤罪は決してなくならないのかもしれない。
だからといって、そのための努力が無駄になる事はない・・・軽い言葉である。
なにせ、今、捕まっている容疑者の男は冤罪で逮捕されてしまっているのだから・・・。
「それよりも、あの冤罪事件で容疑者にされた人のその後って知ってます?」
「容疑者にされた人のその後ですか?いえ、知りませんけど・・・何かあったんですか?」
「死にました。・・・自ら命を絶って死んじゃいました」
「えっ?」
「無罪という事で釈放されて一年後に死んじゃいました」
「あの・・・どうして、その事を紗耶香さんが知っているんですか?」
「私の父です・・・」
「えっ?」
倉根は驚き以外の言葉が出なかった・・・。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる