愛して欲しいと言えたなら

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繋がる刹那

繋がる刹那・・・その14

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「あの・・・どうかしたんですか?」

「えっ?あっ、それより、そろそろ着くわね!」

正直言って、雪子の実家に行くのは気が進まない裕子である。
別に、雪子と裕子の親同士が仲が悪いとか、裕子自身が雪子の親と仲が悪いというわけではないのだが。

ただ、今回の雪子の失踪劇について、どう説明をしたらいいのか?
裕子からすれば、出来れば、雪子の旦那が両親の方へ連絡をしていてくれた方が、
どちらかというと、話をしやすいのだが・・・。ようは、面倒くさいという事なのだろう。

裕子自身、親元を離れてからは、自由に生きてきた生活環境に慣れているためか、
一般的な、親子の関係というものに関して、少し窮屈に思っていた。

とはいえ、自分の都合で会うのには、別に何とも思わないのだから、
ようするに、誰かの都合で、自分の時間を邪魔されるのが好きではないだけなのである。

案の定、ものの10分もたたないうちに、早々に話を切り上げて、
「それでは、また・・・」まで、一気に駆け抜けてしまう始末である。

「はあ~・・・やっと、自由になれたって感じ!」

「早かったですね?」

「ちょっと、苦手なのよね。なんか窮屈っていうか、まるで、自分の自由が拘束されてるみたいで」

「へえ~、裕子さんでも、そんな風に感じる事があるんですね?」

「私って、ご近所付き合いとか、井戸端会議が得意なように見えるんでしょ?」

「まあ、そんな感じはしてましたけど・・・ホント、早かったですね?」

「そうかしら?私としては、3分で終わって欲しかったんだけど」

「あはっ、まるで3分待つのだじょ!の、カップ麺みたい」

「とりあえず、何か、飲み物でも欲しいわ」

裕子は、そう言いながら、一番最初に見えてきたコンビニの駐車場に車を入れた。

「愛奈ちゃんは、何か、飲みたいのある?」

「あっ、私が、買ってきますよ」

「ふふっ・・・ダメよ。後で、夏樹さんに怒られちゃうから」

「えっ?どうしてですか?」

「どうしてもなのよ。夏樹さんって、そういう人だから」

「あの・・・お話が見えないんですけど・・・」

「そうお?」

「はい。だって、別に、夏樹さんが見ているわけじゃないし、どちらが買ってきたとかって、報告とかってするわけでもないのに」

「あっ、なるほどね。でも、そういう事じゃないのよ。それより、愛奈ちゃんは、何、飲みたい?」

「えっと・・・コーヒーがいいかな?」

「あら?ミルクティーじゃなくていいの?」

「夏樹さんは、きっと、コーヒー・・・かな?って」

「なるほど・・・分かったわ、ちょっと待っててね」

裕子は、そう言うと車のドアを開けてコンビニの中に入っていく。

裕子さんは、まだ、何か隠しているような気がするんだけどな~?
そうじゃなくても、夏樹さんの事を、よく知らないみたいな事を言っているのに、
なぜか、夏樹さんの考え方とかにも詳しいっていうか、前から知ってるっていうか。
それに、夏樹さんの事を話す時の裕子さんって、とっても嬉しそうに話すし・・・う~ん?

まもなくして、裕子がコンビニの袋を下げて戻ってきた。

「愛奈ちゃん、お腹減ったでしょ?はい、サンドイッチ」

「あっ!有難う御座います」

愛奈が、嬉しそうにサンドイッチの入ってるビニールを開けている仕草を、
優しい眼差しで見つめながら、裕子も缶コーヒーのふたを開ける。

「きっと、あの頃の雪子も、今の愛奈ちゃんみたいに・・・。あっ、気にしないでいいからね」

「それは、きっと、無理ではないかと・・・」

「ふふっ、私ってダメね。でもね、愛奈ちゃんのそういう仕草を見ているとね、なぜか、あの頃の雪子を思い出しちゃって」

「私の仕草・・・ですか?」

「愛奈ちゃんって、あの頃の、雪子によく似てるわ」

「私が・・・お母さんに?」

「そうよ。だからね、愛奈ちゃんに、夏樹さんの存在を教えるのが、正直言って不安だったの」

「どうしてですか?もしかして、私が、夏樹さんを好きになっちゃうとかって?」

「あの頃の、雪子を見ているだけにね・・・」

裕子は、少しだけなら・・・
夏樹と雪子の事を愛奈に話すべきか?・・・それとも、話さないでおくべきか?
愛奈が、夏樹に会いに行きたいと言った時から、ずっと迷っていた。

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