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第百三十三話『シルバーモンスターボックス』

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その珊瑚に、一歩下がって、一緒に飛んできた、巨大な龍を手で紹介するサラ。

「こちらでございます!」
と謎の敬語を使う。

そこには、黒く大きな巨大な龍がいた。

「ほんと君らなにもんなんや・・・」
と元A級珊瑚が、D級英雄ランク戦で勝てなかった『大龍 - ワイバーン』を見て呟いた。

「いやー、たまたま温泉で出会っちゃって!」
と、サラが言う。
相変わらずのざっくりした説明だった。
それで理解できるのかな、とチラッと珊瑚の方を見る僕。

「なに、君ら、皆で温泉行ってきたんか!!」
と、珊瑚が思わぬところで食いつく。
あ、そこ?と僕は思った。
確かに大事なことではある。『温泉イベント』・・・。
麗しの『温泉イベント』・・・。

「いや、温泉イベントは残念なことに、なかったんだよ・・・」
と、ほんとに残念だったことを言葉に込めて僕が珊瑚に言う。
すると、少し顔を赤くして、ほっとした様子の珊瑚。
「な!そうなんか!」
と、少しテンションを上げて言う。

「珊瑚ちゃんもジュンくんと温泉行きたかったのよね!」
と水晶さんが言う。ちがわい!と珊瑚が言っていたがそこに奈緒子が食いついてきた。

「じゃあ、かわいい水着買ってみんなで行きましょう!ね!サラちゃん!」
と魔法使いの少女、奈緒子がここぞとばかりにサラを説得する。奈緒子は可愛い服をサラに着せるのを一つの楽しみとしている。

「うーん、じゃあ、モンスターボックスをゲットしたら・・・」
とサラが呟く。

「やった!じゃぁ約束ですよ!」
とサラの両手を握ってブンブンと振る奈緒子。
いつもの展開だった。
押しに弱いサラである。

グッジョブ!奈緒子!と心のなかで思ったことは内緒だ。

「珊瑚ちゃんたちも行きますよね?」
と、奈緒子が言う。

「いやー。サラ達がそうまでいうなら・・・」
と、しぶしぶといった態度の珊瑚。
「素直に、なればいいのに!」
いつもの珊瑚の態度に、水晶さんが笑う。

「温泉。楽しい。」
と瑠璃も言う。

「瑠璃もこう言っとるし、しょうがない・・・付き合ったるか!」
と珊瑚が言う。
「素直に行きたい!って言えばいいのに!」
とまた笑う水晶さん。

「じゃぁ、その『モンスターボックス』を手に入れればいいのね?」
とサラが話を戻して珊瑚に聞く。

「いや・・・」
「え?違うの?」
今までの話の流れだと、てっきりそうだと思っていた、とサラが不思議そうな顔をする。

「このモンスターボックスは『シルバー』なんや!」
「うん確かに銀色だね」
とサラが頷く。

「普通の、馬とかに使えるのが『ノーマルモンスターボックス』。すこし強い『仔竜 - ミニドラゴン』とかに使えるのが『シルバーモンスターボックス』そして、明らかに、それより強いこの『大龍 - ワイバーン』は・・・」

「『ゴールドモンスターボックス』ということか!」
と僕は呟いた。それは大変そうだが、やりがいがありそうだ!と笑った。
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