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第百九十一話『鬼神走脚 - キシンソウキャク』

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「サラ・・・まじか・・・すごいな!」
と僕が呟く。
ほんとにここで四天王を倒してしまうかもしれない、そう思い始めていた。

「サラちゃんすごいです!」
と美少女魔法使いの奈緒子も言う。

「これはこれは、ほんとに、素早いお嬢さんですな・・・私も本気を出しましょう!」
そう言って『鬼王のアルバート』は新たなスキルを発動させた。

『鬼神走脚 - キシンソウキャク』

と、四天王の『鬼王のアルバート』が構えた。
全身から赤いオーラのようなものが溢れだした。
禍々しいオーラだった。

そう、彼は丁寧な口調だが、それは確かに鬼のそれだった。

「ふふふ、鬼を本気にさせたあなたが悪いのですよ!」
と、低い声で『鬼王のアルバート』は呟く。
そう、彼は確かに鬼だった。
しかも四天王という、最強クラスの。

「いっくぞー!!」
と、いつものように『雷迅 - ライトニング』で高速歩行しながら、弧を描いて、『鬼王のアルバート』に近づくサラ。
そう、近づいているはずだった。

しかし、そこに『鬼王のアルバート』はいない。

「え?消えた??」
と、サラが走りながら驚く。
しっかりと目標を捉えながら、走っていたサラが目標を見失って驚いていた。

「消えてませんよ!!」
と『鬼王のアルバート』が、サラの後ろを走っていたのだ。

「え??」
とサラが自分の後ろの声に驚く。
あるはずかないところから聞こえた声に驚いたのだ。
そう、さっきまで目の前にいたのだから。

「このぉっ!」
と、その声の方向に対して、大きく蹴りを放つサラ。
その蹴りをしっかり左右の前腕で防ぐ『鬼王のアルバート』

「適当に蹴ったくらいでは私には効きませんな!」
と、『鬼王のアルバート』が笑っている。

「な・・・なんで・・・?」
と、サラが驚く。
そう、高速で動いている、自分の後ろに位置するのはムリだ。
自分より高速で動けなければ・・・

「速く動けるのは、あなただけではないのですよ!お嬢さん!」
と『鬼王のアルバート』は笑った。

「これが『鬼神走脚 - キシンソウキャク』。鬼の力を使い筋力を増幅させ高速で移動する技です。」
と『鬼王のアルバート』はその力を説明した。

「なるほど、なるほど、やりますなぁ!」
と、屈伸を始めるサラ。
そう彼女がこれをやるときは、やる気満タンの時だ。
難しい問題が出た時に、集中するためにやることが多い。

「でも、速いのが分かったらこっちにもやりようがあるんだよ!!」
とサラが言う。

「ほう!では見せてもらいましょうかな。そのやりようとやらを!」
と『鬼王のアルバート』は笑った。

「よっし!鬼ごっこ二回戦だ」
「あ、上手いこと言ったって顔してる」
と僕が言ったらてへへへ、とサラが笑っていた。
まさに鬼と追いかけっこをする本物の鬼ごっこだった。

「よし、いくよ!!」
と、サラは『雷迅 - ライトニング』を脚に纏って走りだした。
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