【勇者の友人】~【勇者】のギフトの本体が、僕だった件について~戻って来いって言われたって、今更君たちを“友人”だとは思えないよ。

くーねるでぶる(戒め)

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第二章

063 後ろ盾が欲しい

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 僕のギフト【勇者の友人】は、とてつもないギフトだということは、バカな僕でもさすがに察することができる。いや、僕自身はすごくないけれど、【勇者】のギフトがとにかくすごい。平民のアンナが貴族になるなんて話が出たのも【勇者】の力によるものだ。そして、僕はその【勇者】を3人も任命できる。単純計算で、僕は国がその力を認めて貴族として囲おうとした【勇者】の3倍重要な人物ということになる。ラインハルト曰く、3倍じゃあとても足りないほど価値があるらしい。

 僕のギフトが有用なのはとても嬉しいけれど、同時に危険でもある。それは、僕自身がなんの力も持たないただの平民だからだ。

 【勇者】は、国が欲するレベルの極大の戦力だ。当然、【勇者】を3人も任命できる僕も国の欲するところとなるだろう。問題は、国が僕をどう扱うかだ。アンナの時のように貴族として迎え入れるのか、あくまで平民として扱うか、それとも奴隷のように扱うのか。

 アンナには力があった。【勇者】としての力が。力ずくで従わせるのは難しいと判断したのだろう。それに、冒険者ギルドという後ろ盾もあった。結果、アンナには貴族という席が用意された。それに対して僕はどうだ? 僕自身はなんの力も無いし、冒険者ギルドの後ろ盾も無い。僕にもアンナと同じように貴族の席が用意されるとは考えにくい。

 最悪の場合、僕を誘拐して拷問にでもかければ、無理矢理【勇者】の力を手にすることができると思われかねない。そこまでいかなくても、僕のような後ろ盾もなにも無い無名の平民なんて、貴族に命令されれば逆らえない。逆らえば縛り首だ。今の僕を取り巻く状況は、実はかなりマズイことになっている。

 だから、ルイーゼやラインハルト、『融けない六華』の皆が、危険を承知でレベル7ダンジョン『万魔の巨城』への挑戦を決めたのだ。早急に冒険者として華々しく活躍して、冒険者ギルドに僕たちの後ろ盾になってもらおうという作戦だ。

 ここツァハリアス王国は、“冒険者の聖地”と謳われるほどたくさんのダンジョンを擁し、冒険者を優遇することで発展してきた。その分、冒険者ギルドの発言力は大きい。

 冒険者ギルドは、ほぼ全ての人間国家を跨いで存在する超大規模ギルドだ。

 冒険者ギルドが後ろ盾となってくれれば、下手な貴族からの命令など無視できるし、国からの対応も良くなるに違いない。もしかしたら、アンナの時と同じように貴族に、という話になるかもしれない。

 僕自身、貴族になりたいという気持ちはないけれど、奴隷や犯罪者のような扱いを受けるよりよっぽどマシだと思う。まぁラインハルトに言わせれば、安易に貴族になるのも考えものらしいけどね。

 一番いいのは、このまま皆で冒険者を続けられることだけど、そうもいかないらしい。僕のギフトは、僕に安寧を許さない。僕の意思とは関係なく、権力の渦巻く荒波に飛び込まざるをえない未来が待っている。

 正直、僕に陰謀渦巻く貴族社会を泳ぎ切れる自信なんて無いし、そんな胃の痛くなりそうな未来なんて望んでいない。冒険者ギルドという防波堤は、すぐにでも欲しい。今は、いつ僕のギフトの情報が流れるとも限らない危険な状態だ。残された猶予はそれほど多くはないのかもしれない。

 僕の未来だけを考えるなら、今回の『万魔の巨城』への挑戦は正解だと思う。適正レベルを2つも飛ばした挑戦には驚きがあるし、攻略できた際のインパクトは桁外れのものになるだろう。冒険者ギルドからの覚えもよくなるに違いない。

 ただ当然だけど、ものすごく危険だ。僕の事情で皆に危険を押し付けているようで、とても心苦しい。やっぱり今からでも中止にすべきではないか、そんな考えも頭を過ってしまう。

「そんなに心配そうな顔をしないでください。苦しいとは表現しましたが、ちゃんと勝算はありますから」

 ラインハルトが困ったような表情を浮かべて僕を見ていた。どうやら顔に出ていたらしい。これじゃいけないな。今の僕は、仮にも皆を引っ張っていく立場だ。そうじゃなくても僕の方が皆より2歳年上なんだからしっかりしないと。

 僕はキリッと表情を切り替える。僕の中では、たぶんかっこいい顔に分類される顔だ。

「大丈夫だよ。これでも僕は一度『万魔の巨城』を攻略したんだ。今回もきっと平気だよ」

 本当は、僕はダンジョンの攻略になにも貢献なんてしていない。ただ付いていっただけだ。だけど、ラインハルトが少しでも安心できるように大見得を切る。

 そんな僕を見て、ラインハルトが柔らかい笑顔を見せた。

「期待しています、クルト。一緒に『万魔の巨城』を攻略しましょう!」
「うん!」

 期待、期待かぁ……。僕には長らく縁の無かったものだ。僕が恋い焦がれていたものだ。でもそっか。期待って重たいんだね。心地良い重さにも感じるし、押し潰されるような重圧にも感じる。僕は期待に応えることができるだろうか?

 違うね。期待に応えるんだ! そのための準備ならしてきたじゃないか!

 両手を握り、決意を固めていると、ラインハルトが思い出したように口を開く。

「三度目になりますが、クルトにとって恋愛とは何でしょう? 今のクルトはイザベルとリリーから求婚されている状態ですよね? どちらと結婚するか決めましたか?」
「え? いや、そのぅ……」

 急にそんなこと訊かれても困っちゃうよ。
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