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第二章
ラインハルトの……
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「イザベルは何にする?」
皆で絨毯の上に座ってピクニック気分で昼食の時間。まぁ太陽が分厚い雲に隠れて暗いし、雷がうるさくてピクニックという陽気な気分にはなれないけどね。レベル7という高ダンジョンの中だし。
でも、リビングアーマーという強敵を倒した今、この場所はダンジョンの最も安全な安地だ。
「そうねー……」
「?」
いつも歯切れのいいイザベルには珍しく、右の人差し指を下唇に添えて悩んでいる様子を見せた。どうしたんだろう?
「サラダにするわ」
「サラダと?」
「サラダだけでけっこうよ」
「え?」
イザベルは決して大食いというわけではないけど、並み程度には食べるはずだ。それがサラダだけ?
「体調でも悪いの?」
「体調は悪くないけど……」
どこか不調があるわけではないらしい。しかし、どうにも煮え切らない態度だ。
「分かった! ベルベル太ったんでしょー? ダイエットだ?」
「え?」
「ぐぬっ!」
「えっ!?」
突然上がったマルギットの言葉に驚いていたら、信じられないことが起こった。なんと、あのイザベルが変な声を上げて、頬を染めてすごく悔しそうな顔で目を泳がせていた。いつもの凛として大人びたイザベルはどこに行ったのか、そこには年齢相応の美少女が顔を覗かせていた。
「図星ー! やっぱ太ったんじゃん」
「もう! なんでもいいでしょ!」
ニヒッといたずらそうに笑うマルギットに、イザベルが珍しく声を荒げる。そこにラインハルトが口を開いた。
「太ったといいますが、私はイザベルを太っているとは思えません。むしろ、細すぎます。私個人の感想ですが、女性は少しくらいふくよかな方が魅力的ですよ」
そんな言葉をすらすら言えてしまうラインハルトに感心してしまう。ラインハルトの言うとおり、イザベルが太っているとは思えない。黒い夜会ドレスの上からでも腰がキュッとくびれているのが分かる。触れば折れてしまうのではないかと心配になるくらいだ。
「これは皆さんにも言えますね。皆さん細すぎるんです。男性は女性のふくよかな胸やお尻に興奮します。皆さんもこれを機に私の母のような優しくふくよかな女性を目指しましょう!」
力強く断言するラインハルトに、僕は思わず頷いてしまいかけてハタと気が付いた。ラインハルトのお母さんってたしか……。
「デリ、カシー……」
「もうさいてー! マザコン!」
「まったく! 女の子の努力をなんだと思ってるのよ!」
「貴女のデブ専で熟女好きは分かったから、もう口を閉じてくださらないかしら」
ラインハルトの言葉は、女の子たちから非難の嵐だった。僕もラインハルトのお母さんには何度か会ったことあるけど、とても優しくて……その……とてもふくよかな人だったよ。
たしかに、ラインハルトの理想があのお母さんなら、イザベルがラインハルトのことを「デブ専の熟女好き」となじるのも分かるかな。いや、ラインハルトのお母さんはとてもいい人なんだよ? でも、その……とてもふくよかなんだ。
蔑みの目を向ける女の子たちに、ラインハルトは「分かってないな」と言わんばかりに肩を竦めて言い放つ。
「男性は皆、母親に理想を見るものですよ。クルトもそうでしょう?」
「えっ!?」
ラインハルトにいきなり話を振られて僕はキョドってしまう。女の子たちの厳しい視線がラインハルトから僕に向けられた。なんでこんなことになったんだ……。
「ほんとなのクルト?」
真剣な顔のルイーゼに問い詰められて、僕はブンブンと首を横に振って答える。
「ないないない! 自分の母親をそういう目で見たことなんて一度も無いよ!」
ルイーゼたちはホッとした表情を浮かべ、逆にラインハルトは手酷い裏切りに遭ったかのような悲壮感すら漂う驚き顔を浮かべて僕を見ていた。いや、なんで僕をそんな目で見るのさ? なんで勝手に同士だと思ったんだよ。こっちが驚くわ。
そんなラインハルトの性癖が暴露された後、僕たちはようやく食事の準備を再開した。皆で絨毯の上に座り、僕は次々とマジックバッグから料理と飲み物を取り出していく。
「それで、イザベルはどうする? 本当にサラダだけでいいの? 僕もイザベルが太ったなんて思わないよ。あんまり気にせず食べちゃったらどうかな? これからダンジョンの攻略も本格化するし、力を付けないと」
「そうね……」
まだ決心が付かないのか、イザベルが言葉に詰まる。そんなイザベルをじっと見ていたリリーが突然口を開いた。
「おっぱい……」
「え?」
まさか清楚を体現したようなリリーの口からそんな言葉が出てくるとは思わず、驚いてしまう。僕の聞き間違いかな?
「イザベル、おっぱい、大きく、なった……!」
「なっ!?」
妙に確信を持ったような声でリリーが断言する。僕の視線は思わずイザベルの胸へと吸い込まれた。
「ぁ……」
普段から見ないように気を付けているから、イザベルの胸をこんなにしっかりと見るのは、もしかしたら初めてかもしれない。たしかに、リリーの言うようにイザベルの胸は大きくなったような気がする。イザベルのイブニングドレスを押し上げる胸はパツパツで、窮屈そうに見えた。以前見た時は丁度良さそうだったのに、この短期間で急成長したのだろう。
「あぁーはいはい。また太ったって言って胸だけ大きくなったのね。まったく、羨ましい体質ね」
「いいなー。あーしももうちょっと欲しいんだけど分けてくれない?」
「女の、敵……!」
前にも似たようなやり取りがあったのか、手慣れた感じで流される話題。リリーだけすごい眼光でイザベルの胸を睨んでいるけど……あの、リリーさん? その顔めっちゃ怖いです……。
皆で絨毯の上に座ってピクニック気分で昼食の時間。まぁ太陽が分厚い雲に隠れて暗いし、雷がうるさくてピクニックという陽気な気分にはなれないけどね。レベル7という高ダンジョンの中だし。
でも、リビングアーマーという強敵を倒した今、この場所はダンジョンの最も安全な安地だ。
「そうねー……」
「?」
いつも歯切れのいいイザベルには珍しく、右の人差し指を下唇に添えて悩んでいる様子を見せた。どうしたんだろう?
「サラダにするわ」
「サラダと?」
「サラダだけでけっこうよ」
「え?」
イザベルは決して大食いというわけではないけど、並み程度には食べるはずだ。それがサラダだけ?
「体調でも悪いの?」
「体調は悪くないけど……」
どこか不調があるわけではないらしい。しかし、どうにも煮え切らない態度だ。
「分かった! ベルベル太ったんでしょー? ダイエットだ?」
「え?」
「ぐぬっ!」
「えっ!?」
突然上がったマルギットの言葉に驚いていたら、信じられないことが起こった。なんと、あのイザベルが変な声を上げて、頬を染めてすごく悔しそうな顔で目を泳がせていた。いつもの凛として大人びたイザベルはどこに行ったのか、そこには年齢相応の美少女が顔を覗かせていた。
「図星ー! やっぱ太ったんじゃん」
「もう! なんでもいいでしょ!」
ニヒッといたずらそうに笑うマルギットに、イザベルが珍しく声を荒げる。そこにラインハルトが口を開いた。
「太ったといいますが、私はイザベルを太っているとは思えません。むしろ、細すぎます。私個人の感想ですが、女性は少しくらいふくよかな方が魅力的ですよ」
そんな言葉をすらすら言えてしまうラインハルトに感心してしまう。ラインハルトの言うとおり、イザベルが太っているとは思えない。黒い夜会ドレスの上からでも腰がキュッとくびれているのが分かる。触れば折れてしまうのではないかと心配になるくらいだ。
「これは皆さんにも言えますね。皆さん細すぎるんです。男性は女性のふくよかな胸やお尻に興奮します。皆さんもこれを機に私の母のような優しくふくよかな女性を目指しましょう!」
力強く断言するラインハルトに、僕は思わず頷いてしまいかけてハタと気が付いた。ラインハルトのお母さんってたしか……。
「デリ、カシー……」
「もうさいてー! マザコン!」
「まったく! 女の子の努力をなんだと思ってるのよ!」
「貴女のデブ専で熟女好きは分かったから、もう口を閉じてくださらないかしら」
ラインハルトの言葉は、女の子たちから非難の嵐だった。僕もラインハルトのお母さんには何度か会ったことあるけど、とても優しくて……その……とてもふくよかな人だったよ。
たしかに、ラインハルトの理想があのお母さんなら、イザベルがラインハルトのことを「デブ専の熟女好き」となじるのも分かるかな。いや、ラインハルトのお母さんはとてもいい人なんだよ? でも、その……とてもふくよかなんだ。
蔑みの目を向ける女の子たちに、ラインハルトは「分かってないな」と言わんばかりに肩を竦めて言い放つ。
「男性は皆、母親に理想を見るものですよ。クルトもそうでしょう?」
「えっ!?」
ラインハルトにいきなり話を振られて僕はキョドってしまう。女の子たちの厳しい視線がラインハルトから僕に向けられた。なんでこんなことになったんだ……。
「ほんとなのクルト?」
真剣な顔のルイーゼに問い詰められて、僕はブンブンと首を横に振って答える。
「ないないない! 自分の母親をそういう目で見たことなんて一度も無いよ!」
ルイーゼたちはホッとした表情を浮かべ、逆にラインハルトは手酷い裏切りに遭ったかのような悲壮感すら漂う驚き顔を浮かべて僕を見ていた。いや、なんで僕をそんな目で見るのさ? なんで勝手に同士だと思ったんだよ。こっちが驚くわ。
そんなラインハルトの性癖が暴露された後、僕たちはようやく食事の準備を再開した。皆で絨毯の上に座り、僕は次々とマジックバッグから料理と飲み物を取り出していく。
「それで、イザベルはどうする? 本当にサラダだけでいいの? 僕もイザベルが太ったなんて思わないよ。あんまり気にせず食べちゃったらどうかな? これからダンジョンの攻略も本格化するし、力を付けないと」
「そうね……」
まだ決心が付かないのか、イザベルが言葉に詰まる。そんなイザベルをじっと見ていたリリーが突然口を開いた。
「おっぱい……」
「え?」
まさか清楚を体現したようなリリーの口からそんな言葉が出てくるとは思わず、驚いてしまう。僕の聞き間違いかな?
「イザベル、おっぱい、大きく、なった……!」
「なっ!?」
妙に確信を持ったような声でリリーが断言する。僕の視線は思わずイザベルの胸へと吸い込まれた。
「ぁ……」
普段から見ないように気を付けているから、イザベルの胸をこんなにしっかりと見るのは、もしかしたら初めてかもしれない。たしかに、リリーの言うようにイザベルの胸は大きくなったような気がする。イザベルのイブニングドレスを押し上げる胸はパツパツで、窮屈そうに見えた。以前見た時は丁度良さそうだったのに、この短期間で急成長したのだろう。
「あぁーはいはい。また太ったって言って胸だけ大きくなったのね。まったく、羨ましい体質ね」
「いいなー。あーしももうちょっと欲しいんだけど分けてくれない?」
「女の、敵……!」
前にも似たようなやり取りがあったのか、手慣れた感じで流される話題。リリーだけすごい眼光でイザベルの胸を睨んでいるけど……あの、リリーさん? その顔めっちゃ怖いです……。
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