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07 懸念

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「人を付けましょう」

 マルガリータはそう言うと、二回柏手を打つ。

「お呼びでしょうか?」

 すると、すぐにエルフの女性がドアを開けて現れた。

「この者、バルタザールの亡命を受け入れることとなりました。ウリンソンを案内してあげてください」
「かしこまりました」
「ではバルタザール、また後で話しましょう」
「はい。この度は私の亡命を受け入れてくださり、ありがとうございます。じゃあフェリシエンヌ、約束通り手錠を外してくれ」
「……わかったわ」

 渋々という態度を崩さず、フェリシエンヌがカギを取り出すと、オレの手錠を外す。

 久しぶりに手錠を外されると、やはり開放感があった。今なら何でもできそうなほどの万能感だ。

 ご機嫌なオレはソファーから立ち上がると、ちゃんと礼をして退室するのだった。


 ◇


 わたくし、マルガリータはバルタザールが出て行ったドアを見続けていました。

「盟主様?」

 フェリシエンヌに声をかけられたことで、わたくしはやっと意識を取り戻しました。

 そしてわたくしは、やっと自分が緊張していることに気が付いたのです。

「フェリシエンヌ、一つ訊きたいのですが、その手錠は魔封じの手錠ですね? 彼は罪人の魔法使いなのですか?」

 気が付けば、わたくしはフェリシエンヌにそう尋ねていました。

 できれば違っていてほしい。そう思いながら。

「わたくし個人としては罪人と呼びたいですけど、罪人ではありません。それとバルタザールは剣も使いますが、魔法使いという認識で合っていると思います。魔封じの手錠を着けていたのは、彼が暴れ出さないようにした保険だったんですが……彼には効果がありませんでした」
「そうですか……」

 魔封じの手錠が効果がない。バルタザールは魔封じの手錠を着けた状態でも魔法が使えるのでしょう。そんなことができるのは、魔法が得意な種族であるエルフでも片手で数えられる程度しかいないというのに。

 それでいて、あの一片たりとも体外に魔力を漏らさない静寂な気配……。魔封じの手錠をしているせいかと思いましたが、彼の魔力は魔封じの手錠を外しても乱れることはありませんでした。

 恐ろしく高い魔力制御能力。長い時を生き、研鑽の時間があるエルフにもあそこまで高い制御能力を持つ者はいないと思われます。

 最強の個など、バルタザールの戯言だと思っていましたが……わたくしはとんでもない者をウリンソン連邦に受け入れてしまったかもしれません……。


 ◇


「さっそく案内してもらいたいんだが、協同組合の場所はどこかな?」

 ウリンソン連邦での亡命を勝ち取ったオレは、さっそく動くことにした。

 協同組合とは、ウリンソン連邦に存在する公的機関だ。ここではあらゆることがクエストとして依頼を出すことができる。まぁ、異世界版のバイト募集みたいなものだな。

 ウリンソン連邦に属する亜人たちは多種多様だが、それぞれ得意不得意が別れている。餅は餅屋ではないが、仕事は得意としている者に任せた方がいい。そんな考えから生まれたのが協同組合だ。

 協同組合のポリシーは「みんななかよく」。主にウリンソン連邦の若者たちが所属している。

 まぁ、組合の裏の目的としては、種族の違いからくる考え方の違いを学ぶ機会を提供することにある。

 ウリンソン連邦は他種族国家だからね。他の種族への理解は大切だ。若者たちは、クエストを通して種族の違いを学んでいくのだ。

「協同組合ですか? まずは宿や食事処の案内をしようと思っていたのですが……」

 案内をしてくれるエルフが不思議そうな顔でオレを見ていた。

「何事にも先立つ物が必要だろ? オレは換金できそうな物を持っている。協同組合でも換金はできるだろう?」
「そういうことでしたか。一応、バルタザール様の生活はウリンソン連邦より一定期間の間保障されていますが?」
「仕事には早いうちに慣れたいんだ」
「かしこまりました。こちらになります」

 エルフさんに案内されながらきょろきょろ周りを見る。

「モフモフパラダイスやんけ……」

 エルフよりも獣人の数が多いのか、頭にケモミミ、腰から尻尾を生やした獣の要素を持つ亜人、獣人の姿が目立つ。獣人大好きのオレにとっては、まさに天国のような場所だ。

 モフりたい。思う存分モフりたい。オレはおじさんだって構わずモフっちまうんだぜ?

「こちらが協同組合になります」
「おぉー!」

 そこは、大きな木の幹の内部をくり貫いて作られた建物だった。ウリンソンの建物は、この形式のものが多い。入り口には大きなスイングドアが付けられ、その上には帝国とも王国とも違うまるでアラビア語のような文字が躍っていた。

 さっきからひっきりなしに獣人族やエルフ族、ドワーフ族の若者らしき者たちが出入りして、非常に活気のある場所のようだ。

 そして、オレはまるでなにかに誘われるようにして協同組合のスイングドアを開けていた。
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