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19 日々のお仕事

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「賑わってるなぁ」

 洗い物が終わり、今度は樹上都市の上。オレはウリンソンへとやって来ていた。

「いらっしゃーい、いらっしゃーい! 寄っといでー!」
「ボアの串焼きはいかがかな?」
「こっちはヘビのスパイス焼きだぜ! 脂が乗って最高だ!」
「新鮮なサラダはいらんかねー?」

 樹上都市の至る所では屋台が並び、店主たちが声を張り上げている。賑やかだね。

 オレはそんなウリンソンの街並みを通りながら、協同組合にたどり着いた。

 いつものようにスイングドアをくぐって協同組合の中に入れば、ガヤガヤと聞き取れない雑音に包まれる。中では、多くの人々がクエストボードの前で待機していた。

 みんなこれから貼り出されるクエストの中から、条件の良いものを取ろうとしているのだ。

 オレも彼らの後ろに並ぶと、丁度協同組合の職員のエルフさんが現れた。その腕には、たくさんの紙が抱えられている。クエストの書かれた紙だ。

「みなさん、おはようございます」
「「「「「おはようございます!!!」」」」」

 エルフさんが挨拶すると、クエストボードの前に並んでいた人々も一斉に挨拶を返す。お行儀がいいね。これも学校の成果だろうか。

「これからクエストを貼り出しますが、ケンカしないように」
「「「「「はーい!!!」」」」」
「よろしい」

 エルフさんが両手を広げると、クエストの紙がまるで重力から切り離されたように宙を舞う。そして、ビタビタビタッとどんどんクエストボードに貼られていく。クエストの紙をボードに貼り付ける魔法だ。

 たしかに大量のクエストの紙を貼り出すのは大変な作業だと思うが、それを解決するために新しく魔法を作ってしまうというのが、なんともエルフらしい解決方法だね。

「今日は何にするか……」
「これとかいいんじゃねえか?」
「わしらはこの雑草取りにでもするか」
「討伐クエストはどこだ?」
「この豆まきなんて楽しそうじゃね?」

 クエストが貼り出されると、一気に賑やかになった。みんな今日のお仕事を決めるために真剣だ。

 オレも早くクエストを選んじまおう。

「ん?」

 その時、オレの目に止まったのが、ウリンソンボアの納品依頼だった。

 オレはそのクエストの紙を手に取る。

「たしか……」

 青の星香草を取りに森を彷徨っていた際に、何度かウリンソンボアを倒したはずだ。その死体は何かに使えるかと思って収納魔法にぶち込んだままだった。

「邪魔になるわけじゃないけど、このへんで出しとくか」

 オレは賑やかなクエストボードの前から移動してカウンターに並ぶと、クエストを受注する。

「このクエストだが、以前狩ったウリンソンボアでも大丈夫か?」

 カウンターのエルフさんに問いかけると、エルフさんは不思議そうな顔を浮かべていた。

「以前、ですか? 川で冷やしているのでしょうか? 食べることが可能でしたら買取可能ですよ。さすがに腐っているのは買い取れませんが」
「収納魔法の中に収納してるから、腐ってることはないと思う」
「収納魔法……! でしたら大丈夫ですね。こちらに出せますか?」

 ここに出すの? ウリンソンボアってかなり大きいんだが……。

「出すことは可能だが……。こんな所で一頭丸ごと出したら大変なことにならないか?」
「一頭丸ごと収納しているんですか!? し、失礼しました。でしたら、こちらへ」
「ああ」

 エルフさんに案内されたのは、協同組合から階段を下がった所だった。そこはひんやりとした空気の漂う大きな金属の四角い部屋だった。まるで解剖室のような雰囲気だな。中央に大きな台があり、周りの壁には大きなノコギリやハンマーなどが並んでいる。

「主任はいらっしゃいますか?」
「ほい! 何用じゃ?」

 エルフさんに呼ばれて現れたのは、背の小さな白髪交じりのヒゲをたっぷり蓄えたドワーフだった。

「ウリンソンボアの解体をお願いします」
「ほお? 大仕事じゃの。で、そのボアはどこだ?」
「こちらの方の収納魔法の中だそうです」
「ほお!」

 ドワーフおじいちゃんが驚いた顔でオレを見上げ、そのままジロジロとオレを眺める。

「耳が尖ってないからエルフじゃないの。ニンゲンか? 見た目通りだとすると、その年で収納魔法が使えるニンゲンがおるとは……。にわかには信じられんが……。まぁ、ボアを持ってるなら出してみろ」
「この台の上に出せばいいのか?」
「ほむ!」

 おじいちゃんドワーフが元気に頷くので、オレは収納魔法を展開し、ウリンソンボアを台の上に出した。

 ドザッとまるで小さな一軒家のような大きさのウリンソンボアの死体が台の上に現れる。

「ほお! 本当に現れおった! こりゃ驚いたわい! おーい! 仕事じゃぞ!」
「うーい」
「おぉ! 立派な個体じゃのう」
「通常よりもデカいな」
「大仕事になりそうじゃわい」

 おじいちゃんドワーフが声を張り上げると、隣の部屋から続々とドワーフたちが現れた。

 ドワーフたちは壁にかけてあった物騒な大きさの包丁やノコギリを手に取ると、おじいちゃんドワーフの前に並ぶ。

「よし、集まったな? んじゃ、怪我せんように注意するんじゃぞ?」
「「「「「ほい!」」」」」

 こうして、ドワーフたちによる解体が始まった。
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