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21 帰ってきた虎族の村

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「これってどこで売ってるんだ? ウリンソンではなかなか手に入らないだろ?」
「そりゃマルブランシェ王国さ。今は戦争中だから危なくて行けないけど、落ち着いたらまた行こうと思ってる。アタリハズレがあるとはいえ、隣国との貿易は儲かるからね」

 そう言ってニヤッと笑うクマミミの店主。商人って逞しいなぁ。

「他にも何か珍しいものはないか? あれば買うぞ」
「本当かい! これなんてどうだろう?」

 店主が取り出したのは、ずっしりとした大きな木箱だった。店主がよいしょと布田を開けると、まるで輪切りにされた木のような物が入っていた。よく乾燥していて固そうだ。

「これ、チーズか?」
「だったかな? パスタの商人から買ったんだけど、こんな固い物をどうやって食べるのかわからなくて、ずっとこのままなんだよ……」

 そう言ってコンコンッとチーズの表面をノックする店主。たしかに、チーズを知らない人からすると、どうやって食べればいいのかわからない代物かもしれない。

「チーズの名前はわかるか?」
「ああ、たしか箱に書いておいたよ。えーっと……、パルミジャーノ・レッジャーノだってさ。なんだか舌を噛みそうな名前だね。めちゃくちゃ高かったのを今でも覚えているよ。付き合いがあるからって断り切れなかったんだよなぁ……」

 なんだか遠い目をするクマミミの店主。

 たぶん、パスタを売ってくれた商人が善意で勧めてくれたんだろうが……伝わらなかったようだな。

 パルミジャーノ・レッジャーノは、日本ではパルメザンチーズといった方が伝わるだろう。まぁ、パルミジャーノ・レッジャーノとパルメザンチーズは別物なんだけどね。

 パルミジャーノ・レッジャーノと言えば、チーズの王様とも呼ばれることがあるほどのチーズだ。厳しい製法のルールがあり、それを守って作られたチーズのみが名乗ることができる。

 対して、パルメザンチーズとは、パルミジャーノ・レッジャーノ風のチーズのことだ。こちらは製法などにルールがなく、自由に名乗れる。まぁ、スーパーなんかで売ってる一般的な粉チーズはこっちかな。

 パスタとチーズが一緒に手に入るとか運命的だなぁ。神様がパスタを作れとオレに囁いている……!

「買おう」
「え!? いいの!? さっきも言ったけど、めちゃくちゃ高いよ?」
「問題ない」

 オレはウリンソンではレアなチーズが手に入ってウキウキだ。

 パルメザンチーズのイメージが強くて、パルミジャーノ・レッジャーノを粉チーズにすることが多いかもしれないが、そのまま齧ってもめちゃくちゃおいしいチーズなのだ。

 まずはホアキンの毎晩の晩酌にでも出してやるか。トマトも大量に手に入ったし、ボロネーゼとかもいいかもしれないな。

「ありがとさーん」
「ああ。お! かぼちゃあるじゃん!」

 その後も買い物を続け、オレはいろいろな食材を集めていった。


 ◇


「うし! やるか!」

 虎族の村に帰ってきてもオレの行動は止まらない。まずは今朝貰ったボアのバラ肉の塊を取り出すと、丁寧に荒塩とハーブを揉み込んでいく。パンチェッタを作ろうと思ったのだ。ボロネーゼに必要だしね。

 あとはボアのもも肉にも塩とハーブを揉み込み、こちらは生ハムにする予定である。

「こんなもんでいっか」

 丁寧に塩とハーブを揉み込んだ肉たちは、収納魔法の中へ。実はこの収納魔法、中の時間を止めることもできれば、そのまま時が流れる仕様にもできるのだ。

 お肉たちはこのまま一か月は熟成である。

「スープストックも減ってきたし、足しとくか」

 スープストック。コンソメスープと言った方が伝わるかもしれない。これはいろんな料理に隠し味としていれるので消費が早いのだ。和食で言う出汁みたいな物だね。

 必要な物は脂肪の少ない牛肉とニンジン、玉ねぎ、パセリ、キャベツの芯などの香味野菜。これらをじっくり煮ると完成する。

「あとは、角煮でも作っておくか。フアナもホアキンも大好きだし、また長老の所にお裾分けしてもいいだろう。……二鍋作るか」

 そう言って、オレは寸胴鍋を二つ取り出した。

 なぜかはわからないが、和食の角煮が虎族たちにメガヒットしたのだ。もう虎族たちに角煮を渡せば、なんでも言うことを聞いてくれるんじゃないかというくらいには、あの角煮の甘じょっぱい味が虎族たちの胃袋を掴んで離さないようである。

「娘をやると言われた時には驚いたが……」

 中にはあまりに角煮が好物過ぎて、自分の娘をオレと結婚させようとした親もいたくらいだった。

 まぁ、オレにはフアナという心に決めた女性がいるので丁重に断ったが。

「角煮を煮て、余った汁は煮卵でも作ろう」

 賛否はあるだろうが、オレは煮卵は半熟派だ。なので、角煮とは別に作ることが多い。これも時間経過する方の収納魔法に仕舞っておこう。

「みんな、喜んでくれるといいな……」

 みんなの喜ぶ顔を想像しながら、オレは料理に精を出すのだった。
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