23 / 29
23 おやすみまで
しおりを挟む
「これは……!」
「野菜、おいしい?」
サラダを食べたホアキンとフアナが驚いたような表情を浮かべてフォークを止めた。
「この白いソース……?」
「なんだこのクリーミーで優しい酸味のあるソースは!? まるでミルクを凝縮されしたような旨味だ! しかも、ご丁寧に毟った鶏肉まで入ってやがる! 苦い野菜が! あの苦い野菜たちがこんなにもおいしい! これは革命だぞ!?」
ホアキンはいちいち大袈裟だなぁ。
「これはシーザードレッシングって言うんだ。いいチーズが手に入ったから作ってみた」
「ちーず?」
「マヨネーズの時も思ったが、まさか野菜をおいしいと感じる日がくるとはな……」
「サラダおかわり」
「おぉ!」
まさか、フアナが自分からサラダをおかわりする日がくるとは!
さすがお子様にも大人気のシーザーサラダだな。
「待てフアナ! ワシもサラダを食うぞ!」
「早い者勝ち」
「果たして、次のおかわりが早いのはどっちかな?」
それからフアナとホアキンの二人は、競うようにサラダをおかわりしたのだった。こんなことなら、もうちょっとサラダを作っておくべきだったな。
◇
そんなこんなで夕食も無事に終わり、フアナに手伝ってもらって洗い物も終わった後はもう寝る時間だ。早いよね? 日本人の感覚が抜けきらないオレにとってはめちゃくちゃ早い。たぶん、まだ二十一時にもなっていないと思う。健康的過ぎる。
とはいえ、これにはちゃんと理由があるのだ。
ウリンソン連邦は発展した都市だが、まだ電気はない。よって、明かりを付けるなら魔法、もしくは火を着けるしかない。だが、一部を除いて獣人は魔法が苦手なのだ。虎族も魔法の苦手な種族である。
よって、明かりを付けようと思ったら蝋燭や薪などを燃やすしかない。だが、蝋燭は高級品で、薪だってタダじゃない。なので、夜は暗くなったら大人しく寝るというのが虎族の生活スタイルだ。
その代わり、朝はめちゃくちゃ早いんだけどね。
フアナとホアキンが寝てしまった後、オレは広場の竈を使って料理を作っていた。夜警の人たちに差し入れでも作ろうと思ったのである。作っているのは、肉たっぷりの豚汁とおにぎりだ。豚汁があるので、おにぎりはシンプルに塩むすびにした。
「よお! いい匂いだな?」
「おいしそうな匂いですね」
「腹が減っちまうぜ。食っていいのか?」
「なんか独特な匂いだな? 嗅いだことねえのに、なんだか懐かしくなりやがる」
しばらくすると、今朝も会った夜警のメンバーが集まってくる。夜警は三日で交代というルールらしいから、彼らは明日も夜警のはずだ。
「ああ、差し入れだよ。たくさん作ったから自由に食べてくれ。そっちの白いのはおにぎりっていうんだが、一人二つまでな」
「ありがてえ!」
言うや否や、さっそくとばかりに夜警のメンバーが深皿を盛って寸胴鍋に並び始めた。
「さっそく食べるのか?」
「ええ、こんなおいしそうな匂いですもの。我慢できません」
「姐さんに賛成だ!」
「うおおおおおお! し、沁みるぅううううううう! なんだこの味は!? 体中に沁み渡りやがる!」
「おいしい……。これなら野菜もおいしくいただけますね」
「なんでか死んだばあちゃん思い出したぜ」
オレは次々におかわりをする夜警メンバーを見て安堵した。やっぱり、味噌は挑戦的かなと思ったのだが、受け入れてくれたようでなによりだ。
しかし、和食を作っていると醤油や酒、味醂、味噌が不足してくるよなぁ。まだまだ十分蓄えがあると言っても、使い続ければいつかは無くなる。
ゲームでは、ずっと東にある島国、扶桑で販売されていたのだが、いつか行ってみるのもいいかもしれないな。
とはいえ、おそらく扶桑に行くよりも食材がなくなるのが先だ。
「自分で作ってみるのもありかもしれないなぁ」
元々醤油や味噌作りには興味があったし、知識もある。大豆も持っているから栽培も可能だ。米も栽培してもらおう。
大豆、米の栽培が軌道に乗ったら、醤油や味噌作りにチャレンジしてみるのも楽しそうだ。
「明日は農業区画に行ってみるかな。それじゃあ、オレはもう寝るよ」
「おう! 差し入れ、ありがとな!」
「おやすみなさい」
「また頼むぜ!」
夜警のメンバーに挨拶し、オレは族長の家へと入る。ホアキンのいびきを聞きながら、オレは居間に敷かれた藁の上に横になった。
「チクチク刺さるのが難儀だが、これも慣れると温かくていいものだな」
藁ベットは意外にもオレに合っていた。とはいえ、ずっとこのままというのも体を悪くしそうだ。近いうちにベッドを導入しないと。
「とはいえなぁ……。ポケットコイルのマットレスなんてないだろうし……」
なければ作ればいいか。こっちはドワーフの職人に頼んでみよう。きっとできるはずだ。
「なんだか、やることがいっぱいだな」
でも、間違いなくここでの生活は充実している。
「寝るか……」
目を閉じると、心地よい疲れを感じて、体が一気に重たくなったような気がした。
「野菜、おいしい?」
サラダを食べたホアキンとフアナが驚いたような表情を浮かべてフォークを止めた。
「この白いソース……?」
「なんだこのクリーミーで優しい酸味のあるソースは!? まるでミルクを凝縮されしたような旨味だ! しかも、ご丁寧に毟った鶏肉まで入ってやがる! 苦い野菜が! あの苦い野菜たちがこんなにもおいしい! これは革命だぞ!?」
ホアキンはいちいち大袈裟だなぁ。
「これはシーザードレッシングって言うんだ。いいチーズが手に入ったから作ってみた」
「ちーず?」
「マヨネーズの時も思ったが、まさか野菜をおいしいと感じる日がくるとはな……」
「サラダおかわり」
「おぉ!」
まさか、フアナが自分からサラダをおかわりする日がくるとは!
さすがお子様にも大人気のシーザーサラダだな。
「待てフアナ! ワシもサラダを食うぞ!」
「早い者勝ち」
「果たして、次のおかわりが早いのはどっちかな?」
それからフアナとホアキンの二人は、競うようにサラダをおかわりしたのだった。こんなことなら、もうちょっとサラダを作っておくべきだったな。
◇
そんなこんなで夕食も無事に終わり、フアナに手伝ってもらって洗い物も終わった後はもう寝る時間だ。早いよね? 日本人の感覚が抜けきらないオレにとってはめちゃくちゃ早い。たぶん、まだ二十一時にもなっていないと思う。健康的過ぎる。
とはいえ、これにはちゃんと理由があるのだ。
ウリンソン連邦は発展した都市だが、まだ電気はない。よって、明かりを付けるなら魔法、もしくは火を着けるしかない。だが、一部を除いて獣人は魔法が苦手なのだ。虎族も魔法の苦手な種族である。
よって、明かりを付けようと思ったら蝋燭や薪などを燃やすしかない。だが、蝋燭は高級品で、薪だってタダじゃない。なので、夜は暗くなったら大人しく寝るというのが虎族の生活スタイルだ。
その代わり、朝はめちゃくちゃ早いんだけどね。
フアナとホアキンが寝てしまった後、オレは広場の竈を使って料理を作っていた。夜警の人たちに差し入れでも作ろうと思ったのである。作っているのは、肉たっぷりの豚汁とおにぎりだ。豚汁があるので、おにぎりはシンプルに塩むすびにした。
「よお! いい匂いだな?」
「おいしそうな匂いですね」
「腹が減っちまうぜ。食っていいのか?」
「なんか独特な匂いだな? 嗅いだことねえのに、なんだか懐かしくなりやがる」
しばらくすると、今朝も会った夜警のメンバーが集まってくる。夜警は三日で交代というルールらしいから、彼らは明日も夜警のはずだ。
「ああ、差し入れだよ。たくさん作ったから自由に食べてくれ。そっちの白いのはおにぎりっていうんだが、一人二つまでな」
「ありがてえ!」
言うや否や、さっそくとばかりに夜警のメンバーが深皿を盛って寸胴鍋に並び始めた。
「さっそく食べるのか?」
「ええ、こんなおいしそうな匂いですもの。我慢できません」
「姐さんに賛成だ!」
「うおおおおおお! し、沁みるぅううううううう! なんだこの味は!? 体中に沁み渡りやがる!」
「おいしい……。これなら野菜もおいしくいただけますね」
「なんでか死んだばあちゃん思い出したぜ」
オレは次々におかわりをする夜警メンバーを見て安堵した。やっぱり、味噌は挑戦的かなと思ったのだが、受け入れてくれたようでなによりだ。
しかし、和食を作っていると醤油や酒、味醂、味噌が不足してくるよなぁ。まだまだ十分蓄えがあると言っても、使い続ければいつかは無くなる。
ゲームでは、ずっと東にある島国、扶桑で販売されていたのだが、いつか行ってみるのもいいかもしれないな。
とはいえ、おそらく扶桑に行くよりも食材がなくなるのが先だ。
「自分で作ってみるのもありかもしれないなぁ」
元々醤油や味噌作りには興味があったし、知識もある。大豆も持っているから栽培も可能だ。米も栽培してもらおう。
大豆、米の栽培が軌道に乗ったら、醤油や味噌作りにチャレンジしてみるのも楽しそうだ。
「明日は農業区画に行ってみるかな。それじゃあ、オレはもう寝るよ」
「おう! 差し入れ、ありがとな!」
「おやすみなさい」
「また頼むぜ!」
夜警のメンバーに挨拶し、オレは族長の家へと入る。ホアキンのいびきを聞きながら、オレは居間に敷かれた藁の上に横になった。
「チクチク刺さるのが難儀だが、これも慣れると温かくていいものだな」
藁ベットは意外にもオレに合っていた。とはいえ、ずっとこのままというのも体を悪くしそうだ。近いうちにベッドを導入しないと。
「とはいえなぁ……。ポケットコイルのマットレスなんてないだろうし……」
なければ作ればいいか。こっちはドワーフの職人に頼んでみよう。きっとできるはずだ。
「なんだか、やることがいっぱいだな」
でも、間違いなくここでの生活は充実している。
「寝るか……」
目を閉じると、心地よい疲れを感じて、体が一気に重たくなったような気がした。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚
ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。
しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。
なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!
このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。
なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。
自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!
本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。
しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。
本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。
本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。
思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!
ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
・本来の主人公は荷物持ち
・主人公は追放する側の勇者に転生
・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です
・パーティー追放ものの逆側の話
※カクヨム、ハーメルンにて掲載
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる