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27 フェリシエンヌ再び
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村の広場で、オレは初めてのことに挑戦していた。
それがトウモロコシの蒸しパンだ。ウリンソンではケンケーと呼ばれているらしい。
トウモロコシを粉末にした物を水で練って、トウモロコシの葉っぱで包んで蒸しあげた物なのだが、なんだかトウモロコシを使った鬼まんじゅうみたいな味だった。
虎族の奥様たちに紹介されて自分でも食べてみたし、作り方を教わったので自分でも作ってみようと思ったのである。
他にも芋を使ったウガリというそばがきみたいな主食があるのだが、そっちよりも蒸しパンの方が親しみやすいかと思ってこっちにした。
「これが上手くいったら、今度から主食をケンケーにするのもいいな」
まぁ、急がなくても小麦の在庫はたくさん足るし、コーンパンとか作って小麦粉の消費を抑えることもできるしな。
他にもトルティーヤとかあるから、そっちにも挑戦してみたいな。トルティーヤ好きだし。
考えれば当たり前だったのだが、ウリンソン連邦で作られている作物はゲームの時よりもかなり多い。キャッサバとかバナナとかもあったしな。オレの知らんスパイスとかもあったし。
「いろいろ試していきたいなあ」
今はオレが親しみやすいから地球の料理を再現しているが、いつかオレもこの世界に染まっていかないとな。
これはその一歩なのだ。
だからトルティーヤよりもトウモロコシの蒸しパンを作ることを選んだ。
「そろそろいいかな?」
そろそろ蒸し上がっただろう。
その時だった。
「ちょっといいかしら?」
「あぁー……」
振り向きたくないなぁ。だってこの声フェリシエンヌなんだもん。
べつにフェリシエンヌ自体は嫌いじゃないんだけど、今のフェリシエンヌはウリンソン連邦を帝国相手に戦争させようとしている張本人だ。できればあまり会いたくはない。
だが、無視してもなあ……。
「はぁ、何の用だ?」
「なんで溜息? ムカつくわね」
振り返ると、やっぱりフェリシエンヌがいた。腕を組んで不機嫌そうだ。その後ろには控えるようにエステルが立っている。
「まぁ、いいわ。あなた、ずいぶんと活躍してるのね。どこに行ってもあなたの名前を聞くわ」
「そうか?」
「ええそうよ。そんなあなたにお願いがあるの。ちょっと頼まれてくれないかしら?」
「……言うだけ言ってみろ」
「これから虎族の族長に会うのだけど、あなたにはわたくしの味方をしてほしいのよ」
どうやらフェリシエンヌは、ゲーム通りにウリンソン連邦の中でも有力な種族を味方に付けようとしているようだ。
ゲームでは、この作戦は途中まで上手くいく。
有力種族たちを助け、その支持を受けたフェリシエンヌによって、一度はウリンソン連邦内部で戦争への機運が高まるのだ。
しかし、これはエルフたちが拒否権を使用したことによって阻止される。
まぁこの後、皇族を皆殺しにして皇帝に就いたオレが世界征服を宣言して、ウリンソン連邦に宣戦布告してしまうのだが……。これによって、ウリンソン連邦とランゲンバッハ帝国との戦端が開かれることになる。
じゃあ、フェリシエンヌたちの働きは無意味なのか。オレはそうは思わない。
フェリシエンヌたちの働きによって、ウリンソン連邦は一度は戦争の機運を高めた。このことをランゲンバッハ帝国側が察知していたとしたらどうだろう?
もしかしたら、ランゲンバッハ帝国がウリンソン連邦に宣戦布告したのは、フェリシエンヌたちの働きによって戦争への機運が高まったことで、ウリンソン連邦が潜在的な敵国と見做されたためかもしれない。
まぁ、実際のところはわからないけどね。
でも、この世界でウリンソン連邦とランゲンバッハ帝国の戦争は絶対に阻止すべきだ。
だって面倒だし、危ないじゃん? フアナと一緒にのんびりする時間も減っちゃうし。
だからまぁ、一応手を打たせてもらった。
その効果の確認をするのもいいだろう。
「協力はしない。だが、族長を紹介することはできる」
「今はそれでいいわ」
フェリシエンヌが頷いたので、オレたちはさっそく族長の家に行く。ドアを開けて中に入った。
「ホアキン、客だぞー!」
「そんなにずかずか入って大丈夫なの?」
「心配ないさ、オレはここに住んでるからな。ホアキン、いないのか?」
「なんだ、バルタザール?」
奥の部屋からのっそりと現れたのは二メートルを超える筋骨隆々な金髪の大男、ホアキンだ。その姿にフェリシエンヌが息を吞む音がオレの耳にも聞こえてきた。
「客を連れてきた。ホアキンに用があるらしいぞ」
「客ねー」
ホアキンがフェリシエンヌとエステルを見下ろした。
「マルブランシェ王国のフェリシエンヌ姫殿下だ。フェリシエンヌ、これがホアキン。虎族の族長だ」
雑に紹介すると、ホアキンの目がエステルに向かった。
「そっちのは?」
「エステルだ。フェリシエンヌの従者だな。まぁ、今は気にしなくていい」
「そういうものか?」
「そっちのは?」
それがトウモロコシの蒸しパンだ。ウリンソンではケンケーと呼ばれているらしい。
トウモロコシを粉末にした物を水で練って、トウモロコシの葉っぱで包んで蒸しあげた物なのだが、なんだかトウモロコシを使った鬼まんじゅうみたいな味だった。
虎族の奥様たちに紹介されて自分でも食べてみたし、作り方を教わったので自分でも作ってみようと思ったのである。
他にも芋を使ったウガリというそばがきみたいな主食があるのだが、そっちよりも蒸しパンの方が親しみやすいかと思ってこっちにした。
「これが上手くいったら、今度から主食をケンケーにするのもいいな」
まぁ、急がなくても小麦の在庫はたくさん足るし、コーンパンとか作って小麦粉の消費を抑えることもできるしな。
他にもトルティーヤとかあるから、そっちにも挑戦してみたいな。トルティーヤ好きだし。
考えれば当たり前だったのだが、ウリンソン連邦で作られている作物はゲームの時よりもかなり多い。キャッサバとかバナナとかもあったしな。オレの知らんスパイスとかもあったし。
「いろいろ試していきたいなあ」
今はオレが親しみやすいから地球の料理を再現しているが、いつかオレもこの世界に染まっていかないとな。
これはその一歩なのだ。
だからトルティーヤよりもトウモロコシの蒸しパンを作ることを選んだ。
「そろそろいいかな?」
そろそろ蒸し上がっただろう。
その時だった。
「ちょっといいかしら?」
「あぁー……」
振り向きたくないなぁ。だってこの声フェリシエンヌなんだもん。
べつにフェリシエンヌ自体は嫌いじゃないんだけど、今のフェリシエンヌはウリンソン連邦を帝国相手に戦争させようとしている張本人だ。できればあまり会いたくはない。
だが、無視してもなあ……。
「はぁ、何の用だ?」
「なんで溜息? ムカつくわね」
振り返ると、やっぱりフェリシエンヌがいた。腕を組んで不機嫌そうだ。その後ろには控えるようにエステルが立っている。
「まぁ、いいわ。あなた、ずいぶんと活躍してるのね。どこに行ってもあなたの名前を聞くわ」
「そうか?」
「ええそうよ。そんなあなたにお願いがあるの。ちょっと頼まれてくれないかしら?」
「……言うだけ言ってみろ」
「これから虎族の族長に会うのだけど、あなたにはわたくしの味方をしてほしいのよ」
どうやらフェリシエンヌは、ゲーム通りにウリンソン連邦の中でも有力な種族を味方に付けようとしているようだ。
ゲームでは、この作戦は途中まで上手くいく。
有力種族たちを助け、その支持を受けたフェリシエンヌによって、一度はウリンソン連邦内部で戦争への機運が高まるのだ。
しかし、これはエルフたちが拒否権を使用したことによって阻止される。
まぁこの後、皇族を皆殺しにして皇帝に就いたオレが世界征服を宣言して、ウリンソン連邦に宣戦布告してしまうのだが……。これによって、ウリンソン連邦とランゲンバッハ帝国との戦端が開かれることになる。
じゃあ、フェリシエンヌたちの働きは無意味なのか。オレはそうは思わない。
フェリシエンヌたちの働きによって、ウリンソン連邦は一度は戦争の機運を高めた。このことをランゲンバッハ帝国側が察知していたとしたらどうだろう?
もしかしたら、ランゲンバッハ帝国がウリンソン連邦に宣戦布告したのは、フェリシエンヌたちの働きによって戦争への機運が高まったことで、ウリンソン連邦が潜在的な敵国と見做されたためかもしれない。
まぁ、実際のところはわからないけどね。
でも、この世界でウリンソン連邦とランゲンバッハ帝国の戦争は絶対に阻止すべきだ。
だって面倒だし、危ないじゃん? フアナと一緒にのんびりする時間も減っちゃうし。
だからまぁ、一応手を打たせてもらった。
その効果の確認をするのもいいだろう。
「協力はしない。だが、族長を紹介することはできる」
「今はそれでいいわ」
フェリシエンヌが頷いたので、オレたちはさっそく族長の家に行く。ドアを開けて中に入った。
「ホアキン、客だぞー!」
「そんなにずかずか入って大丈夫なの?」
「心配ないさ、オレはここに住んでるからな。ホアキン、いないのか?」
「なんだ、バルタザール?」
奥の部屋からのっそりと現れたのは二メートルを超える筋骨隆々な金髪の大男、ホアキンだ。その姿にフェリシエンヌが息を吞む音がオレの耳にも聞こえてきた。
「客を連れてきた。ホアキンに用があるらしいぞ」
「客ねー」
ホアキンがフェリシエンヌとエステルを見下ろした。
「マルブランシェ王国のフェリシエンヌ姫殿下だ。フェリシエンヌ、これがホアキン。虎族の族長だ」
雑に紹介すると、ホアキンの目がエステルに向かった。
「そっちのは?」
「エステルだ。フェリシエンヌの従者だな。まぁ、今は気にしなくていい」
「そういうものか?」
「そっちのは?」
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